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8話 金持ちの事情
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学校に着いてからはいつも通りの生活に戻った気分だった。
朝のアレはなんだったのだろう。
「あ、き、ら、くーん!」
朝からテンションが上がっている和泉将司が教室に入ってきたの
だった。
朝から野球部の練習があったからか少し汗臭い。
「朝から元気だな~」
「そうそう、聞いてくれよ!夏の選抜に選ばれそうなんだよ!す
げーだろ?」
興奮気味に捲し立てた。
きっと嬉しくて自慢したいのだろう。
「すごいな!甲子園も夢じゃないな!」
「そんな簡単なわけがないだろ?」
後ろから声がして有坂裕が入ってきた。
「甲子園は強豪校を倒さなきゃ無理だろ?うちの高校無名なんだ
ぞ?」
無名の高校の一選抜選手に選ばれたとて、自慢にもならないとは
っきり言われていた。
「お前!夢がねーな!」
「夢は寝て言え!」
「有坂くんって現実主義なんだね?」
「当たり前だろ。まー坊の様に夢は見ない、実力で叶えるタイプ
なんだ」
さすが将棋部の人間だ。
計算高い。
「伊波は部活は決めたか?」
「いや…まだだけど、ちょっと忙しくて…」
「そうか。まぁ、無理にとは言わないが、入っておいた方がいい
ぞ?うちの高校で帰宅部はあまりいないからな」
言われてみれば、誰かは何かの部活に行っている。
元々彰には無縁の事だったので考えもしなかった。
「そう言えば…大西さんってなんの部活入ってるの?」
「はぁ?それも知らねーのかよ!大西さんと言えば…テニス部だ
ろ!」
部活の中ではユニフォームが一番可愛いと言われているからだ。
お嬢様達の間では、テニスは当たり前のスポーツらしい。
「知らなかったのか?大西さんだけじゃないぜ?曽根崎新。あい
つもテニス部なんだぜ?」
「曽根崎…?」
和泉将司が興奮気味に説明してくれていたのを有坂が遮った。
「曽根崎グループといえば、有数のチェーン店を展開している外食
産業で有名ですよ?」
「へ~そうなんだ…」
全く興味がなさそうな返事に有坂が付け加える。
「彼はそこの御曹司なんですよ。兄弟は兄がもう後を継いでいて弟
の彼は問答無用にその事業を手伝う未来ができているんです」
「それって…」
「兄弟としては気に入らないでしょう…社長の席は回ってこないと
いう事ですからね」
「兄弟で仲が悪いのですか?」
「そりゃそうだろ?」
突然割り込んできた和泉が声を荒げる。
「あいつ結構の野心家だからな~。テニス部に入ったのだって目的
があったからだろうしな~」
「目的?」
顎でしゃくると、ちょうど大西玲那が入ってきた。
「大西グループの令嬢と付き合ってそのまま結婚できればって考え
てるんじゃねーの?」
「だろうな…最近では積極的にアピールしてるもんな~」
二人にはそう見えるらしい。
しかし、家ではそんな話は聞いた事はない。
まさか、みんなから見て高嶺の花である大西玲那と一緒に暮らして
いるなんて口が裂けても言えない。
金持ち同士の人間模様は大変なのだな~とその時は思っていたのだ
った。
放課後になってスマホにLINEが入っていた。
『屋上来て』
この一言で彰は何も言わず言われた場所へときていた。
屋上へと続くドアには鍵かかけられていない。
そして何やら話し声が聞こえてきた。
「いいだろ?玲那だって他の有象無象に困ってんだろ?」
「結構よ。私は誰とも付き合うつもりはないの!」
「そういうなって、家だってお前と釣り合う奴なんてそうそういない
だろ?」
なんかこの空気の中に出ていくのは忍びない。
が、言われた事は遂行する。
それが、玲那との契約でもあった。
ギィィィィーーーー。
錆びたドアが軋んで誰かが入ってきたのを知ると声がやんだ。
「あれ?誰かいるのかな?」
すっとぼけながら彰は屋上へときた。
