コスミックエリビア

フルムーン

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反旗の英雄

反旗の英雄2

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フィルは隙をつき、素早く奥の間へと消えて行く。
まんまと出し抜かれた形となった初老の男は、悔しげな言葉を発しながらも、口元は奇妙に歪んでいた。
隠し通路を抜けた先には小高い丘がある。綺麗で儚げな青白い花が一面に咲き連ね、それはひどく戦場からかけ離れた景色だった。王子はその中央に立って背を向けている。

「覚悟は出来ているか、クライエ王子……」
剣をクライエに向けフィルが呟くも、一向に振り向く気配が無い。

「まさかこんな形で再会するとは思いませんでしたよ。剣聖の後継者、フィル」
どこか憂いを帯びた声で言うと、クライエは振り返る。知的で爽やかな顔は、あの完璧な紳士のようだったあの時のままだ。

「最後に答えろ王子。何故戦いに明け暮れ圧政をしき、民衆を露骨に虐げ始めたのだ」

「フィル……今の貴女と私とでは立場が違います。もう理解しえない位置にいるのです。些末な感情がいくら溢れても、所詮は浮き世の小事。か弱く曖昧な信念を持って生きる人々の一生がどうなろうと虚構と空虚のまつりごとさあいよいよ滑稽なるは愚民の群れ。正義は宙をさ迷い、即ち言葉は悲しき知識と認識の鎖と化す。信じて人は観念の虜となるのです。ああ、それを哀れ極まるが如しと言う……」

「王子は人々を見下している。自分に迎合する者だけにとっての理想郷をつくろうとしている。自由で寛容な世界を何故つくろうとしないんだ!」

「人は臆病で残酷な生き物だと、未だに分からないのですか?  普段は誰しも善人ぶっていますが、自分の意に沿わなければ我先にと本性を表すものです。所詮人間の愛だ友情だというのは個人の妄想に過ぎない。愛があるとするなら全て自己愛に帰結するのです。全ての思考は自分の為だけに存在して、人と人は永久に分かり合えない。私たちもそうであったように。ただあるのは貴女が今やってるように、相手を意のままにしたいエゴだけなんです。ならば私はそれを隠さずに貫く。仮初めの理想郷などと言う妄想に頼らずね」

「時が経てば……人は変わるものだな。あの世界全てを愛していたような王子が……。私の願いは人々の平和にある。つまり、元凶である王子を止めるしかない」
フィルのその言葉にクライエは眉をひそめて言う。
「私が元凶?  そうですね……確かに私を消せば形勢は逆転するかもしれません。なら早く殺せば良い。さあ早く、一思いに!」

そう言いながらクライエは近づき、フィルの剣を握ると、自身の心臓の位置に持ってくる。
しばらくその状況のまま時は過ぎた。

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