偽物の恋

秋元智也

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第七話

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憧れの先輩に付き合って下さいと人生初の告白をした。

もちろん『ふり』でいいのでと。
女子生徒から毎回言い寄られてて困っているのを見ていて、ただ嫉妬
しただけでもある。
冗談のつもりで卒業まで付き合っているという事にすれば先輩に言い
寄る女子は減ると考えて言い出した事だった。

確かに減った。減ったけど…女子からは好奇の目で見られるようにな
った。

「はぁ~」
「どうした?女子の視線が痛いか?」
「う~ん、まぁ~そんなところかな…」
「俺達はずっと味方だからな~」
「うん、ありがと」

少し、しんどいといえば、しんどい。
でも、これで先輩に言いよる女子が少しでも減ってくれればいいな
と思う。

クラスメイトの男子が綾音の前に進み出てきた。

「花園、お前さ~あの、柿崎先輩と付き合ってるって本当か?」

男子からもか…。

「うん、本当だよ!なんで?」
「いや、男同士だろ?…まぁ、花園は可愛いからやっぱり…」
「あっと、気にしないでくれ、ちょっと気になったんだ!これお詫び
 に貰ってくれ!」

そう言ってお菓子を差し出された。
何が聞きたかったのだろう?
まだ、何か言いたそうなクラスメイトを引きずるようにもう一人が
連れの口を塞いだ。
でも、ただで貰えるのなら貰っておこう!

「ううん、大丈夫。ありがとう♪」

笑顔で返事をすると男子達の顔が固まってそのまま教室から出て行っ
てしまった。
何がしたかったのだろう?
後ろから見ていた友人は少し鈍感な花園の肩をポンッと叩くと苦笑い
を浮かべた。

あいつら災難だったな…。と。
真っ赤な顔で出ていった男子達に同情しながら、いつもの様に屋上へ
と向かう。

「あいつらぜって~変な妄想してるだろ?」

田辺は笑いながら弁当を振り回す。
前田は眼鏡を少し上げながら、それを睨んだ。

「どうして?付き合ってるって言ってもただ一緒に帰ったりしてるだけ
 なのに…男子とも気まずいのかぁ~健治と勇太がいてくれてよかった 
 よぉ~」

本当に心から思ったのだった。

「あ!先輩じゃん!」
「本当だ~、先輩~今からお昼ですか?」
「あぁ、って、なんだそのお菓子の山は?」
「それはですね~クラスの男子生徒が餌付けの為に渡してきたんです。
 誰かさんのせいで男子生徒から人気なんですよ?これ、全部男子から
 なんです」

『男子』を強調するように前田は説明した。
すぐに購買でお菓子を買うと、先輩は見せつけるかの様に貰ったものを
取り上げると自分の買ったものを直接食べさせていた。

「これは…」
「もう、言うな…分かってるから」

無言の威圧が友人達に来ていた。
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