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第九章
市場の賑わい
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「安いよ安いよ! 旬の果物、甘いよ!」
「らっしゃい! 今日は今朝捕れたての魚が脂が乗ってて美味いよ! 煮ても焼いても良し!」
「そこの鶏肉と向こうの豚バラちょうだいな。まとめて買うんだし、ちょっとは負けなよ?」
店の売り子と買い手のオバちゃんらの戦いがあちらこちらで火花を散らす。
その賑やかすぎる光景は、お行儀の良い日本ではあまり見かけない。
そもそもこんな露天でむき出しのままの生肉をぶら下げてるなんて、日本であったら大変だ。
けれど、アジアの観光地を写したテレビ番組でなら、こういう風景を見た事がある。
皆の装いはむしろ欧州風なのが、ついちぐはぐな印象を受けてしまうんだけど、ここは異世界なのだ。
アルトは何ら疑問を持たずに普通に人混みの中を歩く。
人混み自体は東京で慣れてるけど、威勢の良いオバちゃん達をかきわけながら歩くのは、基本他人に無関心な人々の合間をするする抜けていくのとは全く別の行為であるらしい。
気をつけていないと、あっという間にアルトとはぐれてしまいそうだ。
だけど。
……流石に裸のまま、それも常温でぶら下がる肉を食べたい気にはなれないけど、店頭に並べられた色とりどりの野菜や果物、香辛料は目を惹くには十分過ぎる魅力があって、ついついキョロキョロしてしまう。
そんな私を危なっかしいとでも思ったんだろう。
アルトは私の手首を握り、少しだけ歩みの速度を緩めた。
ほっとしつつも、普通に手を繫げば良いのにと思ってしまう。
いやまぁ、実際にそうされたらされたで動揺しそうだな、とも思う。
「……あちらの店の果物が安くて良いモノを売っているな。あれはココの実だ。ナッツの様な食感だが甘みがある。砂糖のはっきりした甘みに比べるとぼやけた味だが、菓子の材料に好まれるな。その隣のラジの実は酸味があって好き嫌いが分かれる果物だ」
と、教えてくれる。
「兄さん、ウチのは甘いよ! ほれ、味見してみな!」
リンゴのような見た目だけど、差し出された果実はオレンジの様な味がした。
「美味しい!」
ちなみにココの実はココナッツを思い出させる、あまり美味とは言えない味だったけど、店の人の前でそうとはっきりは言えない。
生食するのは私は好まない味だけど、使い道はある。
他にも香辛料の店などアルトに見繕ってもらった店で買い物を進めていく。
――その頃。
港に新たな船が到着していた。
「うう、酷い目にあったぜ……」
死んだ目をする大剣を背負った男、不釣り合いなヒヨコを手にする美形の男、そして何やらやけに慌てた様子の少女。
それぞれ互いに気づかないまま、島の地を踏みしめた。
「らっしゃい! 今日は今朝捕れたての魚が脂が乗ってて美味いよ! 煮ても焼いても良し!」
「そこの鶏肉と向こうの豚バラちょうだいな。まとめて買うんだし、ちょっとは負けなよ?」
店の売り子と買い手のオバちゃんらの戦いがあちらこちらで火花を散らす。
その賑やかすぎる光景は、お行儀の良い日本ではあまり見かけない。
そもそもこんな露天でむき出しのままの生肉をぶら下げてるなんて、日本であったら大変だ。
けれど、アジアの観光地を写したテレビ番組でなら、こういう風景を見た事がある。
皆の装いはむしろ欧州風なのが、ついちぐはぐな印象を受けてしまうんだけど、ここは異世界なのだ。
アルトは何ら疑問を持たずに普通に人混みの中を歩く。
人混み自体は東京で慣れてるけど、威勢の良いオバちゃん達をかきわけながら歩くのは、基本他人に無関心な人々の合間をするする抜けていくのとは全く別の行為であるらしい。
気をつけていないと、あっという間にアルトとはぐれてしまいそうだ。
だけど。
……流石に裸のまま、それも常温でぶら下がる肉を食べたい気にはなれないけど、店頭に並べられた色とりどりの野菜や果物、香辛料は目を惹くには十分過ぎる魅力があって、ついついキョロキョロしてしまう。
そんな私を危なっかしいとでも思ったんだろう。
アルトは私の手首を握り、少しだけ歩みの速度を緩めた。
ほっとしつつも、普通に手を繫げば良いのにと思ってしまう。
いやまぁ、実際にそうされたらされたで動揺しそうだな、とも思う。
「……あちらの店の果物が安くて良いモノを売っているな。あれはココの実だ。ナッツの様な食感だが甘みがある。砂糖のはっきりした甘みに比べるとぼやけた味だが、菓子の材料に好まれるな。その隣のラジの実は酸味があって好き嫌いが分かれる果物だ」
と、教えてくれる。
「兄さん、ウチのは甘いよ! ほれ、味見してみな!」
リンゴのような見た目だけど、差し出された果実はオレンジの様な味がした。
「美味しい!」
ちなみにココの実はココナッツを思い出させる、あまり美味とは言えない味だったけど、店の人の前でそうとはっきりは言えない。
生食するのは私は好まない味だけど、使い道はある。
他にも香辛料の店などアルトに見繕ってもらった店で買い物を進めていく。
――その頃。
港に新たな船が到着していた。
「うう、酷い目にあったぜ……」
死んだ目をする大剣を背負った男、不釣り合いなヒヨコを手にする美形の男、そして何やらやけに慌てた様子の少女。
それぞれ互いに気づかないまま、島の地を踏みしめた。
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