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第12話 兆し
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籠城戦7日目
━早朝、『5番目の魔物の部屋』出入口前━
『1番目の魔物の部屋』から出た、長い通路の奥にある出入り口、その前に立つバッシュくんが、小さな身体から魔力を放出していた。
その光景はまるで、普段は見えない魔力が、自らの存在を教えるように、周囲にいる私たちに強い圧力を感じさせている。
昨夜のうちに構築した防御結界『屈強なコテージ』の魔方陣を仕上げるため、魔力を高めていたバッシュくんが、ゆっくりと床に描かれた魔方陣に向かって両手をかざし、魔力を注いだ。
すると私たちの目の前でパァァッと魔方陣に光が走って、先に出来上がって建っていた小屋が、その光に混ざるようにして魔方陣に吸い込まれて、しばらくすると強い光を放ち始めた。
強い光に融かされるように、先ほどまで4つに分かれていた正方形の魔方陣が、1つの魔方陣となって静かな光を帯びた状態を迎え、無数の数をあらわす幾何学の美しい文字が輝いている。
その後すぐに光は強い力を取り戻し、光が渦のように暴れたと思うと、やがて柔らかな光となって再び光は大人しくなった。
柔らかな光は淡い光になり、その柔らかな光に包まれた空間に、魔力で構成された分厚くて柔軟性のある強靭な防御壁を持つ『屈強なコテージ』が新たに形成されて行く。
そうして出来た結界の陣地内にさらに平屋の木で出来た小屋が現れると
「完成!」
小屋を見上げるようにして、バッシュくんが小さな両手を上げた。
◇
再構築によって生まれ変わった『屈強なコテージ』が出来上がるとすぐにバッシュくんが
「あ、『小屋』の場所が入口から少しずれちゃったね」
と気がついたように言った。
バッシュくんとノアくんの、しまった、という表情にガイアスくんたちはそろって「問題無い、魔物の部屋のなかに入りやすくなってる」 と満足そうにして言った。
実際に『小屋』の位置が入口ど真ん中に無いことで私たちが魔物の部屋の中へ入る脇道のようなものが比較的広めに確保されていて行き来がしやすくなっている。
その脇道の奥に結界に阻まれてこちらへ来れずに防御結界の壁にへばり付いたようになっている魔物たちが見えた。近付くのも難しいはずだけど、ギリギリまで迫っている。
「設計した通りにうまく作れなかったね」
愛らしいバッシュくんとノアくんの声が聞こえた。
利用する私たちの利便性は損なわれていないので、気にならないけれど、バッシュくんたちは別の理由で「しまった」と思ったのかもしれない。
『小屋』の中に入ると
「バッシュ、ノア!さっきまでいた『小屋』とも『装置のある部屋』の出入口に作った『小屋』とも微妙に内装が違う気がするんだが、もしかして内装や家具を選べたりするのか?」
先に入ったガイアスくんが、目を輝かせてバッシュくんとノアくんに訊いている。
そういえば、小窓の下の飾り棚や魔力コインを入れる箱が微妙に違う色をしていたり、テーブルは暖かみのある木目調の見た目になっている。壁の違いはよくわからないけれど、違うと言われれば違う気がする。
新しい『小屋』に荷物を運び終え、持ってきた食料は朝食分を残して、あとは食料の在庫として保存庫にしまい直すと、エレイナさんが早速、朝食の食料を温め始めた。
小屋の炉は、火を使わず、火属性の魔力による熱エネルギーで温めているので、注意すべきことはあるものの、大掛かりな広さを必要とせずに料理の温めが可能になっていて便利に出来ている。
『小屋』に入ると窓の向こうは遺跡の通路の壁が見えていて魔物は見えない。
表に出ると、対峙すれば襲ってくる魔物が、すぐそばに大量にいるのだと思うとあまりいい気分ではないので、私は少しほっとした。
もし見える状態だったなら、今日の私はきっと、窓に付いた布を引いて、外が見えないようにしてしまったに違いない。
気がつくと美味しそうな、良い匂いが漂って来ている。
「今日からしばらく、雷属性の魔物に挑むことになる。これまでの魔物を相手にするより、俺たちにとっては厳しいかもしれない。しっかり食べて、気を引き締めて行こう」
ガイアスくんが運んできた自分の分の料理をテーブルに置きながら言った。続けてジャックくんから飲み物を受け取り、バッシュくんとノアくんの席に置いた。
ここにある食料の在庫には、昨晩ガイアスくんとバッシュくんが『拠点』の『書斎』に設置していた魔冷保存庫を片付けて、3日分の調理済みの食料が追加されている。
記憶が正しければ、『拠点』にある調理済みの冷凍食料はこれで『第2ゲート』の10日分だけになった。
こちらに残っている冷凍食料は、今日の分を合わせて11日分。それにプラス3日分のなので、私たちが今いる『屈強なコテージ』の『小屋』には、今日の分を省くと、この小屋には13日分の食料が保存されていることになる。
実際には、そんなに長い日数の滞在にはならないと思うものの、万が一『拠点』の食料が荒らされた場合でも対応できるようにという用心なのだ。
ガイアスくんたちは雷属性の魔物対策として『拠点』から食料だけでなく、アイテムも回収してきている。
マヒさせられても、痺れから回復するのを早めることが出来る貴重な薬品だ。
小瓶の栓には薬品の材料となった植物のラベルが貼られている。
食事の後はバッシュくんたちがジャックくんとガイアスくんに守りの補助魔術を丁寧にかけている。バッシュくんとノアくんの表情は真剣だ。
屈んで魔術を施してもらっている方のジャックくんとガイアスくんは、気持ち良さそうだ。
「水属性が守りになるのか?」とガイアスくんが不思議そうにすると、「魔力のみで作った『水』であれば、雷の力を防ぐことが出来ます。完全ではありませんが」とノアくんが言って、「完全には判っていないけど、魔力だけで作った純水な水は雷の力を通しにくいんだ」とバッシュくんが続けた。
「けど水は雷の力を通す物質が溶けやすいから。時間が経ったら『水の守り』は消えるようにしてある」「危ないと思ったら戻ってきてください。かけ直します」バッシュくんたちに、ガイアスくんとジャックくんが頷いた。
この部屋の魔物たちも力の奪い合いや、巨大化が始まったりしているのだろうか。
それにまた『シナップ』のような魔物が、中にいないとも限らない。
エレイナさんも準備を整え終えている。
「出よう」
ガイアスくんが先頭に立って『小屋』の外へ出て、私たちもその後に続いて『5番目の魔物の部屋』の入口から部屋の内側へ向かった。
◇
防御結界陣地内の『小屋』の裏側を背にする私たちの前に無数とも思える魔物たちが立ちはだかっている。
この状態での密集具合が部屋の奥まで続いて続いているのなら、まだ数万体はこの部屋だけで魔物が残っているということだ。それを思って私はうんざりするような気持ちに襲われてしまう。
ここを作った古代の人たちは酷なことをするじゃないか。
私は『1番目の魔物の部屋』で魔物たちが見せた『変化』を思いやるせない気持ちが同時にわき上がる。
ここの魔物たちは一体、何のために私たちを襲うのだろうか。
これなら、自分のために他の魔物から力を奪い、強くなろうとした魔物の方が、いくらか幸せだったのではないだろうか。
物語に登場する“悪魔”のような姿。
尖って長い耳に尖った鼻、鋭い爪に鋭い牙。
金色に光る大きな瞳はギョロリとしていて鋭く、顔の向きを見なければどこをみているのか判りづらい。
属性が部屋ごとに違うはずだが、それを見た目だけで判別するのは難しいくらいには同じに見えた。
これまでみてきたのと同じように、移動の目標を私たちにしている以外は、手近な物でも構わず咬みついたりしていて、先に出て結界陣地内のギリギリの位置に待機しているガイアスくんとジャックくんにも鋭い爪を持った手を伸ばし、鋭い牙で咬みつこうと試みている。
けれど『防御の陣』を上回る強力な防御結界『屈強なコテージ』の防御壁が魔物たちを受け入れず、薄っぺらな本の1冊分も離れていないだろうと思えるような、至近距離にいるはずのガイアスくんとジャックくんに、爪も牙も届かない。
「悪く思わないでくれよ!」
私たちが結界内で配置に付いたのを確認すると、ガイアスくんはそう言って、徐に1つの魔石を部屋に向かって放物線を画くようにして投げ入れた。
『拠点』の『書斎』に設置していた魔冷保存庫から回収した、火属性の魔石をノアくんたちが調節して加工した魔導具だ。
ガイアスくんによって投げられた魔石は部屋の中央よりもずっとこちら側に近い天井近くの高い位置まで行くと、カッっと強い光を放ち魔石がエネルギーを放出した。
放出した際の高エネルギーに耐えきれず、魔石自身が粉々に砕け散るのと引き換えに、広範囲に燃焼が起きて魔物が燃え始める。
その影響で結界のそばにいた魔物の多くが炎上に巻き込まれ姿を消していくのが見えた。
すかさずエレイナさんが風属性の魔術でさらに燃焼に力を与える。ガイアスくんが脇に置いていた大盾を結界の外側に出し、ジャックくんが手前の魔物を切り払って、前衛の2人が結界の外に出た。
結界の外側は、現在かなりの熱さになっているはずで、いつものガイアスくんなら軽口でも言いそうなのだけど、今日は今のところ何も言わない。
だからといって、そこに悲壮感などがあるわけで無く、私に見えているのは、彼らが戦う強い意志だ。
大盾の性能のおかげで熱を感じにくいというのもあるかもしれない。
私はまだ姿の見えない奥の魔物めがけてなるべく範囲が広がるように地属性魔術『地縛り』を発動させ続ける。
不発に終わってしまう可能性も考えられたが、それで構わない。不発であれば魔物の数が想定より少ないということだ。不発でないなら役目を果たせている可能性は高い。そう信じて術を詠唱する。
炎上によって部屋の中の空気が吸えなくなるような事態が起きる可能性が低いのは1番目の魔物の部屋で確認できている。
そのせいかどうか、ジャックくんの戦いかたに遠慮が少ない。
しばらくそうしていると、ガイアスくんが後方の私たちに「助かった、後方は少し休んでくれ!」と声をかけて、ジャックくんと一緒に結界の中へ戻ってきた。
彼らを追って魔物たちが再び結界の至近距離に密集し、ガイアスくんが魔導ギルドと商人ギルドの共同開発製の大盾を展開させて応じている。
防御結界『屈強なコテージ』は体力と魔力を回復させるため、しばらく結界を使った回復を並行して行い戦うつもりのようだ。
バッシュくんとノアくんが2人に『水の守り』を付与し直すと、ガイアスくんとジャックくんが「充分だ」と小屋の中に入るように促した。
「結界内にいるなら2人とも大丈夫よ!」
私とエレイナさんがバッシュくんたちを抱き上げ、小屋に入る意思表示を示すと、ガイアスくんとジャックくんが頷いた。
「マクスさん!腹がへったら俺たちも小屋に戻る!」
後ろからの声に振り返って「待ってるよ!」私がそう言って手をふると、2人とも揃って片手を上げた。
名残惜しそうなバッシュくんを私が両手で抱えてガイアスくんたちが見えるように高い位置に掲げると、バッシュくんも手を上げて満足そうにしたので、私もエレイナさんとノアくんを追った。
◇
魔物たちをガイアスくんたちに任せ『小屋』の中に戻った私たちは、体力や魔力が回復するようにしっかり休憩しなければいけない。エレイナさんはさっそく厨房でお湯を沸かして飲み物を用意する準備をしている。
時刻魔導具で時間を確認すると昼食時までは、まだだいぶん時間がある。
ガイアスくんたちはしばらく戻らないだろう。
彼らは空腹を感じるくらいまでの時間、魔力を消費しない方法で魔物に対応することで、昼食を終えた頃に体力と魔力を回復させた私たちと、彼らの状態が釣り合いのとれるようにするはずだ。
それにしても、まさかこんなにも連続で『アースバインド』を詠唱する機会に恵まれる日が訪れるとは思わなかった。
そうだ、島に帰ったら話して聴かせよう。
私はそんなことを考えながら、テーブルに体力と魔力の回復効果がわずかだけどあるビスケットを取り出して、平らな器に12枚だけ並べた。
そこにエレイナさんが用意してくれた飲み物が加わる。
これで結界の回復効果との相乗効果で、昼食を終えた辺りの時間には、私たちの体力や魔力はほとんど全快に近い状態になるだろう。
「もし、この部屋の魔物も力の奪い合いを始めていたら、魔物の数が減る代わりに、強い魔物を相手にすることになるのね。どっちが戦いやすいのかな」
私たちが席につくと、エレイナさんが言った。
事前の予定では、魔物が力の奪い合いを始めたら優先して倒していくということにしている。
これはガイアスくんやジャックくんの希望というより、私たちの心配や意見が取り入れられた戦略だ。
するとバッシュくんが、ビスケットを美味しそうに頬張りながら「少し強くなるくらいなら、ガイアス君たちにとっては、魔物の数が減った方がやり易いんじゃないかな」と言った。
私も同じように思う。ただ、魔物がこちらの都合のよい強さにとどまって、数だけ減らしてくれるとは限らない、というのも私たちの共通の心配事だ。
それで前々から私たちは、魔物が強くなったときに対応できるように『書斎』で見つけた本の中から、魔導書を見つけて、覚えられないかと画策してきた。
遺跡や『何者か』の正体に迫るような物ではないけれど、よい効果のあるものが見つかれば、利用出来るようになりたい。
そもそもそんな都合のよい魔導書があるかわからないので、今まで時間を割いてこなかったけれど、今日の空き時間は良い機会かもしれない。
バッシュくんとノアくんの円らな瞳がキラリと光った。
◇
時刻魔導具が昼を教えてくれる頃、『小屋』の入口の扉の開く音がして、ガイアスくんたちの声が聞こえてきた。
エレイナさんと私は、ちょうどお昼ごはんのために食料を温め始めていたところで、バッシュくんとノアくんが2人を出迎えている。
「そろそろ戻ってくる頃だと思ってたのよ」エレイナさんも厨房から出て、ガイアスくんたちに声をかけた。
2人とも慌てて戻ったとか、怪我をしているという様子は無いので、魔物たちに特別に変わった様子がなかったのだろうと思い、私は安堵したけれど、報告を聞いてみなければ実際のところわからない。
私が都度なにかを報告されても、状況を一変させるようなことは起こせないのだけれど。
テーブルに昼食のための料理の皿を並べながら「魔物の様子はどうだった?何か気がついたかい」と訊いてみた。
するとジャックくんが頷いて、「この部屋でも、ほかの魔物に比べて大きさのある魔物が現れている。そのうち小競り合いが始まる」そう言いながら私から料理の皿を受け取ると、一緒に並べるのを手伝ってくれた。
「『シナップ』みたいな魔物は今のところ見かけていない」
ジャックくんとガイアスくんの知らせに、私たちは安堵と不安を同時に感じたけれど、想定から考えると問題が起きているわけではない。
食事のためにテーブルにつくと、さすがにガイアスくんとジャックくんが疲れた様子を窺わせて息をついたのがわかった。
それからテーブルに置かれた水をゴクゴクと飲み干すと「もう少し早めに戻ることを考えたんだが、ジャックのやつが」とガイアスくんが言いかけて「ガイアス、お前だってなかなか帰ろうとしなかったじゃないか」と、なにやら擦り合いを始めている。
それを見たエレイナさんが、2人の湯呑茶碗に水を追加で注いで「どっちもが帰ろうとしなかったのね」とまとめてしまった。
ガイアスくんによると魔物の数はまだかなりの数がいて、今日中に倒し終えて出口を探すのはキツいだろうという。
こちらは予想していたことだけれど。
「その言い方だと、今日中に終わらせるつもりだったのかい」
と私が正すと、エレイナさんとバッシュくんとノアくんの3人が仰天した様子で「まだ先は長いのよ」「これまでの討伐数から考えても無茶だよ」と口々に言った。
見つけた出口の先が通路なら相当の距離のものである事と、物資も食料も補給は出来ない状態が続く可能性を考えておく必要がある。
時間をかけたくないというのも道理ではあるし、2人の力量からみて、今日中にやってやれないという感覚があるに違いない。装備専用魔石も使えば実際に可能なはずだ。
それがガイアスくんとジャックくんを頑張らせてしまう。
しかしそれで無理をするようなら本末転倒というもの。
ジャックくんは、大きな魔物が衝突をはじめて力の奪い合いを始めるのは時間の問題だと見ている。
『シナップ』が作った氷の壁で仕切られているわけではないため、鉢合わせするのは時間の問題なのだろう。1番目の魔物の部屋を参考に考えると、衝突が始まった後の変化の速さは劇的なものと考えなくてはいけない。
「早い段階で手を打たないなら、逆に放置して、でかくなったところを倒したい。強力な後方の支援があるオレたちならそんなに難しいことじゃないだろう?」
ジャックくんはそう言うと、食事を取り始めた。
エレイナさんとバッシュくんたちが顔を見合わせている。
どうやら悪い気がしなかったらしい。
「ジャック。お前って……」
ガイアスくんがなにか言いかけて止めた。
◇
昼をだいぶ過ぎて、私たちの体力と魔力が万全と言えるくらいまで回復して、再び『5番目の魔物の部屋』内で魔物たちに対峙している。
ガイアスくんとジャックくんの報告通り、魔物の数は多いままで、大きさのある魔物が数こそ少ないものの現れている。
他の魔物が私たちに向かって前進しながら単に目についた者に攻撃を加えるのと違い、無闇に暴れるような様子がない。
それはノアくんが1番目の魔物の部屋で最初に発見した、大きめの魔物の様子と似かよっていて、見ようによっては狙う相手を見定めているかのようにも思えた。
「焦らず、数を減らしていこう」ガイアスくんがどちらかと言えば、自分自身に言い聞かせるように言った。
魔物同士で潰しあいが始まれば、勝手に数を減らしていく。
数が減るまでは大きな魔物は私たちの援軍のようなものなのだ。魔物が強くなるという危険ははらむけれど、数を減らすためのこちらの時間と労力は大幅に減らすことが出来る。
つまり、互いに潰しあいをするような大きな魔物は、あえて放っておこうというのが、主にジャックくんの意見で、ガイアスくんがジャックくんに近い考えだ。
それに対し、同士討ちによる力の奪い合いを放置することは、魔物の数を減らせる一方で、こちらの予想を越えた強い魔物の出現の危険に繋がるという点で、懸念と心配があった。
これは私やエレイナさん、バッシュくんやノアくんの意見だ。
それで改めて昼食のあとに各々、魔物への対応について意見を出しあった結果、予定の同士討ちを行う魔物を優先して倒すというのを止めて、力の奪い合いを利用しながら「自分たちの歩調で、魔物を減らしていこう!」という案外普通のやり方にまとまったのだ。
この方向性はガイアスくんとジャックくんの意見を取り入れたもののはずなのだけど。
何故か突然、2人とも見えない箱にでも入れられたような顔をしている。動きも良くないし、攻撃が浅くなっていて、魔物を倒しきれていない。
原因は少し時間が経ってから、エレイナさんの声かけによって判明した。
「ジャック、ガイアス。大きい魔物を倒しちゃいけないわけじゃないのよ!」
どういう加減かはわからないけれど、2人とも大きな魔物は倒してはいけないという“縛り”の中で戦うようになっていたらしい。
◇
少しの時間の後、ガイアスくんとジャックくんの調子が戻ると、再び魔物が勢いよく倒されていく。その頃には大きな魔物たちの同士討ちと力の奪い合いが始まり、部屋の中で雷の魔力が発するエネルギーが増して来た。
防御結界『屈強なコテージ』の陣地内にいる私たちはその影響を免れているけれど、ガイアスくんたちは平気なのだろうか。
時折、魔物たちの周囲に小さな白い火花や閃光のようなものが発生しているが、ガイアスくんたちが後退してくる様子は見られない。
バッシュくんとノアくんが、なるべく2人の攻撃範囲内にいる巨大化し始めた魔物に『二重奏』を仕掛け、大きく魔力と体力を奪っていく。
私は魔物が攻撃範囲内に止まるように地属性魔術地縛りで足を止め、エレイナさんの風属性魔術『風刃』が広範囲の魔物たちに襲いかかる。
「一度休みましょう」頃合いを見て、エレイナさんが言った。
ガイアスくんとジャックくんは結界の外でまだ魔物と戦っているけれど、私たちの方は魔力の回復が魔力回復薬無しでは完全に追い付かなくなってきている。
「ガイアス君とジャック君は魔力が切れても戦えるけど、僕たち魔力が切れると役立たずだから、休まないとね」
バッシュくんが何だか卑屈な言い方をしたので、エレイナさんがぎょっとしている。
『魔物の部屋』は、前衛のガイアスくんたちの攻撃、エレイナさんたち後方からの支援と攻撃魔術だけでなく、力の奪い合いを始めた魔物の同士討ちによって、魔物たちが大きく数を減らしはじめていた。
そんな状況の中、一際大きな魔物が現れている。
頭ひとつ抜き出た大きさで、部屋の出入り口にいる私たちにも、全身が確認できないだけでよく見える。
1番目の魔物の部屋で見た、巨大化した魔物の大きさにはまだ及ばないものの、その大きさは、はっきりとこれまでのものとは違うといって差し支えがない。
部屋の中央近くまで前進していたガイアスくんが、自分の背丈より大きい巨大な盾を担ぐようにして、こちらまで走って戻ってきた。ここまでそれほどの距離はないけれど、彼の大盾は大きな物で、重量もある特別製のものだ。
バッシュくんとノアくんが、走って戻ってきたガイアスくんを見て、目を輝かせている。
「ジャックもじきに戻ってくる」
そう言いながら、ガイアスくんが、まだ前方に残って魔物と対峙しているジャックくんの姿を目で追った。
ジャックくんの周辺にいる魔物が、ジャックくんではなく、自分以外の魔物の方を襲っているのが私の視界に映る。
さほど大きくない魔物たちも、先ほどまでのようにジャックくんを執拗に襲うのではなく、魔物同士で力を奪い合う行動の方が目立ち始めていて、ガイアスくんを追って来た魔物も少ない。
それだけ魔物の数が減っているということなのか。
魔物たちの法則が壊れ始めていて、『1番目の魔物の部屋』よりもそれが顕著に現れているように思える。
「魔物同士で潰しあってる間に、こっちはそこら辺に落ちている魔石と素材を拾っておくか」
ガイアスくんはそう言うと、私たちの方に向き直って
「マクスさんたちは『屈強なコテージ』からは出ないで待っててくれ。何かあったらフォローを頼みたい」
そう言うと、大盾を持ったまま再び結界の外へゆっくりと出て、結界の近くに落ちている魔石と素材を拾い始めた。
ガイアスくんの近くにたまに近づいてくる魔物はいるにはいても、私の地縛りとエレイナさんの弓や魔術で十分対処出来るくらいの数だ。
ジャックくんの方も、ガイアスくんと同じように考えたのか、時々床にしゃがんで素材や魔石を拾っている様子が見える。
まだ明確に共食いや捕食までが起きているわけではないけれど、すぐそばに魔物がいる状態のジャックくんが、魔石を拾える隙や余裕があるくらいには魔物同士での衝突が始まっている。
今のところ心配していたような、雷属性の魔力に悩まされるようなことは起きていない。
バッシュくんの保護魔術『水の守り』や、ノアくんがガイアスくんとジャックくんに渡した雷属性の魔力を吸収する魔石が機能している。ジャックくんたちも性能を信頼しているせいか、行動が大胆で、ともすれば無防備にも見えるくらいだけれど。
実際に少しくらいなら雷の力を浴びても、魔石の方に力が流れて、ガイアスくんたちは守られている。
けれど部屋の中の雷の力全てを吸収出来るわけではない。
『5番目の魔物の部屋』の魔物たちの中に、雷の力が集まり始めている。魔物たちが密集している場所で、先ほどまでより頻繁に、白い閃光が走る。
今はまだ小さい。
閃光の走った方向に、ジャックくんが火属性魔術『焔』を付与した剣撃を放った。
◇
時刻魔導具が夕飯時を知らせてくれる時間になると、防御結界内の『小屋』に戻った私たちは、夕食の準備をし終えて、各々の席についていた。
テーブルの上には料理と飲み物が並べられ、小窓の側に置かれた飾り棚の上に、今日ガイアスくんとジャックくんが拾い集めた魔石と素材の入った袋が置かれている。
「おつかれさま」「おつかれさん」「おつかれー!」
ジャックくんもガイアスくんも、お腹が空いていたらしく、勢いよく食べ始めた。
魔物の部屋に魔物はまだまだいるけれど、ジャックくんたちが回収した魔石や素材の数だけでも8,000体以上、拾えていない分も含めて考えると、おそらく魔物の数は16,000体は減っているはずだ。
魔物同士で自滅している分も計算にいれれば、さらに推定の減少数は多くなる。
「初手でバッシュたちが加工した魔石を使ったのが利いたな」
とガイアスくんが分析して、満足げに頷いた。
朝には勝手に魔物同士が衝突して、さらに数が減っているにちがいない。
「明日も2人に頑張ってもらわないといけないから、どんどん食べて!」「おう」エレイナさんたちと相談の上で、ガイアスくんとジャックくんの今日の晩の食事量は少し多めにしてある。
2人の運動量を考えると、もっと食べても良いくらいだ。
しかし、それを知ったジャックくんとガイアスくんが「責任重大だな」と言って、真剣な顔を見せた。
この『魔物の部屋』を調べ終わっても、まだ調べていない『魔物の部屋』は火、土、水属性の3部屋残っている。出口が見つかっても、その先がどうなっているかはわからない。
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籠城戦7日目
推定魔物討伐数 9,000~????体、素材獲得数 607個(赤青黄白黒)、魔石の欠片 1,050個
□共有アイテム□
◇主な食料53日分
◇嗜好品お菓子類(魔導系回復あり)、嗜好品、お菓子類(飴7粒、チョコ1箱)、未調理穀物6日分
◇魔力回復ポーション(EX132本、超回復112本、大252本、中1,028本、小1,405本)
◇治癒ポーション(EX132本、超回復254本、大1,020本、中2,420本、小5,017本)、薬草(治癒2,216袋、解毒120袋)2,336袋、他
□各自アイテムバッグ
