72 / 125
第二章
気になる噂
しおりを挟む
「俺はカニを貰おうか」
「私、具沢山で!」
「あたしゃシンプルなので良いかな、一番安いし」
やはり人というものは人の集う場所に興味を惹かれる生き物らしい。
最初の一人が来てからというもの、順調に客が入り、そして料理を美味しいと平らげ満足して出ていくと、その様子に惹かれてあらたな客が入る。
そんな順調な流れができ始めた頃。
「どうもー、商業ギルドの見回りでーす。許可証確認させて貰って良いっスか~?」
「あ、はい。ちょっとお待ちを。はい、お待ちどうさま、具沢山天津飯です、ごゆっくりお召し上がり下さいね!」
商業ギルド員が見回りに来た。
これ、熱心にやってる街とそうでない街とあるんだよね。
一々許可証求められるのはちょっと面倒なんだけど、やっぱり熱心に見回りやってる町は商売人の行儀も良くて、私達みたいな行商人でも商売がしやすいんだ。
見回りとかあまり仕事に熱心でないギルドのある町は、やっぱり他より気を使って商売しないと、いくら許可証があったとしても、いらぬトラブルを引き寄せかねないから。
「すいません、お待たせして。これ、昨日交付して貰った許可証です」
「はい、確かに。……ところでそろそろ昼時なので、私も食事をしたいのですが、私にもそれ、いただけますか?」
「勿論、けどちゃんと並んでくださいね?」
「いやいや、私はギルド員ですが、お貴族様ではありませんからねぇ。しかも商売人にとって評判は命。自ら人々の不興を買うような輩は商売人には向きませんよ」
そして列の最後尾に並び、待つこと五分。
「思った以上に回転が良いですね。……では、注文を。正直具沢山とカニで最後まで迷ったのですが、私はカニでお願いします」
「はい、カニ尽くしがお一つですね。かしこまりました。少々お待ちを」
チャーハンに関しては他のメニューと同じように作る。
ただし、その上にかける卵には少しながらカニの身を入れてかに玉に。
勿論あんにもカニ身を浮かせて出来上がり。
あ、勿論グリーンピースも忘れずに!
「お待たせしました」
「ほう、これはまた変わったメニューですね。どれ……、あむ、んぐんぐ……、おお、美味い!」
「お気に召していただけたようで何よりです」
「いやいや、これは美味しいですよ! ふふふ、実は最近噂で美味い屋台飯の話を聞いたばかりでね。ちょっと羨ましく思っていたところでね」
「噂、ですか……?」
「ええ、何でも勇者殿が美味い屋台飯を見つけ気に入ったらしい、と。どんな店かも定かでない、尾ひれハヒレだらけの詮無い噂話ですがね。
けど、美味い飯の話を聞かされれば、自分も美味いものが食いたくなるってのが人間の性。
この町の飯は美味いですが、何分この町で育った者には食べ慣れた味ですからね。
たまには目先の変わった、けど美味い飯が食べたくなりましてね。
いや、実に良いタイミングで来てくださいました」
と、何だかよく分からない感謝のされ方をして戸惑いつつ。
……まさか、ね、と。
浮かんだ嫌な予感を振り払うのだった。
「私、具沢山で!」
「あたしゃシンプルなので良いかな、一番安いし」
やはり人というものは人の集う場所に興味を惹かれる生き物らしい。
最初の一人が来てからというもの、順調に客が入り、そして料理を美味しいと平らげ満足して出ていくと、その様子に惹かれてあらたな客が入る。
そんな順調な流れができ始めた頃。
「どうもー、商業ギルドの見回りでーす。許可証確認させて貰って良いっスか~?」
「あ、はい。ちょっとお待ちを。はい、お待ちどうさま、具沢山天津飯です、ごゆっくりお召し上がり下さいね!」
商業ギルド員が見回りに来た。
これ、熱心にやってる街とそうでない街とあるんだよね。
一々許可証求められるのはちょっと面倒なんだけど、やっぱり熱心に見回りやってる町は商売人の行儀も良くて、私達みたいな行商人でも商売がしやすいんだ。
見回りとかあまり仕事に熱心でないギルドのある町は、やっぱり他より気を使って商売しないと、いくら許可証があったとしても、いらぬトラブルを引き寄せかねないから。
「すいません、お待たせして。これ、昨日交付して貰った許可証です」
「はい、確かに。……ところでそろそろ昼時なので、私も食事をしたいのですが、私にもそれ、いただけますか?」
「勿論、けどちゃんと並んでくださいね?」
「いやいや、私はギルド員ですが、お貴族様ではありませんからねぇ。しかも商売人にとって評判は命。自ら人々の不興を買うような輩は商売人には向きませんよ」
そして列の最後尾に並び、待つこと五分。
「思った以上に回転が良いですね。……では、注文を。正直具沢山とカニで最後まで迷ったのですが、私はカニでお願いします」
「はい、カニ尽くしがお一つですね。かしこまりました。少々お待ちを」
チャーハンに関しては他のメニューと同じように作る。
ただし、その上にかける卵には少しながらカニの身を入れてかに玉に。
勿論あんにもカニ身を浮かせて出来上がり。
あ、勿論グリーンピースも忘れずに!
