最弱英雄の魔王討伐!?

秋元智也

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第26話

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「お世話になったわ。」
「いつでも来てよいからのう。ただし、結界は壊さんように頼むのう」
ラセツはルイにいいながら帰りのお弁当を渡した。
「これからはカイルを通じて連絡を入れるわ。」
「わかった。元気で。」
「遥も、皆さんもお元気で!」
そういってルイは城に帰っていった。
カイルは昨日のうちにエスタニア王国に乗り込むと意気込んで行ってしまった。
その5日後にはエスタニア王国の軍事の詳しい詳細が届いたのだった。
これからクルス皇国に向かうともあった。その帰りに寄るともかかれていた。
「流石に魔族の密偵は違うのう」
ラセツと遥はルーン王国に戻ってきていた。
そして講和の話をロザリア陛下に話した所、難しい顔はしたものの協力はしてくれることになった。
「しかしなぁ~他の国は無理じゃないか?」
ロザリアは少女の姿で遥達の部屋に来ていた。
「余程暇なんですね?」
「何をいうか!公務の合間に来てやっとるというにー!」
「あーはいはい。」
最近あしらいかたを覚えてきていた。
どうにも幼さは抜けきっていないようで姿も相まって子供扱いしてしまうのである。
これでもれっきとした女王様なのだが、、、何ぶん行動が幼稚過ぎるのだった。
用は公務を抜け出してこの部屋でお菓子を食い漁っていると言うわけだった。
「しっかり仕事もしておるわー」
「でも、エスタニア王国のこの軍備の様子だとそろそろ攻め込むのではないでしょうか?」
遥はラセツに聞くと頷いて返した。
「そうじゃろうなぁ。この規模の軍の徴集といい、兵士の移動日程といい危険じゃな。」
「沈黙を守っているクルス皇国が気になるところですが、まずはエスタニア王国には負けて貰いますか?戦力もギリギリまで削っておきたいですし?」
「どうするつもりじゃ?」
「それなら手を打っておきます。試作も完成していますしね?」
にやっと笑うと小さな石ころ位の物を翳した。
それは魔石と違い何も魔力も感じなかった。
「それをどうするんじゃ?魔石じゃなさそうだが?」
「まぁ、まぁ、カイルが使い方と共にルイに渡して貰えば面白いことになるよ」

それから10日程たったある日、エスタニア王国軍は魔王領へと進軍したのである。
即席の橋を川にかけると歩兵と騎馬兵が川を渡りきった。
するとどうだろう、川の上流から木材が流れて来たのである。
木材は橋にぶつかり止まったが、次から次へと流れて来たのである。
その様子に兵は動揺を隠せなかった。
橋が壊されたら?
馬はもう、渡れない。深いところはかなりの深さがある為に泳いで渡るのも困難だった。
すると、とうとう橋が耐えきれず大きな音と共に砕け散ったのである。
「怯むな!我らは元より勝利しか求められてはおらん。前へ進め!」
指揮を取っている指揮官は前進を指示した。
しかし、そこに草陰に隠れていた魔族は小さな石を投げて寄越したのだ。
「怯むな!ただの石だ!突撃ー!」
そう言った瞬間に足元で爆発音がしたのだ。
魔族は魔力が人より多い。
そこを利用して魔力を貯めて敵にほおり投げると、敵のところで時間差で爆発する手榴弾のようなものを渡しておいたのだ。
それと、予め埋めておいた地雷の効果も絶大であった。
今回、勇者は参戦していなかった為か被害は大きく殆どが全滅に近かった。
魔族側は全くの被害なしであった。
多少、前に出すぎて爆発の余波を受けたものはいたようだが、なにしろ新兵器のお陰で初戦は完全な魔族の勝利であった。

「一体何をやっておったのだ!」
エスタニア王国の国王であるハロルド・エスタニアは逃げ帰ってきた指揮官に問いただしていた。
兵士が全滅している間に指揮官はさっさと逃げていたのだ。
そして、指揮系統は完全に混乱をきたして今回のような惨事を招いたのだった。
「何も言えんだろうな?たった一人で逃げ帰ってきて、釈明もないわ!」
「しかしながら申し上げます。魔族の奴等変わった武器で我らを攻撃してきたのです。まるで石のようなもので魔力が感じられなかったのですが、地面に落ちるといきなり爆発するのです」
「そんなものがこの世に有るわけはなかろう?夢でも見ていたとは情けない。下がれ!二度とみたくない」
「しかし、このままでは、我が軍は・・・」
「頭でも冷やしてくるがいい。こやつを牢に入れておけ!」
「はっ!」
なおも食い下がるがハロルドは兵士に指示すると指揮官を牢へとつれていかせた。
「お待ち下さい。真実なのです。陛下ー!今一度出兵の機会をお与えください」
「これ以上兵を減らしている場合ではないわ。これでは魔族の前に他の国に攻め込まれるではないか!全く恥知らずが!」
「父上、指揮官の変わりはいますが今回の大敗はいかがいたしましょうか?」
ライラは今回の出兵の民への発表の事を言っていた。
まさかあるがまま伝えるわけにもいかず、多少考えるがいつも通りになった。
「大勝利と伝えておけ!ただ今回はどちらも痛み分けであったとな?じゃから殆どが名誉の戦死であったと言っておけばよい!国民など替えはいくらでもおるのだからな!」
「わかりました、そのように。次の出兵は2月ほど先にしていただかないと農作物の刈り入れ時と重なります。御考慮ください。」
ハロルドは机の上に乗っている書類を床に叩きつけた。
「そんな民の都合など考えてはおれん。いつ魔族が攻めてくるかもわからんのに悠長にしていられるか!バルリアにも要請して合同で攻めるのはどうか?それならば兵の量も増やせるではないか!クルス皇国とルーン王国にも使者を送れ。今すぐにだ!」
「かしこまりました。早急に手配いたします。」
ライラは書類を戻すとすぐに伝令用の親書をしたためて伝令の宿舎に向かった。

クルス皇国では皇王ジャック・グノシスがエスタニアの大敗の知らせを聞いていた。
「なんとも情けない。英樹よ、お主ならどうじゃこれからどうなると思う?」
「そうですね、まずは兵士の数を補うために他の国に共同攻撃を持ちかけるでしょう。そうすれば、お互いの国の兵士を同じく減らせますから、それに兵が減れば後の争いが起きにくいとでも考えているのではないでしょうか?」
ジャックは英樹の考えに賛同したのか盛大に笑った。
「勇者とは参謀もしかりじゃな?なら、我が国はどう選ぶべきかな?」
英樹は眼鏡を少しずらすと細い瞳を開いて口許を緩めた。
「ここは作戦に乗ったふりをして魔術師部隊を後方に詰めて援護ではなく殲滅すべきでしょうね?しかし、これは戦況を見ての話ですが・・・あまりにぼろ敗けでは魔族と直接戦うことになってしまうのでそれは避けたいところですね!」
「そなたに一万と五千の兵士を与える。戦場にて指揮をするがいい。人選は好きにするがいい。」
「はい、お任せください。」
英樹は一礼し、膝をつくと踵を返して出ていった。
残ったハロルドは影に潜むものに命令を下した。
「しっかりと見張っておけ。余計なことをする前にすぐに連絡するのだぞ?」
影はひそかに頷くとそのまま消えていった。
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