ガイアス、ジャック、エレイナ、バッシュ、ノア、マクス
□背負袋
ガイアス、ジャック、エレイナ、バッシュ、ノア、マクス
━早朝、『5番目の魔物の部屋』出入口前━
『1番目の魔物の部屋』から出た、長い通路の奥にある出入り口、その前に立つバッシュくんが、小さな身体から魔力を放出していた。
その光景はまるで、普段は見えない魔力が、自らの存在を教えるように、周囲にいる私たちに強い圧力を感じさせている。
昨夜のうちに構築した防御結界『屈強なコテージ』の魔方陣を仕上げるため、魔力を高めていたバッシュくんが、ゆっくりと床に描かれた魔方陣に向かって両手をかざし、魔力を注いだ。
すると私たちの目の前でパァァッと魔方陣に光が走って、先に出来上がって建っていた小屋が、その光に混ざるようにして魔方陣に吸い込まれて、しばらくすると強い光を放ち始めた。
強い光に融かされるように、先ほどまで4つに分かれていた正方形の魔方陣が、1つの魔方陣となって静かな光を帯びた状態を迎え、無数の数をあらわす幾何学の美しい文字が輝いている。
その後すぐに光は強い力を取り戻し、光が渦のように暴れたと思うと、やがて柔らかな光となって再び光は大人しくなった。
柔らかな光は淡い光になり、その柔らかな光に包まれた空間に、魔力で構成された分厚くて柔軟性のある強靭な防御壁を持つ『屈強なコテージ』が新たに形成されて行く。
そうして出来た結界の陣地内にさらに平屋の木で出来た小屋が現れると
「完成!」
小屋を見上げるようにして、バッシュくんが小さな両手を上げた。
◇
再構築によって生まれ変わった『屈強なコテージ』が出来上がるとすぐにバッシュくんが
「あ、『小屋』の場所が入口から少しずれちゃったね」
と気がついたように言った。
バッシュくんとノアくんの、しまった、という表情にガイアスくんたちはそろって「問題無い、魔物の部屋のなかに入りやすくなってる」 と満足そうにして言った。
実際に『小屋』の位置が入口ど真ん中に無いことで私たちが魔物の部屋の中へ入る脇道のようなものが比較的広めに確保されていて行き来がしやすくなっている。
その脇道の奥に結界に阻まれてこちらへ来れずに防御結界の壁にへばり付いたようになっている魔物たちが見えた。近付くのも難しいはずだけど、ギリギリまで迫っている。
「設計した通りにうまく作れなかったね」
愛らしいバッシュくんとノアくんの声が聞こえた。
利用する私たちの利便性は損なわれていないので、気にならないけれど、バッシュくんたちは別の理由で「しまった」と思ったのかもしれない。
『小屋』の中に入ると
「バッシュ、ノア!さっきまでいた『小屋』とも『装置のある部屋』の出入口に作った『小屋』とも微妙に内装が違う気がするんだが、もしかして内装や家具を選べたりするのか?」
先に入ったガイアスくんが、目を輝かせてバッシュくんとノアくんに訊いている。
そういえば、小窓の下の飾り棚や魔力コインを入れる箱が微妙に違う色をしていたり、テーブルは暖かみのある木目調の見た目になっている。壁の違いはよくわからないけれど、違うと言われれば違う気がする。
新しい『小屋』に荷物を運び終え、持ってきた食料は朝食分を残して、あとは食料の在庫として保存庫にしまい直すと、エレイナさんが早速、朝食の食料を温め始めた。
小屋の炉は、火を使わず、火属性の魔力による熱エネルギーで温めているので、注意すべきことはあるものの、大掛かりな広さを必要とせずに料理の温めが可能になっていて便利に出来ている。
『小屋』に入ると窓の向こうは遺跡の通路の壁が見えていて魔物は見えない。
表に出ると、対峙すれば襲ってくる魔物が、すぐそばに大量にいるのだと思うとあまりいい気分ではないので、私は少しほっとした。
もし見える状態だったなら、今日の私はきっと、窓に付いた布を引いて、外が見えないようにしてしまったに違いない。
気がつくと美味しそうな、良い匂いが漂って来ている。
「今日からしばらく、雷属性の魔物に挑むことになる。これまでの魔物を相手にするより、俺たちにとっては厳しいかもしれない。しっかり食べて、気を引き締めて行こう」
ガイアスくんが運んできた自分の分の料理をテーブルに置きながら言った。続けてジャックくんから飲み物を受け取り、バッシュくんとノアくんの席に置いた。
ここにある食料の在庫には、昨晩ガイアスくんとバッシュくんが『拠点』の『書斎』に設置していた魔冷保存庫を片付けて、3日分の調理済みの食料が追加されている。
記憶が正しければ、『拠点』にある調理済みの冷凍食料はこれで『第2ゲート』の10日分だけになった。
こちらに残っている冷凍食料は、今日の分を合わせて11日分。それにプラス3日分のなので、私たちが今いる『屈強なコテージ』の『小屋』には、今日の分を省くと、この小屋には13日分の食料が保存されていることになる。
実際には、そんなに長い日数の滞在にはならないと思うものの、万が一『拠点』の食料が荒らされた場合でも対応できるようにという用心なのだ。
ガイアスくんたちは雷属性の魔物対策として『拠点』から食料だけでなく、アイテムも回収してきている。
マヒさせられても、痺れから回復するのを早めることが出来る貴重な薬品だ。
小瓶の栓には薬品の材料となった植物のラベルが貼られている。
食事の後はバッシュくんたちがジャックくんとガイアスくんに守りの補助魔術を丁寧にかけている。バッシュくんとノアくんの表情は真剣だ。
屈んで魔術を施してもらっている方のジャックくんとガイアスくんは、気持ち良さそうだ。
「水属性が守りになるのか?」とガイアスくんが不思議そうにすると、「魔力のみで作った『水』であれば、雷の力を防ぐことが出来ます。完全ではありませんが」とノアくんが言って、「完全には判っていないけど、魔力だけで作った純水な水は雷の力を通しにくいんだ」とバッシュくんが続けた。
「けど水は雷の力を通す物質が溶けやすいから。時間が経ったら『水の守り』は消えるようにしてある」「危ないと思ったら戻ってきてください。かけ直します」バッシュくんたちに、ガイアスくんとジャックくんが頷いた。
この部屋の魔物たちも力の奪い合いや、巨大化が始まったりしているのだろうか。
それにまた『シナップ』のような魔物が、中にいないとも限らない。
エレイナさんも準備を整え終えている。
「出よう」
ガイアスくんが先頭に立って『小屋』の外へ出て、私たちもその後に続いて『5番目の魔物の部屋』の入口から部屋の内側へ向かった。
◇
防御結界陣地内の『小屋』の裏側を背にする私たちの前に無数とも思える魔物たちが立ちはだかっている。
