5 / 45
追いかけ鬼!※怖い描写注意
薄暗く、寒い秋の風。
光はブルッと震えて、厚手のパーカーのチャックを閉めた。
「(家に帰ろう。こんな暗い場所から離れて、あったかい家でお父さんのオムライス食べよう)」
虚しくて涙が出てくる想いだ。
「あ~あ! バッカみたい」
一人なのにわざと大声を出した。
「ずーっと準備してたのにさ~あははは! 嫌になっちゃう!」
『い・や・になちゃう』
「そうそう! 不思議な友達なんかできるはずないよね~」
『ふ、し、ぎ』
「うん……あはは……えっ……?」
「(一体誰の声……?)」
坂道を歩く光の心臓が嫌な音をたてる。
後ろに何か……いる?
じゅるじゅっるるる
はぁはぁ……
じゅるじゅっるるる……はぁはぁ……。
大きな何かが息をする音が聞こえる。
よだれをすするような気持ちの悪い音。
そしてふわぁっと光の首元を撫でる……臭い臭い生ぬるい風。
何かが腐ったような、排水溝のようなニオイ。
ゾクゾク! と全身に鳥肌が一瞬でできる。
なんだろう……なんだろう……
でも絶対に、振り向いたらいけない。
ガクガクと恐怖で足がもつれそうになる。
これだけは持っていなきゃと、おじいちゃんのステッキだけは! とトートバッグがら出そうとするとビタッと後ろに何かの気配がはっきりわかった。
『お・れ・は・お・に・だぁああああああ』
地の底から唸るような不気味な大声。
「ぎゃあああああ!!」
巨大な鬼の顔!
顔だけの鬼。
牙にはべったり血がついた鬼の顔が、光の背後に現れた!
恐怖で思わずステッキで鬼の顔を殴った瞬間に、光は走り出す。
『待てぇえええええええ』
「ひぃ! いやぁあ!」
転がるようにして光は走る!
追いかけられたら最後だよ
逃げて走ってどこまでも
追いつかれたら食べられる
骨も残さず食べられる
追いかけ鬼に見つかれば
最後死ぬまで追いかけらーれる
あの恐ろしい歌が頭を巡る!
『くでやるぞぉおおぐでやる』
鬼の頭が何か叫んでる!
喰ってやる! と言っているのだ!
「たすけてぇ」
恐怖で声がかすれて、息にしか聞こえなかった。
「(助けて助けて! 誰か助けて!)」
運動神経のよい光は、足も速い。
頭だけで転がってくる追いかけ鬼にも負けずに走る! 走る!
途中で木の根や急な坂道があっても暗闇でも、光は走った。
「そ、そうだ! 神社のなかに!」
神社なら鬼は入ってこられないんじゃ! そう思い光は涙をこらえて走る。
『ぶるぶぶぶじゅああああ! こどものにくぐううう!』
少し開けた神社の場所。
小さな外灯が照らしている。
光の自転車だけがポツンとあった。
もう誰もいない。
「あ、開かない!」
最後の希望だと思っていた、小さなお社は鍵がかかってる!
「だ、だめだ……もう無理……ぃ」
追いかけ鬼の気配を感じて、助けを求めるように小さな鳥居に光はしがみついた。
「(頭から喰われて死んでしまうんだ! こんな、こんなことって……!)」
「お母さんっ! お父さぁああああん!!」
『いだだぐまがぁあああっっすす!!』
いただきますと言った。
巨大な顔がばっぐりと大口を開けて、そのまま光を飲み込もうと、した。
「いやあああああ!」
満月が輝き、光の悲鳴が響く。
一斉に木々が風に吹かれ揺れた。
あなたにおすすめの小説
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
【完結】またたく星空の下
mazecco
児童書・童話
【第15回絵本・児童書大賞 君とのきずな児童書賞 受賞作】
※こちらはweb版(改稿前)です※
※書籍版は『初恋×星空シンバル』と改題し、web版を大幅に改稿したものです※
◇◇◇冴えない中学一年生の女の子の、部活×恋愛の青春物語◇◇◇
主人公、海茅は、フルート志望で吹奏楽部に入部したのに、オーディションに落ちてパーカッションになってしまった。しかもコンクールでは地味なシンバルを担当することに。
クラスには馴染めないし、中学生活が全然楽しくない。
そんな中、海茅は一人の女性と一人の男の子と出会う。
シンバルと、絵が好きな男の子に恋に落ちる、小さなキュンとキュッが詰まった物語。
魔法少女はまだ翔べない
東 里胡
児童書・童話
第15回絵本・児童書大賞、奨励賞をいただきました、応援下さった皆様、ありがとうございます!
