10 / 45
おはよう悪魔王子
しおりを挟む悪魔王子と出逢って、悪魔王子が家に来た夜……の次の日。
昨日は疲れて疲れて、とりあえず自分の部屋で寝た光。
怖い夢や楽しい夢を見て、あぁあれは夢だったんだ! と思っていたが……。
「おはよう光! 良い夢見れたかい??」
今日も朝からエプロン姿のお父さん。
いい香り。
パンの焼ける匂い、卵の焼ける匂い。
ココアの匂い。
「おはようお父さん~~(あぁ……やっぱり昨日のは夢……)」
「おはよう光! おじさんのハムエッグ、すごく美味しいよ!!」
朝日が差し込むリビングで、ハムエッグとトーストを頬張る麻那人こと悪魔王子。
「(ガーーーン!! 夢じゃなかった……)」
嬉しそうに微笑む麻那人と、反対にユラユラと幽霊のように落ち込む光。
「光は目玉焼き? ハムエッグ? どっちにする?」
お父さんは今日もニコニコだ。
「……目玉焼き……お願い」
「了解♪」
「へぇ~人間も、物騒なもの食べるんだね」
「なにを想像してるわけっ? 目玉焼きってこういうの!」
お父さん特製の目玉焼きは、半熟で黄身が二つ。
それに醤油をかけて、ご飯と食べるのが光は大好きだ。
一緒に焼いてもらったベーコンも絡めると、朝からおいしさ天国!
「むっふ~美味しい~~」
光の幸せそうな顔を見て、麻那人は興味津々のようだ。
「美味しそうだね! 僕も次はそれを作ってもらおう~♪」
「もう~~ほんっと、調子がいいんだから……」
「うわぁこの泥水みたいなの、美味しいなぁ」
「ココアっていうの!」
麻那人は何もかもが初めてのようで、ココアも嬉しそうに飲む。
嬉しそうに歯ミガキをして、身支度を整え、ランドセルを背負う。
「どうだい?」
黒光りする、かっこいいランドセルに麻那人はご機嫌だ。
昨日とは違う、シャツに棒タイに、ズボン。
確かに、すごく似合っているけど……。
「い、一緒に行くの?」
「うん♪ 学校の場所、知らないし」
「先日、ご挨拶に行ってるけどよろしく頼むよ光」
「えっ!? あ、う、うん(挨拶なんてしてるわけない……絶対、さいみん術だ!)」
お父さんに見送られて二人で小学校へ向かう。
光はどんよりだが、麻那人は鼻歌を歌っている。
しかし、ふと足を止めた。
「どしたの?」
「……この町……不思議だ」
「え?」
朝の爽やかな風に吹かれて、それなのに麻那人は少し顔をしかめた。
「ここの町は、怪異が起こりやすいね」
「怪異……」
怪異、とは不思議で異様なこと。
お化けや妖怪……悪魔なんかをいう言葉でもある。
「そうですのぅ……さすが王子でございます」
「え? どっから声が? あ! まんじゅう悪魔おじさんが、ランドセルにキーホルダーになって付いてる!」
麻那人のランドセルに、ぶら下がっていたキーホルダー!
大きな目がこっちを見た。
「誰がまんじゅうじゃ!」
「い、言ってないよ!」
言ったけど……。
誤魔化そうと、さっきまでの話に光は戻す。
「この町が怪異が起こりやすいって……?」
「うん、たとえば『追いかけ鬼』もふつうなら、あんな人をおそうレベルにはならない。でもこの町では実体化してしまう」
「えぇ? なんで……?」
「よどみやけがれがたまりやすい性質なのか……答えはわからない。僕が誘われたのも、この町のそういう気質ゆえ、なのかな……」
「ふーん?」
「あの、ステッキは持ってきたかい?」
「あ……おじいちゃんの? うん、麻那人が言うから……学校で見つからないようにしないと」
「大丈夫さ。それを身に着けていないと……危ないよ」
「ま、またそういう事を言う~~」
おじいちゃんの赤い石がついたステッキ。
麻那人から、それを学校にも持っていくように言われたのだ。
「この町の小学生達は、大変だなぁ。くくく」
光は気付いていなかったが、自動販売機の下から伸びる長い白い手。
麻那人はわざとに、思い切り踏んづけたのだった。
白い手は飛び上がって痛がり、消えた。
0
あなたにおすすめの小説
14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート
谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。
“スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。
そして14歳で、まさかの《定年》。
6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。
だけど、定年まで残された時間はわずか8年……!
――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。
だが、そんな幸弘の前に現れたのは、
「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。
これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。
描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。
独占欲強めの最強な不良さん、溺愛は盲目なほど。
猫菜こん
児童書・童話
小さな頃から、巻き込まれで絡まれ体質の私。
中学生になって、もう巻き込まれないようにひっそり暮らそう!
そう意気込んでいたのに……。
「可愛すぎる。もっと抱きしめさせてくれ。」
私、最強の不良さんに見初められちゃったみたいです。
巻き込まれ体質の不憫な中学生
ふわふわしているけど、しっかりした芯の持ち主
咲城和凜(さきしろかりん)
×
圧倒的な力とセンスを持つ、負け知らずの最強不良
和凜以外に容赦がない
天狼絆那(てんろうきずな)
些細な事だったのに、どうしてか私にくっつくイケメンさん。
彼曰く、私に一目惚れしたらしく……?
