29 / 45
第29話
しおりを挟む
いきなり腕を掴まれたと思うと廊下へと投げ飛ばされていた。
バターン。という大きな音と共に霞は背中から転がった。
受け身は取っているものの痛みはあるのだ。
すぐに立ち上がると下の階に降りるとキッチンへと足を踏み入れると無惨にも何度も包丁を刺された跡のある女性の死体が横たわっていた。
いまだに包丁は刺さったままになっていて痛々しさが伝わってきた。
一瞬躊躇ったせいか後ろから来ている父に気づくのが遅れた。
その隙に腕を掴まれ、関節を押さえ込まれた。
男の力で押さえ込まれると非力な女性では抜け出すことは難しかった。
しかも、格闘技の経験があるものならば尚更だった。
「やめてよ。お父さん!こんな酷いことしないわよ・・・うっ・・」
バタバタともがくが緩む気配もなかった。
上からポタッ。と水滴が垂れてきた。
上を見上げると父の始めて見た涙だった。
「私のこと、信じられないの?」
声を振り絞って言うが、やはり通じない。
「お前たちと会ったのは間違いだった。すまん。俺も後を追うから・・・」
「そんなっ・・・」
意識が朦朧としてきていた。近所の人が物音を聞いて警察に通報したのか遠くでパトカーのサイレンが鳴り響いていた。
気がつくと目の前には女神が立っていた。
そして自分は死んだのだと告げられた。
そして新たな世界で魔王から人々を救ってほしいと頼まれたのだった。
どうせ一度死んだ人生だと快く引き受けた。
そして祭壇で目覚めた。
そこでライラに会った。
彼女もまた自分が女に生まれた事に劣等感を持っていた。
「勇者様、我が国エスタニア王国をお救いください。」
「あなたの名前は?なんて呼べばいいかしら?」
「わたくしはエスタニア王国ハロルド・エスタニア王の娘、ライラ・エスタニア。ライラとお呼びください。」
そういうと服を差し出した。
霞はそこで自分が何も纏っていない事に気がついた。
「私は堂島霞。かすみと呼んで。ありがとう、助かるわ」
服を着ると城のなかを案内された。
武器庫に案内されると色々な武器が並んでいた。
「好きなものをお取りください。」
「えっ?くれるの?、、、そうだなぁ~。コレがいいかな?」
そう言って手に取ったのは細い日本刀に近いモノだった。
それから横にある太い大剣を手に取ると振り回してみた。
「コレも以外と見た目と違って軽いのね?」
「いえ。霞様、それは誰も持つことが出来なかった武器にございます。」
「えっ!そうなの?こんなに見た目ごっついのに凄く軽量化してあるなって不思議だったけど、私の方が身体能力が上がってるってことかしら?ねー誰か模擬戦してくれないかしら?」
近くの兵士に聞くと兵士長が引き受けてくれた。
そして兵士達が集まるなか、兵士長との一騎討ちが設けられた。
「どこからでもどうぞ、勇者殿。」
「じゃー行くわよ!」
地面を踏み込むと一気に加速して距離を詰めた。
そのまま斬るのもなんだかつまらないので左側にすり抜けるとそのままバックから大剣を叩きつけた。
まさか反応出来ないとは思っていなかったので霞は吹き飛ばされる姿を見て驚いてしまった。
まだ初手の一発だというのに戦闘不能になっていた。
周りの兵士は口が閉まらないのか暫し呆然としていた。
「まさか、こんなんでダウンな訳?」
「さすがでございます。彼も弱くはないのですよ?霞様がお強いのです。」
それから何人かと手加減して訓練したが全く手応えがなく、練習にもならなかった。
動きは遅く、無駄が多いのだ。
それからクルス皇国にも男の勇者が現れたと知ると兵士達は浮き足だっていた。
「おい、聞いたか?クルス皇国の勇者の話!」
「おぉ、なんでもバカでっかい武器を振り回すんだってな!」
「俺は素手で大きな岩をも砕いたって聞いたぞ?」
「なんでも女好きで毎晩いろんな女を侍らしてるって話だぞ?」
「マジかぁ。羨ましい限りだなぁ~。」
「勇者ならうちにもいるじゃねーか?」
「な~に言ってんだよ女が男にかなうわけないだろ?同じく勇者なら男の方が良かったなぁ~。」
「ちげーねー。」
兵士たちの話し声が響いてきて霞は過去を彷彿とさせた。
「男の方が良かったですって?私に負けた分際で何を言い出すのかしら?もっと鍛えてあげるわ。」
明日からまた、特訓は厳しくなるのだった。
ある日、魔族領の方から不穏な動きがあると聞き、現場に駆けつけると川沿いの村から火の手が上がっていた。
「あなた達は村人の避難と消化活動をしてちょうだい。私が出向くわ」
魔族が引き返していった方へと分け入っていった。
すると頭上から火の玉が霞にめがけて飛んできたのだ。
ギリギリの所でかわすと一気に距離を詰めて思いっきり剣を振り下ろした。吹き飛んだのは魔族の上半身だけだった。残された下半身からは大量の血飛沫が飛び散っていた。
止まることなく霞は魔族のなかに飛び込んでいった。
魔族は兵士に比べれば早い方だが霞にとってはゆっくりに見えた。
しかし、頭上から降ってくる氷の鋭い塊や炎の凝縮した球体が厄介であった。
「あれは魔法よね?ここって魔法が使えるのね?後で色々聞かせてもらわなくっちゃ!」
次から次へと切り刻んでいく霞はまさに修羅か羅刹のようだと魔族間では呼ばれた。
そして霞は斬ることに夢中で気づかなかった。
周りを囲まれている事に・・・。
頭上からの攻撃を避けている霞に前後左右からも鋭い氷の塊が飛んで来たのである。
仲間も犠牲にした捨て身の攻撃だった。
勿論霞には軌道は見えていてもあまりにも数が多過ぎて避けきるのは不可能であった。
ギリギリの所で避けているのではかわしきれない。
左腕を犠牲にして致命傷を避けてなんとか全部をかわしきる頃には魔族達は立ち去った後だった。
「霞殿ー!」
村の方から兵士たちの声が響いてきた。
左腕は完全に動かなくなったが全身の擦り傷はたいしたことはなく、かすり傷程度で済んだ。
しかし、霞は疲労と血の欠乏からかゆっくりとその場に倒れふしたのだった。
バターン。という大きな音と共に霞は背中から転がった。
受け身は取っているものの痛みはあるのだ。
すぐに立ち上がると下の階に降りるとキッチンへと足を踏み入れると無惨にも何度も包丁を刺された跡のある女性の死体が横たわっていた。
いまだに包丁は刺さったままになっていて痛々しさが伝わってきた。
一瞬躊躇ったせいか後ろから来ている父に気づくのが遅れた。
その隙に腕を掴まれ、関節を押さえ込まれた。
男の力で押さえ込まれると非力な女性では抜け出すことは難しかった。
しかも、格闘技の経験があるものならば尚更だった。
「やめてよ。お父さん!こんな酷いことしないわよ・・・うっ・・」
バタバタともがくが緩む気配もなかった。
上からポタッ。と水滴が垂れてきた。
上を見上げると父の始めて見た涙だった。
「私のこと、信じられないの?」
声を振り絞って言うが、やはり通じない。
「お前たちと会ったのは間違いだった。すまん。俺も後を追うから・・・」
「そんなっ・・・」
意識が朦朧としてきていた。近所の人が物音を聞いて警察に通報したのか遠くでパトカーのサイレンが鳴り響いていた。
気がつくと目の前には女神が立っていた。
そして自分は死んだのだと告げられた。
そして新たな世界で魔王から人々を救ってほしいと頼まれたのだった。
どうせ一度死んだ人生だと快く引き受けた。
そして祭壇で目覚めた。
そこでライラに会った。
彼女もまた自分が女に生まれた事に劣等感を持っていた。
「勇者様、我が国エスタニア王国をお救いください。」
「あなたの名前は?なんて呼べばいいかしら?」
「わたくしはエスタニア王国ハロルド・エスタニア王の娘、ライラ・エスタニア。ライラとお呼びください。」
そういうと服を差し出した。
霞はそこで自分が何も纏っていない事に気がついた。
「私は堂島霞。かすみと呼んで。ありがとう、助かるわ」
服を着ると城のなかを案内された。
武器庫に案内されると色々な武器が並んでいた。
「好きなものをお取りください。」
「えっ?くれるの?、、、そうだなぁ~。コレがいいかな?」
そう言って手に取ったのは細い日本刀に近いモノだった。
それから横にある太い大剣を手に取ると振り回してみた。
「コレも以外と見た目と違って軽いのね?」
「いえ。霞様、それは誰も持つことが出来なかった武器にございます。」
「えっ!そうなの?こんなに見た目ごっついのに凄く軽量化してあるなって不思議だったけど、私の方が身体能力が上がってるってことかしら?ねー誰か模擬戦してくれないかしら?」
近くの兵士に聞くと兵士長が引き受けてくれた。
そして兵士達が集まるなか、兵士長との一騎討ちが設けられた。
「どこからでもどうぞ、勇者殿。」
「じゃー行くわよ!」
地面を踏み込むと一気に加速して距離を詰めた。
そのまま斬るのもなんだかつまらないので左側にすり抜けるとそのままバックから大剣を叩きつけた。
まさか反応出来ないとは思っていなかったので霞は吹き飛ばされる姿を見て驚いてしまった。
まだ初手の一発だというのに戦闘不能になっていた。
周りの兵士は口が閉まらないのか暫し呆然としていた。
「まさか、こんなんでダウンな訳?」
「さすがでございます。彼も弱くはないのですよ?霞様がお強いのです。」