この状態での密集具合が部屋の奥まで続いて続いているのなら、まだ数万体はこの部屋だけで魔物が残っているということだ。それを思って私はうんざりするような気持ちに襲われてしまう。
ここを作った古代の人たちは酷なことをするじゃないか。
私は『1番目の魔物の部屋』で魔物たちが見せた『変化』を思いやるせない気持ちが同時にわき上がる。
ここの魔物たちは一体、何のために私たちを襲うのだろうか。
これなら、自分のために他の魔物から力を奪い、強くなろうとした魔物の方が、いくらか幸せだったのではないだろうか。
物語に登場する“悪魔”のような姿。
尖って長い耳に尖った鼻、鋭い爪に鋭い牙。
金色に光る大きな瞳はギョロリとしていて鋭く、顔の向きを見なければどこをみているのか判りづらい。
属性が部屋ごとに違うはずだが、それを見た目だけで判別するのは難しいくらいには同じに見えた。
これまでみてきたのと同じように、移動の目標を私たちにしている以外は、手近な物でも構わず咬みついたりしていて、先に出て結界陣地内のギリギリの位置に待機しているガイアスくんとジャックくんにも鋭い爪を持った手を伸ばし、鋭い牙で咬みつこうと試みている。
けれど『防御の陣』を上回る強力な防御結界『屈強なコテージ』の防御壁が魔物たちを受け入れず、薄っぺらな本の1冊分も離れていないだろうと思えるような、至近距離にいるはずのガイアスくんとジャックくんに、爪も牙も届かない。
「悪く思わないでくれよ!」
私たちが結界内で配置に付いたのを確認すると、ガイアスくんはそう言って、徐に1つの魔石を部屋に向かって放物線を画くようにして投げ入れた。
『拠点』の『書斎』に設置していた魔冷保存庫から回収した、火属性の魔石をノアくんたちが調節して加工した魔導具だ。
ガイアスくんによって投げられた魔石は部屋の中央よりもずっとこちら側に近い天井近くの高い位置まで行くと、カッっと強い光を放ち魔石がエネルギーを放出した。
放出した際の高エネルギーに耐えきれず、魔石自身が粉々に砕け散るのと引き換えに、広範囲に燃焼が起きて魔物が燃え始める。
その影響で結界のそばにいた魔物の多くが炎上に巻き込まれ姿を消していくのが見えた。
すかさずエレイナさんが風属性の魔術でさらに燃焼に力を与える。ガイアスくんが脇に置いていた大盾を結界の外側に出し、ジャックくんが手前の魔物を切り払って、前衛の2人が結界の外に出た。
結界の外側は、現在かなりの熱さになっているはずで、いつものガイアスくんなら軽口でも言いそうなのだけど、今日は今のところ何も言わない。
だからといって、そこに悲壮感などがあるわけで無く、私に見えているのは、彼らが戦う強い意志だ。
大盾の性能のおかげで熱を感じにくいというのもあるかもしれない。
私はまだ姿の見えない奥の魔物めがけてなるべく範囲が広がるように地属性魔術『地縛り』を発動させ続ける。
不発に終わってしまう可能性も考えられたが、それで構わない。不発であれば魔物の数が想定より少ないということだ。不発でないなら役目を果たせている可能性は高い。そう信じて術を詠唱する。
炎上によって部屋の中の空気が吸えなくなるような事態が起きる可能性が低いのは1番目の魔物の部屋で確認できている。
そのせいかどうか、ジャックくんの戦いかたに遠慮が少ない。
しばらくそうしていると、ガイアスくんが後方の私たちに「助かった、後方は少し休んでくれ!」と声をかけて、ジャックくんと一緒に結界の中へ戻ってきた。
彼らを追って魔物たちが再び結界の至近距離に密集し、ガイアスくんが魔導ギルドと商人ギルドの共同開発製の大盾を展開させて応じている。
防御結界『屈強なコテージ』は体力と魔力を回復させるため、しばらく結界を使った回復を並行して行い戦うつもりのようだ。
バッシュくんとノアくんが2人に『水の守り』を付与し直すと、ガイアスくんとジャックくんが「充分だ」と小屋の中に入るように促した。
「結界内にいるなら2人とも大丈夫よ!」
私とエレイナさんがバッシュくんたちを抱き上げ、小屋に入る意思表示を示すと、ガイアスくんとジャックくんが頷いた。
「マクスさん!腹がへったら俺たちも小屋に戻る!」
後ろからの声に振り返って「待ってるよ!」私がそう言って手をふると、2人とも揃って片手を上げた。
名残惜しそうなバッシュくんを私が両手で抱えてガイアスくんたちが見えるように高い位置に掲げると、バッシュくんも手を上げて満足そうにしたので、私もエレイナさんとノアくんを追った。
◇
魔物たちをガイアスくんたちに任せ『小屋』の中に戻った私たちは、体力や魔力が回復するようにしっかり休憩しなければいけない。エレイナさんはさっそく厨房でお湯を沸かして飲み物を用意する準備をしている。
時刻魔導具で時間を確認すると昼食時までは、まだだいぶん時間がある。
ガイアスくんたちはしばらく戻らないだろう。
彼らは空腹を感じるくらいまでの時間、魔力を消費しない方法で魔物に対応することで、昼食を終えた頃に体力と魔力を回復させた私たちと、彼らの状態が釣り合いのとれるようにするはずだ。
それにしても、まさかこんなにも連続で『アースバインド』を詠唱する機会に恵まれる日が訪れるとは思わなかった。
そうだ、島に帰ったら話して聴かせよう。
私はそんなことを考えながら、テーブルに体力と魔力の回復効果がわずかだけどあるビスケットを取り出して、平らな器に12枚だけ並べた。
そこにエレイナさんが用意してくれた飲み物が加わる。
これで結界の回復効果との相乗効果で、昼食を終えた辺りの時間には、私たちの体力や魔力はほとんど全快に近い状態になるだろう。
「もし、この部屋の魔物も力の奪い合いを始めていたら、魔物の数が減る代わりに、強い魔物を相手にすることになるのね。どっちが戦いやすいのかな」
私たちが席につくと、エレイナさんが言った。
事前の予定では、魔物が力の奪い合いを始めたら優先して倒していくということにしている。
これはガイアスくんやジャックくんの希望というより、私たちの心配や意見が取り入れられた戦略だ。
するとバッシュくんが、ビスケットを美味しそうに頬張りながら「少し強くなるくらいなら、ガイアス君たちにとっては、魔物の数が減った方がやり易いんじゃないかな」と言った。
私も同じように思う。ただ、魔物がこちらの都合のよい強さにとどまって、数だけ減らしてくれるとは限らない、というのも私たちの共通の心配事だ。
それで前々から私たちは、魔物が強くなったときに対応できるように『書斎』で見つけた本の中から、魔導書を見つけて、覚えられないかと画策してきた。
