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一年生の女の子からの情報
なかなか情報もないまま、数日が過ぎた。
今日の四時間目は、一年生から六年生までの縦割りグループでの交流授業。
昔遊びを習う時間だった。
楽しくみんなで先生の説明を聞く。
最後の十五分は道具を借りて好きな遊びをする自由時間になって、体育館でそれぞれが遊び始めた。
『追いかけられたら最後だよ♪
逃げて走ってどこまでも♪
追いつかれたら食べられる♪
骨も残さず食べられる♪
追いかけ鬼に見つかれば♪
最後死ぬまで追いかけらーれる♪』
誰かが追いかけ鬼の歌を歌うと、リズムが良いので皆が歌い始める。
光のいたグループの子も歌い始めたが、隣にいた一年生の女の子が光の手を握った。
「……怖い……」
ぎゅっっと握る強さに、怖さがにじみ出ている。
「大丈夫? みんな~~! 怖い子がいるから、歌うのやめてあげて!」
せっかく歌ってたのに、と言う子もいた。
でも六年生が違う数え歌を歌い始めて、みんなその歌を歌いだした。
「もう大丈夫だよ」
「ありがとう、お姉ちゃん」
光の声に、女の子はホッとしたように笑った。
「……君、追いかけ鬼が怖いの……?」
光の隣にいた麻那人が聞くと、女の子はうなずいた。
「うん……だって追いかけ鬼を見た事あるから……怖いんだもん」
光と麻那人は『目撃者だ!?』と顔を見合わせる。
「どこで見たの……?」
光が聞いた。
「みんな信じないもん」
女の子は言う。
「僕は信じるよ」
「私も信じる」
麻那人も光もはっきり言った。
「本当に?」
「あぁ。本当だよ、だからどこで見たのか教えてほしいな」
「桜まつりの時……」
「裏山の桜まつり?」
「うん、公園のね一番奥のフェンスの奥からずっとこっちを見てたの……暗いところに大きな顔だけの鬼が……」
女の子は怯えた顔をする。
「ごめんね、ちょっと怖いかもしれないけど……この鬼?」
今日はズボンの光がポケットから追いかけ鬼の似顔絵を取り出して、見せた。
まわりはみんな、メンコやお手玉に夢中だ。
「わっ! そう! 怖いよぉ……」
「今はもう大丈夫だよ。何日の何時か覚えてる?」
「ん~お祭りの日曜日。夕日が終わって暗くなった頃だよ」
お祭の期間はあとで調べばわかるだろう。
「その時、鬼は何もしなかった?」
「うん、私が泣いたから、みんなで車で帰ったよ」
「そっか……怖かったね。もう絶対大丈夫だからね」
「うん、ありがとう」
「(こんな小さい子まで怖がらせて、絶対に許せない!)」
光は追いかけ鬼の犯人への怒りがどんどん大きくなっていくのを感じる。
「じゃあ、おはじきで遊ぼう! それともお手玉?」
追いかけ鬼のことなど忘れるように、光は元気に言った。
「えっとね、お手玉!」
女の子も元気に言う。
怖い思いを忘れさせようと、光と麻那人は女の子と楽しく遊んだ。
「お兄ちゃん、かっこよくて王子様みたい」
「ふふ、また遊ぼうね」
麻那人はすっかり女の子に懐かれたようだった。
それから放課後、ルルと麻那人と三人。
今日は図書室と隣のふれあいルームが放課後開放日なので、会話のできるふれあいルームにやってきた。
「3月の日曜日……日の入りは夜の六時半くらいかな」
わかった事をノートにルルが書いてくれる。
「さくら祭りってどんな祭り?」
知らない麻那人が聞く。
「裏山の公園のあたりが桜の木があるからお花見スポットなんだ。ちょっとだけ縁日とライトアップがされるんだよ。でもこのフェンスの方は桜がないから明かりもなくて暗いはず」
光は裏山が大好きなので、すぐに思い浮かぶ。
裏山の公園はより上にある神社の方にサッカーボールなどが飛んでいかないように、フェンスがある。
その先は林だ。
神社へは、脇道の細い石階段か横のスロープを登っていく。
「あの子が襲われなくてよかった……」
ルルがホッとした顔で言う。
一年生の女の子はルルも知っているようだった。
「あの子はタイミングが合わなかったから襲われなかったの?」
光が言った。
「そう。蘭子ちゃんの時に、時計の文字盤と、秒針と、分針が合わさった時に、怪異は起きるって言っただろう?」
麻那人が小さな声で言った。
「うん」
「いつでもどこでも起きるものじゃない。でも、この界隈に出る追いかけ鬼は、釣り針を垂らしている。……引っかかる獲物を探しているんだ」
ゾクッと、光もルルもした。
「女の子は、釣り針を垂らされていたけれど……家族に守られていた。釣り針には引っかからなかったんだ」
「もしも……気付かなくて、暗い方に一人で行ってたら……」
「それは、怖い事になっていただろうね」
麻那人の言葉が恐ろしい。
「どうして、そんな事するの?」
恐怖で震えるルルはまだ、犯人が『人間』と思っているのかもしれない。
「人間の子供の恐怖は、力になるんだよ」
「「え?」」
「子どもの恐怖や絶望感を、喰ってるやつがいるんだ」
「えぇ」
さすがの光も驚いた。
「じゃあ……犯人は……」
ルルが麻那人に聞いた。
「十中八九、悪魔だね」
そう、追いかけ鬼を創っているのは人間じゃない。
悪魔だと……。
駄菓子屋でいつも麻那人が支払う子供のワクワク、楽しさの気持ち。
それと同じように、子供の恐怖心を餌にしている悪魔がいる……。
「僕はそんな悪魔は嫌いだな」
「うん、私もそう思う」
光だって許せない。
「子供を泣かせて喜ぶなんて……最低だよね」
いつも優しく微笑む麻那人の瞳に怒りが見えた。
「うん……じゃあどうするの?」
「釣り針を、こっちから引っ張ってやろう」
麻那人の目が、悪魔王子の目がギラッと光り輝いた。
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