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ラー絶体絶命!光のヒカリ!
暗い川岸のサイクリングロード。
ラーに迫る追いかけ鬼!!
「ひ……ひぃ……!?」
お兄ちゃんのスマホを持ったまま後ずさりしたラーだったが、恐怖で尻餅をついてしまう。
『んがぁあ……おまえ……んんん』
子ども一人なら丸呑みしそうな、大きな口。
巨大な目が2つギョロギョロして、大きなツノが額から出てくる。
以前にラーがモデル仕事で取材に行った、秋田県の『なまはげ』のようだった。
その顔を不思議そうに、その鬼はくるくる360度まわす。
巨大な目と口がぐるぐる回って、恐ろしい絵面だった、
『おまえぇええ、あのガキィ、ちがうぅうううう』
「ひぃ……ち、ちが……ちが……」
涙を流しながらラーは『違う』と繰り返した。
誰かと間違えている!?
こんな化け物に、私が襲われるなんておかしい!
そう思いながらも、もうそれだけ言ったらラーは恐怖で声も出ない。
震えて震えて、スマホなんかどこかに行ってしまった。
これは『追いかけ鬼』なのか!?
あの魔術クラブで、一緒に話をしていたら撃退する方法がわかったかもしれない。
「ち……が……う……」
絞り出すような自分の声が聞こえた。
恐怖で声が全然出なくて、やっと出た声はため息のようだ。
私は違う。
どうかわかって……! どっか行って!! と祈る思いだった。
『まぁいいがぁ……いだだぐまがぁあああっっすす!!』
ラーにも光と同じように、追いかけ鬼が『いただきます』と言ったのがわかった。
何もない普通の夜だったのに、光に謝ることもできなかった……ママ! パパ!
ラーは叫ぶこともできずに、自分の身を守るように縮こまった。
きっと、あの牙にかみ砕かれて、死んでしまうんだ……!
……。
…………。
しかし数秒経っても、身体に痛みはない。
しっかりつむっていた瞳を、うっすら開ける。
「あぁ!?」
ラーと追いかけ鬼の間に、光と麻那人が立ちはだかっていた。
「ひ、光……!?」
「ラー! 大丈夫!?」
「う、うん……」
「間に合って良かった!」
「よし! 光、第三の魔法を君に付与しよう」
「へぇ!? 麻那人どういうこと!? 私に!?」
「そうだ。君がやっつけろ!」
ラーには二人の会話は、あまりよく聞こえていなかった。
ただ、光が助けに来てくれたことだけわかったのだった。
「大丈夫かい? 助けに来たよ」
麻那人が、ラーを庇うようにして抱き上げる。
そんな王子様のような行動をされても、ラーは光を見ていた。
追いかけ鬼に、立ち向かっているのは光だ。
おじいちゃんにもらったという紅い宝石のステッキ。
とっても、とっても羨ましかった。
「光……」
「あんた! 私の友達に何してくれてんのぉ!?」
「光……!」
真っ暗だった川岸に、真っ黒な存在の追いかけ鬼。
その中でキラキラと光り輝く存在の光。
光がラーを襲った、追いかけ鬼に叫んでいる。
友達を襲った追いかけ鬼に怒っている。
何もわからない状況でもラーにはそれが、わかった。
友達のために、光はラーを助けに来てくれたのだ。
『ぐでやるぞぉおおおおお』
追いかけ鬼は光に牙を剥く!!
「光! 危ない!」
ラーが叫んでも、光は逃げない!
「許さない! 悪の化身よ! 散れ! サンダァアアアア! アロー!!!」
ビュンビュンとステッキを振り回して、光は叫んだ。
「! その技……! マジカルフェンリー……!!」
光が叫ぶと、ズガーン! と追いかけ鬼の巨大な頭に雷が落ちた。
黒い液体が詰まった風船を潰した時のように、ブシャアアと弾け飛ぶ。
ヘドロのような腐った臭い。
怖い思いも、震えも、死ぬかと思っていた気持ちも。
弾け飛んでいく。
「ラー!! 大丈夫!?」
「光!」
抱き上げていたラーを、麻那人が降ろすと、駆け寄った光にラーは泣きながら抱きついた。
「わぁああ、怖かった。光、光……! ごめんね、ごめんなさい……わあああ」
ラーも光も一緒に遊んでいた頃も思い出して、もっと涙が出てきた。
「ラー、私もごめん、ごめんね……」
光とラーは抱き合って、ワンワン泣いて何度も何度も謝った。
そんな姿を見て、ふぅ~と微笑む麻那人。
「なんだぁ……? なにやってんだよ? ラー? あれ、光ちゃん……??」
ラーのお兄ちゃんが、マシュマロを抱っこして戻ってきた。
女の子が二人、抱き合って泣いているのを見て困惑している。
お兄ちゃんのスマホの画面は割れて地面に落ちていたけど、麻那人はそれよりも……。
飛散した追いかけ鬼のけがれを、手で掴もうとした。
普通ならべチャリと、手のひらに怪異のけがれが残るはずだが……。
「麻那人様……?」
暗闇にまぎれて、麻那人の耳元でファルゴンがささやく。
麻那人の手のひらには、何かのうごめく文字が流れて消えていった。
「……あの追いかけ鬼は創られた存在だ」
「……まさか、あれだけの存在を創り出せるものなど……」
麻那人の言葉にファルゴンが驚く。
「普通なら、いないよねぇ。……新生魔術クラブの使命は重たいみたいだ」
麻那人は微笑み、泣いている二人を見つめた。
いつの間にか、夜空に星がきらめいていた。
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