「おい、俺の和凜に何しやがる。」
「お前が無事なら、もうそれでいい……っ。」
「この世に存在している言葉だけじゃ表せないくらい、愛している。」
王道で溺愛、甘すぎる恋物語。
最強不良さんの溺愛は、独占的で盲目的。
転生妃は後宮学園でのんびりしたい~冷徹皇帝の胃袋掴んだら、なぜか溺愛ルート始まりました!?~
☆ほしい
児童書・童話
平凡な女子高生だった私・茉莉(まり)は、交通事故に遭い、目覚めると中華風異世界・彩雲国の後宮に住む“嫌われ者の妃”・麗霞(れいか)に転生していた!
麗霞は毒婦だと噂され、冷徹非情で有名な若き皇帝・暁からは見向きもされない最悪の状況。面倒な権力争いを避け、前世の知識を活かして、後宮の学園で美味しいお菓子でも作りのんびり過ごしたい…そう思っていたのに、気まぐれに献上した「プリン」が、甘いものに興味がないはずの皇帝の胃袋を掴んでしまった!
「…面白い。明日もこれを作れ」
それをきっかけに、なぜか暁がわからの好感度が急上昇! 嫉妬する他の妃たちからの嫌がらせも、持ち前の雑草魂と現代知識で次々解決! 平穏なスローライフを目指す、転生妃の爽快成り上がり後宮ファンタジー!
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
オバケの謎解きスタンプラリー
綾森れん
児童書・童話
――七不思議を順番にめぐると、最後の不思議「大階段踊り場の鏡」に知らない自分の姿が映るんだって。
小学六年生の結菜(ユイナ)が通う三日月(みかづき)小学校では、そんな噂がささやかれていた。
結菜は難関中学に合格するため、塾の夏期講習に通って勉強に励んでいる。
だが一方で、自分の将来にひそかな期待と不安をいだいてもいた。
知らない自分を知りたい結菜は、家族が留守にする夏休みのある夜、幼なじみの夏希(ナツキ)とともに七不思議めぐりを決意する。
苦労して夜の学校に忍び込んだ二人だが、出会うのは個性豊かなオバケたちばかり。
いまいち不真面目な二宮金次郎のブロンズ像から、二人はスタンプラリーの台紙を渡され、ルールを説明される。
「七不思議の謎を解けばスタンプがもらえる。順番に六つスタンプを集めて大階段の鏡のところへ持って行くと、君の知らない君自身が映し出されるんだ」
結菜と夏希はオバケたちの謎を解いて、スタンプを集められるのか?
そして大階段の鏡は二人に何を教えてくれるのか?
思春期に足を踏み入れたばかりの少女が、心の奥底に秘めた想いに気付いてゆく物語です。
図書室はアヤカシ討伐司令室! 〜黒鎌鼬の呪唄〜
yolu
児童書・童話
凌(りょう)が住む帝天(だいてん)町には、古くからの言い伝えがある。
『黄昏刻のつむじ風に巻かれると呪われる』────
小学6年の凌にとって、中学2年の兄・新(あらた)はかっこいいヒーロー。
凌は霊感が強いことで、幽霊がはっきり見えてしまう。
そのたびに涙が滲んで足がすくむのに、兄は勇敢に守ってくれるからだ。
そんな兄と野球観戦した帰り道、噂のつむじ風が2人を覆う。
ただの噂と思っていたのに、風は兄の右足に黒い手となって絡みついた。
言い伝えを調べると、それは1週間後に死ぬ呪い──
凌は兄を救うべく、図書室の司書の先生から教わったおまじないで、鬼を召喚!
見た目は同い年の少年だが、年齢は自称170歳だという。
彼とのちぐはぐな学校生活を送りながら、呪いの正体を調べていると、同じクラスの蜜花(みつか)の姉・百合花(ゆりか)にも呪いにかかり……
凌と、鬼の冴鬼、そして密花の、年齢差158歳の3人で呪いに立ち向かう──!
突然、お隣さんと暮らすことになりました~実は推しの配信者だったなんて!?~
ミズメ
児童書・童話
動画配信を視聴するのが大好きな市山ひなは、みんなより背が高すぎることがコンプレックスの小学生。
周りの目を気にしていたひなは、ある日突然お隣さんに預けられることになってしまった。
そこは幼なじみでもある志水蒼太(しみずそうた)くんのおうちだった。
どうやら蒼太くんには秘密があって……!?
身長コンプレックスもちの優しい女の子✖️好きな子の前では背伸びをしたい男の子…を見守る愉快なメンバーで繰り広げるドタバタラブコメ!
異世界子供会:呪われたお母さんを助ける!
克全
児童書・童話
常に生死と隣り合わせの危険魔境内にある貧しい村に住む少年は、村人を助けるために邪神の呪いを受けた母親を助けるために戦う。村の子供会で共に学び育った同級生と一緒にお母さん助けるための冒険をする。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる