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第十章
日本人と暗殺者
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日本というのは基本治安が良くて平和な国だ。
……時折無敵の人とかが不意に現れては恐ろしい事件を起こしていったりもするけれど。
少なくとも暗殺者なんて職業は、表向き存在しない事になってる国だ。
うっかり殺人犯なんてものになれば、現代のネット社会では半永久的に後ろ指をさされ続ける。
私も、そんな価値観の中で育った日本人として、単純にリアル暗殺者なんてものと身一つ遭遇すれば、それは怖かっただろうと思う。
しかし、実際彼と出会った頃には既にこのチートな船を手に入れ、更には精霊の加護だってあって、今じゃ頼りになる仲間なので。
彼は私くらいあっという間に殺せる技量を持っているんだろうけど。
「いや、だって、契約もしてるし。……あっちの世界では馴染みのない仕事――いや、過去の歴史の中とかフィクションではそんなに珍しい仕事でもない……けど、アルトの事は怖いとは思わないかな」
スパルタではあるけど。うん、そういう意味では怖いけど。そこはあえて言わないでおく。ヤブから蛇を召喚する必要はないんだから。
「けど、突然どうしたの?」
「――そういう事だって話だ。賊を何人屠ろうと、自分を卑下する必要も恐れる心配も要らない。あの女や勇者がやらかしたならお前でなく俺が責任もって殺してやる。だから今は手駒として持っておけ」
アルトは言う。
「これだけでかい船だ。食事や風呂の時間さえずらせば同じ船に乗っててもそうそう顔を合わせる事だってないはずだ」
――と。
「追い出すのはいつでも出来る。捕虜だとでも思えば良い」
正直なところを言えば嫌ではあるけど。
少なくともアルトは彼女になびかなかった。
なら、大丈夫かもしれない。
「……分かった。それと、近々また船を新しくするから。多分もっと広くなると思う。彼女を降ろしたら――と思ってたけど。そう言う事なら三日後にでも……」
「分かった。連中にも伝えておこう。無駄に驚いて騒がれても面倒だしな」
――そして。予告通り三日後。
内装は豪華客船仕様の戦艦レベルに武装の整った潜水艇が爆誕した。
遂に船のチートレベルは元の世界を越えた。
「え、何。何で船の中で服とか鞄が売ってるの。それもこんな貴族が使うような、実用に向かないようなの……。しかも値段が……」
勇者が青ざめ。
「れ、レストランが一杯? 何なんですかこの料理?」
異世界料理に目を丸くする女。
そして。
「へぇ、トレーニングマシン、か。便利な物もあるもんだ。よし、明日からこれもメニューに加えるぞ」
スポーツジムのトレーニングマシンに目を輝かせる暗殺者。
豪華客船に乗客四人。
どう考えても過剰供給であった。
……時折無敵の人とかが不意に現れては恐ろしい事件を起こしていったりもするけれど。
少なくとも暗殺者なんて職業は、表向き存在しない事になってる国だ。
うっかり殺人犯なんてものになれば、現代のネット社会では半永久的に後ろ指をさされ続ける。
私も、そんな価値観の中で育った日本人として、単純にリアル暗殺者なんてものと身一つ遭遇すれば、それは怖かっただろうと思う。
しかし、実際彼と出会った頃には既にこのチートな船を手に入れ、更には精霊の加護だってあって、今じゃ頼りになる仲間なので。
彼は私くらいあっという間に殺せる技量を持っているんだろうけど。
「いや、だって、契約もしてるし。……あっちの世界では馴染みのない仕事――いや、過去の歴史の中とかフィクションではそんなに珍しい仕事でもない……けど、アルトの事は怖いとは思わないかな」
スパルタではあるけど。うん、そういう意味では怖いけど。そこはあえて言わないでおく。ヤブから蛇を召喚する必要はないんだから。
「けど、突然どうしたの?」
「――そういう事だって話だ。賊を何人屠ろうと、自分を卑下する必要も恐れる心配も要らない。あの女や勇者がやらかしたならお前でなく俺が責任もって殺してやる。だから今は手駒として持っておけ」
アルトは言う。
「これだけでかい船だ。食事や風呂の時間さえずらせば同じ船に乗っててもそうそう顔を合わせる事だってないはずだ」
――と。
「追い出すのはいつでも出来る。捕虜だとでも思えば良い」
正直なところを言えば嫌ではあるけど。
少なくともアルトは彼女になびかなかった。
なら、大丈夫かもしれない。
「……分かった。それと、近々また船を新しくするから。多分もっと広くなると思う。彼女を降ろしたら――と思ってたけど。そう言う事なら三日後にでも……」
「分かった。連中にも伝えておこう。無駄に驚いて騒がれても面倒だしな」
――そして。予告通り三日後。
内装は豪華客船仕様の戦艦レベルに武装の整った潜水艇が爆誕した。
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そして。
「へぇ、トレーニングマシン、か。便利な物もあるもんだ。よし、明日からこれもメニューに加えるぞ」
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