唯一平民の悪役令嬢は吸血鬼な従者がお気に入りなのである。

彩世幻夜

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私の攻略対象は。

迷いの果てに見つける答えは。

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    気絶したまま一晩ぐーすか寝こけて起きて。
    そこが自分の部屋で、いつの間にか部屋着に着替えている事に気づいた私は今すぐ誰かに思い切り罵られたくなった。
    ……今ならあ奴の戯れ言も聞くだけは聞いてやろうとトチ狂った事考えるくらいに自分が心底嫌になっている。

    大人の余裕はどうした。
    自分ばかり取り乱して、八歳の少年に慰められ、むしろ
    何であんな大変な話を聞いた後でそんな格好良い事言えるんだ。
    ゲームの王子にだって言えないセリフ。――ゲーム登場時には14歳、ゲーム終了時には18歳の彼を、は好んで攻略していたけど、ここまで情けなくも嬉しくてどうしようもない気持ちになったことなんて、無い。
    ……いや、モニターの向こうの二次元キャラと生身のレイフレッドを比べちゃいかん。
    私、アンリが好きなのはレイフレッドなんだから。
     ……でも、私はどうするべきなんだろう。
    いや、レイフレッドを失いたくないなら最初から答えは一つに決まっている。さっさと契約してしまえば良いだけだ。最終的にはそれ以外の選択肢を選べる気がしない。

    だけど、言うは易し。

    まず一番に問題になるのはシリカさんも指摘していた寿命の問題から派生してくる懸念の数々。
    私、前世では18で死んだ。
    そして人間の寿命は向こうもこちらも長くて百と数年。
    その感覚で、魔族の長い寿命に精神が耐えられる?
    言うが易しか生むが易しか。
    こればっかりはもう、その時にならなきゃ分からない。

    ……でもまあ今は話を進める為に耐えられるとしよう。

    寿命そのものに耐えられたとして。
    親は先に逝くもの、旦那や兄弟、友人の順は後先分からないけど、子を看取らなければならない親は辛かろう。……それを私は孫やひ孫まで看取れるのか?
    と、それは人間と婚姻した場合の話で、レイフレッドが好きだと自覚した今、人間の子や孫を作る未来はありえない。
    ……レイフレッド以外の魔族ともお友達にはなれても恋人以上の関係になれる気がしない。

    でもレイフレッドは。今は子供だから分からないと言っているけど、いつかは恋をする。そして結婚に至る可能性も低くない。
    年頃の男の子に女性に興味持つななんて言えないし。
    いざその時が来た時、私は冷静でいられる?    奥さんや子供と幸せそうにするレイフレッドの隣で嫉妬して嫌な女にならないって言える?
    ……大人の絵本隠すくらいなら笑って見て見ぬふりしてあげられるし、女友達とわいわいやるのもちょっと複雑だけどまあ見守れる。けど奥さんや子供に妬かない自分が想像できない。

    魔族のならず者は……冒険者として鍛えて、それでもどうしょもなかったらそこは割り切ってレイフレッドにお任せしよう。
    ん?    魔族の国に住むこと?    奴に嫁入りしなくて良いなら何処だって天国さ!
    お父様達には申し訳ないけど、私にとっては人間の国より魅力的なんだもん。
    どうせどこに住んだって嫌な奴の一人二人は居るもんなんだしさ。

    ……ところで。人間の国では忌避されてる事も多いけど、別に魔族との結婚は問題ないんだよね?
    血の提供者の意味でのパートナーをそのまま人生のパートナーにするのってありなの、なしなの?

    ……もし、アリなら――

    私がレイフレッドを攻略できたら大半の問題が解決しない?

    ……これは後でこっそりシリカさんに聞きに行こう。

    でだ。
    目が覚めてから既に一時間程経過している。
    時計は既に朝を過ぎている。
    ……気まずいがそろそろ出ていかないと余計な心配をかけてしまう。
    もうこれ以上格好悪いとこ見せたくないし。   

    ベッドから下りて身だしなみを整えて。
    私は部屋の扉を開けた。
    「お嬢様!    大丈夫ですか、どこか具合の悪いところは?」
    すかさずレイフレッドの声が飛んでくる。……相当心配をかけてしまったようだ。

    「心配かけてごめんなさい、一晩ゆっくり休んだら楽になったわ」
    「良かった、です」
    レイフレッドは疲れたようにリビングの椅子に座り込んだ。
    「シリカさんにも後でお礼と謝罪に伺わないと……」
    やっぱり着替えをシリカさんに頼んだと言う。今朝は心配しながらも仕事に出掛けてしまったと言うから、また夜にでも訪ねよう。

    「ところで、ね。レイフレッド」
    私はレイフレッドの前に座り、その赤い瞳を正面から見つめた。
    「旅に出ない?」
    「はい?    旅……ですか?」
     唐突な私の提案に戸惑うレイフレッド。
     「はっ、まさかお嬢様……何か考えすぎてませんか?     ダメですよ、早まったら!」
    と、思ったら何か勘違いを始めた。
    「ほら、後でお嬢様の好きなオムライス作りますから、落ち着いて考え直しましょう……!」
    「……何か勘違いをしてる様だけど、今日明日の話じゃないわよ。オムライスは嬉しいけど……ああ、そう言えば昨日は気絶しちゃったから血をあげ損ねてたわ」
    ああ、ホント昨日の自分がカッコ悪すぎて泣けてくる。
    「で、手首からか首筋からか。どっちが良い?」
    「お嬢様、今の今まで倒れていた人のセリフですか、それ!」
    「そりゃ、いろいろ考えすぎて脳ミソが一時的にキャパオーバーしただけだもの、肉体的には健康そのものよ?」
    「……はぁ、一晩色々悩んだ僕が馬鹿だったんでしょうかね」
    ……う。そ、それは――
    「量を考えると首筋からの方がお嬢様の負担は少ないかと。……何かもう色々思うところがありすぎて苛めたくなるんですがね」
    あー、やっぱり何か怒ってる?    不機嫌オーラがひしひしと伝わってくる。
    「う……、その、……き、今日のところは甘んじて受け入れマス……」
    「へー?」

    レイフレッドは疑わしそうに膝をポンポン叩いて座れと無言の圧をかけてくる。
    相手は八歳児と自分に言い聞かせながら、レイフレッドの膝の上に座る。ううっ、密着度が半端ないよぅ……。あ、しかも左腕に抱き込まれてもう逃げられない。
    体温の低いレイフレッドに触れる部分はひんやりしているのに全身熱くてたまらない、のに。
    ぺろりとレイフレッドの舌が首筋を撫で、耳たぶを牙で甘噛みされる。耳たぶの次は首筋を順に、服を肩まで下ろされ何度も甘く食まれる。
    くすぐったさと羞恥にぴるぴる
震えるしかない。
    しかも左手はいつの間にか服の下に潜り込んで脇腹をくすぐっている。
    私は脇腹は弱点じゃないけど、この状況でやられると……違う意味でヤバい。
    甘噛みが止み、牙が穿たれると今度は快楽の波に浸らされる。
   あの訳が分からなくなる程の強烈さはないけど、じんわりと切ない快楽が全身に広がりながら下腹部に熱を集める。
    「あ、う、ひあっ」
    私が変な声をあげる度、レイフレッドがクスクスと笑うのが直に伝わってくる。……楽しそうだ。
    体からはどんどん力が抜けていく。
    結局、そのまま腰砕けになって立てなくなるまで彼のイタズラは続いたのだった。   
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