それから何人かと手加減して訓練したが全く手応えがなく、練習にもならなかった。
動きは遅く、無駄が多いのだ。
それからクルス皇国にも男の勇者が現れたと知ると兵士達は浮き足だっていた。
「おい、聞いたか?クルス皇国の勇者の話!」
「おぉ、なんでもバカでっかい武器を振り回すんだってな!」
「俺は素手で大きな岩をも砕いたって聞いたぞ?」
「なんでも女好きで毎晩いろんな女を侍らしてるって話だぞ?」
「マジかぁ。羨ましい限りだなぁ~。」
「勇者ならうちにもいるじゃねーか?」
「な~に言ってんだよ女が男にかなうわけないだろ?同じく勇者なら男の方が良かったなぁ~。」
「ちげーねー。」
兵士たちの話し声が響いてきて霞は過去を彷彿とさせた。
「男の方が良かったですって?私に負けた分際で何を言い出すのかしら?もっと鍛えてあげるわ。」
明日からまた、特訓は厳しくなるのだった。
ある日、魔族領の方から不穏な動きがあると聞き、現場に駆けつけると川沿いの村から火の手が上がっていた。
「あなた達は村人の避難と消化活動をしてちょうだい。私が出向くわ」
魔族が引き返していった方へと分け入っていった。
すると頭上から火の玉が霞にめがけて飛んできたのだ。
ギリギリの所でかわすと一気に距離を詰めて思いっきり剣を振り下ろした。吹き飛んだのは魔族の上半身だけだった。残された下半身からは大量の血飛沫が飛び散っていた。
止まることなく霞は魔族のなかに飛び込んでいった。
魔族は兵士に比べれば早い方だが霞にとってはゆっくりに見えた。
しかし、頭上から降ってくる氷の鋭い塊や炎の凝縮した球体が厄介であった。
「あれは魔法よね?ここって魔法が使えるのね?後で色々聞かせてもらわなくっちゃ!」
次から次へと切り刻んでいく霞はまさに修羅か羅刹のようだと魔族間では呼ばれた。
そして霞は斬ることに夢中で気づかなかった。
周りを囲まれている事に・・・。
頭上からの攻撃を避けている霞に前後左右からも鋭い氷の塊が飛んで来たのである。
仲間も犠牲にした捨て身の攻撃だった。
勿論霞には軌道は見えていてもあまりにも数が多過ぎて避けきるのは不可能であった。
ギリギリの所で避けているのではかわしきれない。
左腕を犠牲にして致命傷を避けてなんとか全部をかわしきる頃には魔族達は立ち去った後だった。
「霞殿ー!」
村の方から兵士たちの声が響いてきた。
左腕は完全に動かなくなったが全身の擦り傷はたいしたことはなく、かすり傷程度で済んだ。
しかし、霞は疲労と血の欠乏からかゆっくりとその場に倒れふしたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双
四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。
「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。
教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。
友達もなく、未来への希望もない。
そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。
突如として芽生えた“成長システム”。
努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。
筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
「昨日まで笑いものだったはずだろ!」
周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。
だが、これはただのサクセスストーリーではない。
嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。
陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。
「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」
かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。
最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。
物語は、まだ始まったばかりだ。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる