唯一平民の悪役令嬢は吸血鬼な従者がお気に入りなのである。

彩世幻夜

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領主のお仕事

誘拐されました

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    「あー、まさかこう来るとは……思わなかったなぁ」
    それは十月十日に程近い初冬のある日の事だった。
    産み月も近く、大きいお腹に難儀する頃合いで、少し仕事もセーブ気味にしていた、そんな時。
    その日、レイフレッドは外交で城を空けていた。
    産み月とはいえ予定日までは半月あるし、私ももう出産四回目。一泊二日の外交位はまぁ仕方ないと送り出し、私は書類仕事を片付けていた。
    午前の仕事を終え、お昼を食べて一休み――していたはずなんだけど。
    昼食に何か盛られたか、ちょっとうとうとするつもりがかなり深く眠ってしまったらしい。
    気づけば居心地の良い執務室――ではなくじめじめと寒くて居心地の悪い地下牢みたいな所に閉じ込められていた。
    魔法を使おうとするけど――使えない。何か魔法の使用を制限する方策が取られているんだろう。
    ご丁寧に手足も枷を着けられ動けない。
    ――ここは何処なんだろう?
    いや、勿論地下牢らしいのは分かっている。そうではなく、ここは城なのか、城の外なのか。領地の中に居るのか、それとも既にどこか別の場所なのか。
    換気窓からは月夜が見える。
    月の形からまだそう時間は経っていなさそうだ。
    しかし……
    「私一人なら暴れて逃げ出すのに……」
    今暴行されるとお腹の子に障る。
    今頃帰って来たレイフレッドが半狂乱で探し回っているだろうから、領内に居るならそうかからず見つけて貰えるだろう。
    どうやら魔法は使えないけれど、スキルは使えるようだ。
    「何か……使えそうなスキルが無かったっけ」
    ステータスノートを開いて見ていると、不意にコツコツと靴音が聞こえてきた。
    私はステータスノートを消し、その主を睨み付けた。
    やって来たのは小太りの、かつての子爵を幾分か若返らせたような男だった。
    「よう、久しぶりだな」
     ……ああ。声も聞き覚えがあった。
    「――確かにお久しぶりですね、ビル」
     私の元婚約者様。
    「アリスちゃんとご両親はお元気?」
    「……さあ。あの女はあの後すぐに居なくなっちゃったよ。お母様も父上と僕を口汚く罵って、何処かへ行った。僕はしばらく父上と居たけど、最近じゃ別に行動することの方が多いから……。最後にあったのは去年だっけかな、そん時はまぁ生きてたよ。元気かどうかは微妙な所だったけど」
    ピザの様に真ん丸い顔と体は脂ぎっていて悪臭がするし、浮かべる表情も何だか気持ち悪い。
     くそう、今こんなんじゃなければぶん殴って沈めてやるのに!
    「ふふふ、あのいけすかない男を殺そうとしても中々上手くいかないし、なら先に子供から……と思ってもやっぱり上手くいかない。でも……ようやく僕にも運が向いたらしい」
    ニタニタと笑う顔のど真ん中を拳で思いきり殴りたい。だけど……動けない。
    「さぁ、楽しもうねぇ?」
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