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第四章
王室御用達
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こんな事もあろうかと。
……と言うか貴族のお客様が増え始めた時点で、直ぐに隣の一画を買い取り、別棟でVIPルームを用意していた。
あわてて二人をそちらへ誘導した。
勿論接客は私だ。
「本日は当店にご来店いただき誠にありがとうございます」
「ふふ、そのようにかしこまらないで下さいな。冒険者仕様のお兄様と懇意になさった方ですもの、ほら、お兄様の様子がおかしくなりますから普通にして下さいませ」
はは、アルトリート様が挙動不審なのは言葉遣いのせいじゃないよね?
こないだ奢ってもらってチャラにしたから今更蒸し返さないけどさ。
「こちらが、当店自慢のアイスローズティーです。バラジャムはお好みでどうぞ。お茶請けのお菓子にもバラを使用していますの。アルトリート様にはこちら、新商品のバラのお酒です。甘いお酒ですが、お茶よりはこちらの方がお好みかと」
まずは飲み物で喉を潤してもらって。
「冷たくて美味しいですわ……」
「お気に召していただけて光栄でございます」
早速商談だ。
こちら、今当店で扱っている富裕層向けの商品です、と商品を並べていく。
「まぁ、何度か使用人に買いに行かせましたが……こうして見て選べるのはやはり嬉しいものですね。……ですが」
王女様は首を横に振った。
「お買い物もしたいのですが、その前に私は私の仕事をせねばなりません」
「……はい?」
「こちらのお店を、我が王家の王室御用達の店とさせていただきたいのです」
王室御用達。それはもう、公爵令嬢時代にとてもお世話になりました。
王室に商品を納めていると王家が認めたお店。それは一定以上の品質を認める看板であり栄誉。
王家が使う品と、貴族もこぞってその店の品を欲しがる。
それが王室御用達。
本来なら……断るなど無礼にも程があると分かってはいるが。
「申し訳ございません、辞退させていただきたく。咎は、私一人に。従業員は直ちに解雇し店をしめ、国外へ退去いたします」
「え……は? いや何で、断る理由なんか無いはずだ……!」
慌てるアルトリート様。
まぁ、私の事情を知らなければそれは混乱するよね。
……仕方ないか、と。私は改めて名乗る。
「これは既に捨てた名なのですが、事情をご説明するなら名乗るしかないでしょう。私はローゼリア。ローゼリア=クライン」
名乗ったことで、家名で貴族だと気づいた王女様だが、他国の貴族の名前など知らなくて当然。よって首を傾げた。
が、流石に第四とはいえ王子はその名前にピンと来たらしい。
「クライン……。確かリングパーク王国の元王太子の婚約者がそんな名だったような……」
あら、やっぱりもう「元」が付きましたのね。ご愁傷さまですわ。
「ええ、その通り。私は元ローゼリア=クライン公爵令嬢、かつての王太子の婚約者だった女ですわ」
……と言うか貴族のお客様が増え始めた時点で、直ぐに隣の一画を買い取り、別棟でVIPルームを用意していた。
あわてて二人をそちらへ誘導した。
勿論接客は私だ。
「本日は当店にご来店いただき誠にありがとうございます」
「ふふ、そのようにかしこまらないで下さいな。冒険者仕様のお兄様と懇意になさった方ですもの、ほら、お兄様の様子がおかしくなりますから普通にして下さいませ」
はは、アルトリート様が挙動不審なのは言葉遣いのせいじゃないよね?
こないだ奢ってもらってチャラにしたから今更蒸し返さないけどさ。
「こちらが、当店自慢のアイスローズティーです。バラジャムはお好みでどうぞ。お茶請けのお菓子にもバラを使用していますの。アルトリート様にはこちら、新商品のバラのお酒です。甘いお酒ですが、お茶よりはこちらの方がお好みかと」
まずは飲み物で喉を潤してもらって。
「冷たくて美味しいですわ……」
「お気に召していただけて光栄でございます」
早速商談だ。
こちら、今当店で扱っている富裕層向けの商品です、と商品を並べていく。
「まぁ、何度か使用人に買いに行かせましたが……こうして見て選べるのはやはり嬉しいものですね。……ですが」
王女様は首を横に振った。
「お買い物もしたいのですが、その前に私は私の仕事をせねばなりません」
「……はい?」
「こちらのお店を、我が王家の王室御用達の店とさせていただきたいのです」
王室御用達。それはもう、公爵令嬢時代にとてもお世話になりました。
王室に商品を納めていると王家が認めたお店。それは一定以上の品質を認める看板であり栄誉。
王家が使う品と、貴族もこぞってその店の品を欲しがる。
それが王室御用達。
本来なら……断るなど無礼にも程があると分かってはいるが。
「申し訳ございません、辞退させていただきたく。咎は、私一人に。従業員は直ちに解雇し店をしめ、国外へ退去いたします」
「え……は? いや何で、断る理由なんか無いはずだ……!」
慌てるアルトリート様。
まぁ、私の事情を知らなければそれは混乱するよね。
……仕方ないか、と。私は改めて名乗る。
「これは既に捨てた名なのですが、事情をご説明するなら名乗るしかないでしょう。私はローゼリア。ローゼリア=クライン」
名乗ったことで、家名で貴族だと気づいた王女様だが、他国の貴族の名前など知らなくて当然。よって首を傾げた。
が、流石に第四とはいえ王子はその名前にピンと来たらしい。
「クライン……。確かリングパーク王国の元王太子の婚約者がそんな名だったような……」
あら、やっぱりもう「元」が付きましたのね。ご愁傷さまですわ。
「ええ、その通り。私は元ローゼリア=クライン公爵令嬢、かつての王太子の婚約者だった女ですわ」
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