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第十四章

再びの双子島

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 ……フロイスが示したのは、見覚えのある島だった。
 覚えているだろうか? 入港料や証明書が無くて入れなかった双子島を。

 そういえばアルトと出会ったのはそこで入港拒否されたその晩の事だった。

 今はお金も書類もあるのだから、あの島にも上陸出来るはず。

 まあそれはそれとして。
 そこへ行き着くまでの間はやっぱり暇になる訳で。

 さあ、農業の次は何しようかな?

 そう言えば薬草も溜まってきたし、調薬の勉強でもしようかな?
 錬金術とか面白そうだし。

 新たに勉強を始め、熱中していると、時間はあっという間に過ぎた。

 そして見覚えのあるシルエットが見えてくる。
 そろそろ船を乗り換える……あ、そう言えば研究者さん達どうしよう?

 「船に、勇者と巫女を残せばいい。島に上陸するのは俺とフロイスで十分なんだ。停泊させとくだけならお前が居なくても良いんだろ? なら帆船の方に来い」

 潜水艦を初めて沖に残したまま帆船に乗り込む。

 以前は拒否された港にゆっくり近づいていく。

 「不安なら手続きは俺がやる。お前は操船してればいい」

 と、アルトは近づいてきた巡視艇との手続きを終え、私達は無事に入港を許された。

 ゆっくり港に近づき、桟橋に船をつける。

 錨を下ろし、桟橋にロープで繋ぎ――私達は島に上陸した。

 他では既に何度か経験したけれど、一度失敗した場所に無事に上陸出来た安堵は大きくて。

 「まずは何か食うか」

 緊張が解けて、突然空腹を感じ始めた私を察してか、アルトが言った。

 「ここはドワーフの島だぞ。食堂の大半は酒屋だ」
 フロイスが嫌そうに言う。

 「酒は嫌いでないが、ドワーフはキツイ酒を好む。私は美味い酒が呑みたい」

 港から入ってすぐの飲食店には、確かに昼間から飲んだくれる小さめなオジサン達が目立つ。
 それもみんなサンタクロースみたいなヒゲの持ち主ばかり。

 「……屋台で適当に何か買うのが良さそうだな」

 屋台で適当に軽食を買って食べる。

 ……うん、美味しい。美味しいんだけど……

 「酒の欲しくなる味付けだな。道理で隣で酒売が店を広げている訳だ」

 味が濃くて、飲み物が欲しくなる味。……ぶっちゃけ酒のつまみだよね、これ。

 ……ドワーフを迎えるならレストラン街と売店に酒屋をオープンさせないとだな。
 ドワーフ専用階を作らないと、研究者シアターを作るハメになった時の二の舞になりそう。

 「それで。心当たりの人材が居るんだろう?」
 「ああ。ついてくるがいい」

 お腹が膨れた所で、フロイスの後をついて歩く事になった。

 
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