屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜

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第二章

男達の悲喜こもごも。

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 「おおぉ、う、美味え!」

 「俺、鶏肉ってパサパサしてて、野菜よりはなんぼかマシ程度の認識でよ、牛や豚と違って肉でもあんまり嬉しくなかったんだが……。
 これ、ホントにいつも俺たちが食べてる肉と同じものか? 王族が食べる様な特別な鶏肉とかじゃなく?」

 「ああ、すげージューシーで美味い。肉汁とにんにくがたまらねぇ。しかも下の飯もただの白飯じゃねぇ。これはこれで美味いぞ。あっという間に無くなってくぜ」

 「この団子もいいアクセントだな」
 「いや、俺はこの甘辛いタレの上にかかってる白いソースが……。タレだけでも充分過ぎる程に美味いんだが、このソースが更に飯を進ませる……。何とも小憎らしい奴だぜ……」

 「後で、鶏肉の調理方法聞いたら教えてくれるかな……。
 俺、こんな美味い鶏肉の味を知っちまった後で、また自分らで作ったあの美味くねぇ肉を食わなきゃならんと思うと絶望しかない……」

 ポツリと落とされた若手の言葉にシンと静まり返るまで、食堂は動物園もかくやという大騒ぎだった。
 喜んで食べてくれるのは嬉しいけど。
 体育会系の極みの巣窟の大騒ぎは、いち一般人の乙女にはなかなか破壊力が大きくて。

 そして、その瞬間静かになってちょっとホッとしたけど、すぐにそれが時期尚早だったと思い知らされた。

 「ひっ、」

 やけに鋭い眼光が複数こちらへ向けられる。

 空腹は最高のスパイスとも言うが、飢えは冷静な思考を失わせるものであり、ここは腹ペコの巣窟でもあった。

 「「「「「後でレシピ教えて下さい!」」」」」

 戦闘職が生業の、それも国軍というエリート集団の眼光に、戦闘能力皆無のパンピー女子が逆らえるはずもなく。

 「……他所で商売に使わず、この砦のみ、あるいは軍の食堂で出すのみとの契約を交わしていただけるなら」

 しかし、一応の条件は提示する。
 商人たるもの、貴重な商売道具レシピ無条件タダで渡してやる訳にはいかないのだ。

 「くぅ、料理の美味い可愛い女の子。許されるなら軍の食堂に引き抜きたい!」
 「むしろ嫁さんに欲しい!」

 ……何やら聞き捨てならないセリフもちらほら聞こえてくる。

 「な、ナシ! レシピはともかくシャリーは嫁にも軍にもやんねぇぞ!」

 ロイスが慌てて叫ぶ。

 「あぁん? ヒョロっちぃガキが何を……」

 「いや、ロイスも私も商人なんで。そりゃ職業軍人と比べて貧弱なのは当たり前では?」

 むしろ料理って、見た目以上に体力腕力必要だからね?
 自分の店のふかふかソファに座って書類仕事や商談しかしてない様な商人に比べればかなりたくましい方よ、私達。
 戦闘能力が皆無なのは確かだけどさ。

 アホなことを言い始めた男たちは、後からやって来た上官に締め上げられ、罰としてにんにくの匂いの染み込んだ厨房の後片付けを命じられていた。

 それ、本来は使った私達の仕事のはずだったんだけどね。
 私物の鍋や食器は勿論自分らで片したけど。

 ……まぁ、ドンマイ☆ ってことで、ね?
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