遺跡や『何者か』の正体に迫るような物ではないけれど、よい効果のあるものが見つかれば、利用出来るようになりたい。
そもそもそんな都合のよい魔導書があるかわからないので、今まで時間を割いてこなかったけれど、今日の空き時間は良い機会かもしれない。
バッシュくんとノアくんの円らな瞳がキラリと光った。
◇
時刻魔導具が昼を教えてくれる頃、『小屋』の入口の扉の開く音がして、ガイアスくんたちの声が聞こえてきた。
エレイナさんと私は、ちょうどお昼ごはんのために食料を温め始めていたところで、バッシュくんとノアくんが2人を出迎えている。
「そろそろ戻ってくる頃だと思ってたのよ」エレイナさんも厨房から出て、ガイアスくんたちに声をかけた。
2人とも慌てて戻ったとか、怪我をしているという様子は無いので、魔物たちに特別に変わった様子がなかったのだろうと思い、私は安堵したけれど、報告を聞いてみなければ実際のところわからない。
私が都度なにかを報告されても、状況を一変させるようなことは起こせないのだけれど。
テーブルに昼食のための料理の皿を並べながら「魔物の様子はどうだった?何か気がついたかい」と訊いてみた。
するとジャックくんが頷いて、「この部屋でも、ほかの魔物に比べて大きさのある魔物が現れている。そのうち小競り合いが始まる」そう言いながら私から料理の皿を受け取ると、一緒に並べるのを手伝ってくれた。
「『シナップ』みたいな魔物は今のところ見かけていない」
ジャックくんとガイアスくんの知らせに、私たちは安堵と不安を同時に感じたけれど、想定から考えると問題が起きているわけではない。
食事のためにテーブルにつくと、さすがにガイアスくんとジャックくんが疲れた様子を窺わせて息をついたのがわかった。
それからテーブルに置かれた水をゴクゴクと飲み干すと「もう少し早めに戻ることを考えたんだが、ジャックのやつが」とガイアスくんが言いかけて「ガイアス、お前だってなかなか帰ろうとしなかったじゃないか」と、なにやら擦り合いを始めている。
それを見たエレイナさんが、2人の湯呑茶碗に水を追加で注いで「どっちもが帰ろうとしなかったのね」とまとめてしまった。
ガイアスくんによると魔物の数はまだかなりの数がいて、今日中に倒し終えて出口を探すのはキツいだろうという。
こちらは予想していたことだけれど。
「その言い方だと、今日中に終わらせるつもりだったのかい」
と私が正すと、エレイナさんとバッシュくんとノアくんの3人が仰天した様子で「まだ先は長いのよ」「これまでの討伐数から考えても無茶だよ」と口々に言った。
見つけた出口の先が通路なら相当の距離のものである事と、物資も食料も補給は出来ない状態が続く可能性を考えておく必要がある。
時間をかけたくないというのも道理ではあるし、2人の力量からみて、今日中にやってやれないという感覚があるに違いない。装備専用魔石も使えば実際に可能なはずだ。
それがガイアスくんとジャックくんを頑張らせてしまう。
しかしそれで無理をするようなら本末転倒というもの。
ジャックくんは、大きな魔物が衝突をはじめて力の奪い合いを始めるのは時間の問題だと見ている。
『シナップ』が作った氷の壁で仕切られているわけではないため、鉢合わせするのは時間の問題なのだろう。1番目の魔物の部屋を参考に考えると、衝突が始まった後の変化の速さは劇的なものと考えなくてはいけない。
「早い段階で手を打たないなら、逆に放置して、でかくなったところを倒したい。強力な後方の支援があるオレたちならそんなに難しいことじゃないだろう?」
ジャックくんはそう言うと、食事を取り始めた。
エレイナさんとバッシュくんたちが顔を見合わせている。
どうやら悪い気がしなかったらしい。
「ジャック。お前って……」
ガイアスくんがなにか言いかけて止めた。
◇
昼をだいぶ過ぎて、私たちの体力と魔力が万全と言えるくらいまで回復して、再び『5番目の魔物の部屋』内で魔物たちに対峙している。
ガイアスくんとジャックくんの報告通り、魔物の数は多いままで、大きさのある魔物が数こそ少ないものの現れている。
他の魔物が私たちに向かって前進しながら単に目についた者に攻撃を加えるのと違い、無闇に暴れるような様子がない。
それはノアくんが1番目の魔物の部屋で最初に発見した、大きめの魔物の様子と似かよっていて、見ようによっては狙う相手を見定めているかのようにも思えた。
「焦らず、数を減らしていこう」ガイアスくんがどちらかと言えば、自分自身に言い聞かせるように言った。
魔物同士で潰しあいが始まれば、勝手に数を減らしていく。
数が減るまでは大きな魔物は私たちの援軍のようなものなのだ。魔物が強くなるという危険ははらむけれど、数を減らすためのこちらの時間と労力は大幅に減らすことが出来る。
つまり、互いに潰しあいをするような大きな魔物は、あえて放っておこうというのが、主にジャックくんの意見で、ガイアスくんがジャックくんに近い考えだ。
それに対し、同士討ちによる力の奪い合いを放置することは、魔物の数を減らせる一方で、こちらの予想を越えた強い魔物の出現の危険に繋がるという点で、懸念と心配があった。
これは私やエレイナさん、バッシュくんやノアくんの意見だ。
それで改めて昼食のあとに各々、魔物への対応について意見を出しあった結果、予定の同士討ちを行う魔物を優先して倒すというのを止めて、力の奪い合いを利用しながら「自分たちの歩調で、魔物を減らしていこう!」という案外普通のやり方にまとまったのだ。
この方向性はガイアスくんとジャックくんの意見を取り入れたもののはずなのだけど。
何故か突然、2人とも見えない箱にでも入れられたような顔をしている。動きも良くないし、攻撃が浅くなっていて、魔物を倒しきれていない。
原因は少し時間が経ってから、エレイナさんの声かけによって判明した。
「ジャック、ガイアス。大きい魔物を倒しちゃいけないわけじゃないのよ!」
どういう加減かはわからないけれど、2人とも大きな魔物は倒してはいけないという“縛り”の中で戦うようになっていたらしい。
◇
少しの時間の後、ガイアスくんとジャックくんの調子が戻ると、再び魔物が勢いよく倒されていく。その頃には大きな魔物たちの同士討ちと力の奪い合いが始まり、部屋の中で雷の魔力が発するエネルギーが増して来た。
防御結界『屈強なコテージ』の陣地内にいる私たちはその影響を免れているけれど、ガイアスくんたちは平気なのだろうか。
時折、魔物たちの周囲に小さな白い火花や閃光のようなものが発生しているが、ガイアスくんたちが後退してくる様子は見られない。
