唯一平民の悪役令嬢は吸血鬼な従者がお気に入りなのである。

彩世幻夜

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念願の旅路で

マルクニア

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    レイア、と。七日かかってようやく無事に神子の名付けが済んでしまえば、後はもう長期戦。取り敢えず力は封じたのだから、旅の続きに戻ろうと思う訳で。
    「魔帝国で気になるところは一通り巡ったし、次はマルクニアを堪能したいわよね」
    魔族も勿論興味深いんだけどね、やっぱりマルクニア=もふもふ天国と来れば……。
    「魔族はだいたい種族ごとに固まって国を作ってるけど、こちらはそうでもないのよね……」
    むしろ種族よりも純血かハーフかで分かれ、更にそこから政治体制の違いで国境線が引かれている。
    「……別に商売に差し障りさえなければ政治なんて興味ないから、逆に何処へ行くか迷うわね」
    「ならばここなどいかがです?」
     そうレイフレッドに提示されたのは……。
    「ベネシー?」
     それは大きな湾を有する国。途中からは船に乘って川を下る旅になるだろう。      
    「たまには旅らしい旅をしましょうよ。最近少々規格外の事ばかり続きましたから」
    ……。何かにっこり笑って言われたけど……。うん、ちょっと最近レイフレッドに負担かけすぎた自覚はある。
    それに、日本の乙女ゲームの世界で日本食は普通に食べられるとはいえ、やはり内陸部の国だと新鮮な海のお魚は手に入りにくいし、川や湖が近くになければ魚自体あまり食べない国はある。
    ……というかシレイドもラクスドもそうだった。
    新鮮なお魚は確かに魅力的だ。
    船の旅も。前世で船に乗ったのなんか、湖の観光遊覧船だけ。数泊かかる船の旅は初めてだ。
    「うん。いいね、じゃあ最終目的地はベネシーで決まりだね」
    「ではまずは船が出るランスのレヴァルへ向かいましょう。ここからだと馬車で半月程かかります。途中いくつかの国と町を経由しますから、良い出会いがあると良いですね。……出来れば今度は騒動とは無縁な出会いを期待したいですが」
    こうして目的地が決まってから最初の街――途中農村や小規模集落はあったけれど、街らしい街はここが初めてだ。
    この辺りの街はどこも素朴すぎる。まるで「むかしむかしあるところに~」と始まる日本昔話のお爺さんかお婆さんが住んでいそうな茅葺き屋根の木造の家。
    ――洋風ファンタジー色の強めな国ばかり見てきた分、宿屋なんかあるはずもない日本風な田舎集落に泊まる勇気が出なかった。
    だからこそ、私は今とても困惑していた。
    「え、何……。私、いつの間に異世界に迷いこんだの……」
    「お嬢様。その異世界というのがなんなのか分かりかねますが、まあ語感的には別世界的な意味で言えばお気持ちは分かりますが、ここは間違いなくマルクニア帝国に属するキョウガ王国の街ベガです」
    ベガの街。ギラギラしたその街は、写真やテレビでしか見たことのないラスベガスを彷彿とさせる街だった。
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