唯一平民の悪役令嬢は吸血鬼な従者がお気に入りなのである。

彩世幻夜

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雌伏の時

外堀が埋められてます……?

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    その日。わざわざギルマスが馬車を出して城まで送ってくれた。
    ――助かった。
    正式な召喚状があるとは言え、こちらは知らない人が見たらただの子供にしか見えないからね。
    獣人じゃないから目立つけど、いきなり門の前で「通してくれ」と言って通じるか不安だったし。
    ただ、ギルマスの送迎も城の内門までだそうで。
    城壁の門を越した先の城への入り口前の馬車停まりで降ろされる。
    そこには既に案内人の侍従が待っていた。
    「我らが主がお待ちでございます」
    案内される場内は、外見同様に武骨そのもの。
    お祖父様のところの職人ギルドの様な無節操さや汚れはなく、掃除は徹底されているし、装飾用の垂れ幕や武器が飾られていたりもする。
    けれど、ブロックがむき出しの灰色メインの廊下は、あの豪華絢爛な魔王城とは真逆。
    ……シンプル・イズ・ザ・ベストとはいえ、ここまで武骨なのもどうかと思うのよね。
    まあ金キラよりは落ち着くけど、ルクスドのあの洞窟部屋みたいなロマンは削ぎ落とされた、軍のような硬質すぎる空気も感じる。
    やがて案内された謁見の間への扉もまた飾り気の無い、金属の鋲を沢山打ち付けたアーチ型の重そうな物。
    そしてその扉を開けた先の玉座に座る皇帝は――
    「待ちわびたぞ?」
    扇で口許を隠しながら目元を緩める――周囲の武骨さが似合わぬ美女。
    黄金の毛皮と細い鼻筋のライン、艶かしいボンキュッボン。ふっさふさの尻尾。
    ……うん、政界なんて狐狸妖怪ばかりと言うけど……そうか、獣人の国じゃ比喩にならないのか。
    にしてもまさか女帝とは。
    「冒険者としてのそなた達の働き、まっこと素晴らしきと聞き及ぶ。大義であった」
    「――お褒めの言葉、ありがたく受け取らせていただきます」
    「うむ。しかし今日呼んだのは冒険者としてのそなたたちではなく、商売人――或いは職人としてのそなたらじゃ」
    パチンと扇が閉じられ、こちらへ先が向く。
   「我が国にも、是非配備したいと思うてのぅ。詳しい話は既に商業ギルドに通してある故にそちらで聞くが良い――が、もう一つ話があってのぅ」
    うっそり微笑む姿はまさに妖艶という言葉がよく似合う。――ケモミミもふもふさんなのに……村の子猫獣人の純朴な愛らしさなんか欠片も感じない代わりに、食事とは別の意味で食われそうな……。
    「先に聞いておるだろう、魔王陛下の詫びの話じゃ」
    ――来た。
    果たして何を言われるんだろう?
    「此度の注文品を無事納品できたなら、我が帝国は――アンリ=カーライルには我が国の永住権及び我が帝国傘下の国全てに於いて有効な通行証と営業許可権を。レイフレッドには男爵位と、そなたらが掃除しよった一帯を、そなたの成人を待って授ける」
    「……それは!    既に魔王陛下から――」
    「分かっておる、それを聞いたからこその話じゃ。既にあちらとの協議も済んだ上での話じゃ」
    曰く。
    あの土地は古くからの緩衝地帯。
    豊かな土地であるのに、小競り合いを怖れてそこを統べようとするものはなく、故に獣や魔物の類いの問題も起こりやすい。
    故に。
    二国間で協議し、互いに領土を割譲して両国の爵位を与えた者に任せて中立領を置く事にしたと。
    けどそんな面倒を引き受けたがる者はほぼ口ばかりの無能ばかり。
    そんな時に白羽の矢が立ったのが私達だと。
    「理想を言えば人間の皇帝も協力してくれるのが望ましいが……まあ今のところ色好い返事はないのでの。まあ、そう言う事じゃ」
    にっこり微笑まれたけど。
    女狐様の微笑み、恐いです……。
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