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第八章 エルシエルの冒険

第一村人発見

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 朝ごはんに魚を食べ、昼食はお湯のみで済ませ、夜暗くなる前に狩った魚で早夕飯にした。
 村はまだ見えて来ない。

 けど、川沿いを一日歩いてその流れを頭で図面化し、記憶している地図と照らし合わせ、おそらく明日の昼には村が見えてくるのでは、と期待している。

 既に足は限界に近かった。
 だから早めに休息を取る。

 一夜明かした翌朝。

 既に疲れすぎてて空腹加減も分からなくなりつつあった。
 今川に入れば踏ん張りきれずに流されそうで、お湯だけ飲んでお腹を満たした。

 それでも立ち上がり、村を目指して歩く。

 一歩踏み出すごとに、次の一歩を踏み出すのが辛くて仕方なくなる。
 豆が潰れて既に靴は血塗れだ。

 ここまで肉食獣にであわず済んだことだけは幸運だったと思う。
 できればこれからも遭遇せずにいられるとありがたい。
 もう、走れるとは思えないから。

 もう、疲れて下しか見られない。
 ごくたまに立ち止まり、周囲を見回し村らしき影を探すのが精一杯。

 休みたいけど、今座ってしまったらもう立ち上がれそうにないから歩き続ける。

 どれ程あるき続けただろうか?
 遠く、犬の吠える声がする。

 ……果たして、犬か狼か、どちらだろう?
 犬だとしても野犬だったら……

 咄嗟に身を伏せ見つかる可能性を少しでも低くする。
 幸い声がするのは風上の方角だから、匂いで発見される事は無いと思いたいが……

 じっと目を凝らしていると、地平線の向こうからもこもこしたものが見えてくる。

 あれは……

 やがてベェベェ鳴く声が風に乗ってエルシエルの耳に届く。
 あれは羊、なら犬は牧羊犬か。なら、羊飼いが側に居るはず!

 エルシエルは気力を振り絞って立ち上がり、もう一度歩き出す。

 「すいませーん!」

 三日ぶりに声を出す。
 声に反応した犬が、こちらに向かってひたすら吠え、駆けて来る。
 羊がある一点を中心に固まり、その中心からひょこりと頭が飛び出した。

 「ジョン、戻って来い!」
 笛を鳴らし、怒鳴る男。

 第一村人発見だ。

 よろよろ近寄るけど、警戒心たっぷりな髭モジャのおじさんは、フォーク――カトラリーのフォークでなく農具のフォーク――を私に突き付ける

 「何者だ?」

 「私の名前はエルシエル、姓はまだ元のプランツだけど、最近闇の竜王の花嫁に決まったから、近々変わる予定よ。
 ここにいるのはちょっとした事故で遭難したからよ。
 ねぇ、お願いだから村に案内してもらえないかしら……。丸三日歩き通しで、もう体力が限界で……」

 「信じられっか! 突然現れて竜王の花嫁だぁ?」

 グルグルと飼い主の足元で犬も威嚇の唸り声をあげ続ける。

 「俺達に、余所者を助ける余裕はねぇ。他を当たってくれ」

 やっと見つけた希望に見放された。
 絶望にかられたエルシエルは無意識に胸元を探った。

 陛下に貰った、首飾りを――
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