バッシュくんとノアくんが、なるべく2人の攻撃範囲内にいる巨大化し始めた魔物に『二重奏』を仕掛け、大きく魔力と体力を奪っていく。
私は魔物が攻撃範囲内に止まるように地属性魔術地縛りで足を止め、エレイナさんの風属性魔術『風刃』が広範囲の魔物たちに襲いかかる。
「一度休みましょう」頃合いを見て、エレイナさんが言った。
ガイアスくんとジャックくんは結界の外でまだ魔物と戦っているけれど、私たちの方は魔力の回復が魔力回復薬無しでは完全に追い付かなくなってきている。
「ガイアス君とジャック君は魔力が切れても戦えるけど、僕たち魔力が切れると役立たずだから、休まないとね」
バッシュくんが何だか卑屈な言い方をしたので、エレイナさんがぎょっとしている。
『魔物の部屋』は、前衛のガイアスくんたちの攻撃、エレイナさんたち後方からの支援と攻撃魔術だけでなく、力の奪い合いを始めた魔物の同士討ちによって、魔物たちが大きく数を減らしはじめていた。
そんな状況の中、一際大きな魔物が現れている。
頭ひとつ抜き出た大きさで、部屋の出入り口にいる私たちにも、全身が確認できないだけでよく見える。
1番目の魔物の部屋で見た、巨大化した魔物の大きさにはまだ及ばないものの、その大きさは、はっきりとこれまでのものとは違うといって差し支えがない。
部屋の中央近くまで前進していたガイアスくんが、自分の背丈より大きい巨大な盾を担ぐようにして、こちらまで走って戻ってきた。ここまでそれほどの距離はないけれど、彼の大盾は大きな物で、重量もある特別製のものだ。
バッシュくんとノアくんが、走って戻ってきたガイアスくんを見て、目を輝かせている。
「ジャックもじきに戻ってくる」
そう言いながら、ガイアスくんが、まだ前方に残って魔物と対峙しているジャックくんの姿を目で追った。
ジャックくんの周辺にいる魔物が、ジャックくんではなく、自分以外の魔物の方を襲っているのが私の視界に映る。
さほど大きくない魔物たちも、先ほどまでのようにジャックくんを執拗に襲うのではなく、魔物同士で力を奪い合う行動の方が目立ち始めていて、ガイアスくんを追って来た魔物も少ない。
それだけ魔物の数が減っているということなのか。
魔物たちの法則が壊れ始めていて、『1番目の魔物の部屋』よりもそれが顕著に現れているように思える。
「魔物同士で潰しあってる間に、こっちはそこら辺に落ちている魔石と素材を拾っておくか」
ガイアスくんはそう言うと、私たちの方に向き直って
「マクスさんたちは『屈強なコテージ』からは出ないで待っててくれ。何かあったらフォローを頼みたい」
そう言うと、大盾を持ったまま再び結界の外へゆっくりと出て、結界の近くに落ちている魔石と素材を拾い始めた。
ガイアスくんの近くにたまに近づいてくる魔物はいるにはいても、私の地縛りとエレイナさんの弓や魔術で十分対処出来るくらいの数だ。
ジャックくんの方も、ガイアスくんと同じように考えたのか、時々床にしゃがんで素材や魔石を拾っている様子が見える。
まだ明確に共食いや捕食までが起きているわけではないけれど、すぐそばに魔物がいる状態のジャックくんが、魔石を拾える隙や余裕があるくらいには魔物同士での衝突が始まっている。
今のところ心配していたような、雷属性の魔力に悩まされるようなことは起きていない。
バッシュくんの保護魔術『水の守り』や、ノアくんがガイアスくんとジャックくんに渡した雷属性の魔力を吸収する魔石が機能している。ジャックくんたちも性能を信頼しているせいか、行動が大胆で、ともすれば無防備にも見えるくらいだけれど。
実際に少しくらいなら雷の力を浴びても、魔石の方に力が流れて、ガイアスくんたちは守られている。
けれど部屋の中の雷の力全てを吸収出来るわけではない。
『5番目の魔物の部屋』の魔物たちの中に、雷の力が集まり始めている。魔物たちが密集している場所で、先ほどまでより頻繁に、白い閃光が走る。
今はまだ小さい。
閃光の走った方向に、ジャックくんが火属性魔術『焔』を付与した剣撃を放った。
◇
時刻魔導具が夕飯時を知らせてくれる時間になると、防御結界内の『小屋』に戻った私たちは、夕食の準備をし終えて、各々の席についていた。
テーブルの上には料理と飲み物が並べられ、小窓の側に置かれた飾り棚の上に、今日ガイアスくんとジャックくんが拾い集めた魔石と素材の入った袋が置かれている。
「おつかれさま」「おつかれさん」「おつかれー!」
ジャックくんもガイアスくんも、お腹が空いていたらしく、勢いよく食べ始めた。
魔物の部屋に魔物はまだまだいるけれど、ジャックくんたちが回収した魔石や素材の数だけでも8,000体以上、拾えていない分も含めて考えると、おそらく魔物の数は16,000体は減っているはずだ。
魔物同士で自滅している分も計算にいれれば、さらに推定の減少数は多くなる。
「初手でバッシュたちが加工した魔石を使ったのが利いたな」
とガイアスくんが分析して、満足げに頷いた。
朝には勝手に魔物同士が衝突して、さらに数が減っているにちがいない。
「明日も2人に頑張ってもらわないといけないから、どんどん食べて!」「おう」エレイナさんたちと相談の上で、ガイアスくんとジャックくんの今日の晩の食事量は少し多めにしてある。
2人の運動量を考えると、もっと食べても良いくらいだ。
しかし、それを知ったジャックくんとガイアスくんが「責任重大だな」と言って、真剣な顔を見せた。
この『魔物の部屋』を調べ終わっても、まだ調べていない『魔物の部屋』は火、土、水属性の3部屋残っている。出口が見つかっても、その先がどうなっているかはわからない。
────────
────────
籠城戦7日目
推定魔物討伐数 9,000~????体、素材獲得数 607個(赤青黄白黒)、魔石の欠片 1,050個
□共有アイテム□
◇主な食料53日分
◇嗜好品お菓子類(魔導系回復あり)、嗜好品、お菓子類(飴7粒、チョコ1箱)、未調理穀物6日分
◇魔力回復ポーション(EX132本、超回復112本、大252本、中1,028本、小1,405本)
◇治癒ポーション(EX132本、超回復254本、大1,020本、中2,420本、小5,017本)、薬草(治癒2,216袋、解毒120袋)2,336袋、他
□各自アイテムバッグ
ガイアス、ジャック、エレイナ、バッシュ、ノア、マクス
□背負袋
ガイアス、ジャック、エレイナ、バッシュ、ノア、マクス
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