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ラーのSNSとリィの陸上クラブ
祭の準備は、色々進んでいる。
まずは学校や裏山の歴史を調べる事から始まるが、光と麻那人は学校と裏山の模型作りなので小林先生とクラスのみんなで写真を撮りに外に出た。
「此処の裏山はなぁ、色々と伝説があるんだよな」
小林先生が言う。
「どんな伝説ですか?」
「悪い悪魔を偉い人がバーン! とこの山を作ってドーン! と封じ込めたとかね」
小林先生の話はとても大ざっぱだ。
「私も聞いた事あるけど……本当かな?」
光が麻那人に聞く。
「確かにこの場所は、この街の中でも特に不思議な場所ではあるね。色々なものが発生しやすい……うん、不思議だ」
「(麻那人も発生したもんな……)」
そして追いかけ鬼を生み出す犯人も、追いかけ鬼も発生した。
追いかけ鬼が裏山付近で目撃されるのは、そういう理由なのだろう。
教室に戻って、先生が写真をパソコンに入れてくれた。
写真やインターネットの航空図をみんなで見ながら、設計図を書く。
「ふぅん……面白いね」
麻那人が、航空図を見ながら呟いた。
「どしたの?」
こっそり光が麻那人に聞く。
「この学校も色々計算されている造りっぽいな……」
「ど、どういうこと?」
「配置、方角、形……色々とね」
「それって、悪い事?」
「うーん、悪い事と良い事って裏表でさ。光と影。君達子どもも元気になるけど、僕達みたいな存在も元気になる……ふふ」
「えぇ!」
「でもその周りに結界のようなものが張ってあるから、子どもに危害を加えるような悪いものは入ってこれないね」
「そ、そうなんだ……それはすごく安心」
追いかけ鬼も学校には入ってこないということだ。
そんなふうに守られているなんて気が付かなかった。
「この学校を創った人に会ってみたいよ」
楽しそうに麻那人は笑う。
この眠子寝子小学校は、とっても古い。
来年から、校舎の改装工事が始まる予定だ。
「この校舎も利用させてもらおう」
麻那人のつぶやきに、何故か光はゾクッとしてしまった。
◇◇◇
昼休み。
「ねぇ~光、麻那人君。ちょっと話を聞いて」
ラーが困った顔で二人に話しかけてきた。
「どうしたの?」
「私のSNSね、マネージャーさんとお母さんにも見てもらってるんだけど……この前、ちょっと『追いかけ鬼って流行ってるんだって都市伝説てやつかな?』って一眼レフで撮った取材先の神社の写真と一緒にアップしたら『追いかけ鬼って流行ってるんだってね俺はラーちゃんの追いかけ鬼だよ。追いかけ鬼に興味ない?DM待ってるよ☆』って書き込みがあったの」
ラーはモデルの仕事をしているので、日々の生活をSNSにあげているのだ。
「えぇ!?」
光はSNSをした事がないので、よくわからない。
「もしかしたら、犯人……? DMしてみる?」
ラーは迷っているようだ。
光は麻那人を頼るように見てしまう。
「いや、それは危ない人だと思うから、マネージャーさんとお母さんに聞いて絶対に自分からダイレクトメールしたりしちゃダメだよ」
麻那人はピシャリと言い切った。
「そ、そっか。わかった」
「悪魔や妖怪も怖いけど、悪い人間もすごく怖いね。子どもをそうやって誘ってくる大人には、絶対に近づいたらいけないよ」
「うん、ありがとう。麻那人君ってやっぱり頼りになる! すごくかっこいい!」
「そんな事ないさ」
ラーのウインクにも、麻那人は照れもしない様子で微笑む。
「ねぇ、蘭子ちゃんってカメラは持っているの?」
「カメラ? うん、私モデルだけど撮るのも好きでね。一眼レフで撮った写真をSNSにアップしてるの」
「フラッシュを焚いて?」
「そうよー夜の写真もキレイに撮れるの」
今回も神社の写真だったように、ラーは自撮りだけではなく自分で撮影した写真も載せているようだった。
「そうなんだ。今度詳しく教えて」
「もちろんよ! じゃあ今度、放課後ね!」
ラーはまるで麻那人とのデートでも決まったかのように、飛び跳ねて自分の作業に戻っていった。
「麻那人はSNSにも詳しいの? すごいね」
「詳しくはないけれど、悪い奴らの考えることなんかすぐにわかるのさ」
『だって僕は悪魔王子だからね』とでも言いたそうな笑顔だった。
「ねぇ! 聞いてよー」
ラーの次にやってきたのはリィだ。
「陸上クラブのさ代表になれたんだよね! 短距離走の!」
リィの所属する陸上クラブは放課後、週に何度か練習もあって大会にも出場する特殊クラブだ。
空太のサッカークラブも同じである。
「わー! すごいね! おめでとう!」
光も嬉しくて拍手した。
「おめでとう」
麻那人も言う。
「えへへ、ありがとうー!」
「梨香ちゃんってどのくらい足が速いの?」
麻那人が聞く。
「あは、梨香ちゃんなんて呼ばなくてリィでいいよ。放課後見に来る? 今日も陸上クラブは練習があるんだ」
「うん、見てみたいな」
「じゃあ私も行くー!」
麻那人と光が喜んで頷く。
「オッケー! 二人が見に来てくれたらテンションあがって、ますます速くなっちゃう!」
リィが明るく笑った。
放課後に校庭に行くと、かっこいいジャージを着たリィが陸上クラブのみんなと準備運動をしている。
「麻那人も走るの速いんでしょ?」
「ふふ、まぁ……でも悪魔は走らないからなぁ。人間みたいに一生懸命に頑張って汗を流して輝く……なんて事はしないから」
「なるほど」
確かに悪魔が陸上大会やサッカーをして、さわやかに過ごしているとは思えない。
光は苦笑いをする。
「あ、リィが走るよ!」
先生の合図で、リィがクラウチングスタートで走る。
「わー! 速い!」
さすがのリィだ。
走る! 走る! 走る!
六年生の先輩も男子も追い抜いて、あっという間に一位でゴールに飛び込む。
「リィー! かっこいい!!」
「すごいよ!!」
二人の声援に気付いて、リィが大きく手を振ってくれた。
「追いかけ鬼より速いんじゃない!?」
興奮して光が叫んだ。
リィなら追いかけ鬼に追いかけられても逃げられる速さだ。
「うん、短距離ならいけそうだね……人間ってすごいな」
うんうん、頷いて何か考えている様子の麻那人。
「え? まさか本当に……?」
「うん。計画でリィちゃんの足にも、協力してもらおう」
麻那人の頭の中では、何か追いかけ鬼と犯人に対しての計画が出来上がりつつあるようだった。
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