「お待たせしました」
「ほう、これはまた変わったメニューですね。どれ……、あむ、んぐんぐ……、おお、美味い!」
「お気に召していただけたようで何よりです」
「いやいや、これは美味しいですよ! ふふふ、実は最近噂で美味い屋台飯の話を聞いたばかりでね。ちょっと羨ましく思っていたところでね」
「噂、ですか……?」
「ええ、何でも勇者殿が美味い屋台飯を見つけ気に入ったらしい、と。どんな店かも定かでない、尾ひれハヒレだらけの詮無い噂話ですがね。
けど、美味い飯の話を聞かされれば、自分も美味いものが食いたくなるってのが人間の性。
この町の飯は美味いですが、何分この町で育った者には食べ慣れた味ですからね。
たまには目先の変わった、けど美味い飯が食べたくなりましてね。
いや、実に良いタイミングで来てくださいました」
と、何だかよく分からない感謝のされ方をして戸惑いつつ。
……まさか、ね、と。
浮かんだ嫌な予感を振り払うのだった。
325
あなたにおすすめの小説
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
結婚しても別居して私は楽しくくらしたいので、どうぞ好きな女性を作ってください
シンさん
ファンタジー
サナス伯爵の娘、ニーナは隣国のアルデーテ王国の王太子との婚約が決まる。
国に行ったはいいけど、王都から程遠い別邸に放置され、1度も会いに来る事はない。
溺愛する女性がいるとの噂も!
それって最高!好きでもない男の子供をつくらなくていいかもしれないし。
それに私は、最初から別居して楽しく暮らしたかったんだから!
そんな別居願望たっぷりの伯爵令嬢と王子の恋愛ストーリー
最後まで書きあがっていますので、随時更新します。
表紙はエブリスタでBeeさんに描いて頂きました!綺麗なイラストが沢山ございます。リンク貼らせていただきました。
【完結】婚約者と仕事を失いましたが、すべて隣国でバージョンアップするようです。
鋼雅 暁
ファンタジー
聖女として働いていたアリサ。ある日突然、王子から婚約破棄を告げられる。
さらに、偽聖女と決めつけられる始末。
しかし、これ幸いと王都を出たアリサは辺境の地でのんびり暮らすことに。しかしアリサは自覚のない「魔力の塊」であったらしく、それに気付かずアリサを放り出した王国は傾き、アリサの魔力に気付いた隣国は皇太子を派遣し……捨てる国あれば拾う国あり!?
他サイトにも重複掲載中です。
モブで可哀相? いえ、幸せです!
みけの
ファンタジー
私のお姉さんは“恋愛ゲームのヒロイン”で、私はゲームの中で“モブ”だそうだ。
“あんたはモブで可哀相”。
お姉さんはそう、思ってくれているけど……私、可哀相なの?
【 完 結 】スキル無しで婚約破棄されたけれど、実は特殊スキル持ちですから!
しずもり
ファンタジー
この国オーガスタの国民は6歳になると女神様からスキルを授かる。
けれど、第一王子レオンハルト殿下の婚約者であるマリエッタ・ルーデンブルグ公爵令嬢は『スキル無し』判定を受けたと言われ、第一王子の婚約者という妬みや僻みもあり嘲笑されている。
そしてある理由で第一王子から蔑ろにされている事も令嬢たちから見下される原因にもなっていた。
そして王家主催の夜会で事は起こった。
第一王子が『スキル無し』を理由に婚約破棄を婚約者に言い渡したのだ。
そして彼は8歳の頃に出会い、学園で再会したという初恋の人ルナティアと婚約するのだと宣言した。
しかし『スキル無し』の筈のマリエッタは本当はスキル持ちであり、実は彼女のスキルは、、、、。
全12話
ご都合主義のゆるゆる設定です。
言葉遣いや言葉は現代風の部分もあります。
登場人物へのざまぁはほぼ無いです。
魔法、スキルの内容については独自設定になっています。
誤字脱字、言葉間違いなどあると思います。見つかり次第、修正していますがご容赦下さいませ。
巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!
あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!?
資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。
そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。
どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。
「私、ガンバる!」
だったら私は帰してもらえない?ダメ?
聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。
スローライフまでは到達しなかったよ……。
緩いざまああり。
注意
いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。
水しか操れない無能と言われて虐げられてきた令嬢に転生していたようです。ところで皆さん。人体の殆どが水分から出来ているって知ってました?
ラララキヲ
ファンタジー
わたくしは出来損ない。
誰もが5属性の魔力を持って生まれてくるこの世界で、水の魔力だけしか持っていなかった欠陥品。
それでも、そんなわたくしでも侯爵家の血と伯爵家の血を引いている『血だけは価値のある女』。
水の魔力しかないわたくしは皆から無能と呼ばれた。平民さえもわたくしの事を馬鹿にする。
そんなわたくしでも期待されている事がある。
それは『子を生むこと』。
血は良いのだから次はまともな者が生まれてくるだろう、と期待されている。わたくしにはそれしか価値がないから……
政略結婚で決められた婚約者。
そんな婚約者と親しくする御令嬢。二人が愛し合っているのならわたくしはむしろ邪魔だと思い、わたくしは父に相談した。
婚約者の為にもわたくしが身を引くべきではないかと……
しかし……──
そんなわたくしはある日突然……本当に突然、前世の記憶を思い出した。
前世の記憶、前世の知識……
わたくしの頭は霧が晴れたかのように世界が突然広がった……
水魔法しか使えない出来損ない……
でも水は使える……
水……水分……液体…………
あら? なんだかなんでもできる気がするわ……?
そしてわたくしは、前世の雑な知識でわたくしを虐げた人たちに仕返しを始める……──
【※女性蔑視な発言が多々出てきますので嫌な方は注意して下さい】
【※知識の無い者がフワッとした知識で書いてますので『これは違う!』が許せない人は読まない方が良いです】
【※ファンタジーに現実を引き合いに出してあれこれ考えてしまう人にも合わないと思います】
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるよ!
◇なろうにも上げてます。
私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシェリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる