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幕間①
賢者(仮)の旅立ち
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「……失敗したか。隣国の邪魔が入ったな」
「は、その様で……」
「しかし、界の壁を越えたまではかの者の存在を補足していたものを……。隣国に先を越される訳にいかん。誰か、賢者を呼んで来い」
その部屋は、黒と銀で統一されていた。
それは、部屋の主でさえも。
肌の色や瞳の色以外は全て――
「お呼びでしょうか、魔王様」
「ああ。忙しいところすまんが、一つ任せたい仕事が出来てな」
「それは、先だって行われた、我らが神の加護を受けし異界の者を召喚する儀式に関わる要件でしょうか?」
「ああ、そうだ。流石賢者と呼ばれるだけはある。話が早くて助かるぞ」
「喚んだはずの者は現れなかったとか。……儀式は失敗、故に再度執り行う支度をすればよろしいので?」
「いや、そなたの組んだ理論は実に素晴らしかった。召喚自体には成功しているのがその証よ。……しかし、邪魔が入ってしまってな。とんだケチをつけてくれたものだ」
「……?」
「ああ、ここに現れるはずだった者は、この世界の何処かに落ちた。故に、迎えを出さねばならぬ。……隣国に出し抜かれる前にな」
「つまり、その役目を私に、と?」
「ああ。誰か、地図を持て」
王が命じれば即座に用意された地図。
「途中まで把握していた術の軌跡を辿れば、この界隈にいると思われるが、流石にこれ以上は絞れん。故にこの魔道具をそなたに託す。必ず見つけ、丁重に連れ帰るのだ」
「――はっ、ご命令、承りました」
彼に下賜されたのは、磁石――では、あるのだが。
「ひよっ!」
「魔王様、またおかしな改造をなさいましたね?」
「う、うむ……。だって可愛いであろう?」
「ぴよっ!」
本来、赤と青に塗り分けられた磁石が目盛付きの台座を回り、方角を知らせる、そういう道具なはずだ、コンパスと言うものは……。
なのに、だ。
「何故! ヒヨコなのですか!」
まるで風見鶏のように、目盛り付きの台座の上をひよひよ機嫌良さそうにくるくる回る、ヒヨコ――の、映像。
光属性の幻惑術の応用だろう。
「ええ、確かに女子供にはウケるでしょうね。……ですか私には必要ない物です!」
「しかし、他に魔道具は用意しておらぬのだ。これから新たに用意する時間は無い。それを持って行け」
「魔王様、後で覚えておいてくださいね? ああ、お客人に王の無い事無い事吹き込んで差し上げましょうか?」
「なっ、止めろ! そんな事をしてみろ、不敬罪に問うぞ!」
「出来るものならどうぞ? 出来るものなら――ね?」
こうして、ぷりぷりとお怒りモードの賢者様もまた、旅へと出掛けるのであった。
その名は。
賢者、フロイス・ネージュ。
「は、その様で……」
「しかし、界の壁を越えたまではかの者の存在を補足していたものを……。隣国に先を越される訳にいかん。誰か、賢者を呼んで来い」
その部屋は、黒と銀で統一されていた。
それは、部屋の主でさえも。
肌の色や瞳の色以外は全て――
「お呼びでしょうか、魔王様」
「ああ。忙しいところすまんが、一つ任せたい仕事が出来てな」
「それは、先だって行われた、我らが神の加護を受けし異界の者を召喚する儀式に関わる要件でしょうか?」
「ああ、そうだ。流石賢者と呼ばれるだけはある。話が早くて助かるぞ」
「喚んだはずの者は現れなかったとか。……儀式は失敗、故に再度執り行う支度をすればよろしいので?」
「いや、そなたの組んだ理論は実に素晴らしかった。召喚自体には成功しているのがその証よ。……しかし、邪魔が入ってしまってな。とんだケチをつけてくれたものだ」
「……?」
「ああ、ここに現れるはずだった者は、この世界の何処かに落ちた。故に、迎えを出さねばならぬ。……隣国に出し抜かれる前にな」
「つまり、その役目を私に、と?」
「ああ。誰か、地図を持て」
王が命じれば即座に用意された地図。
「途中まで把握していた術の軌跡を辿れば、この界隈にいると思われるが、流石にこれ以上は絞れん。故にこの魔道具をそなたに託す。必ず見つけ、丁重に連れ帰るのだ」
「――はっ、ご命令、承りました」
彼に下賜されたのは、磁石――では、あるのだが。
「ひよっ!」
「魔王様、またおかしな改造をなさいましたね?」
「う、うむ……。だって可愛いであろう?」
「ぴよっ!」
本来、赤と青に塗り分けられた磁石が目盛付きの台座を回り、方角を知らせる、そういう道具なはずだ、コンパスと言うものは……。
なのに、だ。
「何故! ヒヨコなのですか!」
まるで風見鶏のように、目盛り付きの台座の上をひよひよ機嫌良さそうにくるくる回る、ヒヨコ――の、映像。
光属性の幻惑術の応用だろう。
「ええ、確かに女子供にはウケるでしょうね。……ですか私には必要ない物です!」
「しかし、他に魔道具は用意しておらぬのだ。これから新たに用意する時間は無い。それを持って行け」
「魔王様、後で覚えておいてくださいね? ああ、お客人に王の無い事無い事吹き込んで差し上げましょうか?」
「なっ、止めろ! そんな事をしてみろ、不敬罪に問うぞ!」
「出来るものならどうぞ? 出来るものなら――ね?」
こうして、ぷりぷりとお怒りモードの賢者様もまた、旅へと出掛けるのであった。
その名は。
賢者、フロイス・ネージュ。
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