7 / 38
第7話 魔物の部屋ー1
しおりを挟む
━籠城戦2日目━
はふはふ。モグモグ。ゴクン。
穀物に細かく刻んだ野菜と塩漬けの魚を混ぜ混んで炒めた料理を食べて、熱々の豆スープを飲み干したバッシュくんとノアくんがコクコクとお水を飲んだ。
私たちは今『第2ゲート』で魔冷保存庫に保存しておいた食料、1食分を温めて朝食をとっている最中だ。
バッシュくんたちが、スープの器の底に残った豆と、大きめの器に盛られた炒めた穀物を匙で掬って美味しそうに食べきるのを見届けてから、ガイアスくんが言った。
「今後の計画についてだが、どうする?」
◇
昨日の晩御飯までの私たちが立てていた予定では、日中は前衛のガイアスくんとジャックくんが魔物の進行を攻守一体で食い止めながら、エレイナさんをはじめとする後衛の私たちの魔力に余裕のあるうちは連携して魔物を倒す。
私たちの魔力が減ってきたら、今度はジャックくんとバッシュくんの凍らせる能力で、魔物の動きを鈍らせ、休息の時間を捻出する。
という計画に落ち着いていたのだけど、今朝はその計画に、再度変更を加えようということになっている。
理由は、魔物を凍らせる作業にバッシュくんが参加すると、ものすごく長い時間、魔物の動きを止めることが出来ることが判明したからだ。
バッシュくんの魔力を消費するので2人の連携魔術である『二重奏』には頼りにくくなるし、気温もいっそう下がるわけだけど、反面長い時間魔物の動きを止めることが出来るので、『拠点』に戻って休息がしっかりとれる、という利点がハッキリと生まれている。
籠城戦開始前の、ジャックくん、ガイアスくんのどちらかが前衛として残って魔物と対峙し続けることを余儀なくされる戦略に比べると、おそらく2人の負担は軽減するはずだ。
しかも、うまく行けばそんなに日にちを費やさずに1番手前の魔物の部屋にある、『装置』の鍵を解錠するための魔術鍵が1つ、手に入るかもしれない。その上魔物の部屋の広さも確認できる。
部屋の広さが確認出来れば、魔物の総数も想像しやすくなる。
数がわかれば先の計画もたてやすくなる。というのが、昨晩見張りの最中で私とガイアスくんが考えたことだ。
基本的な戦略に変更はなく、倒せるなら倒していく方針はそのまま。
「その計画が私も良いと思う」「ボクも」通路の様子を見に行って戻ってきたエレイナさんとノアくんも賛成してくれた。
あと、この計画はジャックくんとバッシュくんの2人の能力が不可欠なんだけど。
私達の視線がジャックくんとバッシュくんに自然に向かう。
それに気がついた2人が、揃って「そのやり方で行こう」と言ってくれたことで、話は決まった。
早速『第2ゲート』を出て通路へと向かうと、通路の氷は昨夜に比べるとさすがに解け始めている。それでも昨夜の晩御飯時から半日ほど経つはずの時間で、ようやく魔物達が動き始めたというところだ。
現在、前方すぐそばに大小犇めく魔物の数、凡そで1,000体あまり、私たちから見て手前から2番目の扉までの魔物も合わせれば概ね3,000体から4,000体くらいいるのだろうか。
奥へ行くほど魔物の渋滞はひどく、その数を正確に把握することは難しい。
「それじゃあ俺が前に出て魔物を引き受ける。その間にジャック、バッシュ頼む」ガイアスくんがそう言って一度剣で前方を凪払ってから『大盾』で前に前進した。
それとほとんど同時にジャックくんが前方に素早く移動する。その隙を狙うようにこちらに突進してきた魔物を、待っていた私が地属性魔術『アースバインド』を発動させて魔物を捉えた。
前へ行ったジャックくんがガイアスくんが剣で凪払ったことでわずかに生じた空間に素早く回り込んで、奥へ進んでいる。
彼はいつの間にか、武器を2本の短剣に変え、回転するように魔物を斬り倒し、2番目の扉に到達したところで、2本の短剣の両方に『氷結』を付与した。
奥の魔物たちの動きは活発で、たちまちジャックくんの周辺を魔物たちが埋めつくさんと飛びかかる。
それに対してジャックくんは流れるような動作でかわし、剣だけではなく足でもって応じた。蹴りでなぎ倒された魔物が扉側に力ずくで押し込められ、まとめて『氷結』で魔物を凍らされていく。
そのまま近くの魔物の動きをジャックくんが鈍らせたところで
「ジャック君、行くよー!」バッシュくんの元気な声が私の少し後ろから聞こえて、ジャックくんが片手をあげた。
するとジャックくんの近くにいる、動きの鈍くなった魔物の頭上で水滴が雨のように降り始め、魔物たちがその雨に濡れていく。
その頃合いでジャックくんが『氷結』を付与した短剣で再び魔物たちを倒し始めた。
倒しきらなかった魔物たちは、凍りついて動けなくなっている。ジャックくんの『氷結』だけで凍らせているよりも強固に魔物が固まっているのがわかる。
2番目の扉付近の魔物全体にほどよくバッシュくんの水属性魔術の水がかかったところで、続いてバッシュくんも凍結の魔術を行使した。魔物たちが次々と2人に凍らされていく。
ジャックくんの方は凍った魔物を時々奥へ投げ飛ばしながら次々と自分の周囲の魔物をさらに凍らせてしまう。
そうして凍らされた魔物で障壁が形成されたことで、2番目の扉を境に魔物がこちらへ向かってこれなくなり、続いて1番目の魔物の部屋の出入口もジャックくんとバッシュくんによって凍らされて塞がれた。
それまでの間はガイアスくんの大盾と私の地属性魔術で魔物の動きを止め、エレイナさんが風属性魔術でまとめて魔物を倒しきって、ついに私たちのいる位置から1番目の扉前の通路に、魔物のいない空白地帯が出来上がった。
床には魔石や素材、氷の欠片の他に棚や容器の残骸が少しだけ散らばっている。
それでようやく扉が開くのを押さえる障壁として使っていた棚のほとんどが、近くに見当たらなくなっていることに私は気がついた。
ジャックくんが時々魔物を投げ飛ばしていたので、そういう中に障壁に使った棚などの一部も通路の奥へ投げていたのかもしれない。当たった魔物はダメージを受けたかもしれないと思うと、私は少しだけ気の毒な気がした。
通路は再び極寒地帯さながらになっているが、他の魔物が拾って回復すると厄介なので、魔物が動けない今のうちに、あちこちに散らばった小さな魔石の欠片を拾っていく。
ここの魔物は倒されると魔石や素材を落とす代わりに、傷ついてもほとんど黒い霧を出さなかった。
ガイアスくんたちによると、魔物にはそういうタイプが多いのだという。
肉体となるような物質で体が出来ているように見えても、それらが実際には魔力で出来ていたり、そうでなくても魔力に浸食されることで実体を失っていることも多いのだという。
「魔物は大きさや見た目よりも軽いことが多いから、派手に吹っ飛んだりもする」
要するに肉体的な質量は魔力に置き換わって、物質という観念で見た時はスカスカになってしまっているのだ。
そういえば魔力だけで実体を持たせるには、ものすごく密度を上げて安定させないといけないと聞いたことがある。
水の多い場所で魔術によって飲み水を用意するのと、水のない場所で飲み水を用意するのとで、魔力の消費がなぜ大きく違うのか、疑問に思ったとき、そんな風に教えてもらった。
両者の違いは、水の多い場所で飲み水を用意する際、術士が己の魔力だけでなく周囲の水を集めて利用できるのに対し、水気が少なかったり、水が無い場所では術士が自身の魔力だけで水を創り出さなければいけないことだ。
前者ではすでにある水を集めたり、水の素になるものが水になるように働きかけるために魔力を使用しているので、それほど多くの魔力を必要としないですむが、後者では“水”を魔力によって作り出しているため、作りたい“水”の分だけ魔力が必要なのだ。
特に飲み水の場合、ヒトが摂取するもののため、水の素になるものを、より丁寧に魔力によって作り出さなければならない。そのため術士はより高度な技術と魔力を要求される。
ちなみに、ここの魔物が落とした魔石の多くは半透明の比較的透き通った半貴石に近い見た目のもので、氷の欠片に混ざって見つけにくいときがあったり、白く濁ってゴツゴツとした磨く前の原石のようなものもある。
小さくても、密度の高い魔力の塊だ。
普段は目に見えない魔力が実体を持って、固さや重さを維持している。
通常、魔力そのものが固まった魔石は汎用性が高く、値が付きやすいが、ここで手に入った魔石はどれも小さい上に品質からも宝石のような価値は付かなさそうに思えた。
素材の方は今は値が付かなくても持ち帰れば私の友人が喜ぶに違いない。5種類とも、稀にしか見つからないものだ。
ここの魔物からしか手に入らない素材の可能性が高い。
依頼人である商人ギルドのデビスさんに良い報告が出来そうだ。
全員で床に散らばった魔石や素材をある程度拾いきったと思えた頃、私が時刻魔導具を見るともう昼を過ぎている。
まるで見計らったかのように「寒い!!腹も減った」
とガイアスくんが悲鳴のような声あげ、それを合図にして、私たちは『拠点』に戻りお昼御飯にすることにした。
昼食を終えたらいよいよ魔物の部屋へ突入だ。
◇
昼食を終えて1番目の扉の内側に入った私たちを待っていたのは、魔物の群れではなく、1体の、いや、1人の魔物。シナップと名乗る1人の魔物だった。
厳密に言うと、魔物の群れもいるにはいたんだけれど、それは扉の内側へ入ってすぐの辺りで終わったのだ。
私たちが部屋の入口付近で凍りついた魔物を退けて部屋に入ると、中でも私たちを襲ってくる魔物たちが行く手を阻み、牙と爪で襲いかかってきた。
ところが予想に反して魔物が数多くいたのは扉入口入ってすぐの場所だけで、魔物の数は私たちが警戒していたよりもうんと少なかったのだ。
襲ってくる魔物を倒し終えて、魔物によって遮られていた部屋の中の様子を確認できるようになると、私たちの視界に現れたのはだだっ広い部屋。
明らかに『ロビー』より広いけれど無限に広がっているというわけでもなく、明るいクリーム色の天井があり、大理石模様の白に近い茶色の床に、綺麗な大理石模様の暖かい色調の壁。
その中央に、物語に登場する悪魔を思わせる風貌の、小柄な人物が立っていた。
深緑色のフードのついたローブと、いくつか装飾品を身につけて私たちの方を向いている。
それが1番目の魔物の部屋で私たちが出会った魔物、『シナップ』だった。
身に付けているもの以外の特徴だけをあげていくなら、先ほどまで私たちに襲いかかってきた魔物に似ているが体格は小さい。ヒトであっても、始祖獣によっては見た目が魔物と似通うことはあるから決めつけることもできない。
黒い霧も纏っていないし、小柄な体格だけでなく、よく見ればここの魔物ともずいぶん違う。
仮に魔物であったとしても、こちらに危害が及ばないのなら、無理に争う必要はない。
ただ、それでは『三郎太』との一件を考えると、とても甘い判断のように思えた。
エレイナさんがバッシュくんたちを抱き上げ、扉入口側に後退し、ガイアスくんとジャックくんが私たちより前に出る。
私たちは警戒しながらも、突然現れた人物の様子を無言で伺うことにした。
「やあやぁやあ!君たちー!君たちが噂の、冒険者だねぇ?」そういうと、彼は自ら「はじめまして!こんにちは!僕の名前はシナップ!こう見えても君たちよりずぅっと年上の魔物だよぉ!!以降があれば、よろしくね!」
思いがけず明るい調子で話しかけられ、ポカンとする私たちをまるで意に介する風もなく、シナップは自ら、自分が魔物だと明かすと、さらに私たちに話しかけてくる。
耳や鼻は尖っていて皮膚は赤黒く、瞳は金色で瞳孔が小さい。指や先へ行くほど尖り爪は長く鋭い。
耳には幾つもの飾りが付いていて、首には飾りをかけている。
シナップという魔物はおどけたようにポーズをとると、言った。「まぁまぁ、どこでもいいから、遠慮無く、好きなところへ座りなよ!自分のうちだと思ってさ!!」
彼が指を指すとそこに突如、椅子やテーブルが現れた。
魔術が使える魔物は総じて強いとされることは私でも知っている。その上、自分が欲しいものを魔力で創って出した。
見せ掛けだけの幻でないなら……。
バッシュくんたちが防衛魔術を発動した。
「そんなところでボーッと突っ立ってないで、ささ、すわりたまへよ!ああ!これは僕としたことがなんてことだ!とんだミステイクだね!気がきかないにもほどがあるよねぇーー!」
今度はテーブルの上に紅茶やクッキーが7人分現れた。
「さぁ、たべたまえ!のみたまへ!おや、おきに召さない?では求肥豆餅なんてどぉかな。久しぶりの侵入者だからねぇ!たっぷりとおもてなしと行こうじゃないかって話さーーー!」
シナップという魔物は私たちの警戒心を顕にした態度には構わず、サッと椅子に腰かけて一方的に話し始めた。
声の調子は先ほどよりも落ち着いている。
「『創世記』によれば、古来の女神ヴェルメラはこの世界のどこかに、我々のいるこの地とは別の、もう1つの女神の地を創られたと記されている」
私たちはたったまま、黙って話を聞いている。
シナップが言っている『創世記』というのは、おそらく『創世記テラ』と呼ばれる作者不明の古い創作物のことだ。
それは太古に書かれたもので、発見から現在まででも、内容の全ては解読されておらず、現在の言葉に訳されているのは全文のほんの一部分だといわれている。
それでも古くからこの創作物に登場する神々の信者がいるくらい、人々の間で影響力があり、地域によってはまるで聖書の如く扱われていて、時に言語、時に国のあるべき姿にさえ影響を与えてきた。
今の人が読めるように訳された文章だけでも相当な量の読み物となっている、神々を信じる信奉者にとどまらない、人気の創作物の1つでもある。
その『創世記テラ』には、この世界は古代の神々によって創造されたと描かれており、私たちのいるこの地は、その神々のうちの1人、“女神ヴェルメラ”によって創造されたと記されている。
「『創世記』によれば、われらの神は愛ゆえに1つに〈魔力〉を、愛ゆえにもう1つには〈試練〉を与えた」
一体何を言いたいのだろうか。
シナップが話しているのは、創世記に登場する女神ヴェルメラの章の解釈についてだと思われる。
創世記の女神ヴェルメラについての章の中で、女神ヴェルメラは2つの大地を創造した際、一方に充分な魔力を与え、もう一方から試練として魔力を奪ったと記されている。
女神ヴェルメラは大地を創造した際に自らの魔力も使ったため、創造した地にも自然に女神ヴェルメラの魔力も混在することになった。
ところが創世記の中で女神ヴェルメラは、一方の地からは、その僅かに混ざった自身の魔力さえも試練として取り上げてしまうのだ。
しかし試練を与えられた方の大地の生命は魔力の無い世界で能動的に次々と試練を乗り越え、やがて私たちと同じような人類が生まれ、高度な文明を築いていく。
その章の女神ヴェルメラの行いの動機について、〈愛ゆえに〉そうした、という解釈がある。
創世記の作中において女神ヴェルメラの真意までが直接語られているわけではない。
シナップが1人で話続けている。
「魔力を与えても奪っても、その両方が〈愛ゆえに〉為された行為だというのなら、この世で最もわれらの女神に〈愛されない〉のは誰なんだろう?!」シナップは大業にそう言うと、懐から1つの鍵を取り出した。
その鍵を私たちに見えるようにして顔の前に掲げて持ち手部分の穴から私たちを覗く仕草をして見せる。
「この遺跡の装置の鍵か?!」私たちが思わず声を出して聞くと、シナップは可哀想なものを見るような、それでいて小馬鹿にするような、独特の目付きで、私たちを見た。
「ここで永遠にさ迷うといいよ。ああ、でも君たちがわれらの女神に“本当に”愛されているのなら、きっと出られる」
そう言うと、鍵を持ったまま、かき消えるようにいなくなってしまった。
「?!!」
「装置の解除鍵が、持っていかれた……?」
シナップが姿を消すと、少しの間を置いただけで、私たちの周囲、四方八方そこらじゅうが魔物だらけになっている。
いなかったはずの魔物が突如現れた。
私たちか魔物、どちらかが転移でもさせられていたのだろうか?!
【アースバインド!!】咄嗟に私が地属性魔術を発動させたものの、間に合っていない!
