唯一平民の悪役令嬢は吸血鬼な従者がお気に入りなのである。

彩世幻夜

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独りで立てる様に

疾風の牙

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    「では、改めて登録をよろしくお願いします」
    「はぁ。その年で会頭ですか……」
    もう色々言うのが面倒になったようで、ルクスドの狐目ギルマスは淡々書類の処理を進めていく。
    「勿論まだ当分はこれまで同様私の手の届く範囲内でやりますし、むしろもうすぐレイフレッドが学校に行ってしまいますし、私自身も近く学校に通わねばなりませんから、その間は既存の規模の維持で精一杯になるかと……」
    「はぁ。アンリさん、疾風の牙商会は既に我が町の大店が敵わないレベルの利益を上げてるんです。これ以上の規模となれば政商レベルになります。……いえ、アンリさんに宛てられた依頼を思えば職務は既に政商に近いのでしょうがね。……ですが、政商が客とするのは王候貴族です。貴族と上手くやりながら、同業の足の引っ張り合いにも気を配り勝たねばなりません。今のあなたにそれが出来ますか?」
    「……あまり面倒事には関わりたくありません」
    でも、私達はいずれ貴族になる身だ。いつかはどんなに面倒でも貴族と関わらないという選択が出来なくなる時が来る。
    それもかなり特殊な立ち位置の貴族として。
    ……出る杭は打たれるもんだしね。
    商売だけでなく、冒険者としても頭一つ以上飛び抜けている私。これまでの旅で拾って今はまだ隠してるアレコレとかバレたら……。
    うーん、どうせいつかはそうなる運命ならいっそ開き直ってしまうか?
    「……止めておきなさい。少なくともレイフレッド君フォロー役が戻るまでは」
    そんな思考を読まれたのか、ギルマスに釘を刺された。
    「新しい魔道具をウチに卸すとかならまあ私がフォローに入れますから、しばらくはそれで我慢なさい」
    あ、ギルマスめ。ちゃっかり自分のトコの利益だけは確保するつもりだ!
    ……いや、まあここのギルマスには何かと世話になってるから多少ひいきする位は構わないけど。
    「ギルマスこそ大丈夫なの?    前にシレイドのギルマス達がルクスドのギルマス達を随分羨ましがってたけど」
    「ふふふ、うちは儲かるだけの努力はしていますから。ほら、あなたも職人ギルドで以前例のプログラムを利用していたのでしょう?」
    と、例の派遣業もどきについて指摘される。
   「作り手と商売人では色々違いますから、制度的にはまた違ったものですが、ウチでも新人用のサポートプログラムを用意しています。これ単体の収支はむしろマイナスな位ですが、これを始める前と後では全体的な収支は圧倒的にプラスになりました」
    つまり、多少損益を出そうとも積極的に人育てに力を入れる事で儲けていると。
    「種を蒔いて育てたから実が生るのであって、耕しもしない畑を前に指を咥えるばかりの連中に何を言われようと鼻で笑ってやるだけですよ」
    人の癖に黒い狐が笑う。……怖い。
    でもまぁ言ってることは分かるし正論だ。
    「あなたは育てるまでもなく最初から特上の実をお持ちでしたが、一方でまだ幼く世間を知らなすぎる。害虫等の外敵から保護してやらねばあっという間に食い尽くされてダメになる未来さきしか見えませんでしたから」
    ……知らなかった。ルクスドのギルマス達の間で私の名前が共有され、保護対象として暗黙の了解事項として認識されてるなんて……。
    それも、シレイドの様に自分達の目先の利益の為じゃなく、未来の為にという辺り、流石ルクスド。……シレイドが勝てるわけないよね。
    「……ところで。あなたが実家のカーライル商会との折衝に使用したという魔道具ですが、ウチにも一つ譲って貰えませんか?」
    ……本当に、ちゃっかりしてるよね。そんな話聞いた後で断れるわけないじゃん。
    ルクスドの他各ギルマス分の納品を約束させられつつ、この日、正式に疾風の牙が商会として産声をあげたのだった。
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