そして奥の手すりまで歩いていく。
さっきまでしていた声の主は舌打ちをしながらドアから帰っていく。
朝のアレはなんだったのだろう。
「あ、き、ら、くーん!」
朝からテンションが上がっている和泉将司が教室に入ってきたの
だった。
朝から野球部の練習があったからか少し汗臭い。
「朝から元気だな~」
「そうそう、聞いてくれよ!夏の選抜に選ばれそうなんだよ!す
げーだろ?」
興奮気味に捲し立てた。
きっと嬉しくて自慢したいのだろう。
「すごいな!甲子園も夢じゃないな!」
「そんな簡単なわけがないだろ?」
後ろから声がして有坂裕が入ってきた。
「甲子園は強豪校を倒さなきゃ無理だろ?うちの高校無名なんだ
ぞ?」
無名の高校の一選抜選手に選ばれたとて、自慢にもならないとは
っきり言われていた。
「お前!夢がねーな!」
「夢は寝て言え!」
「有坂くんって現実主義なんだね?」
「当たり前だろ。まー坊の様に夢は見ない、実力で叶えるタイプ
なんだ」
さすが将棋部の人間だ。
計算高い。
「伊波は部活は決めたか?」
「いや…まだだけど、ちょっと忙しくて…」
「そうか。まぁ、無理にとは言わないが、入っておいた方がいい
ぞ?うちの高校で帰宅部はあまりいないからな」
言われてみれば、誰かは何かの部活に行っている。
元々彰には無縁の事だったので考えもしなかった。
「そう言えば…大西さんってなんの部活入ってるの?」
「はぁ?それも知らねーのかよ!大西さんと言えば…テニス部だ
ろ!」
部活の中ではユニフォームが一番可愛いと言われているからだ。
お嬢様達の間では、テニスは当たり前のスポーツらしい。
「知らなかったのか?大西さんだけじゃないぜ?曽根崎新。あい
つもテニス部なんだぜ?」
「曽根崎…?」
和泉将司が興奮気味に説明してくれていたのを有坂が遮った。
「曽根崎グループといえば、有数のチェーン店を展開している外食
産業で有名ですよ?」
「へ~そうなんだ…」
全く興味がなさそうな返事に有坂が付け加える。
「彼はそこの御曹司なんですよ。兄弟は兄がもう後を継いでいて弟
の彼は問答無用にその事業を手伝う未来ができているんです」
「それって…」
「兄弟としては気に入らないでしょう…社長の席は回ってこないと
いう事ですからね」
「兄弟で仲が悪いのですか?」
「そりゃそうだろ?」
突然割り込んできた和泉が声を荒げる。
「あいつ結構の野心家だからな~。テニス部に入ったのだって目的
があったからだろうしな~」
「目的?」
顎でしゃくると、ちょうど大西玲那が入ってきた。
「大西グループの令嬢と付き合ってそのまま結婚できればって考え
てるんじゃねーの?」
「だろうな…最近では積極的にアピールしてるもんな~」
二人にはそう見えるらしい。
しかし、家ではそんな話は聞いた事はない。
まさか、みんなから見て高嶺の花である大西玲那と一緒に暮らして
いるなんて口が裂けても言えない。
金持ち同士の人間模様は大変なのだな~とその時は思っていたのだ
った。
放課後になってスマホにLINEが入っていた。
『屋上来て』
この一言で彰は何も言わず言われた場所へときていた。
屋上へと続くドアには鍵かかけられていない。
そして何やら話し声が聞こえてきた。
「いいだろ?玲那だって他の有象無象に困ってんだろ?」
「結構よ。私は誰とも付き合うつもりはないの!」
「そういうなって、家だってお前と釣り合う奴なんてそうそういない
だろ?」
なんかこの空気の中に出ていくのは忍びない。
が、言われた事は遂行する。
それが、玲那との契約でもあった。
ギィィィィーーーー。
錆びたドアが軋んで誰かが入ってきたのを知ると声がやんだ。
「あれ?誰かいるのかな?」
すっとぼけながら彰は屋上へときた。
そして奥の手すりまで歩いていく。
さっきまでしていた声の主は舌打ちをしながらドアから帰っていく。
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