星の迷宮と英雄たちのノスタルジア

いわみね

文字の大きさ
35 / 38

第35話 灰色ドドリス

しおりを挟む
 ─王都出発から6日目─

 私たちは今日も朝から東へ進路を取っている。
 南側の遠くには、柵で囲われた広大な農場が広がっているが、見た目に人影は見当たらず、柵もあちこち途切れて見える。

 私たちが進む道は、もとは馬車などが走ることを想定して幅広に取られているが、整備は追い付いておらず、途切れ途切れになっていた。

 先へ進むほど地面の土は白っぽさを増し、乾いた砂が道にまで積もっている。
 道中で何度か魔物と対峙しながら数刻が経つ。
 太陽の位置は高くなり、砂が光を反射し照り返すように日が強く射す。

「ここらで休もう。かなり進んだ」
「そうだな、ダナス農場が見えている」
 ガイアスくんとジャックくんが農場の広がる方角を見た。

 雨が降らない地域なのにやっていけているのだろうか。
 乾燥に強い植物というのを選んで、地下水を汲み上げて水をどうにかできているのかもしれない。
 魔力だけで水をなんとかするのは、広すぎて難しいように思えた。

『島』からやって来た私と違い、ガイアスくんたちにとってはダナス農場のある風景は当たり前のことらしく、ロデリックくんやエレイナさんたちも、距離の確認以上に気にする風もなく、昼食を兼ねた休憩の準備が始まった。

 手頃な石を集め、ガイアスくんが釜戸を作る。
 魔物と魔獣対策に結界を張り、シナップくんがテーブルと椅子を用意してくれた。
 私はロデリックくんとエレイナさんとで、野菜とお肉を切り分け、下ごしらえの手伝いをする。
 そうしているうち、私の方も街から離れた農場が気にならなくなった。
 予め作って凍らせ保存しておいた魔雉のスープを、鍋に入れて温め直すと辺りに良い匂いが漂いはじめる。
 匂いに敏感な肉食魔獣が、嗅ぎ付けてやってこないかと心配になるほどだ。
 そう思っていると冗談ではなく、本当に匂いを嗅ぎ付けて周囲を魔獣に囲まれている。
「バッシュ、ノア。この結界はこの数を放っておいて大丈夫なのか?」ジャックくんが尋ねた。
「一応、大丈夫ですが、ちょっと……落ち着きませんね」

 魔獣が20匹ほど、ぐるりと結界内にいる私たちを取り囲んでいた。


 ◇

「……とりあえず目を合わさないようにして食べよう」
「そうね」
 私たちの周囲を取り囲んでいる小さめの魔獣たちが、結界の壁に体当たりをしている。結界の壁に反撃するような機能はない。
 結界の壁に触れても、痛い思いをしないことがわかった魔獣たちは、どんどん行動が大胆になってきている。
 数も増えている。
 ジャックくんが大きめの四角い塊の焼いた肉を口に入れると、それを見た魔獣たちがなぜか一斉に口を大きく開けてバクッと閉じた。
 かと思えば、ガイアスくんやシナップくんがお肉を口に美味しそうに頬張ると、物凄い形相で牙を剥き出し睨み付けたり咆哮する。自分たちの食べ物を奪われているとでも言いたげな憎悪すら感じる。
 魔獣はこの辺りに生息する灰色ドドリスという、比較的小さめの肉食魔獣だ。
 小さめと言っても、一般的な人の子供より大きい。
 普段は穴を掘ってその中で暮らしているという。
 結界の壁の前で一度、エドくんが話そうとしたようだけど、
『ぜんぜん話を聞かないのだー』と言って戻ってきた。
「今のところ、肉は足りてるしな」
 ジャックくんがスープを飲み干して器をテーブルに置き、別の肉料理を野菜ごと食べはじめた。
 結界の周りには40匹ほどの灰色ドドリスが集まっている。
 ここと農場の中間辺りにねぐらを持ち、小動物を狩ったりしているのが、匂いに誘われ出てきたみたいだ。
 場所によって家畜を襲うので、一部では嫌われているが、作物を荒らす草食や雑食の魔獣や動物の数をおさえるので、基本的に益魔獣と考えられている。
 大抵の『魔物地図』に“魔獣”として載せられている。
「僕らがここで休憩しはじめてから、ドドリスが集まるのがちょっと早かった気がするんだけど」
 バッシュくんが言った。
「確かに、半刻ほどで穴の中のねぐらからここまでくるには、かなりの速さが必要だが、やってやれないこともないんじゃないか?」
 ガイアスくんが言うと、バッシュくんが少し首をひねった。
 匂いに誘われ出てきたと思ったけれど、別の理由で灰色ドドリスがこの辺りまで来ていて、潜んでいたかもしれない。
「灰色ドドリスはこの辺りの魔獣ですが、どちらかといえば、小動物の多い農場側で活動するんです」
 バッシュくんの疑問を補足するようにノアくんが言った。
 ロデリックくんが食後の甘味に果物を食べながら、
「理由はどうでもいいが、さすがにこれだけ集まると結界から出るとき邪魔だ」と言った。
 するとシナップくんが、「彼らの目当ては肉だけなのだ。そういう意味では話は単純なのだよ」と、続けた。

 ◇

「ではエド、たのむのだ」
『わかったのだ』

 食事を終えて、エドくんが結界の壁際まで行って、灰色ドドリスと向かい合っている。
「……エドは何をしてるんだ?」
「交渉なのだ」
「話しかけても聞かないんじゃなかったのか?」
「私が“威圧”するか蹴散らせば早いぞ」
 ロデリックくんが言った。
 時間的には、それが一番早そうだし、狩ることに規制も無いくらい一応数がいるんだけど、益魔獣と考えられているんだよね。
 それでバッシュくんたちが躊躇ったのだ。
「さっきはエドが自分だけで話しかけてしまったのだ。単にあっちへ行けというのでは聞くわけ無いのだ」

 シナップくんが私たちに説明すると、壁際からエドくんが戻って言った。
『シナップ、“証拠”を先に寄越せって』
「話すためだけに前払いなのだ……」
 シナップくんがちょっとうなだれた。

 そしてアイテムバッグから袋を取り出し、それを台の上に置いて、中のものを別の小さめの袋に分けると小さい方を持ってバッシュくんと一緒に灰色ドドリスの方へ近づいて行った。

 シナップくんが交渉に使ったのは、エドくん用のごはんだ。
 バッシュくんが結界の一部だけ開けて、シナップくんが袋を外に出した。
 私たちも近づいて様子を見ていると、灰色ドドリスの何匹かが、驚いたように私たちから距離を取った。
 あれだけ攻撃性を向けておいて、実際にこちらから近づいて来られると思わなかったようだ。
 しかしあきらめたわけでもなく、周りを囲む状況は崩さない。
 各々自由に動いているように見えて、統率が保たれているのかもしれない。
 群れている灰色ドドリスの一匹が、袋を咥えて振り回し中身をばら蒔くと、近くの灰色ドドリスが中から出てきた丸に近い形のエドくんのごはんを、特に警戒する風もなく、あっという間に食べてしまった。こちらは私たちから距離を取ろうともしていない。
 袋を一番に咥えて振り回した灰色ドドリスは、食べずに他のドドリスの様子を見ている。
 それから私たちに再び近づいた。

 ◇

 太陽が傾き、日が陰る時間帯。
 私たちは灰色ドドリスの群れと並走しながら東へと進路を取っていた。
 ドドリスたちの速さに合わせるため、私はバッシュくんたちに支援魔術を施してもらっている。
 私が使える支援魔術などよりはるかに強力で、持続時間も長い。
 ジャックくんとロデリックくんはそのままで、ガイアスくんとエレイナさんには私の支援魔術『走者』が発動している。
 速くするためというより、補助によって疲労を軽減する意味合いの方が強い。
 シナップくんと、バッシュくん、ノアくんには『強脚』を使っている。今日3度目の支援魔術だ。
 ジュエルスライムのエドくんには、誰も何もしていないけれど、速い。私は走りながら、エドくんの方を見た。
 遅れることなくシナップくんの傍にいるんだけど、まだ速度を上げることが出来るのだろうか。
 先頭はロデリックくん、最後尾をジャックくんが走る。
「日が落ちる。この辺りで休もう」
 ガイアスくんが言うと、エレイナさんが振り返り言った。
「マクスさん、ジャック!休める場所へ移動しましょう」
「了解!」
 リリン!と辺りにエドくんが音を発した。
 それを合図に灰色ドドリスたちが速度を落とし、私たちのやや後方まで下がった。
 彼らはシナップくんとの交渉によって私たちの守護を引き受けてくれた灰色ドドリスだ。
 20匹ほどで結界の周辺を囲む彼らの注意は、昼間と違い外側に向けられている。
 ここまでの道中も、彼らの鋭い察知能力のおかげで楽に進んで来れた。
「休憩中に魔物を気にしないですむのはよかった」
 ガイアスくんはそう言うと、薄く削いだ肉を盛ったお皿をシナップくんに渡した。
「ありがとうなのだ、きっと喜ぶのだ」
 シナップくんはお肉を受け取ると、灰色ドドリスのためのごはんが入った袋を持って行った。
 ロデリックくんは
「肉は取られなかったが、エドの分を巻き上げられている」「これでは鍛練の効果も出にくい」など不満を漏らしたけれど、夜の警戒が楽になる点と、移動距離が伸ばせることで譲歩してくれた。
 ジュエルスライムのエドくんと、シナップくんによる『交渉』の賜物だ。
「灰色ドドリスは1匹ずつは強くもないが、この数だとそこら辺の魔物にやられたりはしないからな」
 彼らで手に負えない魔物や魔獣が現れた場合には、鳴き声で知らされる。
 結界の中に肉料理の良い匂いが漂いはじめた。
 外はもう暗くなっているけれど、結界陣の中は四隅に吊り下げた携帯式灯火魔石ランプと焚き火で、明るさが保たれている。
 晩の料理のついでで、ガイアスくんたちとすぐに使わない残りの肉を切り分け、味付け肉の他に保存用の塩漬けと燻製にしていく。
 味付け肉には肉質を柔らかくする成分を持った果物と野菜を一緒に入れてある。低温で保存すれば、数日で肉はすっかり柔らかくなっているだろう。
 テーブルの上がお皿に盛った料理や飲み物で賑やかになってきた。
 料理を並べ終えて、食事がはじまる。
「いただきます」「いただきます!」
 ロデリックくんは先に席について、ガイアスくんやジャックくんともう飲み物を飲んでいる。

 太陽が沈んだ夕闇の中、魔物の影がちらつく。
 魔力で出来た魔物は灰色ドドリスたちの食料にはならないが、魔物にとって、多分に魔力を持つ灰色ドドリスたちは獲物だ。
 彼らの長い夜が今日もまた続く。
 雨も降らず、小動物の少ないこの地は肉食の獣にとって決して優しい土地ではない。
「棲んでた場所の近くで、農場の持ち主が代わって手入れが行き届かなくなってから、獲物が減ったらしいのだ」
『けど、その前にヒトが来なくなってほったらかしの作物を食べて増えてた獲物がいたから、ドドリスの方は増えてしまったのだ』
「獲物が減ったまま餓える前に、群れを分けて移動しようと穴から出ていたところにボクたちが良い匂いを漂わせて現れたというわけだね」
 シナップくんとエドくんが、灰色ドドリスたちの事情を教えてくれた。

 ◇

「事情はわかったが、何で東に行くんだ?この先はしばらく荒れ地と砂漠だぞ。行くなら西か、せめて北か南だ」
『西は人が近すぎてドドリスは討伐されてしまうのだ。実際に行って逃げ帰った者もいるらしいのだ!』
「北はすでに縄張りを主張してる肉食魔獣がいるのだよ」
「灰色大狼か」
「どの種類を言ってるかはわからないのだ」
 南も似たような理由で止めたようだ。
「彼らは乾燥地に適応してるから、土属性の魔力適正でも水属性の魔力である程度の飲み水はまかなえる。そこで危険は承知で東に旅をすることにしたのだ」
 シナップくんが深皿の底に残った煮汁を、美味しそうに飲み干した。
 ガイアスくんが少し間を置いて言った。
「もし、東にも新天地が無かったら、もとの場所へ戻らず北東へ向かうのか?」
「たぶん」
 アルファルト大陸の北東。
 近くに現れる魔物や魔獣はどれも強力で、現代の人がまだ踏破出来ていない、未知の土地だ。
「灰色ドドリスが生きていけるとは思えんな」
 ロデリックくんが口元を布で拭い、食後の甘味に果物の乗ったお皿を手で引き寄せた。
「水をどうにか出来るなら、砂漠に留まって獲物を探す方がマシかもしれん」
「最悪の場合嫌でもそうなるんだろう」
「元いた巣穴の近くは、残っている数くらいのドドリスなら、生きていけるくらいの獲物は昔からいるらしいのだ」
「逆に言えば、その数以上に増えると困るんだね」
「餓えて、まかなえる数に減るまで待つのは地獄なのだよ」

 ◇

 晩の食事を終えると、ロデリックくんが夜の採集に出かけた。
 エドくんと3匹の灰色ドドリスも、それに付いて行っている。
『食べ物分働くので、警戒は任せろと言っているのだ』
「ほう、盗賊より義理堅そうだな」
 まんざらでもないようすで、ロデリックくんはそう言うと、すっかり暗くなった結界の外へ出ていった。
 新しく手に入れた魔導具を試すと言っていたけれど、その性能までは聞いていない。
 ジャックくんは燻製の火加減の方が気になるようだ。
 宿場町カマルの魔導石店で燻製用の火加減と温度管理が出来る魔導石を見ていたようだけど、買わなかったのだろうか。
 今は使っていない様子だ。
 お肉を入れた深鍋から煙が立っている。
 バッシュくんたちやエレイナさんが就寝の準備をはじめた。
「ドドリスたちのおかげでゆっくりと眠れそうだね」
 結界の外に、寝そべったり歩いたりしている灰色ドドリスの姿がある。
 琥珀色の月第2の月は、少し欠けてきているけれど、まだ満月のように丸く明るく輝いている。
 月明かりのせいか、携帯式灯火や焚き火のせいか、星の数は少なく思えた。
 結界の角に設けた水場で就寝準備を調えたガイアスくんが、私とジャックくんにも声をかける。
 そうして携帯式灯火の明かりだけを残し、私たちもテントに入り、それぞれ眠りについた。

 翌朝。

 目を覚ましテントから出た私は、結界の外で灰色ドドリスたちと一緒に眠るロデリックくんを発見することになる。

 ◇
 
 コトコトと鍋から温かい湯気が立ち上ぼり、朝食用のスープが出来上がってきた。
 テーブルには焼いたお肉と野菜が並んでいる。
「野菜はほとんど塩漬けにしたし、果物も蜜煮に出来てきたからしばらく困らないわね」
 エレイナさんが私とガイアスくんに言った。
 出来上がった蜜煮を容器に詰め、栓で密封する。
「灰色ドドリスたちはロデリック君と晩に狩りをして、今日の朝は食事は要らないそうなのだ」
『もともと、1日のごはんの回数は少ないのだ』
 シナップくんとエドくんが報告してくれた。
 代りに食べれる時にたくさん食べておくらしい。
「それにしても、一晩でえらく仲良くなったな」
 驚きを見せるガイアスくん。
 結界の外で寝ているロデリックくんを見つけたときは私も驚いた。
 エドくんが、灰色ドドリスたちとロデリックくんの間で通訳をしたことで、意思の疎通で困ることが少なかったこと。
 言葉が直接通じないので、互いの行動のみで評価し合うことになったのも、関係に良い影響を与えたのかもしれなかった。
 テーブルの席についているロデリックくんを見ると、先ほどまでついていた砂ぼこりなどはキレイに落とされている。
 バッシュくんたちに「私に対する扱いが雑ではないか」など苦言を呈し、ノアくんが「そんなことはありません」と反論している。エレイナさんが「いつ帰ってくるか判らない貴方を寝ずに待てというのは酷だわ」とピシャリと言った。
 塔型迷宮メイズの通路で使用した『防御の陣』のように、味方の出入りが自在な結界は、四方から魔物や魔獣の攻撃を受けるような状態では破られやすくなるそうだ。
「あれは前方しか魔物と接触する可能性がなく、ガイアスくんたちがいつでも戦える状態だったから出来たんだよ」
 バッシュくんたちの説明によると、結界としての構造上の複雑さは、『防御の陣』のほうが上回るらしい。
 魔物と味方をほぼ同時に判別して、味方のみの侵入を受け入れるというのは、よく考えればすごい機能だ。
 結界の歪みが、魔物と対峙中は常に生じている状態になり、高頻度で修復を行っていたことになる。
 一度発動すると自動で機能するものの、かなりの魔力を持っていかれる魔導術だという。
 するとジャックくんが「一方向だけ同じ状態にできないのか?」と、出来上がったばかりの燻製肉を切り分けながら言った。
「複数の違う構造の魔導術を組み合わせるので現実的では……」とノアくんが言いかけたところで、バッシュくんと顔を見合わせる。
「今すぐは無理だけど、出来ないこともないかも」
 バッシュくんがジャックくんからお肉を乗せたお皿を受けとりながら言った。
「出来るのか?」
「『屈強なコテージ』を参考にすれば」
 テーブルに朝食用の料理が整った。

 ◇

「この燻製肉は柔らかくて美味しいのだ」
「良い匂いだし、すごく美味しいよ!」
『のだー』
「今朝の分はまだあるぞ」
 ジャックくんの視線の先のテーブルの端に、薄切りにされたトントン豚と黒アテルディーテの燻製肉が置かれている。
 保存用だけでなく、すぐに食べる用にも作り置きしているようだ。
「香りも良いし、味もすごく美味しいわ!」
 エレイナさんがそう言うと、ロデリックくんが憮然とした表情でジャックくんを見た。
「ふっ、なかなかやるではないか。だがこれで勝ったと思うな」
「オレはお前と料理対決なんかしてないが、負ける気はない」
 ジャックくんがそう言うと、ロデリックくんの表情が変わった。
「ジャック、紛らわしいことを言ってロデリックを刺激するな」
 ガイアスくんがそう言ってから、スープを飲んだ。
「それはそうとロデリック、何か採集出来たのか?この辺りは乾燥していて、普通の植物はもうあまり生えていないと思うが。西側に引き返したりはしてないんだろ?」
「先の様子をみる意味も含めて東に行った。おかげで砂漠地帯の植物が採集出来た」
「魔物や魔獣はどんな具合だった」
「魔獣や野生動物が少ないことは想定内だが、魔物の数がやけに少ない気がする」
「この先の砂漠地帯は魔物のエサになる魔力資源が少ないという話だ。だがその言い方だと、魔物が少ないのが以前と変わらない、という意味じゃないのか」
「ああ。何度も行ったことがある地域だ。妙だと思うぞ」
 そこまで言うと、皿にまだ残っていた大きめの肉を口に入れ、飲み込んでから付け加えるように言った。
「といっても、砂漠の入り口辺りでここまで引き返している。断定するのは早計かも知れないがな」
 ロデリックくんの移動速度であれば、もっと先まで様子を見に行って帰ることも出来たようだけれど、採集のほうを優先したらしい。
「魔物がいないという意味ではない。数が減っている代りに力をつけている気がした」
「魔物が強くなっているという、噂の信憑性を裏付けるくらいにか?」
「まだわからん」

 ◇

 朝の食事を終えて再び東へ向かう。
 2刻ほど走って砂漠の入り口に到着すると、早速魔物に出会した。灰色ドドリスたちが警戒の声で報せてくれるが、対峙を避けるためには、引き返す以外に無さそうだ。
 バッシュくんたちが魔物探知で周辺を探ると、魔物の数は予想以上に多い。
「数は“少ない”んじゃあなかったのか?」
 ガイアスくんが、皮肉るように言った。
 私たちを囲めるほどの数がいる。
「ふん、そういうこともある」
 ロデリックくんがそう言うと、ジャックくんが私たちを振り返らず言った。
「前より力をつけてるっていうのは報告通りみたいだぞ」
「了解」
 目で確認できる範囲に現れているのは『巨大砂鎧虫』と呼ばれる魔物で、実際に対峙したことがあるのはジャックくんとロデリックくんだけだ。
「『砂漠魔蠍』と同じくらいの脅威度の魔物のはずだが、さっき一撃でソイツを喰らっているのが見えた」
「一撃?」
「たまたま弱ってたのがやられた可能性は」
「……なくはない。だが」
 もとが同じくらいの魔物で、一撃でというのは変だよね。
 こちらが話している間に『巨大砂鎧虫』がこちらに向かってくる。速い。
 今はもう左右前後、上空以外の全方向に魔物がいる。
 対峙は避けられない。
「引き返す気がないのなら、進むしかない」
 ガイアスくんが言った。
 それは灰色ドドリスたちに向けられた言葉だったのだろうか?
 ガイアスくんが『大盾』の技能を発動させた。
 いつ頃からか、ガイアスくんは盾がなくても『大盾』を展開させることが可能になっている。
 バッシュくんたちの支援魔術が私たちに施されたのとほぼ同時に、灰色ドドリスたちが臨戦態勢に入った。
 私が後方に『壁』の魔導石を2つ置くと、魔導石から壁が高く幅広に弧を描くように広がっていく。
 アリオン迷宮のときは隙間を埋めるように壁が出来上がっていたけれど、屋外で使うと街の周囲を囲む高い塀のようになるらしい。それぞれの魔導石から創られた壁は、互いに邪魔し合うことなく壁を形成していく。
 壁の向こうがどうなっているか、私にはもうわからない。
 白金級《プラチナクラス》のロデリックくんが自分で購入した魔導石を実験的に試して、確認した強度だ。
 複数の魔物が一度に攻撃を加えない限り、早々に破壊されることはないだろう。
 出来上がった魔力で出来た壁は、放っておけば8刻で勝手に消滅すると説明にあった。
 解除は生成に使った魔導石による破壊。
「羊君、急げ!」
 前方の『巨大砂鎧虫』が早くも倒され、道が開かれた。
 小さなバッシュくんとノアくんをガイアスくんが背負袋に入れて、シナップくんとエドくんが灰色ドドリスの背中に乗せられている。
 エレイナさんとジャックくんが私の手を片方ずつ持って走り出した。
 ガイアスくんとロデリックくんが、ものすごい勢いで魔物を倒している。
「ジャック!ロデリックはどこを目指してるの!道から少し外れてる」「南東の岩に向かっているはずだ。日陰もある、休憩が出来る」
 走りながらエレイナさんが尋ねると、ジャックくんが答えたので、エレイナさんが私のほうに向きながら「だそうです!マクスさん」と言った。
 シナップくんとエドくんを乗せた2匹の灰色ドドリスが近づいてきた。
「バッシュとノアの魔力探知で、なるべく魔物の少ない隙間を縫って南東の岩場に向かうそうなのだ!」
『暑いから休むのだ。腹ペコだから』
 シナップくんとエドくんは私たちに報告を終えると再び前に出た。バッシュくんたちの支援が聞いているらしく、速い。
 ただそのせいでバッシュくんたちは少し疲れているようだ。
 シナップくんとエドくんを乗せた2匹以外の灰色ドドリスたちも戦闘に加わっているため、足を止める必要もないくらいだ。
 二人も余裕があれば攻撃魔術を使っている。
 彼らの速度で風が起き、砂漠の白い砂が舞う。
 頭から被っただけの布ではこの先の砂漠は無理そうかななどと、なぜか呑気なことが頭に浮かんだ。
 カマルで購入した魔導石で創り出された『壁』がどんどん遠ざかって行く。
 こうして1刻ほど走って、私たちは岩場にたどり着いた。
 荒く削り取られたような巨大な岩は、反り返ったような形状で、乾燥した砂漠に日陰を作っていた。
 近くに同じような岩場が何ヵ所かある。
「ロデリックとオレは、この辺りで見つかった迷宮の調査団の人員として、何度かこの砂漠に来たことがあるんだ」
 一息ついたジャックくんが、岩影に寄りかかるように立って言った。
「この辺に迷宮があるのか?」
「前は入り口があったんだが消えた」
「砂漠の蜃気楼迷宮?」
 ──蜃気楼迷宮
 砂漠でしばしばみられる現象の一つだ。
 別の場所にある迷宮が、あたかもかのように光属性の魔力が見せる現象。
「いや、本物の迷宮だった。入り口が砂に埋もれて見失った」
 ロデリックくんがキッパリと言った。
 岩場の近くにも魔物はいるけれど、岩を嫌うように距離を開けて離れている。以前からそうなのでここまで来たようだ。

「この岩の下に魔力をたくさん含んだ岩か地層がありそうです。それが魔物にとって嫌な性質で、結界のようになっているのかも」
「この下に見失った迷宮があるのかも知れないね」
 ノアくんとバッシュくんが言った。
 ガイアスくんの背負袋から降りている。
 魔力回復薬とお水で一息ついたようだ。
「価値のある迷宮ではないと判断されて、そのまま調査が打ちきられた」
 ロデリックくんがそう言うと、ガイアスくんがうなずいた。
「迷宮を含めたこの辺りの調査が打ちきられたんで魔物が増えたんじゃないか?」

 ◇

 日はまだ高く上がりきらない時間帯。
 たくさん動いて魔力も使ったせいなのか、ジュエルスライムのエドくんが『腹ペコ』を主張している。
「よし、今日はここでゆっくり昼飯にしようか」
「賛成なのだ」
『なのだ!』
 シナップくんが早速、テーブルや椅子を用意している。
 灰色ドドリスたちも日陰に入り休みはじめた。
「ここなら結界を張らなくても休めそうね」
 時おり、暑い風が吹き込んでくるものの、日の当たる場所に比べればかなり涼しい。
 難点は砂ぼこりだ。
「テントを張って防ぐか……」
 そう言ってガイアスくんがテントを出そうとすると、ロデリックくんが止めて、自分の魔導石を使い魔術を発動させた。
 見えない大気の壁が発生して、一時的に砂ぼこりや雨を防いでくれるらしい。
 空中で一瞬光が移動しながら反射したように見えた。
「実際の効果を試すのにちょうど良いいいな」
「結界とは違うのか」
「似てはいるが、バッシュたちの結界のように魔物は防げん」
 しばらくすると風の吹き込みと砂ぼこりが止んだ。
 私たちの出す音が響くようになった気がする。
 ロデリックくんは東の大陸へ向かうと決めた時点で、東西どちらの飛行船乗り場を使っても、砂漠地帯を通る可能性を考えていたようだ。
 誤算だったのは、東の砂漠地帯の魔物の数を少なく見積もっていたことだろう。
 魔力資源が少なくても、人が介在しなければ増えることが出来る程度には資源があるらしい。
「砂漠を抜けるまでバッシュとノアは、俺の背負袋の中にいて移動した方がいいだろう。少しは暑さの体力消耗も防げる。シナップお前は大丈夫なのか?」
「ボクは平気なのだ!」
「無理はするんじゃないぞ」
「うん、なのだ。疲れたらドドリスに乗せてもらうのだ」
「……なんか、それいいな。俺も乗せてほしい」
「……ドドリスがつぶれるのだ」
 シナップくんが気の毒そうに言った。
 ふとみると、日の当たる石の上で、ジャックくんが肉を焼いている。
 日差しの暑さで熱せられた石で肉が焼けている……。

「ロデリック、ジャック。この砂漠を抜ける算段をつけてるなら教えてくれ。場合によっては北か南に1日、2日かけてでも回り込んで迂回する。お前たちの体力だけで考えるな」
 ガイアスくんが少し厳しい表情で言った。
 話しかけられ、ジャックくんが立ち上がってこちらに来た。
 地図上で見て、砂漠は南北ではなく東に向かって広がっている。
 その距離を見ただけで正確にわからないけれど、今の速度で抜けるのに4、5日かかりそうに思う。
 もし魔物の数がこのままかそれ以上だったり、思いのほか砂に足をとられれば、日数は延びる。それを避けようとすれば無理をすることになる。下手をすれば命を落とす。
「砂漠地帯を通ることはガイアス、お前も承知していたはずだ」
 ロデリックくんがガイアスくんに言った。
 エレイナさんがバッシュくんたちとテーブルに料理を運んでいる。「ガイアス、マクスさん、ロデリック、ジャック。あなたたち、お昼の準備を手伝って。大事なことでも、話はそのあとにしてくれないかしら」
 私たちにしびれを切らしてエレイナさんから声がかかった。
「悪いな、今いく」
 私たちもあわてて準備に加わる。
 すでにほとんど調理はすんで、テーブルには料理が盛り付けられたお皿と取り皿が並んでいた。
 私は出来上がったスープを深皿に注いでテーブルに運ぶ。
 ガイアスくんたちも自分の分を運んできた。
 水以外に水分補給に果物が多めに並んでいる。
「いただきます」「いただきます」「いただきますなのだ」『なのだ!』
 昼食のあとは、一度この先の進路を確認し合わなければいけなさそうだ。
 ロデリックくんが使った魔導石のおかげで、砂ぼこりは防がれているけれど、外側を見ると時々吹く風で飛ばされてきた白っぽい砂が舞っている。
 この先はこういう砂が堆積して、深く積もっている場所だらけになるという。つまりこれでもまだだということだ。
 その向こうに岩場を避けるようにしてはいるけれど、多くの魔物が歩き回っている。
 魔物が脅威というよりは、暑さが疲労の原因になって力尽きる可能性が高い。
 少し濃いめに仕上げられたスープが美味しい。

 ◇

 シナップくん、バッシュくん、ノアくんの3人が灰色ドドリスの背に乗って岩が作った影の下で遊んでいる。
 灰色ドドリスは馴れると面倒見の良い魔獣なのかもしれないね。
 ガイアスくんが影を増やすためにテントも張った。
 日が傾くまでこの岩場で休むという計画になっている。
 日中の高い温度を避けるためだ。
「今後は日中を避けた日没後の移動に切り替える」
「気温が低い間に、次の日中に休める岩場まで移動するつもりなんだな」
「その通りだ」
 ガイアスくんの確認にロデリックくんがうなずいた。
 ジャックくんとロデリックくんによると、岩場は地図に描かれている以外にも複数あって、それぞれの岩場との距離は、1刻くらいでたどり着くくらいの間隔だという。
 指し示された場所を見ると、砂漠を東西繋ぐように岩場があるように見えてきた。
「お前たちの距離の感覚をどの程度信用していいのか、ちょっとわかりにくいが……わかった」
 テーブルの上に、ロデリックくんが夜に採集してきた砂漠の植物が並べられている。
 植物はどれも乾燥に適応して水と水属性の魔力を蓄えていた。
「岩場の近くはこういう植物がまとまって生えてたりする」
 ジャックくんが教えてくれた。
「東にもこんな砂漠があるなんて、知らなかったのだ」
 いつの間にか、シナップくんたちがやって来ていた。
 灰色ドドリスの背に乗せてもらったままだ。
「教えなかったからな。砂漠といえば西の砂漠を思い浮かべる」
 ガイアスくんが苦笑して、そう言い訳した。

 西は東西南北に広がる大規模な砂漠で、資源にも恵まれ、迷宮も大小様々見つかっている。
 都市や大きな街がいくつもある。
 東の砂漠に比べると海は近く、漁港もあり、北には山と溪谷、大規模な都市ワルゴがある。
 東に王都、南にはレオパルド領の豊かな環境と土地があり、飛行場も有しているので交易も盛んに行われている。
 その中間にあたる地域にも、小規模な街や村があり、砂漠といえども大勢の人が住んでいる。
 砂漠に適応した大型の草食魔獣もいて、ヒトや荷の運搬などで活躍している。

 ──それに比べると東の砂漠はそれほど本格的な砂漠地帯というほど大きくはない。見つかっている資源も少なく、知られている迷宮もない。
 西の砂漠にはある山や川、大した隆起もなく砂漠を抜けたあとも乾燥した岩場の多い荒れた地域が続く。

「それで、この岩場のあるところを目指して移動すればいいんだね」
 私たちが話してまとめた説明をすると、3人とも納得してうなずいた。
「迂回せずに行けそうか?」というガイアスくんの問いに、バッシュくんたちは迂回しない方を選択した。
 どちらがどうとも言えないせいもあるのだろう。
 南や北へ迂回する道を取っても魔物や魔獣はいるし、距離も大幅に延びる。
「暑さと水の問題が緩和されます。回復薬の準備もまだ十分あります。それなら計画を変える必要はないかと」と、ノアくんが言った。
 エレイナさんが少し心配そうにみると、バッシュくんが「さっきは張り切っていっぺんに魔力を使いすぎただけ」と言って「もう平気なんだ!」と小さな両腕を上げた。
 私が使える魔術の回数を増やしているように、あるいはそれ以上に、バッシュくんたちの魔力も増えていておかしくない。
 体力に関しても同じことが言えるだろう。
 ロデリックくんが能力上昇効果の付与された料理を私たちに振る舞ったのも鍛練も、そういうことを期待したからだ。
 カマルのギルド出張所の所長さんがお土産にくれた特産はちみつも然りだ。
 ガイアスくんが、ふぅと小さく息を吐いた。
「無理だと思ったら、了解を取らずに背負袋に入ってもらうからな」
「はい!」「うん!」「了解、なのだよ」
 岩場にバッシュくんたちの元気な声が響く。

 ──こうして、私たちは計画通りに東への進路を決定した。

 遮るものもなく太陽から注がれる日の光が、白い砂にも反射して熱をばらまいている。
 ジリジリと焼けるような暑さが、日中の移動を阻んでいた。

 ◇

 ようやく大気の温度が下がって間もなくの日が沈む頃合い。
 魔物を倒しながら、南にややそれた先の岩場へ向かって歩を進める。
「この辺りは『砂漠魔蠍』が結構いるな」
 バラバラと砕けるように欠片となった魔物砂漠魔蠍だったものが、微かな光を帯びた塵のようになって消えていく。
 砂漠の入り口付近で数多くいた『巨大砂鎧虫』に取って変わるように『砂漠魔蠍』が私たちの行く手に現れている。
 青黒い魔物の姿が、浮き上がるように白っぽい砂の上を這い回る。時おり沈むように姿が見えなくなるのは、砂のなかに潜り込んで身を潜めるせいだ。
 けれど、バッシュくんとノアくんの眼と嗅覚は誤魔化せない。
「ニ刻の方角に三匹上がってきます」
「了解」
 下から再び砂の上に浮上したところを、ガイアスくんが一度で難なく仕留めて前に進む。
「今のうちに」
「了解」
 近くに見える岩場に向かい、灰色ドドリスたちと共に走る。
『砂漠魔蠍』も『巨大砂鎧虫』も今のところ魔石も素材も落とすようすがなく、惜しいとも思わず前に進めている。

「九刻の方角に五匹だよ!」「三刻の方角に七匹です」
「了解、なのだ」『のだ!』「了解!」「了解」
「よし、追いかけて来てるのも振りきったな。今度こそ行こう」

 私たちは足早に移動を再開する。
 もう大した距離じゃない。
 まだ日中の暑さを残す砂地から、微かな熱気を感じつつ辺りに気を向けると、ぼんやりと光るものがいくつもある。
 ロデリックくんが採集し、持ち帰ってくれたのと同じ、水と水属性の魔力を蓄えた植物だ。
 雫のように垂れ下がる実のようなものをつけている。
 ジャックくんの話では、葉も肉厚で食べることが出来る。
 内側から光って半分透けた葉と実に、光を通さない植物の繊維が、模様のように影を作っている。
 ひとつでもそれなりに大きい。
 岩場につくと、そのすぐそばにも生えていて、手前で見たものより強く光っている。根を深く張って水を吸い上げているらしい。
「これだけ光っているなら、かなり魔力を蓄えていそうだ」
 まだ小さな実は残して、大きく育ったものだけ採集することになった。葉も収穫する。
 実は細くなった部分を切って傾けると、植物が貯えた水が流れて出てくる。ロデリックくんが採集した実から取れた水は、スッキリとした清涼な水だった。
 魔力は生命エネルギーと結び付くことでより生体に干渉しやすい性質に変化するともいわれる。
「明日からは朝少し歩いて日中は休み、夜間に移動するのが中心になる。今のうちにあと2刻ほど歩けるか?」
「大丈夫!」「平気なのだ」
 短い休憩のあと再び立ち上がり、次の岩場を目指す。
 夜になって少し冷えてきた。
 砂漠は昼と夜の気温の差が大きい。

 月明かりと収穫した『砂漠の雫ククステアの実』を灯り代わりに夜の砂漠を進む。

 ◇

 2刻ほどを使って4箇所目の岩場に到着した。
 シナップくんが椅子やテーブルを準備し、ガイアスくんがテントを張る。
 今日はここで夜を明かす予定だ。
 周囲に魔物の影がちらついているけれど、こちらに近づいては来ない。魔獣とも遭遇しない。
 小さな蜥蜴やネズミなどの小動物は、少ないけれどいるようだ。
 ただ、これでは灰色ドドリスたちの食を支えるには足りないだろう。
 辺りの警戒を灰色ドドリスたちに任せて、休息の準備を進めていると、一匹の灰色ドドリスが蜥蜴を捕まえてパクりと食べる姿が視界にはいった。
 バッシュくんとノアくんは野菜や果物の皮を剥き、私とジャックくんとで肉や野菜を切り刻む。
 エレイナさんとロデリックくんが下ごしらえと味付けをする。
 エドくんは灰色ドドリスたちと周辺の警戒にあたっているようだ。
 しばらくすると辺りに良い匂いが漂いはじめた。
 出来上がった鍋の中のスープが揺らめいて、月明かりの反射でキラリと光った。ククステアの実からとれた水を使っているので、ひょっとして何か効能が生まれたのではと、少し期待する。
 お皿に盛り付けられた料理がテーブルに並び、食事の準備が整うと、「ドドリスたちのおかげで助かったから、お裾分け」
 エレイナさんが彼らにも黒アテルディーテのお肉入りのスープを用意した。
「いただきます」「いただきます!」
 食事が始まる。
 ロデリックくんが砂避けに魔導石を使ってくれているので、快適に食事が出来ているし、灰色ドドリスたちのおかげで朝まで安心だ。よくみると、彼らも交代で見張りを行っている。

 夜空を見上げると、星がとても綺麗に瞬いていた。
 遠くにも数多くちらついていた魔物の影がとても少ない気がする。




 ────────
 ────────

 □共有アイテム□

 ◇主な食料の在庫
 内訳(長期保存食料143食分)
『追加保存食70食分』
『保存肉(10袋入り)低温保存中』
『黒アテルディーテの肉20カロ低温保存中』
『塩漬け肉500カロ』『塩漬け野菜400カロ』
『野草』
『ククステア(砂漠の雫)の実』『ククステア(砂漠の雫)の葉』
 ーーー
『塩漬けトントン肉100カロ(低温保存中)』
『燻製トントン肉100カロ(低温保存中)』
『塩漬けコッコ鶏肉100カロ(低温保存中)』
『燻製コッコ鶏肉100カロ(低温保存中)』
『塩漬け魚40カロ低温保存中』
『塩漬け黒アテルディーテの肉1,000カロ低温保存中』
『燻製黒アテルディーテの肉500カロ低温保存中』
『味付け肉黒アテルディーテの肉350カロ低温保存中』
『味付けコッコ鶏肉5カロ冷凍保存中』

 ◇冷凍中
『味付けコッコ鶏肉50カロ』『冷凍魚40カロ』『果物32カロ』『野菜130カロ』『黒アテルディーテの肉1,000カロ』
 ◇蜜煮
『果物40カロ(密封容器80個)』『野菜130カロ(密封容器260個)』

 ◇嗜好品お菓子(魔導系回復あり)、各種調味料、未調理穀物8日分
『カマルの特産品はちみつ3個と焼き菓子セット2箱』
『食堂のぬいぐるみ(中)』『2名食事券』『2名宿泊券』

 ◇魔力回復ポーション(EX102本、超回復74本、大130本、中638本、小947本)
 ◇治癒ポーション(治癒薬EX107本、超回復69本、大880本、中2,060本、小4,563本)、薬草(治癒1,059袋)1,059袋、他

 □各自アイテムバッグ
 ガイアス (魔力回復薬小3本)(治癒薬EX2本、超回復4本、大10本)薬草(治癒5袋、解毒5袋)麻痺解除薬5本

 ジャック (魔力回復薬小4本)(治癒薬EX2本、超回復4本、大10本)薬草(治癒5袋、解毒5袋)麻痺解除薬1本)

 エレイナ (魔力回復薬EX1本、超回復1本、大6本、中1本、小3本)(治癒薬EX3本、超回復3本、小10本)薬草(治癒5袋、解毒10袋)麻痺解除薬1本)

 マクス (魔力回復薬EX3本、超回復5本、大5本、中4本、小9本)(治癒薬超回復5本、大5本、中10本、小18本)薬草(治癒18袋、解毒10袋)麻痺解除薬1本)

 バッシュ (魔力回復薬EX1本、超回復1本、大2本)(治癒薬EX1本、超回復1本)薬草(治癒1袋、解毒10袋)麻痺解除薬1本)

 ノア (魔力回復薬EX1本、超回復1本、大2本)(治癒薬EX1本、超回復1本)薬草(治癒1袋、解毒10袋)麻痺解除薬1本)

 シナップ 『塔にあるもの全部』
 ロデリック『私物とお菓子』

 □背負袋

 ガイアス 『共有アイテム』『バッシュとノアの本』『エレイナ、バッシュ、ノア、シナップの荷物』『食糧』『魔導石』『入門!魔術』『魔術図鑑(魔力紙付)』『マナナの実』

 ジャック (魔力回復薬EX11本、超回復10本、大50本、中210本、小140本)(治癒薬EX1本、超回復85本、大35本、中80本、小120本)薬草(治癒10袋、解毒10袋)麻痺解除薬2本)『もしもの時の燻製肉』『魔導石』『追加保存食23食分』『保存肉(10袋入り)冷凍中』

 エレイナ (魔力回復薬EX3本、超回復10本、大20本、中50本、小100本)(治癒薬EX5本、超回復25本、大30本、中50本、小50本)薬草(治癒60袋、解毒20袋)麻痺解除薬2本、万能薬3つ)『お菓子』『加工魔石(高)』『魔導石』『長期保存食料2食分』
『保存食23食分』『保存肉(10袋入り)冷凍中』『野菜』『果物』『チーズ』

 マクス (魔力回復薬大10本、中100本、小100本)(治癒薬超回復50本、大100本、中200本、小200本)薬草(治癒1,000袋、解毒30袋)麻痺解除薬4本、石化解除薬4つ、万能薬4つ)『草』『魔導石』『図で解る魔導書』『長期保存食料1食分』『ロデリックの魔導書』『追加保存食23食分』『保存肉(10袋入り)冷凍中』

 バッシュ (魔力回復薬EX5本、超回復5本)(治癒薬EX5本、超回復5本)薬草(治癒25袋、解毒5袋)麻痺解除薬5本、石化解除薬1つ、万能薬5つ)『カリカリフード』『魔導石』『長期保存食料2食分』『本』『追加保存食23食分』『保存肉(10袋入り)冷凍中』

 ノア (魔力回復薬EX5本、超回復5本)(治癒薬EX5本、超回復5本)薬草(治癒25袋、解毒5袋)麻痺解除薬4本、石化解除薬2つ、万能薬5つ)『カリカリフード』『魔導石』『長期保存食料2食分』『本』『追加保存食23食分』『保存肉(10袋入り)冷凍中』

 シナップ 『塔にあるもの全部』
 ロデリック『私物とお菓子』『入門魔術』『魔導石』『長期保存食料12食分』『果物』


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

異世界帰りの少年は現実世界で冒険者になる

家高菜
ファンタジー
ある日突然、異世界に勇者として召喚された平凡な中学生の小鳥遊優人。 召喚者は優人を含めた5人の勇者に魔王討伐を依頼してきて、優人たちは魔王討伐を引き受ける。 多くの人々の助けを借り4年の月日を経て魔王討伐を成し遂げた優人たちは、なんとか元の世界に帰還を果たした。 しかし優人が帰還した世界には元々は無かったはずのダンジョンと、ダンジョンを探索するのを生業とする冒険者という職業が存在していた。 何故かダンジョンを探索する冒険者を育成する『冒険者育成学園』に入学することになった優人は、新たな仲間と共に冒険に身を投じるのであった。

スライム退治専門のさえないおっさんの冒険

守 秀斗
ファンタジー
俺と相棒二人だけの冴えない冒険者パーティー。普段はスライム退治が専門だ。その冴えない日常を語る。

酔っぱらったせいで、勇者パーティーを洗脳してしまった

透けてるブランディシュカ
ファンタジー
悪友のせいで酔ったら。(※重複投稿しています)仲仁へび

ダンジョンをある日見つけた結果→世界最強になってしまった

仮実谷 望
ファンタジー
いつも遊び場にしていた山である日ダンジョンを見つけた。とりあえず入ってみるがそこは未知の場所で……モンスターや宝箱などお宝やワクワクが溢れている場所だった。 そんなところで過ごしているといつの間にかステータスが伸びて伸びていつの間にか世界最強になっていた!?

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

追放された『ただの浄化係』、実は国中の魔石を満たしていた精霊姫でした〜今さら戻れと言われても、隣国のイケメン皇帝が離してくれません〜

ハリネズミの肉球
ファンタジー
「おい、城の噴水が止まったぞ!?」 「街の井戸も空っぽです!」 無能な王太子による身勝手な婚約破棄。 そして不毛の砂漠が広がる隣国への追放。だが、愚かな奴らは知らなかった。主人公・ルリアが国境を越えた瞬間、祖国中の「水の魔石」がただの石ころに変わることを! ルリアは、触れるだけで無尽蔵に水魔力を作り出す『水精霊の愛し子』。 追放先の干ばつに苦しむ隣国で、彼女がその力を使えば……不毛の土地が瞬く間に黄金のオアシスへ大進化!? 優しいイケメン皇帝に溺愛されながら、ルリアは隣国を世界一の繁栄国家へと導いていく。 一方、水が完全に枯渇し大パニックに陥る祖国。 「ルリアを連れ戻せ!」と焦る王太子に待っていたのは、かつて見下していた隣国からの圧倒的な経済・水源制裁だった——! 今、最高にスカッとする大逆転劇が幕を開ける! ※本作品は、人工知能の生成する文章の力をお借りしつつも、最終的な仕上げにあたっては著者自身の手により丁寧な加筆・修正を施した作品です。

処理中です...