中学一年生のキラリが転校先で出会ったのは、キラという男の子。
キラキラコンビと名付けられた二人とクラスの仲間たちは、ケンカしたり和解をして絆を深め合うが、キラリはとある事情で一時的に転校してきただけ。
駄菓子屋を営む、おばあちゃんや仲間たちと過ごす海辺の町、ひと夏の思い出。
そこで知った自分の家にまつわる秘密にキラリも覚醒して……。
果たしてキラリの夏は、キラキラになるのか、それとも?
表紙はpixivてんぱる様にお借りしております。
異世界転移が決まってる僕、あと十年で生き抜く力を全部そろえる
谷川 雅
児童書・童話
【第3回きずな児童書大賞 読者賞受賞作品】
「君は25歳の誕生日に異世界へ飛ばされる――準備、しておけよ」
そんなリアルすぎる夢を見たのは、中学3年・15歳の誕生日。
しかも、転移先は「魔法もあるけど生活水準は中世並み」、しかも「チート能力一切なし」!?
死ぬ気で学べ。鍛えろ。生き抜け。
目指すのは、剣道×農業×経営×工学を修めた“自己完結型万能人間”!
剣道部に転部、進学先は国立農業高校。大学では、園芸、畜産・農業経営・バイオエネルギーまで学び、最終的には油が採れるジャガイモを発見して学内ベンチャーの社長に――
そう、全部は「異世界で生きるため」!
そしてついに25歳の誕生日。目を覚ますと、そこは剣と魔法の異世界。
武器は竹刀、知識はリアル、金は……時計を売った。
ここから始まるのは、“計画された異世界成り上がり”!
「魔法がなくても、俺には農業と剣がある――」
未来を知る少年が、10年かけて“最強の一般人”になり、異世界を生き抜く!
※「準備型転移」×「ノンチートリアル系」×「農業×剣術×起業」異色の成長譚!
【完結】森の中の白雪姫
佐倉穂波
児童書・童話
城で暮らす美しいブランシュ姫。
ある日、ブランシュは、王妃さまが魔法の鏡に話しかけている姿を目にしました。
「この国で一番美しく可愛いのは誰?」
『この国で一番美しく可愛いのは、ブランシュ姫です』
身の危険を感じて森へと逃げたブランシュは、不思議な小人たちや狩人ライと出会い、楽しい日々を送ります。
【奨励賞】氷の王子は、私のスイーツでしか笑わない――魔法学園と恋のレシピ【完結】
旅する書斎(☆ほしい)
児童書・童話
【第3回きずな児童書大賞で奨励賞をいただきました】
魔法が学べる学園の「製菓科」で、お菓子づくりに夢中な少女・いちご。周囲からは“落ちこぼれ”扱いだけど、彼女には「食べた人を幸せにする」魔法菓子の力があった。
ある日、彼女は冷たく孤高な“氷の王子”レオンの秘密を知る。彼は誰にも言えない魔力不全に悩んでいた――。
「私のお菓子で、彼を笑顔にしたい!」
不器用だけど優しい彼の心を溶かすため、特別な魔法スイーツ作りが始まる。
甘くて切ない、学園魔法ラブストーリー!
オバケの謎解きスタンプラリー
綾森れん
児童書・童話
第3回きずな児童書大賞 奨励賞をいただきました! ありがとうございます!
――七不思議を順番にめぐると、最後の不思議「大階段踊り場の鏡」に知らない自分の姿が映るんだって。
小学六年生の結菜(ユイナ)が通う三日月(みかづき)小学校では、そんな噂がささやかれていた。
結菜は難関中学に合格するため、塾の夏期講習に通って勉強に励んでいる。
だが一方で、自分の将来にひそかな期待と不安をいだいてもいた。
知らない自分を知りたい結菜は、家族が留守にする夏休みのある夜、幼なじみの夏希(ナツキ)とともに七不思議めぐりを決意する。
苦労して夜の学校に忍び込んだ二人だが、出会うのは個性豊かなオバケたちばかり。
いまいち不真面目な二宮金次郎のブロンズ像から、二人はスタンプラリーの台紙を渡され、ルールを説明される。
「七不思議の謎を解けばスタンプがもらえる。順番に六つスタンプを集めて大階段の鏡のところへ持って行くと、君の知らない君自身が映し出されるんだ」
結菜と夏希はオバケたちの謎を解いて、スタンプを集められるのか?
そして大階段の鏡は二人に何を教えてくれるのか?
思春期に足を踏み入れたばかりの少女が、心の奥底に秘めた想いに気付いてゆく物語です。