【大盾!】ガイアスくんの防御技能『大盾』が展開して広範囲の魔物が弾き飛ばされた。
【焔!】ジャックくんの炎系の攻撃技能が魔物たちを焼き払っていく。
「ガイアスくん!みんな!」
エレイナさんがバッシュくんたちを抱えて、魔物から庇うように身を屈めている。
数が多すぎる。
ガイアスくんとジャックくんと私がエレイナさんたちを取り囲み、そこでようやく、バッシュくんたちの防衛魔術によって私たち全員が護られていることを思い出した。
とはいえ、魔物の部屋の中央で大量の魔物に囲まれている状況に陥っている窮状に変わりはない。
しかも魔物に装置の解除鍵の1つを奪われてしまった。
◇
「考える前に一度ここから出よう」
ガイアスくんが『大盾』を発動させたままで言った。
『大盾』は前方の比較的広い範囲の魔物からの攻撃を受け流すことが可能なガイアスくんの技能だけれど、背後や真上からの攻撃には対応が難しい。
そのためバッシュくんたちをエレイナさんに任せた状態で、私とジャックくんの2人で、後方から襲ってくる魔物を防ぐことになる。
ガイアスくんに前方の安全確保を委ねながら、私たちは後ろを向いて後退する形だ。その間はエレイナさんが攻撃魔術『風刃』で襲ってくる魔物を打ち払い、バッシュくんたちが防衛魔術で私たちをサポートする。
「拠点が荒らされてる可能性があるな」
バッシュくんたちの強力な防御結界があるため、すぐに『拠点』内へ侵入されるとは思わないけれど、放って置けば、荒らされてしまうに違いない。
私たちは襲ってくる魔物を倒しきるよりも、まずこの部屋から脱出することを優先する必要がある。
魔物が邪魔で、私には入ってきた出入り口が見えないが、長身のガイアスくんがいるおかげで、なんとか前進する方向はわかった。出入り口が近くにあるのはわかっているのに随分と遠くに感じる。
エレイナさんの『風刃』が一時的に魔物のいない場所を作り出してガイアスくんが『大盾』で魔物を退けたまま前進する。
バッシュくんたちの魔導術の補助を受けながら、ジャックくんが『氷結』、私が『アースバインド』で左右前後からの魔物たちの動きを牽制。
私たちの後方にいる魔物たちが凍り始めたところで、私にも出入口が見えた。入口まで魔物が集まったところで、バッシュくんたちが凍結させて動きを封じ、私たちは魔物の部屋を脱出した。
通路に戻ると、昼前にジャックくんとバッシュくんに凍らされた魔物はそのままで、扉出入口の前に出来た空白地帯にほとんど魔物はおらず、バッシュくんたちの防御結界を魔物が抜けた形跡もなかった。
確認は出来ないけれど、ここの魔物は『侵入者』である私たちに引き付けられて移動していると思って良さそうだ。
◇
私たちが『拠点』の『第2ゲート』まで戻って時刻魔導具を確認すると、思ったほど時間は経っていなくて、まだ日が高い時間だ。とても長い時間、魔物の部屋にいた気がしたのは私の錯覚だったらしい。
休憩場所の木箱の椅子やテーブルを確認して、私はやっと止めていた息をするような気持ちになった。
「寒い」ガイアスくんがそう言って手鍋に水を入れ、炉でお湯を沸かし始めている。
「シナップとかいう魔物のことや鍵を奪われたことも重要だが、それらを話し合うための準備も必要だからな」
と言いながら沸かしたばかりのお湯で飲み物を私たちの分まで用意してくれた。
ガイアスくんから受け取った飲み物とテーブルに飴玉やビスケット、チョコラタ、ナッツ、燻製肉を並べたお皿が1つ。
魔力や体力を回復させる特別な効果が無いけれど、魔物はまだ当分動けないので、休憩を兼ねた間食として、これだけあれば今は十分だ。
各々が好みの物をつまみながら、先ほどまでのことを振り返る。
『三郎太』に続いて、また新たな魔物の出現。
今度の魔物は自分から『シナップ』という名前を名乗った。直接攻撃してきたりはしなかったけれど、鍵を持って消える際、『ここで永遠にさ迷うといいよ』と言い残している。
『鍵』を持ち去ることが私たちにどんな結末をもたらすかもわかった上での行動だ。
「……ああいうのが、全部の魔物の部屋にいたら嫌だね」
ビスケットを1枚食べて、飲み物で喉を潤してから、バッシュくんが呟いた。
本当にいるかもしれないので、厄介だ。
その上『三郎太』も『シナップ』も魔導具かなにかで転送魔術を使って逃げてしまったことから、次に同じような魔物が現れた場合も、転送魔術を使われる可能性が高い。
私たちがあれこれ考えていると燻製肉を食べていたジャックくんが何か気がついたような顔をした。
「ジャック、何か気がついたのか?」ガイアスくんが聞くと、ジャックくんは首をふって、「いや、何か思い付きそうな気がしたけど何も思い付かなかった」と答えた。
「なんだそれ」ガイアスくんがちょっと笑って、バッシュくんたちが「あるあるー」と嬉しそうにした。
それからしばらく話し合った結果、1番目の魔物の部屋はしばらくあのまま凍らせて、魔物が出てこれないように出入口を塞いでおくことになった。
1番目の魔物の部屋には目的の『鍵』はもうない。
魔物が変化したり増える可能性を警戒するなら倒していくことが正解かもしれないけれど、直近で考えれば、残っている魔物に時間を費やす必要は無くなった。
「さてこれからどうするかだが」
1番目の魔物の部屋へ入ったことでわかったことは、事前に手に入れていた見取り図よりも、さらに『ロビー』よりも魔物の部屋は広い、ということ。
今までは『ロビー』の20ノーツ×20ノーツの広さを参考に1部屋に1,600体、通路の距離から広めに見積もって2,000体か10,000体、5部屋で50,000体を予想してきた。
それが実際に部屋に入ったことで、通路の距離から算出した魔物の部屋の広さ、或いはそれ以上の広さというのが、より現実に近いということがある程度確認出来た。
そのせいで今予想される魔物の総数は最低で1部屋10,000体に修正されている。
通路の奥までの距離から部屋の広さを壁の厚さは考えず推測すると50ノーツ×50ノーツ。
通路の距離から算出した部屋の広さも魔物の数が50,000体以上になることも想定していたし、最初からそれも考慮して食料や水も準備してきたわけだけど。
「過密に、しかも折り重なるように増えていたと想定すると魔物の数は2倍以上。魔物同士で踏みつけあってるのを見ると4、5倍。1部屋に50,000体、5部屋で250,000体くらいと考えてもおかしくないのか」ガイアスくんはそう言うと少しだけ顔をしかめた。
良くない方の予想が現実であることが判明し、私たちの準備に充分な余裕があるとは言えなくなったことは、たとえ予想の範疇であったとしても、好ましいことじゃない。
バッシュくんとジャックくんの凍らせる能力のおかげで、全ての魔物を打ち倒す必要が、今のところないのは救いだ。
私が呑気にそう思っていると、ガイアスくんが「遺跡や洞窟に仕掛けられた、人を閉じ込めるようなトラップの類いは、たまに魔物の殲滅が脱出の条件だったりすることがある」
と言ったので、私はぎょっとしてしまった。
そういったことも考慮しながらこれからどうするか。
通路の魔物の凍結が解けて魔物が再び動き出すのが、晩頃。
扉から扉までの距離がおよそ50ノーツ、2番目から3番目の扉の範囲に魔物のいない空白地帯を作るだけで3,000体あまりの魔物をどうにかしなければならない。
これが今私たちが直面している魔物との現状だ。
「1番目の『鍵』のことは一旦無視して、予定通り2番目の部屋に入るか、別の方法を模索するか、どうする?」
ガイアスくんが私たちを見渡して言った。
するとバッシュくんとノアくんが
「時間はかかるけど、『ロビー』と『書斎』『厨房』『装置のある部屋』を資料も含めてもう一度調べてみたい。出来ればここの遺跡の施設内全部」
「それは魔物の部屋も調べたいってことか?」と、ガイアスくんが聞くと、2人とも頷いた。
1度は放っておくことも検討した1番目の魔物の部屋が、探索の対象として再度浮上したことになる。
私たちに異論はない。「手がかりを探し直そう」
少し大変かもしれないけれど、部屋の広さは無限じゃなかったし、魔物の数も無限というわけではない。
もともと鍵を手にいれるために全ての魔物の部屋には行く予定だった。
私の脳裏にシナップが去り際に言い残したことが思い浮かんだ。
『君たちがわれらの女神に本当に愛されているのならきっと出られる』
あれは単なる捨て台詞だったのだろうか?
◇
「準備出来たよ!」「私も」
「よし、なら行こうか」
各々、背中に背負袋を負って、魔力も回復済み。
私たち以外の誰かが入れないよう『拠点』にはバッシュくんたちが結界を追加で構築すると時刻魔導具が夕暮れが近いことを教えてくれているころになっていた。
私たちは『シナップ』のいた『1番目の魔物の部屋』へ向かっている。
2番目の魔物の部屋の入口付近の魔物をバッシュくんとジャックくんが再び凍結させておく。
これで明け方近くまで、私たちは自由に動ける。
続いてジャックくんが短剣に火属性魔術『焔』を付与して1番目の魔物の部屋の入口の凍結を解除した。
何体かが倒され、僅かな黒い霧と小さな魔石が床に落ち、数体がすぐさまジャックくんに牙をむき鋭い爪のついた手をのばす。
【焔】今度はハッキリとジャックくんが短剣を使って魔物たちを切り裂いた。数体の魔物がまた倒される。魔物たちはそれでもただ闇雲に前進しようとしている。
【風刃】後方のエレイナさんが魔物の部屋に向かって風属性魔術を使った。
部屋の外にいるので確認は出来ないけれど、エレイナさんの魔術によって圧縮された空気で出来た刃が魔物を襲っているはずだ。
ジャックくんの技能『焔』は標的に火傷のようなダメージを継続的に負わせる、それがなくても高火力の技だ。
その代わりに魔力を『氷結』よりも多く消費する。
ジャックくんとエレイナさんが魔力回復ポーションを使った。
「この部屋の魔物は風属性で間違いなさそうだ」
魔力をポーションで回復させながらジャックくんが言った。
同時に踏み込むようにして部屋の中へ入っていく。
どうやら中に入れるだけの空間がもう出来たらしい。
「バッシュとジャックが『書斎』で見つけた本に書かれた内容の信憑性が、どうやら高まってきたみたいだな」
ガイアスくんが私とバッシュくんたちを見て嬉しそうに笑いながら、自分もジャックくんの後を追って部屋に入った。私とエレイナさん、バッシュくんとノアくんもあとに続いた。
◇
「暑い。いや、熱い。熱いんだよ。寒さの次は熱さか!」
私が1番目の魔物の部屋へ入ると、入ってすぐの出入口近くでガイアスくんが室温に文句を言っている。
その理由はジャックくんたちに近づいて、すぐに理解できた。
『焔』でジャックくんが戦った影響か、周辺一帯が暑くなっている。暑いというより、熱い。
攻撃対象以外の魔物にもダメージを与えている可能性が高い。
「ガイアス」
「なんだ?ジャック」
「お前はいつからそんなに、か弱くなったんだよ。ちょっと前のお前はもっとこう……タフだったじゃないか」
ジャックくんが残念そうにガイアスくんを見て言った。
「俺が変わったんじゃない!お前の技能が前と違うんだよ」
ガイアスくんがついに言った。
すぐ後ろでは、2人の会話を無視するようにエレイナさんが『風刃』と短弓で襲ってくる魔物を黙々と倒している。
「エレイナはなにも言わないぞ」
「熱くて話すと喉が焼かれそうだからよ」
エレイナさんは熱くて黙っていただけらしい。
けれどその表情に不満は感じられない。
ジャックくんの『焔』による攻撃を受けた魔物はエレイナさんから風属性で攻撃されると周囲を巻き込んで倒れていくので、エレイナさんが少しずつジャックくんと魔物の両方から距離を取り始め、巻き添えの熱気を避けるようにガイアスくんも少し下がった。
ジャックくんにガイアスくんが「悪かった。俺たちに気を使わずにガンガンいってくれ!」と声をかけるのが聞こえたのと同時に熱気が強まる。
それに合わせるみたいにバッシュくんたちが防衛魔術を私たちに次々と付与して行く。そのおかげで熱気がいくぶんか和らいだ。
ガイアスくんの『大盾』が発動したままなので、魔物は前方の広い範囲から私たちの方へまともに近付けない。
私は彼らが戦っている間に、持ってきておいた木箱を出入口のすぐそばに置いて、続けて通路の脇に置いておいた木箱も全部魔物の部屋に運び込んで予定の位置に置いていく。
そこへバッシュくんたちがいそいそとやってきて、置かれた木箱を目安にして、防御結界の魔方陣『屈強なコテージ』を構築していく。
通路に設置した『防御の陣』より最大有効範囲が小さな魔方陣だけれど、『防御の陣』が頭上からの侵入を防げないのに対し、こちらの防御結界『屈強なコテージ』は前後左右はもちろん、頭上からの敵の侵入も強力かつ、まろやかに防ぎ、しかも時間経過で体力と魔力も回復してくれる。
防御層が『防御の陣』より柔軟にできているので破られにくい。救護向きの魔方陣だ。
「4つの魔方陣を、1つの方陣として隣り合わせに使うことで結界の狭さを克服し機能させました」と、ノアくんが分かりやすく私たちに説明してくれている間に、バッシュくんが仕上げに魔力を注いで【屈強なコテージ】を4つとも発動させた。
追加で維持費を支払うと、そのまま使える期間を延ばせるように開発されている。
「もう少し待ってね。術式が完全に発動するまで少し時間がかかるんだ」
そう言われて、しばらく待っていると、バッシュくんたちが構築した陣地の中に、魔力で生成された小屋のような平屋の建物が出来上がった。
バッシュくんたちが、どことなく充実感を感じさせる表情をしている。「欠点は、術者にとって魔力消費と回復が微妙に釣り合わないことと、小屋の中に入ると外側の様子がよくわからなくなること。でも利用人数が多いとお得だから」
そう言ってバッシュくんが目を細めた。
時刻魔導具を確認するとそろそろ晩の食事時の頃合いが近付いている。
前方には部屋の中央に向かい、ガイアスくんの技能『大盾』、エレイナさんの遠隔魔導術による攻撃、ジャックくんの剣技によって魔物のいない空白地帯が増えてきた。
その分、魔力回復ポーションは減ってきている。
ジャックくんはいつの間にか『焔』を使うのをやめて、通常の剣技と『氷結』で魔物と戦っていた。
そろそろ声をかけたほうがよさそうだ。
◇
防御結界『屈強なコテージ』の建物内に入ると小さな厨房があり、厨房と繋がっている部屋が1つ、数人ずつ眠れる部屋が2つのほか生活の基本設備が整っている。「魔力で出来てるから、全部を本物みたいには使えないけど、エネルギーは本物だからお湯が沸かせるし、少しなら水も出せる。材料があればお料理も出来るよ」とバッシュくんたちが教えてくれた。
「魔導研究ギルドと魔導ギルドとの共同で開発中の技術で出来てるんだ」
バッシュくんたちの説明によると、魔力が実体を持った、様々な物質の素となるものと、似たふるまいが出来ることを利用しているのだそうだ。
構築した設備は、説明を聞く限り、火、風、水、土の属性で出来ることは、制限付きではあるけれど、大体実現できている。
私たちは早速、各々の荷物を置いて、食料をコテージの厨房で温める。凍らせた食料を『拠点』から10日分持ってきていて、相談の上で食事量にまだ変更は加えてない。
バッシュくんたちが温めた野菜スープや炊いた穀物、甘辛い煮付けや塩漬け魚を使った料理、燻製肉をお皿に盛って「お疲れ様ー」と言いながらテーブルに並べてくれたので、ガイアスくんもジャックくんもエレイナさんも嬉しそうに食事を始めた。
寝室にはベッドがあって綺麗なシーツや布が揃っている。柔らかくて肌触りも良い。これがみんな、魔力で出来た代替品とは。
食事のあと少しそれぞれ休んでから、就寝の時間まで今度はノアくんたちと一緒に調べものをする。
明け方には通路の魔物たちが動き出すので、それに対応してもらうため、ジャックくんとバッシュくんには先に休んでもらい、私とノアくんとガイアスくんとエレイナさんとで少しの間起きていることになった。
魔物の部屋の様子を見ながら、調べものをするためにここに結界を作ったといって良い。
小さめの小窓から少しだけ外の魔物が見えた。
魔物たちは夜でも動きは活発で、防御結界の陣地内へ入ろうとぶつかったりしている。ここにいることでこうした魔物たちの活動の仕方もわかるかもしれない。
エレイナさんが温めた飲み物を用意してくれた。美味しい。
ノアくんとガイアスくんも美味しそうに飲んでいる。
それからしばらくの時間、4人でメモや資料を読み返す作業をして、眠ることにした。「おやすみなさい」「おやすみ」
まだまだやることがあるので、ゆっくり休まなくてはいけない。
ところが眠るまもなく、結界の外から声がしてきて、夜中に私たちは起こされることになってしまった。
「信じ難い!ああ何てことだ!ワッツハプン!なんという愚行!神経!無神経!このような者た達がわれらが女神に愛を与えられるなどという?そのようなことがあろうはずもない!」
何事かと、外へ出ると、声の主は魔物のシナップだ。
結界の外で1人で怒っている。どうしたんだろう。
結界の建物の入口に立って私たちがシナップを眺めていると、シナップがますます怒って騒ぎだした。怒りすぎたのか、そこらの魔物に魔術を放って倒してしまったりしている。
仲間ではないのか。
他の魔物のほうもシナップに噛みついたりしている。
「君たちは!何を呑気にこんなところで寛いでいるんだ!どういう神経なのか教えてもらえないだろうかね!」
シナップの剣幕と、魔物たちとの不可解な関係に戸惑いながら、ガイアスくんが答えた。
「お前に鍵を持っていかれたんで、鍵なしでもここから脱出できる方法を探してるんだよ」
ガイアスくんが答えると続いてエレイナさんが
「そうよ。呑気に寛ぐだなんて失礼よ。あれから私たちがどれだけ思い悩んで苦労したと思ってるの」
と言い、バッシュくんたちがエレイナさんに抱えてもらった状態で「そうだそうだ」と抗議した。
3人とも愛らしい寝巻きに着替えている。
……寛いでいないと信じてもらえるだろうか。
私が少しだけ不安に思っていると
「なんでそうなるんだよ!おかしいだろそんなの」シナップが言った。
「?」何がおかしいんだろう。
「鍵が無いんだぞ!他の方法なんて無いに決まってるだろ!それしか方法が示されてないのに、それを無くしたのになんで」
彼はその続きをまだ言おうとしたように見えたんだけど。
それをやめて懐から小さな魔導具を取り出した。転送魔術だ。
【アースバインド!】直前に私が地属性魔術を発動したけれど間に合わない。
シナップがまたかき消えてしまった。
────────
────────
□籠城戦2日目
□推定魔物討伐数7,000体~8,000体、素材獲得数493個(赤青黄白黒)、魔石の欠片992個
□共有アイテム□
□主な食料58日分
□嗜好品お菓子類(回復あり)、嗜好品、お菓子類(回復無し、あと僅か)、未調理穀物6日分
□魔力回復ポーション(EX132本、超回復112本、大268本、中1,029本、小1,500本)
□治癒ポーション(EX132本、超回復254本、大1,020本、中2,420本、小5,018本)、薬草(治癒2,216袋、解毒120袋)2,336袋、他
□各自アイテムバッグ
ガイアス、ジャック、エレイナ、バッシュ、ノア、マクス
□背負袋
ガイアス、ジャック、エレイナ、バッシュ、ノア、マクス
はふはふ。モグモグ。ゴクン。
穀物に細かく刻んだ野菜と塩漬けの魚を混ぜ混んで炒めた料理を食べて、熱々の豆スープを飲み干したバッシュくんとノアくんがコクコクとお水を飲んだ。
私たちは今『第2ゲート』で魔冷保存庫に保存しておいた食料、1食分を温めて朝食をとっている最中だ。
バッシュくんたちが、スープの器の底に残った豆と、大きめの器に盛られた炒めた穀物を匙で掬って美味しそうに食べきるのを見届けてから、ガイアスくんが言った。
「今後の計画についてだが、どうする?」
◇
昨日の晩御飯までの私たちが立てていた予定では、日中は前衛のガイアスくんとジャックくんが魔物の進行を攻守一体で食い止めながら、エレイナさんをはじめとする後衛の私たちの魔力に余裕のあるうちは連携して魔物を倒す。
私たちの魔力が減ってきたら、今度はジャックくんとバッシュくんの凍らせる能力で、魔物の動きを鈍らせ、休息の時間を捻出する。
という計画に落ち着いていたのだけど、今朝はその計画に、再度変更を加えようということになっている。
理由は、魔物を凍らせる作業にバッシュくんが参加すると、ものすごく長い時間、魔物の動きを止めることが出来ることが判明したからだ。
バッシュくんの魔力を消費するので2人の連携魔術である『二重奏』には頼りにくくなるし、気温もいっそう下がるわけだけど、反面長い時間魔物の動きを止めることが出来るので、『拠点』に戻って休息がしっかりとれる、という利点がハッキリと生まれている。
籠城戦開始前の、ジャックくん、ガイアスくんのどちらかが前衛として残って魔物と対峙し続けることを余儀なくされる戦略に比べると、おそらく2人の負担は軽減するはずだ。
しかも、うまく行けばそんなに日にちを費やさずに1番手前の魔物の部屋にある、『装置』の鍵を解錠するための魔術鍵が1つ、手に入るかもしれない。その上魔物の部屋の広さも確認できる。
部屋の広さが確認出来れば、魔物の総数も想像しやすくなる。
数がわかれば先の計画もたてやすくなる。というのが、昨晩見張りの最中で私とガイアスくんが考えたことだ。
基本的な戦略に変更はなく、倒せるなら倒していく方針はそのまま。
「その計画が私も良いと思う」「ボクも」通路の様子を見に行って戻ってきたエレイナさんとノアくんも賛成してくれた。
あと、この計画はジャックくんとバッシュくんの2人の能力が不可欠なんだけど。
私達の視線がジャックくんとバッシュくんに自然に向かう。
それに気がついた2人が、揃って「そのやり方で行こう」と言ってくれたことで、話は決まった。
早速『第2ゲート』を出て通路へと向かうと、通路の氷は昨夜に比べるとさすがに解け始めている。それでも昨夜の晩御飯時から半日ほど経つはずの時間で、ようやく魔物達が動き始めたというところだ。
現在、前方すぐそばに大小犇めく魔物の数、凡そで1,000体あまり、私たちから見て手前から2番目の扉までの魔物も合わせれば概ね3,000体から4,000体くらいいるのだろうか。
奥へ行くほど魔物の渋滞はひどく、その数を正確に把握することは難しい。
「それじゃあ俺が前に出て魔物を引き受ける。その間にジャック、バッシュ頼む」ガイアスくんがそう言って一度剣で前方を凪払ってから『大盾』で前に前進した。
それとほとんど同時にジャックくんが前方に素早く移動する。その隙を狙うようにこちらに突進してきた魔物を、待っていた私が地属性魔術『アースバインド』を発動させて魔物を捉えた。
前へ行ったジャックくんがガイアスくんが剣で凪払ったことでわずかに生じた空間に素早く回り込んで、奥へ進んでいる。
彼はいつの間にか、武器を2本の短剣に変え、回転するように魔物を斬り倒し、2番目の扉に到達したところで、2本の短剣の両方に『氷結』を付与した。
奥の魔物たちの動きは活発で、たちまちジャックくんの周辺を魔物たちが埋めつくさんと飛びかかる。
それに対してジャックくんは流れるような動作でかわし、剣だけではなく足でもって応じた。蹴りでなぎ倒された魔物が扉側に力ずくで押し込められ、まとめて『氷結』で魔物を凍らされていく。
そのまま近くの魔物の動きをジャックくんが鈍らせたところで
「ジャック君、行くよー!」バッシュくんの元気な声が私の少し後ろから聞こえて、ジャックくんが片手をあげた。
するとジャックくんの近くにいる、動きの鈍くなった魔物の頭上で水滴が雨のように降り始め、魔物たちがその雨に濡れていく。
その頃合いでジャックくんが『氷結』を付与した短剣で再び魔物たちを倒し始めた。
倒しきらなかった魔物たちは、凍りついて動けなくなっている。ジャックくんの『氷結』だけで凍らせているよりも強固に魔物が固まっているのがわかる。
2番目の扉付近の魔物全体にほどよくバッシュくんの水属性魔術の水がかかったところで、続いてバッシュくんも凍結の魔術を行使した。魔物たちが次々と2人に凍らされていく。
ジャックくんの方は凍った魔物を時々奥へ投げ飛ばしながら次々と自分の周囲の魔物をさらに凍らせてしまう。
そうして凍らされた魔物で障壁が形成されたことで、2番目の扉を境に魔物がこちらへ向かってこれなくなり、続いて1番目の魔物の部屋の出入口もジャックくんとバッシュくんによって凍らされて塞がれた。
それまでの間はガイアスくんの大盾と私の地属性魔術で魔物の動きを止め、エレイナさんが風属性魔術でまとめて魔物を倒しきって、ついに私たちのいる位置から1番目の扉前の通路に、魔物のいない空白地帯が出来上がった。
床には魔石や素材、氷の欠片の他に棚や容器の残骸が少しだけ散らばっている。
それでようやく扉が開くのを押さえる障壁として使っていた棚のほとんどが、近くに見当たらなくなっていることに私は気がついた。
ジャックくんが時々魔物を投げ飛ばしていたので、そういう中に障壁に使った棚などの一部も通路の奥へ投げていたのかもしれない。当たった魔物はダメージを受けたかもしれないと思うと、私は少しだけ気の毒な気がした。
通路は再び極寒地帯さながらになっているが、他の魔物が拾って回復すると厄介なので、魔物が動けない今のうちに、あちこちに散らばった小さな魔石の欠片を拾っていく。
ここの魔物は倒されると魔石や素材を落とす代わりに、傷ついてもほとんど黒い霧を出さなかった。
ガイアスくんたちによると、魔物にはそういうタイプが多いのだという。
肉体となるような物質で体が出来ているように見えても、それらが実際には魔力で出来ていたり、そうでなくても魔力に浸食されることで実体を失っていることも多いのだという。
「魔物は大きさや見た目よりも軽いことが多いから、派手に吹っ飛んだりもする」
要するに肉体的な質量は魔力に置き換わって、物質という観念で見た時はスカスカになってしまっているのだ。
そういえば魔力だけで実体を持たせるには、ものすごく密度を上げて安定させないといけないと聞いたことがある。
水の多い場所で魔術によって飲み水を用意するのと、水のない場所で飲み水を用意するのとで、魔力の消費がなぜ大きく違うのか、疑問に思ったとき、そんな風に教えてもらった。
両者の違いは、水の多い場所で飲み水を用意する際、術士が己の魔力だけでなく周囲の水を集めて利用できるのに対し、水気が少なかったり、水が無い場所では術士が自身の魔力だけで水を創り出さなければいけないことだ。
前者ではすでにある水を集めたり、水の素になるものが水になるように働きかけるために魔力を使用しているので、それほど多くの魔力を必要としないですむが、後者では“水”を魔力によって作り出しているため、作りたい“水”の分だけ魔力が必要なのだ。
特に飲み水の場合、ヒトが摂取するもののため、水の素になるものを、より丁寧に魔力によって作り出さなければならない。そのため術士はより高度な技術と魔力を要求される。
ちなみに、ここの魔物が落とした魔石の多くは半透明の比較的透き通った半貴石に近い見た目のもので、氷の欠片に混ざって見つけにくいときがあったり、白く濁ってゴツゴツとした磨く前の原石のようなものもある。
小さくても、密度の高い魔力の塊だ。
普段は目に見えない魔力が実体を持って、固さや重さを維持している。
通常、魔力そのものが固まった魔石は汎用性が高く、値が付きやすいが、ここで手に入った魔石はどれも小さい上に品質からも宝石のような価値は付かなさそうに思えた。
素材の方は今は値が付かなくても持ち帰れば私の友人が喜ぶに違いない。5種類とも、稀にしか見つからないものだ。
ここの魔物からしか手に入らない素材の可能性が高い。
依頼人である商人ギルドのデビスさんに良い報告が出来そうだ。
全員で床に散らばった魔石や素材をある程度拾いきったと思えた頃、私が時刻魔導具を見るともう昼を過ぎている。
まるで見計らったかのように「寒い!!腹も減った」
とガイアスくんが悲鳴のような声あげ、それを合図にして、私たちは『拠点』に戻りお昼御飯にすることにした。
昼食を終えたらいよいよ魔物の部屋へ突入だ。
◇
昼食を終えて1番目の扉の内側に入った私たちを待っていたのは、魔物の群れではなく、1体の、いや、1人の魔物。シナップと名乗る1人の魔物だった。
厳密に言うと、魔物の群れもいるにはいたんだけれど、それは扉の内側へ入ってすぐの辺りで終わったのだ。
私たちが部屋の入口付近で凍りついた魔物を退けて部屋に入ると、中でも私たちを襲ってくる魔物たちが行く手を阻み、牙と爪で襲いかかってきた。
