奴隷と過ごす毎日

宝。

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16話時は遡り、一方その頃

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ハルトside
今日さえ……乗り切れば……
「ハルト……ホントにだいじょぶ?」
「ああ、だいじょぶ……ダイジョブ……」
「……」
だって、これさえ終われば……

サラサラとペンの音だけが部屋に響く。その手は淀みなく、複雑な文章を淡々と書き連ねていく。だが、その手を動かす本人の目は
「ハルト……ヒッ!」
幼なじみのレイですら思わず小さく悲鳴を上げてしまうほど、澱んでいた。
ハルトがここまで頑張るのには訳があった。というのも、最近家で家事をしながら待ってくれている奴隷、シロナとまともに話せていないからだ。彼女は今も屋敷内の掃除や洗濯をたった1人でこなしているのだろう。それを僅かにも労うこともできずに2週間という時間が経過してしまった。
ハルトの仕事は春先のこの時期が最も忙しいとはいえ、これではまったくもってダメダメである。

そうしてペンを片手に書類を書き上げること3時間。午後10時半を時計の針が指すころ、遂にハルトの手が止まり、
「終わっ……たぁ……」
長い長い戦いにようやく終止符を打った男のなんとも覇気のない終戦宣言を、それまで特に焦る必要の無い仕事を適当にこなしながら待っていた男と女、即ち
「レイ~ユート~終わったよ~」
「お疲れ様ハルト」
「ようやく終わったね」
彼の幼なじみことレイはハルトの座る椅子の傍らへと進みながら、軽い雰囲気を纏った優男改めユートは薄い笑顔を浮かべながら、それぞれなりの労いの言葉を口にした。
「うん……やっと、これで……シロナと……」
言葉の節々に間は、ハルトの疲れを雄弁に物語っていた。
そこまで言ったハルトの上体がぐらりと揺れ、次には真横に倒れた。
もちろんそこにはレイがいる訳で、必然的に
「えっちょっ!ハルト!」
コメディならまず間違いなく擬音とホコリが一面に描かれていただろう。
かくして生み出された光景は
「わーお大胆だネ」
「ハルト重い!退いてよ!」
ハルトがレイを押し倒し、それをユートは口笛交じりに冷やかすという、なんとも混沌極まるものだった。
「ちょっとハルト?聞いてる?」
「ハルトーそろそろ退いてあげなー」
しかしハルトからの返事はなく、2人がハルトの顔をのぞき込むと、ハルトは

顔面蒼白で気を失っていた
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