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第二章
由々しき事態
「……由々しき事態だわ」
勇者が発端らしい噂の話をようやく知った私達。
「どう対処すべきかしらね……?」
「……確かに屋台屋の行商は珍しい部類かもしれないけどよ、こないだの行商みたいに大規模で派手な商売してる訳でもないだろ?
自分から宣伝して歩かなきゃ、これまでみたく誤魔化せるんじゃね?
けど、せっかく勇者お気に入りって売り文句をどうしてそんなに嫌がるんだ?」
「……一般人の口コミによる評判なら喜んで掲げるわよ。けど勇者なんて……、どこぞのお貴族様に気に入られるよりたちが悪い。
それこそこないだの山姥姉妹どころか魔王軍に目をつけられかねないじゃない!
そこらの獣や魔物ならともかく、魔王軍に襲われでもしたら私達、ひとたまりもないでしょ?」
先だっての山姥とのアレコレを思い出したのか、ロイスは青い顔をして頷いた。
「……確かに、毎度運良く勇者が助けてくれるなんておとぎ話みたいな事、現実的じゃないな」
「だが、先にロイスが言ったように、自ら喧伝して歩くような真似をしなければ、そうと特定はされまいよ」
そう、願いたい。切に。
これ以上ここで言い合っても、すでに広まった噂はわたしたちの手には負えないのだから。
そう納得しつつも、憂鬱な気分のまま旅を続けて数日後。
「ん……? なんか空気がペトペトする……?」
「なんか、へんなにおいする……?」
「これ……潮の香り?」
次第に波の音が聞こえてくる。
そして、街を囲う塀を抜けると……
「わぁ、凄い! こんな大きい湖初めて見た!」
「ミルフィ、これは湖じゃない、海だ」
そう、ここは海の港町。
それも大きな商業港や軍港ではなく、漁港を有した港町。
港町自体は以前にも訪れたけれど、湖や川での漁をする漁師と、海の漁師では乗る船の規模も、漁に出る期間も異なるらしい。
勿論浅瀬での漁をする小舟持ちの漁師も居て、彼らは日帰りで漁をするが、もっと沖で漁をする者たちは大きな船に集団で乗り込み、数日、場合によっては数ヶ月戻って来ないなんて事もあるらしい。
しかし、何隻もある船は、日々港に新鮮な魚を陸揚げしに戻ってくる。
市場をのぞけば尾頭付きでまだびちびちしている魚が、大量に並んでいて。
その魚を捌いて簡単に料理して出す店もちらほらと……
「ハッ、あれ! お昼ごはんはあの店に入ろう、そうしよう」
私の目を惹いたのは、海鮮丼のお店。
数種のお魚のお刺身を丼にこれでもかと乗せた、超豪華な海鮮丼。
一番上でキラキラ輝くいくらを食べたら、確実に某グルメリポーターの如く、「宝石箱や~」と言ってしまいそうな。
「おいちゃん、この海鮮丼ください、特上のね!」
日本人として。
その誘惑に抗いきれるはずもなく、私は半ば無理やり皆を引っ張り込み、早速注文するのだった。
勇者が発端らしい噂の話をようやく知った私達。
「どう対処すべきかしらね……?」
「……確かに屋台屋の行商は珍しい部類かもしれないけどよ、こないだの行商みたいに大規模で派手な商売してる訳でもないだろ?
自分から宣伝して歩かなきゃ、これまでみたく誤魔化せるんじゃね?
けど、せっかく勇者お気に入りって売り文句をどうしてそんなに嫌がるんだ?」
「……一般人の口コミによる評判なら喜んで掲げるわよ。けど勇者なんて……、どこぞのお貴族様に気に入られるよりたちが悪い。
それこそこないだの山姥姉妹どころか魔王軍に目をつけられかねないじゃない!
そこらの獣や魔物ならともかく、魔王軍に襲われでもしたら私達、ひとたまりもないでしょ?」
先だっての山姥とのアレコレを思い出したのか、ロイスは青い顔をして頷いた。
「……確かに、毎度運良く勇者が助けてくれるなんておとぎ話みたいな事、現実的じゃないな」
「だが、先にロイスが言ったように、自ら喧伝して歩くような真似をしなければ、そうと特定はされまいよ」
そう、願いたい。切に。
これ以上ここで言い合っても、すでに広まった噂はわたしたちの手には負えないのだから。
そう納得しつつも、憂鬱な気分のまま旅を続けて数日後。
「ん……? なんか空気がペトペトする……?」
「なんか、へんなにおいする……?」
「これ……潮の香り?」
次第に波の音が聞こえてくる。
そして、街を囲う塀を抜けると……
「わぁ、凄い! こんな大きい湖初めて見た!」
「ミルフィ、これは湖じゃない、海だ」
そう、ここは海の港町。
それも大きな商業港や軍港ではなく、漁港を有した港町。
港町自体は以前にも訪れたけれど、湖や川での漁をする漁師と、海の漁師では乗る船の規模も、漁に出る期間も異なるらしい。
勿論浅瀬での漁をする小舟持ちの漁師も居て、彼らは日帰りで漁をするが、もっと沖で漁をする者たちは大きな船に集団で乗り込み、数日、場合によっては数ヶ月戻って来ないなんて事もあるらしい。
しかし、何隻もある船は、日々港に新鮮な魚を陸揚げしに戻ってくる。
市場をのぞけば尾頭付きでまだびちびちしている魚が、大量に並んでいて。
その魚を捌いて簡単に料理して出す店もちらほらと……
「ハッ、あれ! お昼ごはんはあの店に入ろう、そうしよう」
私の目を惹いたのは、海鮮丼のお店。
数種のお魚のお刺身を丼にこれでもかと乗せた、超豪華な海鮮丼。
一番上でキラキラ輝くいくらを食べたら、確実に某グルメリポーターの如く、「宝石箱や~」と言ってしまいそうな。
「おいちゃん、この海鮮丼ください、特上のね!」
日本人として。
その誘惑に抗いきれるはずもなく、私は半ば無理やり皆を引っ張り込み、早速注文するのだった。
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