ところが予想に反して魔物が数多くいたのは扉入口入ってすぐの場所だけで、魔物の数は私たちが警戒していたよりもうんと少なかったのだ。
襲ってくる魔物を倒し終えて、魔物によって遮られていた部屋の中の様子を確認できるようになると、私たちの視界に現れたのはだだっ広い部屋。
明らかに『ロビー』より広いけれど無限に広がっているというわけでもなく、明るいクリーム色の天井があり、大理石模様の白に近い茶色の床に、綺麗な大理石模様の暖かい色調の壁。
その中央に、物語に登場する悪魔を思わせる風貌の、小柄な人物が立っていた。
深緑色のフードのついたローブと、いくつか装飾品を身につけて私たちの方を向いている。
それが1番目の魔物の部屋で私たちが出会った魔物、『シナップ』だった。
身に付けているもの以外の特徴だけをあげていくなら、先ほどまで私たちに襲いかかってきた魔物に似ているが体格は小さい。ヒトであっても、始祖獣によっては見た目が魔物と似通うことはあるから決めつけることもできない。
黒い霧も纏っていないし、小柄な体格だけでなく、よく見ればここの魔物ともずいぶん違う。
仮に魔物であったとしても、こちらに危害が及ばないのなら、無理に争う必要はない。
ただ、それでは『三郎太』との一件を考えると、とても甘い判断のように思えた。
エレイナさんがバッシュくんたちを抱き上げ、扉入口側に後退し、ガイアスくんとジャックくんが私たちより前に出る。
私たちは警戒しながらも、突然現れた人物の様子を無言で伺うことにした。
「やあやぁやあ!君たちー!君たちが噂の、冒険者だねぇ?」そういうと、彼は自ら「はじめまして!こんにちは!僕の名前はシナップ!こう見えても君たちよりずぅっと年上の魔物だよぉ!!以降があれば、よろしくね!」
思いがけず明るい調子で話しかけられ、ポカンとする私たちをまるで意に介する風もなく、シナップは自ら、自分が魔物だと明かすと、さらに私たちに話しかけてくる。
耳や鼻は尖っていて皮膚は赤黒く、瞳は金色で瞳孔が小さい。指や先へ行くほど尖り爪は長く鋭い。
耳には幾つもの飾りが付いていて、首には飾りをかけている。
シナップという魔物はおどけたようにポーズをとると、言った。「まぁまぁ、どこでもいいから、遠慮無く、好きなところへ座りなよ!自分のうちだと思ってさ!!」
彼が指を指すとそこに突如、椅子やテーブルが現れた。
魔術が使える魔物は総じて強いとされることは私でも知っている。その上、自分が欲しいものを魔力で創って出した。
見せ掛けだけの幻でないなら……。
バッシュくんたちが防衛魔術を発動した。
「そんなところでボーッと突っ立ってないで、ささ、すわりたまへよ!ああ!これは僕としたことがなんてことだ!とんだミステイクだね!気がきかないにもほどがあるよねぇーー!」
今度はテーブルの上に紅茶やクッキーが7人分現れた。
「さぁ、たべたまえ!のみたまへ!おや、おきに召さない?では求肥豆餅なんてどぉかな。久しぶりの侵入者だからねぇ!たっぷりとおもてなしと行こうじゃないかって話さーーー!」
シナップという魔物は私たちの警戒心を顕にした態度には構わず、サッと椅子に腰かけて一方的に話し始めた。
声の調子は先ほどよりも落ち着いている。
「『創世記』によれば、古来の女神ヴェルメラはこの世界のどこかに、我々のいるこの地とは別の、もう1つの女神の地を創られたと記されている」
私たちはたったまま、黙って話を聞いている。
シナップが言っている『創世記』というのは、おそらく『創世記テラ』と呼ばれる作者不明の古い創作物のことだ。
それは太古に書かれたもので、発見から現在まででも、内容の全ては解読されておらず、現在の言葉に訳されているのは全文のほんの一部分だといわれている。
それでも古くからこの創作物に登場する神々の信者がいるくらい、人々の間で影響力があり、地域によってはまるで聖書の如く扱われていて、時に言語、時に国のあるべき姿にさえ影響を与えてきた。
今の人が読めるように訳された文章だけでも相当な量の読み物となっている、神々を信じる信奉者にとどまらない、人気の創作物の1つでもある。
その『創世記テラ』には、この世界は古代の神々によって創造されたと描かれており、私たちのいるこの地は、その神々のうちの1人、“女神ヴェルメラ”によって創造されたと記されている。
「『創世記』によれば、われらの神は愛ゆえに1つに〈魔力〉を、愛ゆえにもう1つには〈試練〉を与えた」
一体何を言いたいのだろうか。
シナップが話しているのは、創世記に登場する女神ヴェルメラの章の解釈についてだと思われる。
創世記の女神ヴェルメラについての章の中で、女神ヴェルメラは2つの大地を創造した際、一方に充分な魔力を与え、もう一方から試練として魔力を奪ったと記されている。
女神ヴェルメラは大地を創造した際に自らの魔力も使ったため、創造した地にも自然に女神ヴェルメラの魔力も混在することになった。
ところが創世記の中で女神ヴェルメラは、一方の地からは、その僅かに混ざった自身の魔力さえも試練として取り上げてしまうのだ。
しかし試練を与えられた方の大地の生命は魔力の無い世界で能動的に次々と試練を乗り越え、やがて私たちと同じような人類が生まれ、高度な文明を築いていく。
その章の女神ヴェルメラの行いの動機について、〈愛ゆえに〉そうした、という解釈がある。
創世記の作中において女神ヴェルメラの真意までが直接語られているわけではない。
シナップが1人で話続けている。
「魔力を与えても奪っても、その両方が〈愛ゆえに〉為された行為だというのなら、この世で最もわれらの女神に〈愛されない〉のは誰なんだろう?!」シナップは大業にそう言うと、懐から1つの鍵を取り出した。
その鍵を私たちに見えるようにして顔の前に掲げて持ち手部分の穴から私たちを覗く仕草をして見せる。
「この遺跡の装置の鍵か?!」私たちが思わず声を出して聞くと、シナップは可哀想なものを見るような、それでいて小馬鹿にするような、独特の目付きで、私たちを見た。
「ここで永遠にさ迷うといいよ。ああ、でも君たちがわれらの女神に“本当に”愛されているのなら、きっと出られる」
そう言うと、鍵を持ったまま、かき消えるようにいなくなってしまった。
「?!!」
「装置の解除鍵が、持っていかれた……?」
シナップが姿を消すと、少しの間を置いただけで、私たちの周囲、四方八方そこらじゅうが魔物だらけになっている。
いなかったはずの魔物が突如現れた。
私たちか魔物、どちらかが転移でもさせられていたのだろうか?!
【アースバインド!!】咄嗟に私が地属性魔術を発動させたものの、間に合っていない!
【大盾!】ガイアスくんの防御技能『大盾』が展開して広範囲の魔物が弾き飛ばされた。
【焔!】ジャックくんの炎系の攻撃技能が魔物たちを焼き払っていく。
「ガイアスくん!みんな!」
エレイナさんがバッシュくんたちを抱えて、魔物から庇うように身を屈めている。
数が多すぎる。
ガイアスくんとジャックくんと私がエレイナさんたちを取り囲み、そこでようやく、バッシュくんたちの防衛魔術によって私たち全員が護られていることを思い出した。
とはいえ、魔物の部屋の中央で大量の魔物に囲まれている状況に陥っている窮状に変わりはない。
しかも魔物に装置の解除鍵の1つを奪われてしまった。
◇
「考える前に一度ここから出よう」
ガイアスくんが『大盾』を発動させたままで言った。
『大盾』は前方の比較的広い範囲の魔物からの攻撃を受け流すことが可能なガイアスくんの技能だけれど、背後や真上からの攻撃には対応が難しい。
そのためバッシュくんたちをエレイナさんに任せた状態で、私とジャックくんの2人で、後方から襲ってくる魔物を防ぐことになる。
ガイアスくんに前方の安全確保を委ねながら、私たちは後ろを向いて後退する形だ。その間はエレイナさんが攻撃魔術『風刃』で襲ってくる魔物を打ち払い、バッシュくんたちが防衛魔術で私たちをサポートする。
「拠点が荒らされてる可能性があるな」
バッシュくんたちの強力な防御結界があるため、すぐに『拠点』内へ侵入されるとは思わないけれど、放って置けば、荒らされてしまうに違いない。
私たちは襲ってくる魔物を倒しきるよりも、まずこの部屋から脱出することを優先する必要がある。
魔物が邪魔で、私には入ってきた出入り口が見えないが、長身のガイアスくんがいるおかげで、なんとか前進する方向はわかった。出入り口が近くにあるのはわかっているのに随分と遠くに感じる。
エレイナさんの『風刃』が一時的に魔物のいない場所を作り出してガイアスくんが『大盾』で魔物を退けたまま前進する。
バッシュくんたちの魔導術の補助を受けながら、ジャックくんが『氷結』、私が『アースバインド』で左右前後からの魔物たちの動きを牽制。
私たちの後方にいる魔物たちが凍り始めたところで、私にも出入口が見えた。入口まで魔物が集まったところで、バッシュくんたちが凍結させて動きを封じ、私たちは魔物の部屋を脱出した。
通路に戻ると、昼前にジャックくんとバッシュくんに凍らされた魔物はそのままで、扉出入口の前に出来た空白地帯にほとんど魔物はおらず、バッシュくんたちの防御結界を魔物が抜けた形跡もなかった。
確認は出来ないけれど、ここの魔物は『侵入者』である私たちに引き付けられて移動していると思って良さそうだ。
◇
私たちが『拠点』の『第2ゲート』まで戻って時刻魔導具を確認すると、思ったほど時間は経っていなくて、まだ日が高い時間だ。とても長い時間、魔物の部屋にいた気がしたのは私の錯覚だったらしい。
休憩場所の木箱の椅子やテーブルを確認して、私はやっと止めていた息をするような気持ちになった。
「寒い」ガイアスくんがそう言って手鍋に水を入れ、炉でお湯を沸かし始めている。
「シナップとかいう魔物のことや鍵を奪われたことも重要だが、それらを話し合うための準備も必要だからな」
と言いながら沸かしたばかりのお湯で飲み物を私たちの分まで用意してくれた。
ガイアスくんから受け取った飲み物とテーブルに飴玉やビスケット、チョコラタ、ナッツ、燻製肉を並べたお皿が1つ。
魔力や体力を回復させる特別な効果が無いけれど、魔物はまだ当分動けないので、休憩を兼ねた間食として、これだけあれば今は十分だ。
各々が好みの物をつまみながら、先ほどまでのことを振り返る。
『三郎太』に続いて、また新たな魔物の出現。
今度の魔物は自分から『シナップ』という名前を名乗った。直接攻撃してきたりはしなかったけれど、鍵を持って消える際、『ここで永遠にさ迷うといいよ』と言い残している。
『鍵』を持ち去ることが私たちにどんな結末をもたらすかもわかった上での行動だ。
「……ああいうのが、全部の魔物の部屋にいたら嫌だね」
ビスケットを1枚食べて、飲み物で喉を潤してから、バッシュくんが呟いた。
本当にいるかもしれないので、厄介だ。
その上『三郎太』も『シナップ』も魔導具かなにかで転送魔術を使って逃げてしまったことから、次に同じような魔物が現れた場合も、転送魔術を使われる可能性が高い。
私たちがあれこれ考えていると燻製肉を食べていたジャックくんが何か気がついたような顔をした。
「ジャック、何か気がついたのか?」ガイアスくんが聞くと、ジャックくんは首をふって、「いや、何か思い付きそうな気がしたけど何も思い付かなかった」と答えた。
「なんだそれ」ガイアスくんがちょっと笑って、バッシュくんたちが「あるあるー」と嬉しそうにした。
それからしばらく話し合った結果、1番目の魔物の部屋はしばらくあのまま凍らせて、魔物が出てこれないように出入口を塞いでおくことになった。
1番目の魔物の部屋には目的の『鍵』はもうない。
魔物が変化したり増える可能性を警戒するなら倒していくことが正解かもしれないけれど、直近で考えれば、残っている魔物に時間を費やす必要は無くなった。
「さてこれからどうするかだが」
1番目の魔物の部屋へ入ったことでわかったことは、事前に手に入れていた見取り図よりも、さらに『ロビー』よりも魔物の部屋は広い、ということ。
今までは『ロビー』の20ノーツ×20ノーツの広さを参考に1部屋に1,600体、通路の距離から広めに見積もって2,000体か10,000体、5部屋で50,000体を予想してきた。
それが実際に部屋に入ったことで、通路の距離から算出した魔物の部屋の広さ、或いはそれ以上の広さというのが、より現実に近いということがある程度確認出来た。
そのせいで今予想される魔物の総数は最低で1部屋10,000体に修正されている。
通路の奥までの距離から部屋の広さを壁の厚さは考えず推測すると50ノーツ×50ノーツ。
通路の距離から算出した部屋の広さも魔物の数が50,000体以上になることも想定していたし、最初からそれも考慮して食料や水も準備してきたわけだけど。
「過密に、しかも折り重なるように増えていたと想定すると魔物の数は2倍以上。魔物同士で踏みつけあってるのを見ると4、5倍。1部屋に50,000体、5部屋で250,000体くらいと考えてもおかしくないのか」ガイアスくんはそう言うと少しだけ顔をしかめた。
良くない方の予想が現実であることが判明し、私たちの準備に充分な余裕があるとは言えなくなったことは、たとえ予想の範疇であったとしても、好ましいことじゃない。
バッシュくんとジャックくんの凍らせる能力のおかげで、全ての魔物を打ち倒す必要が、今のところないのは救いだ。
私が呑気にそう思っていると、ガイアスくんが「遺跡や洞窟に仕掛けられた、人を閉じ込めるようなトラップの類いは、たまに魔物の殲滅が脱出の条件だったりすることがある」
と言ったので、私はぎょっとしてしまった。
そういったことも考慮しながらこれからどうするか。
通路の魔物の凍結が解けて魔物が再び動き出すのが、晩頃。
扉から扉までの距離がおよそ50ノーツ、2番目から3番目の扉の範囲に魔物のいない空白地帯を作るだけで3,000体あまりの魔物をどうにかしなければならない。
これが今私たちが直面している魔物との現状だ。
「1番目の『鍵』のことは一旦無視して、予定通り2番目の部屋に入るか、別の方法を模索するか、どうする?」
ガイアスくんが私たちを見渡して言った。
するとバッシュくんとノアくんが
「時間はかかるけど、『ロビー』と『書斎』『厨房』『装置のある部屋』を資料も含めてもう一度調べてみたい。出来ればここの遺跡の施設内全部」
「それは魔物の部屋も調べたいってことか?」と、ガイアスくんが聞くと、2人とも頷いた。
1度は放っておくことも検討した1番目の魔物の部屋が、探索の対象として再度浮上したことになる。
私たちに異論はない。「手がかりを探し直そう」
少し大変かもしれないけれど、部屋の広さは無限じゃなかったし、魔物の数も無限というわけではない。
もともと鍵を手にいれるために全ての魔物の部屋には行く予定だった。
私の脳裏にシナップが去り際に言い残したことが思い浮かんだ。
『君たちがわれらの女神に本当に愛されているのならきっと出られる』
あれは単なる捨て台詞だったのだろうか?
◇
「準備出来たよ!」「私も」
「よし、なら行こうか」
各々、背中に背負袋を負って、魔力も回復済み。
私たち以外の誰かが入れないよう『拠点』にはバッシュくんたちが結界を追加で構築すると時刻魔導具が夕暮れが近いことを教えてくれているころになっていた。
私たちは『シナップ』のいた『1番目の魔物の部屋』へ向かっている。
2番目の魔物の部屋の入口付近の魔物をバッシュくんとジャックくんが再び凍結させておく。
これで明け方近くまで、私たちは自由に動ける。
続いてジャックくんが短剣に火属性魔術『焔』を付与して1番目の魔物の部屋の入口の凍結を解除した。
何体かが倒され、僅かな黒い霧と小さな魔石が床に落ち、数体がすぐさまジャックくんに牙をむき鋭い爪のついた手をのばす。
【焔】今度はハッキリとジャックくんが短剣を使って魔物たちを切り裂いた。数体の魔物がまた倒される。魔物たちはそれでもただ闇雲に前進しようとしている。
【風刃】後方のエレイナさんが魔物の部屋に向かって風属性魔術を使った。
部屋の外にいるので確認は出来ないけれど、エレイナさんの魔術によって圧縮された空気で出来た刃が魔物を襲っているはずだ。
ジャックくんの技能『焔』は標的に火傷のようなダメージを継続的に負わせる、それがなくても高火力の技だ。
その代わりに魔力を『氷結』よりも多く消費する。
ジャックくんとエレイナさんが魔力回復ポーションを使った。
「この部屋の魔物は風属性で間違いなさそうだ」
魔力をポーションで回復させながらジャックくんが言った。
同時に踏み込むようにして部屋の中へ入っていく。
どうやら中に入れるだけの空間がもう出来たらしい。
「バッシュとジャックが『書斎』で見つけた本に書かれた内容の信憑性が、どうやら高まってきたみたいだな」
ガイアスくんが私とバッシュくんたちを見て嬉しそうに笑いながら、自分もジャックくんの後を追って部屋に入った。私とエレイナさん、バッシュくんとノアくんもあとに続いた。
◇
「暑い。いや、熱い。熱いんだよ。寒さの次は熱さか!」
私が1番目の魔物の部屋へ入ると、入ってすぐの出入口近くでガイアスくんが室温に文句を言っている。
その理由はジャックくんたちに近づいて、すぐに理解できた。
『焔』でジャックくんが戦った影響か、周辺一帯が暑くなっている。暑いというより、熱い。
攻撃対象以外の魔物にもダメージを与えている可能性が高い。
「ガイアス」
「なんだ?ジャック」
「お前はいつからそんなに、か弱くなったんだよ。ちょっと前のお前はもっとこう……タフだったじゃないか」
ジャックくんが残念そうにガイアスくんを見て言った。
「俺が変わったんじゃない!お前の技能が前と違うんだよ」
ガイアスくんがついに言った。
すぐ後ろでは、2人の会話を無視するようにエレイナさんが『風刃』と短弓で襲ってくる魔物を黙々と倒している。
「エレイナはなにも言わないぞ」
「熱くて話すと喉が焼かれそうだからよ」
エレイナさんは熱くて黙っていただけらしい。
けれどその表情に不満は感じられない。
ジャックくんの『焔』による攻撃を受けた魔物はエレイナさんから風属性で攻撃されると周囲を巻き込んで倒れていくので、エレイナさんが少しずつジャックくんと魔物の両方から距離を取り始め、巻き添えの熱気を避けるようにガイアスくんも少し下がった。
ジャックくんにガイアスくんが「悪かった。俺たちに気を使わずにガンガンいってくれ!」と声をかけるのが聞こえたのと同時に熱気が強まる。
それに合わせるみたいにバッシュくんたちが防衛魔術を私たちに次々と付与して行く。そのおかげで熱気がいくぶんか和らいだ。
ガイアスくんの『大盾』が発動したままなので、魔物は前方の広い範囲から私たちの方へまともに近付けない。
私は彼らが戦っている間に、持ってきておいた木箱を出入口のすぐそばに置いて、続けて通路の脇に置いておいた木箱も全部魔物の部屋に運び込んで予定の位置に置いていく。
そこへバッシュくんたちがいそいそとやってきて、置かれた木箱を目安にして、防御結界の魔方陣『屈強なコテージ』を構築していく。
