唯一平民の悪役令嬢は吸血鬼な従者がお気に入りなのである。

彩世幻夜

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雌伏の時

レイフレッドが望んだもの

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    ……魔族の皇帝様に謁見し、戻ってきてからというもの、屋敷の中がすっかり静かになってしまった。
    ……いくら大商会の会頭と言っても所詮人間の皇帝が支配下に置く王国の一子爵が領主の町を中心に展開するだけの商会の主はただの平民だった、と。
    商取引での駆け引きには慣れたお父様も、狐狸妖怪だらけの政界の敵総大将相手に心を折られてしまったらしい。
    最早すっかり腫れ物に触る扱いだ。お母様もお腹の子の事で一杯一杯みたいだし。
    相変わらず口うるさいのはルフナだけだ。……彼女の不屈の精神はある意味あっぱれだけど。
    両親の態度に思うところはあるけれど、精神年齢は既に大人な私はそれほどダメージは受けてない。
    というよりむしろ、両親を知らないレイフレッドを前にこんな冷えきった親子関係を見せつけることの方に罪悪感を覚えたくらいだ。
    というか、魔王陛下による不穏な予告が気になって仕方がないとも言うんだけど。
    「それにしても……レイフレッドがお貴族様かぁ」
    「……本当は、王に願い出ていた話だったんですが。帝国貴族とはちょっと話が大きくなりすぎました」
    「――え?」
    「お嬢様はいつも想定外な事をしでかすので。もしも何か例の件について不利になる事があったとき、身分で解決できる事なら何とか出来ないかと……思いまして」
    夜の道をリルフィの引く馬車で駆けながら聞いたレイフレッドの台詞に固まる。
    え。何この子、本当に見た目通りの子供なの?    ちょっとこの子やっぱり天才かもしれない。
    ちょっとうかうかしてたらあっという間に精神年齢追い抜かれそうだよ!
    「……つまりは、いざとなったら亡命して来いって事だよね」
    ……男爵になったレイフレッドとくっつけば、私は男爵夫人だ。
   「あのっ、私は爵位をいただいても、お嬢様を妾になど致しませんから!    無論他の娘を第二夫人にする気も妾を囲うつもりもございません!」
    必死に力説するレイフレッドだけど……。
    私はそれどころじゃない。
    「え、それって……貴族になること自体は前から考えてたって事だよね……?」
    「ええ。何しろお嬢様は規格外なので」
    最近全てが規格外の一言で片付けられるのがちょっと気になるけど反論できない……。
    「実際、この後何を言われるのか私も戦々恐々なんですよ、お嬢様?」
    「す、すみません……」
    ああ、これは……。今日は苛められる流れだ、これ……。
    嫌ではないけど……。
    馬車を道端に止め、リルフィを離す。
    車内の椅子に腰かけたレイフレッドにがっちり捕まえられて。
    きっちりレイフレッドに遊ばれたのだった。
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