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ラーとの思い出
光が話し始めようとすると、ファルゴンが出てきた。
光はファルゴンにも、アイスを渡す。
「ラーとは保育園が一緒でね。そのころは『魔法少女リンピー』っていうアニメがすっごく流行ってたんだ」
「面白そうだね」
「うん。私はもともと魔術や魔法が大好きでしょ。それを使って闘うなんて好きになるに決まってるもん! だから家で一人で毎日リンピーのマネしてた」
「一人でかい?」
意外そうに、麻那人が聞く。
「みんな大好きだから私も好き! って言えば良かったのにね! でも私はさぁ、外遊びやボール遊び、鬼ごっこばっか遊んでたから、恥ずかしかったんだ。だから、こっそり好きでいたんだけどね。ある日ラーが『あなたも好きなの?』って聞いてきたんだ」
リンピーの絵本を読んでいたら、後ろから声をかけられた。
すぐ思い出せる、あの時のラーの嬉しそうな顔。
光も嬉しくて『うん!』って言った。
ラーはその頃から可愛いと有名な女の子で、ちょっと女の子達から仲間外れにされる事もあったようだった。
光は男子も女子も誰とでも遊ぶ子だったので、 ラーは光に声をかけたようだ。
二人はすぐに、仲良しになった。
『マージカル! リンピー! ファイヤーーーダンス!』
『マージカル! フェンリー! サンダーアロー!!』
『かっこいいね!』
『かっこいいわ!』
ラーは主人公の、『炎の魔法少女リンピー』が大好き。
光はリンピーの親友で『雷の魔法少女フェンリー』が大好きだ。
だから喧嘩もせずに、保育園の庭でいつも二人でごっこ遊びをした。
小学校に入ってからも、仲良しだと思っていた……。
でも、ラーもモデルの仕事を本格的に始めて……。
少し話が合わなくなってきたかもしれない、と思った事はあった。
「……でも大事な友達だよ……」
たくさん笑って、たくさん楽しい思い出がある。
自分がわかっている事はラーも当然にわかってると思って『できないなら、私やっておく』って言った事が何回かあったかも、と頭でグルグル思い出している。
それはラーにとって、くやしい事だったかもしれない。
きっとお互いに、ごかいがある、と光は思う。
「素敵だね」
「え?」
「魔界ではさぁ~大事な友達って言える悪魔と出逢えることなんか、なかなかないよ」
「そうなの?」
「そうだよ。仲良くなるってすごいこと」
「……それは、悪魔でも人間でもすごいことかも」
「僕もそう思うよ」
麻那人が優しく微笑んで、光もなんだかホッとして微笑んだ。
「話せばきっと、わかってくれるよ」
「そうだね……話をきちんとしなきゃ……私に悪いとこあるなら謝らないとね。麻那人はリーダーやりたい?」
「我らが悪魔王子! 麻那人様こそ! 全てのリーダーにふさわしいのであーる!」
ファルゴンが天井をグルグル回る。
「ファルゴン、僕はそういうしがらみから逃げてきたんだけどなぁ」
麻那人は苦笑いした。
「(しがらみ……?)それも多数決で決めようか。学校みたいに」
「多数決かぁ。興味ある」
顔を見合わせて、フフッと笑った。
一人だったら、ずっとモヤモヤしていたかもしれない。
「ありがとう麻那人」
「僕は何もしていないけどね」
そんな事を言う人は、光にとっては麻那人が初めてだった。
なんだかカッコよくて、くやしい気持ち。
くやしいのに、うれしい、変な気持ちだった。
「ねぇ、麻那人。今日の飴、美味しかったね」
「うん。あれは守護結界の飴さ」
「しゅごけっかい……?」
「光のお友達も、魔術クラブに入るだけあって、ちょっと狙われやすいニオイをしていたからね」
「え、そうなの?」
「でも、大丈夫さ。ちょっとだけ。平均50点のところ65点くらいなだけかな~」
「それでは大したことではござりませんのぉ~~それなのに優しさあふれる魔法王子様! 好きぃ!」
麻那人にキッスしようとするファルゴン。
それを麻那人が、優しく手でハッキリ拒絶した。
「じゃあ今は、みんな50点で狙われない?」
不安そうな光に、麻那人は頷く。
「うん」
その時、ファルゴンが真四角のスマホ型になって『ピロロン』と音がした。
「あ、メールだね。ファルゴン読み上げて」
まるで人工知能のようにファルゴンがピキーン! となって読み上げ始めた。
『メール一件。 蘭子ちゃん。
麻那人君、今日は楽しかった! 飴ありがとう~美味しかったね』
ラーからだ! と光は思う。
「……こんな話、私聞いてもいいのかなぁ?」
「いいんじゃない?」
『あのねー体育着袋なんだけど、光の持って帰ってきていたのよ! 今日ね、体操着を新しいのに買い替えましょうか? ってお母さんに言われて、ためしに着てみたら光のだったのよ~最悪! 明日持ってきてって言ってくれる?』
「えっ……ほんと!?」
びっくりしたその時、お風呂場のお父さんが『光~これ蘭子ちゃんの体操着袋だよ~』と叫んだのが聞こえた。
「ラーとはお揃いの体操着袋なんだ。魔法少女っぽいけどオシャレって、二人だけで決めた柄。お父さんがぬってくれたんだ」
それは三年生の時の話なんだけど……。
ラーはそんな思い出も、わすれちゃったかな……。
『伝えてくれると助かりまーす。これからお兄ちゃんと愛犬のマシュマロの散歩に行ってきまーす 添付ファイルあり』
ファルゴンが画面を見せてくる。
可愛いトイプードルの写真だ。
「(そういえば……ラーは、夜はお兄ちゃんと犬の散歩に出かけるのが、日課なんだって言ってた)」
そんなことを思った光だったが、悪魔王子の麻那人は今まで見たことがないくらい緊張した顔をする。
「……まずいな……」
ビリリっと光の胸にも嫌な予感がよぎった。
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