通路に設置した『防御の陣』より最大有効範囲が小さな魔方陣だけれど、『防御の陣』が頭上からの侵入を防げないのに対し、こちらの防御結界『屈強なコテージ』は前後左右はもちろん、頭上からの敵の侵入も強力かつ、まろやかに防ぎ、しかも時間経過で体力と魔力も回復してくれる。
防御層が『防御の陣』より柔軟にできているので破られにくい。救護向きの魔方陣だ。
「4つの魔方陣を、1つの方陣として隣り合わせに使うことで結界の狭さを克服し機能させました」と、ノアくんが分かりやすく私たちに説明してくれている間に、バッシュくんが仕上げに魔力を注いで【屈強なコテージ】を4つとも発動させた。
追加で維持費を支払うと、そのまま使える期間を延ばせるように開発されている。
「もう少し待ってね。術式が完全に発動するまで少し時間がかかるんだ」
そう言われて、しばらく待っていると、バッシュくんたちが構築した陣地の中に、魔力で生成された小屋のような平屋の建物が出来上がった。
バッシュくんたちが、どことなく充実感を感じさせる表情をしている。「欠点は、術者にとって魔力消費と回復が微妙に釣り合わないことと、小屋の中に入ると外側の様子がよくわからなくなること。でも利用人数が多いとお得だから」
そう言ってバッシュくんが目を細めた。
時刻魔導具を確認するとそろそろ晩の食事時の頃合いが近付いている。
前方には部屋の中央に向かい、ガイアスくんの技能『大盾』、エレイナさんの遠隔魔導術による攻撃、ジャックくんの剣技によって魔物のいない空白地帯が増えてきた。
その分、魔力回復ポーションは減ってきている。
ジャックくんはいつの間にか『焔』を使うのをやめて、通常の剣技と『氷結』で魔物と戦っていた。
そろそろ声をかけたほうがよさそうだ。
◇
防御結界『屈強なコテージ』の建物内に入ると小さな厨房があり、厨房と繋がっている部屋が1つ、数人ずつ眠れる部屋が2つのほか生活の基本設備が整っている。「魔力で出来てるから、全部を本物みたいには使えないけど、エネルギーは本物だからお湯が沸かせるし、少しなら水も出せる。材料があればお料理も出来るよ」とバッシュくんたちが教えてくれた。
「魔導研究ギルドと魔導ギルドとの共同で開発中の技術で出来てるんだ」
バッシュくんたちの説明によると、魔力が実体を持った、様々な物質の素となるものと、似たふるまいが出来ることを利用しているのだそうだ。
構築した設備は、説明を聞く限り、火、風、水、土の属性で出来ることは、制限付きではあるけれど、大体実現できている。
私たちは早速、各々の荷物を置いて、食料をコテージの厨房で温める。凍らせた食料を『拠点』から10日分持ってきていて、相談の上で食事量にまだ変更は加えてない。
バッシュくんたちが温めた野菜スープや炊いた穀物、甘辛い煮付けや塩漬け魚を使った料理、燻製肉をお皿に盛って「お疲れ様ー」と言いながらテーブルに並べてくれたので、ガイアスくんもジャックくんもエレイナさんも嬉しそうに食事を始めた。
寝室にはベッドがあって綺麗なシーツや布が揃っている。柔らかくて肌触りも良い。これがみんな、魔力で出来た代替品とは。
食事のあと少しそれぞれ休んでから、就寝の時間まで今度はノアくんたちと一緒に調べものをする。
明け方には通路の魔物たちが動き出すので、それに対応してもらうため、ジャックくんとバッシュくんには先に休んでもらい、私とノアくんとガイアスくんとエレイナさんとで少しの間起きていることになった。
魔物の部屋の様子を見ながら、調べものをするためにここに結界を作ったといって良い。
小さめの小窓から少しだけ外の魔物が見えた。
魔物たちは夜でも動きは活発で、防御結界の陣地内へ入ろうとぶつかったりしている。ここにいることでこうした魔物たちの活動の仕方もわかるかもしれない。
エレイナさんが温めた飲み物を用意してくれた。美味しい。
ノアくんとガイアスくんも美味しそうに飲んでいる。
それからしばらくの時間、4人でメモや資料を読み返す作業をして、眠ることにした。「おやすみなさい」「おやすみ」
まだまだやることがあるので、ゆっくり休まなくてはいけない。
ところが眠るまもなく、結界の外から声がしてきて、夜中に私たちは起こされることになってしまった。
「信じ難い!ああ何てことだ!ワッツハプン!なんという愚行!神経!無神経!このような者た達がわれらが女神に愛を与えられるなどという?そのようなことがあろうはずもない!」
何事かと、外へ出ると、声の主は魔物のシナップだ。
結界の外で1人で怒っている。どうしたんだろう。
結界の建物の入口に立って私たちがシナップを眺めていると、シナップがますます怒って騒ぎだした。怒りすぎたのか、そこらの魔物に魔術を放って倒してしまったりしている。
仲間ではないのか。
他の魔物のほうもシナップに噛みついたりしている。
「君たちは!何を呑気にこんなところで寛いでいるんだ!どういう神経なのか教えてもらえないだろうかね!」
シナップの剣幕と、魔物たちとの不可解な関係に戸惑いながら、ガイアスくんが答えた。
「お前に鍵を持っていかれたんで、鍵なしでもここから脱出できる方法を探してるんだよ」
ガイアスくんが答えると続いてエレイナさんが
「そうよ。呑気に寛ぐだなんて失礼よ。あれから私たちがどれだけ思い悩んで苦労したと思ってるの」
と言い、バッシュくんたちがエレイナさんに抱えてもらった状態で「そうだそうだ」と抗議した。
3人とも愛らしい寝巻きに着替えている。
……寛いでいないと信じてもらえるだろうか。
私が少しだけ不安に思っていると
「なんでそうなるんだよ!おかしいだろそんなの」シナップが言った。
「?」何がおかしいんだろう。
「鍵が無いんだぞ!他の方法なんて無いに決まってるだろ!それしか方法が示されてないのに、それを無くしたのになんで」
彼はその続きをまだ言おうとしたように見えたんだけど。
それをやめて懐から小さな魔導具を取り出した。転送魔術だ。
【アースバインド!】直前に私が地属性魔術を発動したけれど間に合わない。
シナップがまたかき消えてしまった。
────────
────────
□籠城戦2日目
□推定魔物討伐数7,000体~8,000体、素材獲得数493個(赤青黄白黒)、魔石の欠片992個
□共有アイテム□
□主な食料58日分
□嗜好品お菓子類(回復あり)、嗜好品、お菓子類(回復無し、あと僅か)、未調理穀物6日分
□魔力回復ポーション(EX132本、超回復112本、大268本、中1,029本、小1,500本)
□治癒ポーション(EX132本、超回復254本、大1,020本、中2,420本、小5,018本)、薬草(治癒2,216袋、解毒120袋)2,336袋、他
□各自アイテムバッグ
ガイアス、ジャック、エレイナ、バッシュ、ノア、マクス
□背負袋
ガイアス、ジャック、エレイナ、バッシュ、ノア、マクス
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
異世界帰りの少年は現実世界で冒険者になる
家高菜
ファンタジー
ある日突然、異世界に勇者として召喚された平凡な中学生の小鳥遊優人。
召喚者は優人を含めた5人の勇者に魔王討伐を依頼してきて、優人たちは魔王討伐を引き受ける。
多くの人々の助けを借り4年の月日を経て魔王討伐を成し遂げた優人たちは、なんとか元の世界に帰還を果たした。
しかし優人が帰還した世界には元々は無かったはずのダンジョンと、ダンジョンを探索するのを生業とする冒険者という職業が存在していた。
何故かダンジョンを探索する冒険者を育成する『冒険者育成学園』に入学することになった優人は、新たな仲間と共に冒険に身を投じるのであった。
ダンジョンをある日見つけた結果→世界最強になってしまった
仮実谷 望
ファンタジー
いつも遊び場にしていた山である日ダンジョンを見つけた。とりあえず入ってみるがそこは未知の場所で……モンスターや宝箱などお宝やワクワクが溢れている場所だった。
そんなところで過ごしているといつの間にかステータスが伸びて伸びていつの間にか世界最強になっていた!?
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
追放された『ただの浄化係』、実は国中の魔石を満たしていた精霊姫でした〜今さら戻れと言われても、隣国のイケメン皇帝が離してくれません〜
ハリネズミの肉球
ファンタジー
「おい、城の噴水が止まったぞ!?」
「街の井戸も空っぽです!」
無能な王太子による身勝手な婚約破棄。
そして不毛の砂漠が広がる隣国への追放。だが、愚かな奴らは知らなかった。主人公・ルリアが国境を越えた瞬間、祖国中の「水の魔石」がただの石ころに変わることを!
ルリアは、触れるだけで無尽蔵に水魔力を作り出す『水精霊の愛し子』。
追放先の干ばつに苦しむ隣国で、彼女がその力を使えば……不毛の土地が瞬く間に黄金のオアシスへ大進化!?
優しいイケメン皇帝に溺愛されながら、ルリアは隣国を世界一の繁栄国家へと導いていく。
一方、水が完全に枯渇し大パニックに陥る祖国。
「ルリアを連れ戻せ!」と焦る王太子に待っていたのは、かつて見下していた隣国からの圧倒的な経済・水源制裁だった——!
今、最高にスカッとする大逆転劇が幕を開ける!
※本作品は、人工知能の生成する文章の力をお借りしつつも、最終的な仕上げにあたっては著者自身の手により丁寧な加筆・修正を施した作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる