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第21話 ヘスリン駐留場と噂
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イット駐留場を後にして王都を目指す私たちが次に向かっているのは、ここからさらに西の宿場町カルルだ。
カルルも領主ホレスさまが統治を任されている宿場で往来も多く、商店などで賑わっている。そこまで行けば王都まで徒歩でもさほど遠くない。
緩やかに南西に傾く幹線道沿いを進む。
「一応確認なんだが、今日はカルルで一泊して明日の朝王都へ発つので問題ないか?」
遠くに宿場町カルルがはっきりと見える頃合でガイアスくんが言った。
「問題ない。この調子でカルルを素通りして進めば城門が閉じられる前に王都へ入れるかもしれないが、間に合わなかった場合は近くで野営ということになるからな。エレイナをそんな目に合わせられん」
「ボクは野営でもかまわないのだよ」
背負袋から出てバッシュくんたちと歩いているシナップくんが、ロデリックくんを見上げながら言った。
「僕も野営で大丈夫」「ボクも」シナップくんにバッシュくんとノアくんも続くと、ロデリックくんが「君たちはエレイナじゃない」と辛辣な声を出した。
その様子を見たガイアスくんが
「悪かった、悪かったロデリック。一泊で決まってたんだから一泊だ」
あと一人でもシナップくんに続いたら多数決で分が悪いのはロデリックくんなので焦ったのだろう。しかも当のエレイナさんがロデリックくんの味方をしなさそうなのが少しばかり不憫に思えた。
◇
宿場町カルルに到着すると、門前に列が出来ている。
「カルル住民でない者はこっちだ」「荷馬車はこちらへ」
門兵のヒトたちが出入りのチェック表を手に、声をあげながら、列の整理を行っている。
「町に入ったら宿屋へ向かって部屋の確保を済ませよう」
「部屋がとれなさそうなら、この町を『攻略の証』に登録して塔型迷宮で休むのでもかまわないのだよ」
シナップくんの提案にガイアスくんが少し思案して
「『攻略の証』での移動は屋敷で実証済みだから疑っていないが、この辺りはヒトが多い」
「誰かに見られるとシナップのことを詮索される可能性が高くなるかな」とバッシュくんが不安を口にした。
姿だけならイシュタルさんとルイジさんがくれた魔術が付与されたペンダントを身に付けていれば『古代種族』に見えなくなっているそうなんだけど。
転送術は使用出来る人が幻級で、現在失われた古代の魔導技術という認識だ。
見られるとそれだけで目立つ。
「どのみち塔型迷宮で『攻略の証』を賞品にするなら知られるのは時間の問題だろう」
ジャックくんが指摘すると「でも遅らせることは出来るわ」とエレイナさんが言った。
『攻略の証』がある程度出回って希少性が薄れたら、塔型迷宮が有名になる代わりに、シナップくんの存在が薄れるんじゃないかというのが私たちの目論見だ。
「とりあえずそこの宿で部屋をとれないか行ってくる。悪いが待っててくれ」「私も行こう」
ガイアスくんの後をロデリックくんが続いて、2人が宿泊施設内に入っていくらも経たないうちにガイアスくんだけ明るい表情で戻ってきた。
「無事に全員同じ宿に部屋を用意できた」
ガイアスくんの報告にシナップくんが
「ガイアスくん、ガイアスくん。食事付きかね?」
と期待の眼差しを向ける。
「晩飯と朝食付き、食堂で頼めばケーキもあるみたいだぞ」
途端にシナップくんとバッシュくん、ノアくんの3人の表情がほころんだ。
◇
宿に入ると待ち合い室の奥に落ち着いた雰囲気のカウンターがあり、宿泊の手続きを済ませたロデリックくんが待っていた。
ガイアスくんによると2階に4人泊まれる部屋を隣同士に2部屋取れたらしい。
私たちが揃うとロデリックくんがカウンターに声をかけた。出てきた係のヒトの案内があってついていく。
階段を上がって部屋まで案内を終えると「それではごゆっくりお過ごしください」と案内係のヒトが私たちに丁寧に挨拶をして下がっていった。
「晩飯時にまだ時間があるが食堂に行ってみるか?」
ガイアスくんがバッシュくんたちに声をかけると3人とも「いいの?」と目を丸くした。
「昼飯の後、大分歩いたからな。少しくらい間食しても良いだろう。ただし晩飯もしっかり食べられるように加減するんだぞ」
「うん」3人は元気よく返事をした。
◇
「迷うのだー」「どれも美味しそう」
食堂へ移動して品目を見せてもらうと甘食の品数は10種類。
「クリィムケーキ。カルルベリーのとろけるムース、カラメルアイスクリン、カルル牧場ウッシーミルクの濃厚生ケーキ…」
「1人2個まで」
「わ、わかったのだ」
私たちが迷っていると
「ご注文がお決まりになりましたらお声がけか、こちらの呼鈴をお使いください」食堂の給仕係のヒトがそう言って一度下がった。
係のヒトが下がるとすぐにロデリックくんが真剣な顔で
「大人も2個までなのか」とガイアスくんに向かって問いかけた。
言われたガイアスくんがなにも言わずに顔を向け、ロデリックくんを見返すと、ロデリックくんが「大人は子供より体が大きい。私は特に大きい」「お前は好きにしろ」
どうやらロデリックくんは甘党らしかった。
◇
「濃厚ウッシーミルクの生ケーキ、果実たっぷりで美味しいのだ」「焼チーズケーキもすごく美味しいよ」
テーブルに並べられたケーキと飲み物をバッシュくんたちが美味しそうに堪能している。
ロデリックくんは10種全部を注文して、あっという間に半分食べて紅茶を飲んでいる。
「紅甘芋の蜜ケーキとやらは生地が二層に工夫されて中々美味しかったな」「ええ、紅甘芋の蜜ケーキすごく美味しい」
エレイナさんがロデリックくんに笑顔で同意して紅茶を飲むと、蜜ケーキの最後の一口分を満足そうに食べ終えた。
しばらく皆で甘食を食べていると、近くの席から自然に声が聞こえてきた。「東の大陸の魔物が最近力を増しているって話、本当だと思うか?」「魔物の強さが安定しないのは昔からだろ」「いや今回はそういうレベルじゃなくてさ…」
それ以上は周囲のざわめきにかきけされて私には聞き取れなくなった。魔物に関する噂話としてはわりと良くある話だ。
◇
食堂で甘食を食べ終えた私たちは、晩ご飯時まで休息を取ることにした。
部屋に戻るとすぐにガイアスくんが寝台に寝転がった。沢山の荷を運んでいるから疲れていたに違いない。
ジャックくんとロデリックくんは横にはならず、寝台に腰掛けて休んでいる。
ジャックくんは装備の手入れをしたりしているので、休めているのか少し心配になった。
魔物と戦ったりしていないので大丈夫だとは思うんだけど。
そうやってしばらく4人で休んでいると、コン、コンと扉をノックする音が聞こえてきた。
エレイナさんが晩御飯のために迎えにきてくれたようだ。
素早くロデリックくんが対応して扉を開けると、シナップくんが1人で扉の前に立っていて「迎えに来たのだよ」と一言発した。
「込み合ってきそうな時間だからね。エレイナくんはバッシュとノアを連れて先に1階の食堂に降りて、人数分の席を用意しに行ったのだよ」
がっかりを隠せずにいるロデリックくんを知ってか知らずか、シナップくんが軽快な声で「エレイナくんたちが待っているのだ。ボクらも早く行くのだよ」と私たちに声をかけた。
ジャックくんが何か思ったのか、ポンとロデリックくんの背中に軽く触れてから部屋を出た。
◇
食堂に行くと先に来ていたエレイナさんがバッシュくんとノアくんと一緒に手を振るのが見えた。
エレイナさんの予想通りすごく混んで来ていて、空いている席はもうほとんどないようだ。
「待たせたな。助かった」
「私たちもさっき降りてきたばかりだから大丈夫。席も人数分まとめて案内してもらえたし」
料理が沢山並べられそうな大きめのテーブルに、やって来た給仕のヒトが飲み物と野菜の盛り合わせを次々と並べていく。
「他はまだ何も頼んでないから選びましょう」
エレイナさんが私たちにそう言うと、係のヒトが
「お決まりになりましたらお声がけ下さい。すぐに参ります」
と言って少し場を外した。
「ボクはこの『カルル牧場ウッシーミルクパン』というのが食べてみたいのだ」「僕も」「ボクも」
「甘くないミルクパンか。濃厚バターの香り…旨そうだな。肉も食べた方がいいぞ」
「甘食も頼んでいい?」
「飯をちゃんと食べれるんなら、頼んでいい」
「うん!」
◇
食堂の注文締め切りの時間が過ぎる頃。
私たちも食事を大体終えて来た。
「いよいよこの一口で最後なのだ」
シナップくんが名残惜しそうに二股の菓子切りを使ってケーキを食べ終えた。
「ウッシーミルクパンもミルクとバターのいい匂いがして、しかもふわふわで美味しかったのだ。お肉も美味しかった」
「美味しかったね。お肉に合わせた野菜のソースも美味しかったよ」「ふむ、なかなか上出来の料理だったな」
それぞれが感想を言っている間に周りの人も食事を終えて空席が目立ってきた。
「注文の締め切時間も過ぎたし、部屋に戻るか?」
「そうね。そろそろ戻りましょうか」
ガイアスくんとエレイナさんがそう話し始めたので、バッシュくんとノアくんがカップに残っていた紅茶を飲み干し「ごちそうさまでした」と言って食事を終えた。
料理はどれも美味しかったし、シナップくんのペンダントもちゃんと効果を発揮しているみたいで良かった。
翌朝は宿のヒトが部屋にパンと野菜の付け合わせに野菜のスープと卵料理と飲み物。それに切り分けられた果実が添えられた朝食を運んでもらい、それを食べた。
食事も済ませて、装備を整えた頃にコン、コンと扉をノックする音とエレイナさんたちの声が聞こえてきた。
今日は急がなくても城門が閉じられる前には王都へ到着する。
◇
宿場町カルルの西側の門を出て、途中何度も王都へ向かう魔導車と馬車を見送りながら、3ヶ所目の囲いのある休憩施設に到着した。
入り口近くにある2つの建物は両方とも5階建くらいになっていて、かなり遠くまで見渡せそうな造りだ。
木製の立て札には“ヘスリン駐留場”と力強く書かれている。
施設は主に伝令や伝達の馬や小竜を乗り継いだり、荷台を牽引する動物を休ませたりするために設けられているのだけれど、旅人など往来するヒトも受け入れているのが、ガレディア領では普通で、王都から派遣された衛兵の人の駐留場も兼ねている。
「ここまで来れば王都まであと一息だが、一度休もう。腹が減った」ガイアスくんが言うと、ジャックくんとエレイナさんも「そろそろ休もう」と同意した。
シナップくんがバッシュくんとノアくんと互いに顔を見合わせると、一緒に「ボクらもお腹が空いたのだ」と賛成した。
「エレイナがそれでいいなら私もそれでかまわない。腹が減っているのは同じだ」
ということで、王都に入る前に食事休憩をすることが決定し、腹ペコが自分だけではないのがわかった私は安心したのだった。
それから門を任されている衛兵の人に身分証を見せて簡単な手続きを済ませて奥に進むと、テントを使った露店が出ていて、その奥に私たちが休憩出来る小屋と飲食店があった。
駐留場の中は私たちのように王都へ向かうヒトたちで賑わっている様子だ。
飲食店の前にはお饅頭が並べられたお盆が置かれた台があって、“ヘスリン饅頭”と書かれた札が付いている。
1つ褐色の中銅貨1枚
この辺り一帯のヘスリン草原にちなんでつけられた呼び名のようだ。記念やお土産と思えば手間の割に安く思わず手がのびそうだ。
混み合う飲食店には入らず衛兵さんに教えてもらった休憩出来そうな小屋があるという場所へ向かうと、横幅のある3階建ての少し古そうな建物が見えてきた。
正面の入り口近くだけに柵があって門扉が付いていて、門番らしきヒトがいる。
近づくとそのヒトの方から「休憩のヒト?」と声をかけられた。
「8人だね。はいコレ、入室の許可札。時間が経つと合図の音が鳴る仕組みになっているから、時間になったら悪いけど退室してね。休憩だけなら無料で魔石ポットのお湯も自由に使ってかまわないよ」
札を渡されて中に入ると長椅子やテーブルが並んでいて、仕切りで囲われた席もある。
仕切りでよく見えないけれど私たち以外に先客が何人かいるようだ。
部屋の一番奥には数人で火と水が使える設備と広い作業台があって、建物の裏には井戸があると教えてもらった。
水はそこから魔石を動力源にして汲み上げているそうだ。
壁際には大きめで背の高い引出しの物入れが2つと、予備の椅子が重ねて置かれている。
階段近くの壁に掛けられた木板に“2階ー厨房、食堂兼休憩室、3階ー休憩室、衛兵待機室、火気厳禁、飲食ご遠慮ください”と書かれている。
2階も厨房があると書いてあるので階段を上がってみてみると、1階の休憩室と似たような造りになっている。
シナップくんとバッシュくんとノアくんが、私たちが2階を見てる間にジャックくんと3階まで上がって様子を見て来てくれた。
「3階は書いてある通り、衛兵の人たちが待機室として使っているみたいなのだ」
「どのみち3階は火気厳禁で飲食も駄目。休憩は1階か2階だな」
「じゃあこのまま2階でお昼休憩にしましょうか」
「そうだな」
場所が決まって早速ガイアスくんが背負袋から食料の入った荷物を取り出した。私たちも自分の荷の中から宿場町カルルで買い足した食べ物を取り出す。
ロデリックくんが自分の袋から食材の入った包みを取り出して調理台の片側にドサッと置くと、今度はガイアスくんから次々と野菜を受け取り、今回も手際よく切っていく。
切り分けた野菜をエレイナさんが水を張った深い鍋に入れていき釜戸に火をつける。
野菜を全て切り終えると、今度は包みからお肉を出して素早く切り分けていった。
その働きぶりを見ていたバッシュくんとノアくんが拍手を贈っている。
ロデリックくんはふたりに褒められて悪い気はしないらしい。
シナップくんは私と一緒に飲み物の用意を手伝って、魔石ポットからお湯をカップに出してくれている。
ジャックくんとガイアスくんは食器類を人数分用意して、ガイアスくんが自前の浅い手鍋を荷から取り出した。
「肉はこれで焼いてしまおうぜ」
ガイアスくんはそう言うと、備え付けてあった魔石熱調理器に自分の鍋を置いてロデリックくんが切り分けてくれた肉に軽く調味して焼き始めた。
「ロデリック、もし嫌なら肉が全部焼ける前に言ってくれ」
「良さそうな肉を選んだつもりだ。厚切り肉を焼いて食べるのに異論はない」
「スープに入れるお肉はもう足りてると思う」
「美味しそうなのだ!」
テーブルにお茶の入ったカップ、それぞれが買ってきたパン、野菜の盛り合わせと果物、お皿にお肉も揃ったところで自然に食事が始まった。
野菜スープの鍋からいい匂いがしてきている。
◇
私たちが昼食を開始して少し経つ頃、下の階から3名の衛兵の人たちがやって来た。
「昼時に邪魔して悪いな。気にせず続けてくれ」
1人が通り様にそう言うと、3人共3階への階段を上って行った。どうやら勤務の交代の時間だったらしく、入れ替わりに別の衛兵の人が3名で階段を下りていった。
しばらく経って私たちが野菜スープを堪能し始めていると、軽装の青年が3人と、2人の衛兵の人が2階へ下りてきた。
5人は昼食のために下りてきたようで、手慣れたようすで調理場の作業台に食材を用意し、手際よく肉や野菜を浅い鍋に放り込んで火にかけている。
調理には香草も使っているらしく、とても良い匂いがしてきた。
「美味しそうな良い匂いだね」「いい匂いね」
思わずそう言ってしまうくらい食欲をそそる美味しそうな香りと匂いが漂う。
青年たちがテーブルについて食事を始める頃には私たちは概ね食べ終えていて、果物や甘食を食べ始めていた。
すると、先程下から上がってきた衛兵と思われる青年がこちらへ近づいて話しかけてきた。
「失礼、貴方たちはこれから王都へ?」
「そのつもりでいる」
「生業は冒険者か探索者、少なくとも魔物相手の危険な任を請け負う職業」
「そう思ってくれてかまわない」
「…なら耳に入れておいた方がいい情報かもしれない」
そう言うと青年は「まだ噂の段階」と前置きして話し始めた。
◇
「さっきの話、どう思う」
ヘスリン駐留場を後にして王都へ向かう道すがら、ガイアスくんが私たちに意見を求めた。
さっきの話というのは青年が私たちに聞かせてくれた“噂”だ。
『魔物の知力と魔力が急激に上昇している』
『魔物が計画的に襲撃を行うようになっている』等々
ここ最近衛兵の人たちの間でささやかれるようになったもので、実際のところはまだよくわからない噂話。
「おおかた格下の魔物に勝てなかった連中の言い訳だろう?」
ロデリックくんが身も蓋もなく切り捨てようとしたけれど、ガイアスくんやバッシュくんは慎重だ。
私も少し気になり始めた。
「魔物スライムが相手でも油断しない方がいい」
ガイアスくんの言葉にエレイナさんが
「いくらなんでもまさか」
と言ったところで「『何者か』が魔物に力を貸して、けしかけている可能性があるの?」と不安そうにした。
「今はなにもわからない。下手にこの話を広めても神経をすり減らすだけかもしれない。あの男も俺たちが魔物との遭遇率が高そうなんで、親切心で油断するなと言いたかっただけだろうしな」
「そうね」
エレイナさんが表情を曇らせたままで前を向いた。
王都を中心に拡がる広い幹線道路を物流を担う荷馬車が行き交う。澄んだ青い空。遠く微かに白い雲。北の空に何羽もの鳥が舞うように飛翔している。
前方に王都の東門が見えた。
「王都へ着いたら、その後は何をするのだね?」
シナップくんがガイアスくんの少し後ろを歩きながら言った。
「まず『冒険者ギルド』王都東門支部に寄って、俺たちが王都へ戻ったことの報告だ」
「私とジャックもガイアスと一緒に『冒険者ギルド』に行くのよ」「エレイナが行くのだから私も『冒険者ギルド』に行く」
「僕とノアは先に『魔導ギルド』に戻ってから『冒険者ギルド』に行くよ」
王都に着いた後の予定を確認したシナップくんが
「マクス君は?」と聞いてくれた。
「私は入手できた『素材』と買い付けて『倉庫』へ預けた品を『島』へ送る手配をしに行くつもりだよ。ついてくるかい?」
ためしに言ってみると、あっさりと断られた。
「ガイアス君たちと待ってるのだ!」
◇
王都の東門で一度ガイアスくんたちと別行動になった私は、故郷の『島』へ荷の配送を手配するため乗り合い馬車の乗り場までやって来ていた。舗装された乗り物用の道はいくつもの区間に分けて馬を交代したり休ませたりする場所が作られている。ここでお客は行き先などの違う馬車に乗り換えたりする。
1区間を中銅貨1枚で走ってくれる乗り合い馬車の運行地図を見ながら御者台のヒトに中銅貨2枚を支払うと、そのまま荷台に乗り込んだ。
ガイアスくんたちとは『冒険者ギルド』王都東門支部の食堂で落ち合う約束になっている。『森』と『犬族の遺跡』調査の依頼の件で進捗があるか無いかで今後のことも決まっていく予定なので、情報が集まる冒険者ギルドとはなるべく密に連絡を取り合った方がいいのだろう。
そんなことを考えながら、4人乗りの馬車に揺られていくらも経たないうちに配送業者のある地区にたどり着いた。
馬車を降りて“安くて丁寧!NEKONEKO配送”と書かれた看板のある建物に入り、いつものように荷物の配送手続きをしようとした私に、受付のヒトが思いもかけないことを言った。
「お客さん、悪いんだけど荷物は運べそうにないです」
「え?何か配送できないものが混ざっていますか?」
驚いた私が尋ねると
「いや、荷物の問題じゃ無くて、行き先の問題で」
と申し訳なさそうに説明し始めた。
「うちは大陸の外への配送は船を使うんですが、どうも最近、海の様子が悪いらしいんですよ。元々海は潮の流れや天候の問題だけでなく海の魔物も気にしなくちゃならないんで。空からの配送なら引き受けられるかもしれませんが、うちではやってなくて」
「そうですか。それなら仕方ないね」
「申し訳ない」
受付のヒトが本当に申し訳なさそうにペコリと頭を下げた。
「ありがとうございました!またのご利用お待ちしてます」
という店内からの声を背に、私は建物から出た。
さて。どうしようか。空から配送となると、大型の鳥便か魔導飛行船を利用することになるんだけど…。
空からの配送は船の配送よりうんと速くは届けられるけれど、一度に運べるのは少量の荷物で、たくさんだと費用が高くなる。
「仕方ない」
私はしばらくあれこれ思案して、今すぐ配送できないのは仕方ないという結論に至ったのである。
私は『島』で『素材』の到着を待っているであろうヒトを思い浮かべた。こと、研究に関してだけ何故かせっかちになる友人の顔。私信箱に届いた封筒の中身は読まなくてもわかる。
私は褐色中銅貨1枚を支払って乗り合い馬車に乗り込んだ。
馬車の進行方向には“速くて安心大鷲航空”と書かれた大きな看板が見えている。
「ふぅ。仕方ない」
私が呟くのを聞いて、先に馬車の荷台に乗っていたお客さんが少しだけ怪訝そうな顔をした。
◇
用を済ませた私が待ち合わせの『冒険者ギルド』に到着して食堂に入ると、先に来ていたガイアスくんたちが約束通りに待ってくれていた。
「マクスさん」
「やあやあ、マクス君!こっちなのだよ」
「あとはバッシュとノアが来れば全員揃うな」
外はまだ明るいけれど日は傾き始めていて、夕飯時を前に食堂が賑わってきた。
シナップくんがジャックくんからまわってきたカップを私に渡してくれた。
そこへバッシュくんとノアくんの
「お待たせー」「お待たせー」
という声が聞こえてきたので私が振り返ろうとすると、今度はバッシュくんとノアくんのとは違うヒトの
「お待たせー」「お待たせー」という声が続いた。
聞き覚えのある声に私が気がつくと同時に
「んあーーっ!」と、シナップくんが奇妙な声をあげた。
「イシュタルさま、それにルイジギルド長」
「いやあ、偶然『魔導ギルド』東門地区の支部にいあわせてな」「俺もたまたま偶然『魔導ギルド』東門地区の支部に用があって」
イシュタルさんは魔導ギルドのギルドマスターだからわかるんだけど。
「そうしたらナント、たまたま偶然奇遇にもバッシュとノアに出くわしてなあ」
イシュタルさんとルイジさんが、揃ってそう言った途端に、バッシュくんとノアくんが円らな瞳のまま動きを止めた。
2人とも偶然だとは思ってないんじゃないだろうか。
もしシナップくんたちに無理に付きまとっているようなら、大人として、ヒトとして何かなすべきなのでは。
隠れる背負袋が無いのに慌てるシナップくんに
「荷は『ギルド』に預けて背負袋は『部屋』に置いてきた。喰われたりはしないから落ち着け」とガイアスくんが苦笑しながら言った。
それを見ながら
『森』と『犬族の遺跡』の調査は『魔導考古学組合』『商人ギルド』『魔導ギルド』と『魔導研究ギルド』の指揮下で行われていて、イシュタルさんとルイジさんはそのうちの2組織の長なんだよね。
つまり依頼を受けた以上、ふたりは私たちの上司だ。
それにシナップくんに魔術付与されたペンダントを贈ってもらったりお世話になっている。
「少ないが土産だ。皆で食べてくれ。依頼をひき受けてくれた礼みたいなものだ」
そう言ってイシュタルさんとルイジさんが甘食の入った紙の包みを差し入れてくれた。
「ありがとうございます」「わあ、ありがとう」
偶然お土産も用意していたんだろうか、と少し思ったけれど。
「クリームが詰まってる」「美味しいのだー」「ちゃんと飯も食うんだぞ」「うん!」
直にそんなことどうでもいいやという気になった。
◇
「ところでお前たち、今日はここで今後の打ち合わせをするのか?」
王都『冒険者ギルド』1階の広い1室は大抵が時刻魔導具で朝5刻から城門が閉じられる夜18刻あたりまでは『食堂』として、以降夜20刻まで『酒場』として使われる。
『冒険者ギルド』という特性上、利用者はほぼ冒険者なので、食堂をそのまま打ち合わせに使うヒトが多く、ギルドの方も容認しているのでイシュタルさんが尋ねてきた。
「ああ。といっても、打ち合わせができるほどギルドから情報はまだもらえてないぞ?」
そう言ってガイアスくんがルイジさんとイシュタルさんを見ながら飲み物を飲んだ。
屋敷でホレスさまに依頼を受けることを伝えてから1日以上経過しているので、情報や指示が下りて来ていてもおかしくないと思っていたんだけど。
「依頼は俺たち指名でちゃんと出されてるんだが、具体的な指図どころか報酬についても何もまだ書かれていなかった。それでまだそっちで準備が整っていないと判断していたところだ」
ガイアスくんがそう言うのを聞いて、イシュタルさんとルイジさんが顔を見合わせた。
ジャックくんが「オレたちが依頼を受けると決めたばかりなんでそのせいだと思っていたが。違うのか?」と聞いた。
するとルイジさんが少し弱った顔で
「実をいうと魔導考古学組合が冒険者の調査参加に慎重なんだ」と切り出した。
「君たち冒険者は魔物とか、身の危険を感じたら、戦うだろ?」「そうだな」「もし武器が破損したり足りなさそうだったりしたら、遺跡やらなんやらの古い壺とか、薬品とか、種とか石でも何でも、工夫して武器にしたり、あ、僕はそういう姿勢は素晴らしいと思うんだよ。うん。それはそうと、君たち冒険者は必要なら遺跡の床や壁も祭壇とかでも破壊するよね?」「…それで命が助かるんなら、やるだろうな」
淡々と答えるガイアスくんと対照的にバッシュくんとノアくんはルイジさんからそっと顔を背けた。
「だよね。魔導考古学組合はそういうのをものすごく問題視していてね」
「それの。何がいけないんだ?」
ガイアスくん、ジャックくん、ロデリックくん、3人の声が見事に重なった。
◇
「要するに『魔導考古学組合』の上のヒトが、古いものが好きすぎて『冒険者』の参加に待ったをかけてるということか?」
ガイアスくんが運ばれてきた料理の皿からお肉を取ってから言った。
「直訳するとその通りだ。いましがた確認も取った。こちらから依頼を持ちかけておいてすまない」
「かまわないが。どうする?一度依頼を取り下げるか?」
ガイアスくんは切り分けたお肉を口に運んだ。
「いや、もう少しこのまま待ってくれないか」
イシュタルさんの言葉にガイアスくんが少し迷いながら
「最初からこちらに良い感情を持っていない依頼人の仕事を受けると、後で面倒ごとになることがある、と、言いたいところなんだが……」
「待ってくれるか?」
「シナップ、お前はどうしたい?いつ指示が来るかわからない依頼を待つか?依頼人の本命はシナップ、お前だ」
バッシュくんたちと食事を堪能していたシナップくんが、話を振られてガイアスくんとイシュタルさんを見た。
話はちゃんと聞いていたらしい。
「要は『森』に出現した物体をボクに直に見て欲しいという依頼なのだ。強い敵さえ現れなければ簡単そうなのだよ。待ってもいいけど、タダでは待たないのだ。条件次第なのだ」
そう言うとシナップくんの金色の瞳が獲物を狙う肉食獣の瞳に変わった。
「聞こう。条件というのは?」
シナップくんの鋭い眼光にイシュタルさんとルイジさんだけでなく、ガイアスくんや私まで身構えた。
「待っている期間ずっと、毎日美味しい甘食やケーキをボクたち全員に食べさせること!それも毎回違う種類なのだ!」
◇
王都の城門が閉じられる時間になって、ギルドの食堂が酒場の様相を見せてくる頃合い。
「上出来だシナップ。無理な条件を言ってくる相手にはこちらも相応の条件を提示するべきだ」ロデリックくんがシナップくんを誉めた。
シナップくんが提示した条件はイシュタルさんたちにとってとても簡単なことだから、ふたりも安堵した様子がある。
だがそれを見咎めたらしいロデリックくんが、ことさらにシナップくんを褒め称えた。
ガイアスくんもふたりの反応に思うところがあったらしい。
「依頼を受けて指示を待っている間は他の依頼を受けられない。俺たちはたまたま待てるが、他の冒険者も同じように依頼人に合わせて待てるとは限らない。各々生活があるからな。もし他にも同じようなやり方で依頼を受注させたまま待たせるのが常態化してるなら、魔導考古学組合の上のヒトに伝えてくれ」
ガイアスくんの言葉に私はハッとする。
そうか。ロデリックくんはこれを言いたかったんだね。
私は彼を誤解していたのかもしれない。ロデリックくんは強いだけのエレイナさん一択じゃなく同業の冒険者のこともちゃんと考えられるヒトだったんだ。
イシュタルさんとルイジさんが神妙な顔でガイアスくんの言葉を聞いて目をふせた。
心当たりがあるのだろう。
意を決したようにガイアスくんが言った。
「シナップと別に俺からも条件だ。待っている期間、最低限でかまわないからせめて雇用した俺たち全員の生活を保障すること。それで待つ」
「ボクたち全員の甘食をお忘れなくなのだ!」
「無理なら形だけでも、一度取り下げて再度依頼を出しなおしてくれ。商人ギルドはもとより、魔導ギルドや魔導研究ギルドにも世話になっている」
エレイナさんは魔導ギルドにも登録しているし、バッシュくんやノアくんも魔導ギルドの一員で私たちの救援のために魔導ギルドから送り出された人員だ。
「わかった。ホレスの方に…いや、魔導考古学組合のお偉方に伝えるんだったな。正直、気が重いな」
憂鬱な表情でイシュタルさんが呟くと
「可愛い愛弟子の職場環境改善のために目一杯、良い条件を取り付けるのは師匠の務めだ。頑張ってくれ」
ロデリックくんがイシュタルさんの両肩を両手でがっしりと掴んだ。
「ロデリック、貴様」「ロデリックお前」「ロデリックくん……」
「すごいじゃないかエレイナ。お前の存在が『冒険者』の職場環境を変えるかもしれない」
ジャックくんが冗談とも本気ともつかないことを言った。
◇
時刻魔導具が夜を教えてくれる頃。
『ギルド』の食堂に酒を飲み交わすヒトが増えてきた。
内装や置かれている料理の品書きも日中見ていたものとは違う『酒場』の物になっている。
「イシュタルさまも帰ってしまったし、私たち今日はもう部屋に行ってるわ。また明日」「また明日」「また明日ー」「明日なのだ」
『酒場』のお品書きを名残惜しげに見つめるシナップくんたちを連れて、食事を終えたエレイナさんが『ギルド』の上の階に上がって行くのを見送った。
残った私はガイアスくんとジャックくん、ロデリックくん、ルイジさんの5人で食事を続けている。
「君たちしばらくこの地区に滞在するの?」
「いや、明日には本部のある中央へ帰る予定だ。『ヤマルの森』へ行くなら西門に近い場所へいた方が都合もいい」
ルイジさんに聞かれてガイアスくんが答えた。
王都は広いので身体能力に特化した光属性の駿馬『ルーク』や聖属性の駿馬『クイーン』と呼ばれるような速い種の馬などでも使わない限り、東門から西門への移動だけで20日、魔導車や速い馬車を乗り継いでも半日以上費やす覚悟をしなければならない。
冒険者に支払われる報酬は一般的に出来高制で、日数や時間は加味されることはあっても、通常計上されない。
その気になればいくらでも延ばせてしまうからだ。
商会の雇用主が、常時雇い入れている従業員の人たちにあえて支払うことは多いのだけれど。
「依頼の達成に時間をかけすぎると評価が静かに下がる」
ロデリックくんが大きめのグラスに入った果実酒を飲みながら言った。
評価を下げるかどうかは雇用主にもよるだろうけれど、丁寧に早く間違いの無い仕事をこなしてくれるヒトの評価のほうが上がりやすいのは確かだ。
単独でも冒険者として稼げると、そういった柵のようなものを嫌ってギルドを脱退するヒトもいる。
誰かから仕事を請け負って仕事をする限り、冒険者に限らず柵から抜け出すことは出来ないと私は思うんだけどね。
それにしても…
「ロデリック、君が評価のことを言うなんて意外だな!」
ルイジさんが心底驚いた表情をしてそう言った。
◇
時刻魔導具に付いた12個の小さな魔石が青い光を静に放つ。
そろそろ『酒場』の営業が終わる時間のはずだけど、周りのお客さんは減る様子があまりない。
途中何人か、ガイアスくんたちに話しかけてくるヒトがいて、そのうちの1人がロデリックくんと言い争いのようになっている。
「お前ら落ち着けよ」
ガイアスくんがとりなそうとするのだけれど、2人とも止めないので、面白がる人たちがお酒を片手に見物し始めたのだ。
怖がって逃げるように酒場を出るヒトよりも、集まるヒトの方がどうも多い。
ジャックくんとルイジさんも私も、経緯を見ていなかったので迂闊に口を挟めない。
それでもルイジさんが前に出た。
「君たち、一度冷静になれ。ロデリック・クライン、それと…」
ルイジさんがもう一人の男性の名を言おうとしたけれど知らないか、記憶に無いらしく、名は出てこなかった。
「…カナン、だ。魔導研究ギルドのギルド長ルイジ・エトワール殿」
「カナン君。すぐに名が出ず失礼した」
「いえ。お目にかかるのも名乗るのも初めてなので」
そう言うとカナンと名乗った青年は「悪かったな」とガイアスくんと目を合わせず言って『酒場』から出ていった。
ギルド長であることが知られたルイジさんが遠巻きに見られてはいたものの、いくらもしない時間で酒場が再びもとのような賑わいを取り戻した。
なんだったのだろう。
ガイアスくんも最初の2人の会話に参加していなくてよくわからないそうだ。ロデリックくんは言い争いに発展する前の、事のあらましを言わない。
「ロデリックもあいつも酒の飲みすぎだな!」
「そうだね。もう休んだ方がよさそうだ。さてとシナップ君にも会えて話せたし、俺もお暇するとしよう。そうだ、これだけは言っておくが、ロデリック君、周囲の人にとって君は強すぎる。それを忘れちゃいけないよ」
◇
翌朝、冒険者ギルドの玄関口でエレイナさんたちと合流する。
「お待たせー」「おはよう」「おはようございます」「おはようなのだよ」
受付で精算と荷物をギルド本部へ配送する手配を済ませたガイアスくんが揃ったら出発だ。
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────────
□共有アイテム□
◇主な食料の在庫
内訳(長期保存食料198食分)
◇嗜好品お菓子(魔導系回復あり)、各種調味料、未調理穀物6日分
◇魔力回復ポーション(EX102本、超回復74本、大153本、中647本、小970本)
◇治癒ポーション(治癒薬EX107本、超回復69本、大885本、中2,072本、小4,588本)、薬草(治癒1,060袋)1,060袋、他
□各自アイテムバッグ
ガイアス (魔力回復薬小3本)(治癒薬EX2本、超回復4本、大10本)薬草(治癒5袋、解毒5袋)麻痺解除薬5本
ジャック (魔力回復薬小4本)(治癒薬EX2本、超回復4本、大10本)薬草(治癒5袋、解毒5袋)麻痺解除薬1本)
エレイナ (魔力回復薬EX1本、超回復1本、大6本、中1本、小3本)(治癒薬EX3本、超回復3本、小10本)薬草(治癒5袋、解毒10袋)麻痺解除薬1本)
マクス (魔力回復薬EX3本、超回復5本、大5本、中5本、小10本)(治癒薬超回復5本、大5本、中10本、小20本)薬草(治癒18袋、解毒10袋)麻痺解除薬1本)
バッシュ (魔力回復薬EX1本、超回復1本、大2本)(治癒薬EX1本、超回復1本)薬草(治癒1袋、解毒10袋)麻痺解除薬1本)
ノア (魔力回復薬EX1本、超回復1本、大2本)(治癒薬EX1本、超回復1本)薬草(治癒1袋、解毒10袋)麻痺解除薬1本)
シナップ 『塔にあるもの全部』
ロデリック『私物とお菓子』
□背負袋
ガイアス 『共有アイテム』『バッシュとノアの本』『エレイナ、バッシュ、ノア、シナップの荷物』『食糧』
ジャック (魔力回復薬EX11本、超回復10本、大50本、中210本、小140本)(治癒薬EX1本、超回復85本、大35本、中80本、小120本)薬草(治癒10袋、解毒10袋)麻痺解除薬2本)『もしもの時の燻製肉』
エレイナ (魔力回復薬EX3本、超回復10本、大20本、中50本、小100本)(治癒薬EX5本、超回復25本、大30本、中50本、小50本)薬草(治癒60袋、解毒20袋)麻痺解除薬2本、万能薬3つ)『お菓子』
マクス (魔力回復薬大10本、中100本、小100本)(治癒薬超回復50本、大100本、中200本、小200本)薬草(治癒1,000袋、解毒30袋)麻痺解除薬4本、石化解除薬4つ、万能薬4つ)『草』
バッシュ (魔力回復薬EX5本、超回復5本)(治癒薬EX5本、超回復5本)薬草(治癒25袋、解毒5袋)麻痺解除薬5本、石化解除薬1つ、万能薬5つ)『カリカリフード』
ノア (魔力回復薬EX5本、超回復5本)(治癒薬EX5本、超回復5本)薬草(治癒25袋、解毒5袋)麻痺解除薬4本、石化解除薬2つ、万能薬5つ)『カリカリフード』
シナップ 『塔にあるもの全部』
ロデリック『私物とお菓子』
カルルも領主ホレスさまが統治を任されている宿場で往来も多く、商店などで賑わっている。そこまで行けば王都まで徒歩でもさほど遠くない。
緩やかに南西に傾く幹線道沿いを進む。
「一応確認なんだが、今日はカルルで一泊して明日の朝王都へ発つので問題ないか?」
遠くに宿場町カルルがはっきりと見える頃合でガイアスくんが言った。
「問題ない。この調子でカルルを素通りして進めば城門が閉じられる前に王都へ入れるかもしれないが、間に合わなかった場合は近くで野営ということになるからな。エレイナをそんな目に合わせられん」
「ボクは野営でもかまわないのだよ」
背負袋から出てバッシュくんたちと歩いているシナップくんが、ロデリックくんを見上げながら言った。
「僕も野営で大丈夫」「ボクも」シナップくんにバッシュくんとノアくんも続くと、ロデリックくんが「君たちはエレイナじゃない」と辛辣な声を出した。
その様子を見たガイアスくんが
「悪かった、悪かったロデリック。一泊で決まってたんだから一泊だ」
あと一人でもシナップくんに続いたら多数決で分が悪いのはロデリックくんなので焦ったのだろう。しかも当のエレイナさんがロデリックくんの味方をしなさそうなのが少しばかり不憫に思えた。
◇
宿場町カルルに到着すると、門前に列が出来ている。
「カルル住民でない者はこっちだ」「荷馬車はこちらへ」
門兵のヒトたちが出入りのチェック表を手に、声をあげながら、列の整理を行っている。
「町に入ったら宿屋へ向かって部屋の確保を済ませよう」
「部屋がとれなさそうなら、この町を『攻略の証』に登録して塔型迷宮で休むのでもかまわないのだよ」
シナップくんの提案にガイアスくんが少し思案して
「『攻略の証』での移動は屋敷で実証済みだから疑っていないが、この辺りはヒトが多い」
「誰かに見られるとシナップのことを詮索される可能性が高くなるかな」とバッシュくんが不安を口にした。
姿だけならイシュタルさんとルイジさんがくれた魔術が付与されたペンダントを身に付けていれば『古代種族』に見えなくなっているそうなんだけど。
転送術は使用出来る人が幻級で、現在失われた古代の魔導技術という認識だ。
見られるとそれだけで目立つ。
「どのみち塔型迷宮で『攻略の証』を賞品にするなら知られるのは時間の問題だろう」
ジャックくんが指摘すると「でも遅らせることは出来るわ」とエレイナさんが言った。
『攻略の証』がある程度出回って希少性が薄れたら、塔型迷宮が有名になる代わりに、シナップくんの存在が薄れるんじゃないかというのが私たちの目論見だ。
「とりあえずそこの宿で部屋をとれないか行ってくる。悪いが待っててくれ」「私も行こう」
ガイアスくんの後をロデリックくんが続いて、2人が宿泊施設内に入っていくらも経たないうちにガイアスくんだけ明るい表情で戻ってきた。
「無事に全員同じ宿に部屋を用意できた」
ガイアスくんの報告にシナップくんが
「ガイアスくん、ガイアスくん。食事付きかね?」
と期待の眼差しを向ける。
「晩飯と朝食付き、食堂で頼めばケーキもあるみたいだぞ」
途端にシナップくんとバッシュくん、ノアくんの3人の表情がほころんだ。
◇
宿に入ると待ち合い室の奥に落ち着いた雰囲気のカウンターがあり、宿泊の手続きを済ませたロデリックくんが待っていた。
ガイアスくんによると2階に4人泊まれる部屋を隣同士に2部屋取れたらしい。
私たちが揃うとロデリックくんがカウンターに声をかけた。出てきた係のヒトの案内があってついていく。
階段を上がって部屋まで案内を終えると「それではごゆっくりお過ごしください」と案内係のヒトが私たちに丁寧に挨拶をして下がっていった。
「晩飯時にまだ時間があるが食堂に行ってみるか?」
ガイアスくんがバッシュくんたちに声をかけると3人とも「いいの?」と目を丸くした。
「昼飯の後、大分歩いたからな。少しくらい間食しても良いだろう。ただし晩飯もしっかり食べられるように加減するんだぞ」
「うん」3人は元気よく返事をした。
◇
「迷うのだー」「どれも美味しそう」
食堂へ移動して品目を見せてもらうと甘食の品数は10種類。
「クリィムケーキ。カルルベリーのとろけるムース、カラメルアイスクリン、カルル牧場ウッシーミルクの濃厚生ケーキ…」
「1人2個まで」
「わ、わかったのだ」
私たちが迷っていると
「ご注文がお決まりになりましたらお声がけか、こちらの呼鈴をお使いください」食堂の給仕係のヒトがそう言って一度下がった。
係のヒトが下がるとすぐにロデリックくんが真剣な顔で
「大人も2個までなのか」とガイアスくんに向かって問いかけた。
言われたガイアスくんがなにも言わずに顔を向け、ロデリックくんを見返すと、ロデリックくんが「大人は子供より体が大きい。私は特に大きい」「お前は好きにしろ」
どうやらロデリックくんは甘党らしかった。
◇
「濃厚ウッシーミルクの生ケーキ、果実たっぷりで美味しいのだ」「焼チーズケーキもすごく美味しいよ」
テーブルに並べられたケーキと飲み物をバッシュくんたちが美味しそうに堪能している。
ロデリックくんは10種全部を注文して、あっという間に半分食べて紅茶を飲んでいる。
「紅甘芋の蜜ケーキとやらは生地が二層に工夫されて中々美味しかったな」「ええ、紅甘芋の蜜ケーキすごく美味しい」
エレイナさんがロデリックくんに笑顔で同意して紅茶を飲むと、蜜ケーキの最後の一口分を満足そうに食べ終えた。
しばらく皆で甘食を食べていると、近くの席から自然に声が聞こえてきた。「東の大陸の魔物が最近力を増しているって話、本当だと思うか?」「魔物の強さが安定しないのは昔からだろ」「いや今回はそういうレベルじゃなくてさ…」
それ以上は周囲のざわめきにかきけされて私には聞き取れなくなった。魔物に関する噂話としてはわりと良くある話だ。
◇
食堂で甘食を食べ終えた私たちは、晩ご飯時まで休息を取ることにした。
部屋に戻るとすぐにガイアスくんが寝台に寝転がった。沢山の荷を運んでいるから疲れていたに違いない。
ジャックくんとロデリックくんは横にはならず、寝台に腰掛けて休んでいる。
ジャックくんは装備の手入れをしたりしているので、休めているのか少し心配になった。
魔物と戦ったりしていないので大丈夫だとは思うんだけど。
そうやってしばらく4人で休んでいると、コン、コンと扉をノックする音が聞こえてきた。
エレイナさんが晩御飯のために迎えにきてくれたようだ。
素早くロデリックくんが対応して扉を開けると、シナップくんが1人で扉の前に立っていて「迎えに来たのだよ」と一言発した。
「込み合ってきそうな時間だからね。エレイナくんはバッシュとノアを連れて先に1階の食堂に降りて、人数分の席を用意しに行ったのだよ」
がっかりを隠せずにいるロデリックくんを知ってか知らずか、シナップくんが軽快な声で「エレイナくんたちが待っているのだ。ボクらも早く行くのだよ」と私たちに声をかけた。
ジャックくんが何か思ったのか、ポンとロデリックくんの背中に軽く触れてから部屋を出た。
◇
食堂に行くと先に来ていたエレイナさんがバッシュくんとノアくんと一緒に手を振るのが見えた。
エレイナさんの予想通りすごく混んで来ていて、空いている席はもうほとんどないようだ。
「待たせたな。助かった」
「私たちもさっき降りてきたばかりだから大丈夫。席も人数分まとめて案内してもらえたし」
料理が沢山並べられそうな大きめのテーブルに、やって来た給仕のヒトが飲み物と野菜の盛り合わせを次々と並べていく。
「他はまだ何も頼んでないから選びましょう」
エレイナさんが私たちにそう言うと、係のヒトが
「お決まりになりましたらお声がけ下さい。すぐに参ります」
と言って少し場を外した。
「ボクはこの『カルル牧場ウッシーミルクパン』というのが食べてみたいのだ」「僕も」「ボクも」
「甘くないミルクパンか。濃厚バターの香り…旨そうだな。肉も食べた方がいいぞ」
「甘食も頼んでいい?」
「飯をちゃんと食べれるんなら、頼んでいい」
「うん!」
◇
食堂の注文締め切りの時間が過ぎる頃。
私たちも食事を大体終えて来た。
「いよいよこの一口で最後なのだ」
シナップくんが名残惜しそうに二股の菓子切りを使ってケーキを食べ終えた。
「ウッシーミルクパンもミルクとバターのいい匂いがして、しかもふわふわで美味しかったのだ。お肉も美味しかった」
「美味しかったね。お肉に合わせた野菜のソースも美味しかったよ」「ふむ、なかなか上出来の料理だったな」
それぞれが感想を言っている間に周りの人も食事を終えて空席が目立ってきた。
「注文の締め切時間も過ぎたし、部屋に戻るか?」
「そうね。そろそろ戻りましょうか」
ガイアスくんとエレイナさんがそう話し始めたので、バッシュくんとノアくんがカップに残っていた紅茶を飲み干し「ごちそうさまでした」と言って食事を終えた。
料理はどれも美味しかったし、シナップくんのペンダントもちゃんと効果を発揮しているみたいで良かった。
翌朝は宿のヒトが部屋にパンと野菜の付け合わせに野菜のスープと卵料理と飲み物。それに切り分けられた果実が添えられた朝食を運んでもらい、それを食べた。
食事も済ませて、装備を整えた頃にコン、コンと扉をノックする音とエレイナさんたちの声が聞こえてきた。
今日は急がなくても城門が閉じられる前には王都へ到着する。
◇
宿場町カルルの西側の門を出て、途中何度も王都へ向かう魔導車と馬車を見送りながら、3ヶ所目の囲いのある休憩施設に到着した。
入り口近くにある2つの建物は両方とも5階建くらいになっていて、かなり遠くまで見渡せそうな造りだ。
木製の立て札には“ヘスリン駐留場”と力強く書かれている。
施設は主に伝令や伝達の馬や小竜を乗り継いだり、荷台を牽引する動物を休ませたりするために設けられているのだけれど、旅人など往来するヒトも受け入れているのが、ガレディア領では普通で、王都から派遣された衛兵の人の駐留場も兼ねている。
「ここまで来れば王都まであと一息だが、一度休もう。腹が減った」ガイアスくんが言うと、ジャックくんとエレイナさんも「そろそろ休もう」と同意した。
シナップくんがバッシュくんとノアくんと互いに顔を見合わせると、一緒に「ボクらもお腹が空いたのだ」と賛成した。
「エレイナがそれでいいなら私もそれでかまわない。腹が減っているのは同じだ」
ということで、王都に入る前に食事休憩をすることが決定し、腹ペコが自分だけではないのがわかった私は安心したのだった。
それから門を任されている衛兵の人に身分証を見せて簡単な手続きを済ませて奥に進むと、テントを使った露店が出ていて、その奥に私たちが休憩出来る小屋と飲食店があった。
駐留場の中は私たちのように王都へ向かうヒトたちで賑わっている様子だ。
飲食店の前にはお饅頭が並べられたお盆が置かれた台があって、“ヘスリン饅頭”と書かれた札が付いている。
1つ褐色の中銅貨1枚
この辺り一帯のヘスリン草原にちなんでつけられた呼び名のようだ。記念やお土産と思えば手間の割に安く思わず手がのびそうだ。
混み合う飲食店には入らず衛兵さんに教えてもらった休憩出来そうな小屋があるという場所へ向かうと、横幅のある3階建ての少し古そうな建物が見えてきた。
正面の入り口近くだけに柵があって門扉が付いていて、門番らしきヒトがいる。
近づくとそのヒトの方から「休憩のヒト?」と声をかけられた。
「8人だね。はいコレ、入室の許可札。時間が経つと合図の音が鳴る仕組みになっているから、時間になったら悪いけど退室してね。休憩だけなら無料で魔石ポットのお湯も自由に使ってかまわないよ」
札を渡されて中に入ると長椅子やテーブルが並んでいて、仕切りで囲われた席もある。
仕切りでよく見えないけれど私たち以外に先客が何人かいるようだ。
部屋の一番奥には数人で火と水が使える設備と広い作業台があって、建物の裏には井戸があると教えてもらった。
水はそこから魔石を動力源にして汲み上げているそうだ。
壁際には大きめで背の高い引出しの物入れが2つと、予備の椅子が重ねて置かれている。
階段近くの壁に掛けられた木板に“2階ー厨房、食堂兼休憩室、3階ー休憩室、衛兵待機室、火気厳禁、飲食ご遠慮ください”と書かれている。
2階も厨房があると書いてあるので階段を上がってみてみると、1階の休憩室と似たような造りになっている。
シナップくんとバッシュくんとノアくんが、私たちが2階を見てる間にジャックくんと3階まで上がって様子を見て来てくれた。
「3階は書いてある通り、衛兵の人たちが待機室として使っているみたいなのだ」
「どのみち3階は火気厳禁で飲食も駄目。休憩は1階か2階だな」
「じゃあこのまま2階でお昼休憩にしましょうか」
「そうだな」
場所が決まって早速ガイアスくんが背負袋から食料の入った荷物を取り出した。私たちも自分の荷の中から宿場町カルルで買い足した食べ物を取り出す。
ロデリックくんが自分の袋から食材の入った包みを取り出して調理台の片側にドサッと置くと、今度はガイアスくんから次々と野菜を受け取り、今回も手際よく切っていく。
切り分けた野菜をエレイナさんが水を張った深い鍋に入れていき釜戸に火をつける。
野菜を全て切り終えると、今度は包みからお肉を出して素早く切り分けていった。
その働きぶりを見ていたバッシュくんとノアくんが拍手を贈っている。
ロデリックくんはふたりに褒められて悪い気はしないらしい。
シナップくんは私と一緒に飲み物の用意を手伝って、魔石ポットからお湯をカップに出してくれている。
ジャックくんとガイアスくんは食器類を人数分用意して、ガイアスくんが自前の浅い手鍋を荷から取り出した。
「肉はこれで焼いてしまおうぜ」
ガイアスくんはそう言うと、備え付けてあった魔石熱調理器に自分の鍋を置いてロデリックくんが切り分けてくれた肉に軽く調味して焼き始めた。
「ロデリック、もし嫌なら肉が全部焼ける前に言ってくれ」
「良さそうな肉を選んだつもりだ。厚切り肉を焼いて食べるのに異論はない」
「スープに入れるお肉はもう足りてると思う」
「美味しそうなのだ!」
テーブルにお茶の入ったカップ、それぞれが買ってきたパン、野菜の盛り合わせと果物、お皿にお肉も揃ったところで自然に食事が始まった。
野菜スープの鍋からいい匂いがしてきている。
◇
私たちが昼食を開始して少し経つ頃、下の階から3名の衛兵の人たちがやって来た。
「昼時に邪魔して悪いな。気にせず続けてくれ」
1人が通り様にそう言うと、3人共3階への階段を上って行った。どうやら勤務の交代の時間だったらしく、入れ替わりに別の衛兵の人が3名で階段を下りていった。
しばらく経って私たちが野菜スープを堪能し始めていると、軽装の青年が3人と、2人の衛兵の人が2階へ下りてきた。
5人は昼食のために下りてきたようで、手慣れたようすで調理場の作業台に食材を用意し、手際よく肉や野菜を浅い鍋に放り込んで火にかけている。
調理には香草も使っているらしく、とても良い匂いがしてきた。
「美味しそうな良い匂いだね」「いい匂いね」
思わずそう言ってしまうくらい食欲をそそる美味しそうな香りと匂いが漂う。
青年たちがテーブルについて食事を始める頃には私たちは概ね食べ終えていて、果物や甘食を食べ始めていた。
すると、先程下から上がってきた衛兵と思われる青年がこちらへ近づいて話しかけてきた。
「失礼、貴方たちはこれから王都へ?」
「そのつもりでいる」
「生業は冒険者か探索者、少なくとも魔物相手の危険な任を請け負う職業」
「そう思ってくれてかまわない」
「…なら耳に入れておいた方がいい情報かもしれない」
そう言うと青年は「まだ噂の段階」と前置きして話し始めた。
◇
「さっきの話、どう思う」
ヘスリン駐留場を後にして王都へ向かう道すがら、ガイアスくんが私たちに意見を求めた。
さっきの話というのは青年が私たちに聞かせてくれた“噂”だ。
『魔物の知力と魔力が急激に上昇している』
『魔物が計画的に襲撃を行うようになっている』等々
ここ最近衛兵の人たちの間でささやかれるようになったもので、実際のところはまだよくわからない噂話。
「おおかた格下の魔物に勝てなかった連中の言い訳だろう?」
ロデリックくんが身も蓋もなく切り捨てようとしたけれど、ガイアスくんやバッシュくんは慎重だ。
私も少し気になり始めた。
「魔物スライムが相手でも油断しない方がいい」
ガイアスくんの言葉にエレイナさんが
「いくらなんでもまさか」
と言ったところで「『何者か』が魔物に力を貸して、けしかけている可能性があるの?」と不安そうにした。
「今はなにもわからない。下手にこの話を広めても神経をすり減らすだけかもしれない。あの男も俺たちが魔物との遭遇率が高そうなんで、親切心で油断するなと言いたかっただけだろうしな」
「そうね」
エレイナさんが表情を曇らせたままで前を向いた。
王都を中心に拡がる広い幹線道路を物流を担う荷馬車が行き交う。澄んだ青い空。遠く微かに白い雲。北の空に何羽もの鳥が舞うように飛翔している。
前方に王都の東門が見えた。
「王都へ着いたら、その後は何をするのだね?」
シナップくんがガイアスくんの少し後ろを歩きながら言った。
「まず『冒険者ギルド』王都東門支部に寄って、俺たちが王都へ戻ったことの報告だ」
「私とジャックもガイアスと一緒に『冒険者ギルド』に行くのよ」「エレイナが行くのだから私も『冒険者ギルド』に行く」
「僕とノアは先に『魔導ギルド』に戻ってから『冒険者ギルド』に行くよ」
王都に着いた後の予定を確認したシナップくんが
「マクス君は?」と聞いてくれた。
「私は入手できた『素材』と買い付けて『倉庫』へ預けた品を『島』へ送る手配をしに行くつもりだよ。ついてくるかい?」
ためしに言ってみると、あっさりと断られた。
「ガイアス君たちと待ってるのだ!」
◇
王都の東門で一度ガイアスくんたちと別行動になった私は、故郷の『島』へ荷の配送を手配するため乗り合い馬車の乗り場までやって来ていた。舗装された乗り物用の道はいくつもの区間に分けて馬を交代したり休ませたりする場所が作られている。ここでお客は行き先などの違う馬車に乗り換えたりする。
1区間を中銅貨1枚で走ってくれる乗り合い馬車の運行地図を見ながら御者台のヒトに中銅貨2枚を支払うと、そのまま荷台に乗り込んだ。
ガイアスくんたちとは『冒険者ギルド』王都東門支部の食堂で落ち合う約束になっている。『森』と『犬族の遺跡』調査の依頼の件で進捗があるか無いかで今後のことも決まっていく予定なので、情報が集まる冒険者ギルドとはなるべく密に連絡を取り合った方がいいのだろう。
そんなことを考えながら、4人乗りの馬車に揺られていくらも経たないうちに配送業者のある地区にたどり着いた。
馬車を降りて“安くて丁寧!NEKONEKO配送”と書かれた看板のある建物に入り、いつものように荷物の配送手続きをしようとした私に、受付のヒトが思いもかけないことを言った。
「お客さん、悪いんだけど荷物は運べそうにないです」
「え?何か配送できないものが混ざっていますか?」
驚いた私が尋ねると
「いや、荷物の問題じゃ無くて、行き先の問題で」
と申し訳なさそうに説明し始めた。
「うちは大陸の外への配送は船を使うんですが、どうも最近、海の様子が悪いらしいんですよ。元々海は潮の流れや天候の問題だけでなく海の魔物も気にしなくちゃならないんで。空からの配送なら引き受けられるかもしれませんが、うちではやってなくて」
「そうですか。それなら仕方ないね」
「申し訳ない」
受付のヒトが本当に申し訳なさそうにペコリと頭を下げた。
「ありがとうございました!またのご利用お待ちしてます」
という店内からの声を背に、私は建物から出た。
さて。どうしようか。空から配送となると、大型の鳥便か魔導飛行船を利用することになるんだけど…。
空からの配送は船の配送よりうんと速くは届けられるけれど、一度に運べるのは少量の荷物で、たくさんだと費用が高くなる。
「仕方ない」
私はしばらくあれこれ思案して、今すぐ配送できないのは仕方ないという結論に至ったのである。
私は『島』で『素材』の到着を待っているであろうヒトを思い浮かべた。こと、研究に関してだけ何故かせっかちになる友人の顔。私信箱に届いた封筒の中身は読まなくてもわかる。
私は褐色中銅貨1枚を支払って乗り合い馬車に乗り込んだ。
馬車の進行方向には“速くて安心大鷲航空”と書かれた大きな看板が見えている。
「ふぅ。仕方ない」
私が呟くのを聞いて、先に馬車の荷台に乗っていたお客さんが少しだけ怪訝そうな顔をした。
◇
用を済ませた私が待ち合わせの『冒険者ギルド』に到着して食堂に入ると、先に来ていたガイアスくんたちが約束通りに待ってくれていた。
「マクスさん」
「やあやあ、マクス君!こっちなのだよ」
「あとはバッシュとノアが来れば全員揃うな」
外はまだ明るいけれど日は傾き始めていて、夕飯時を前に食堂が賑わってきた。
シナップくんがジャックくんからまわってきたカップを私に渡してくれた。
そこへバッシュくんとノアくんの
「お待たせー」「お待たせー」
という声が聞こえてきたので私が振り返ろうとすると、今度はバッシュくんとノアくんのとは違うヒトの
「お待たせー」「お待たせー」という声が続いた。
聞き覚えのある声に私が気がつくと同時に
「んあーーっ!」と、シナップくんが奇妙な声をあげた。
「イシュタルさま、それにルイジギルド長」
「いやあ、偶然『魔導ギルド』東門地区の支部にいあわせてな」「俺もたまたま偶然『魔導ギルド』東門地区の支部に用があって」
イシュタルさんは魔導ギルドのギルドマスターだからわかるんだけど。
「そうしたらナント、たまたま偶然奇遇にもバッシュとノアに出くわしてなあ」
イシュタルさんとルイジさんが、揃ってそう言った途端に、バッシュくんとノアくんが円らな瞳のまま動きを止めた。
2人とも偶然だとは思ってないんじゃないだろうか。
もしシナップくんたちに無理に付きまとっているようなら、大人として、ヒトとして何かなすべきなのでは。
隠れる背負袋が無いのに慌てるシナップくんに
「荷は『ギルド』に預けて背負袋は『部屋』に置いてきた。喰われたりはしないから落ち着け」とガイアスくんが苦笑しながら言った。
それを見ながら
『森』と『犬族の遺跡』の調査は『魔導考古学組合』『商人ギルド』『魔導ギルド』と『魔導研究ギルド』の指揮下で行われていて、イシュタルさんとルイジさんはそのうちの2組織の長なんだよね。
つまり依頼を受けた以上、ふたりは私たちの上司だ。
それにシナップくんに魔術付与されたペンダントを贈ってもらったりお世話になっている。
「少ないが土産だ。皆で食べてくれ。依頼をひき受けてくれた礼みたいなものだ」
そう言ってイシュタルさんとルイジさんが甘食の入った紙の包みを差し入れてくれた。
「ありがとうございます」「わあ、ありがとう」
偶然お土産も用意していたんだろうか、と少し思ったけれど。
「クリームが詰まってる」「美味しいのだー」「ちゃんと飯も食うんだぞ」「うん!」
直にそんなことどうでもいいやという気になった。
◇
「ところでお前たち、今日はここで今後の打ち合わせをするのか?」
王都『冒険者ギルド』1階の広い1室は大抵が時刻魔導具で朝5刻から城門が閉じられる夜18刻あたりまでは『食堂』として、以降夜20刻まで『酒場』として使われる。
『冒険者ギルド』という特性上、利用者はほぼ冒険者なので、食堂をそのまま打ち合わせに使うヒトが多く、ギルドの方も容認しているのでイシュタルさんが尋ねてきた。
「ああ。といっても、打ち合わせができるほどギルドから情報はまだもらえてないぞ?」
そう言ってガイアスくんがルイジさんとイシュタルさんを見ながら飲み物を飲んだ。
屋敷でホレスさまに依頼を受けることを伝えてから1日以上経過しているので、情報や指示が下りて来ていてもおかしくないと思っていたんだけど。
「依頼は俺たち指名でちゃんと出されてるんだが、具体的な指図どころか報酬についても何もまだ書かれていなかった。それでまだそっちで準備が整っていないと判断していたところだ」
ガイアスくんがそう言うのを聞いて、イシュタルさんとルイジさんが顔を見合わせた。
ジャックくんが「オレたちが依頼を受けると決めたばかりなんでそのせいだと思っていたが。違うのか?」と聞いた。
するとルイジさんが少し弱った顔で
「実をいうと魔導考古学組合が冒険者の調査参加に慎重なんだ」と切り出した。
「君たち冒険者は魔物とか、身の危険を感じたら、戦うだろ?」「そうだな」「もし武器が破損したり足りなさそうだったりしたら、遺跡やらなんやらの古い壺とか、薬品とか、種とか石でも何でも、工夫して武器にしたり、あ、僕はそういう姿勢は素晴らしいと思うんだよ。うん。それはそうと、君たち冒険者は必要なら遺跡の床や壁も祭壇とかでも破壊するよね?」「…それで命が助かるんなら、やるだろうな」
淡々と答えるガイアスくんと対照的にバッシュくんとノアくんはルイジさんからそっと顔を背けた。
「だよね。魔導考古学組合はそういうのをものすごく問題視していてね」
「それの。何がいけないんだ?」
ガイアスくん、ジャックくん、ロデリックくん、3人の声が見事に重なった。
◇
「要するに『魔導考古学組合』の上のヒトが、古いものが好きすぎて『冒険者』の参加に待ったをかけてるということか?」
ガイアスくんが運ばれてきた料理の皿からお肉を取ってから言った。
「直訳するとその通りだ。いましがた確認も取った。こちらから依頼を持ちかけておいてすまない」
「かまわないが。どうする?一度依頼を取り下げるか?」
ガイアスくんは切り分けたお肉を口に運んだ。
「いや、もう少しこのまま待ってくれないか」
イシュタルさんの言葉にガイアスくんが少し迷いながら
「最初からこちらに良い感情を持っていない依頼人の仕事を受けると、後で面倒ごとになることがある、と、言いたいところなんだが……」
「待ってくれるか?」
「シナップ、お前はどうしたい?いつ指示が来るかわからない依頼を待つか?依頼人の本命はシナップ、お前だ」
バッシュくんたちと食事を堪能していたシナップくんが、話を振られてガイアスくんとイシュタルさんを見た。
話はちゃんと聞いていたらしい。
「要は『森』に出現した物体をボクに直に見て欲しいという依頼なのだ。強い敵さえ現れなければ簡単そうなのだよ。待ってもいいけど、タダでは待たないのだ。条件次第なのだ」
そう言うとシナップくんの金色の瞳が獲物を狙う肉食獣の瞳に変わった。
「聞こう。条件というのは?」
シナップくんの鋭い眼光にイシュタルさんとルイジさんだけでなく、ガイアスくんや私まで身構えた。
「待っている期間ずっと、毎日美味しい甘食やケーキをボクたち全員に食べさせること!それも毎回違う種類なのだ!」
◇
王都の城門が閉じられる時間になって、ギルドの食堂が酒場の様相を見せてくる頃合い。
「上出来だシナップ。無理な条件を言ってくる相手にはこちらも相応の条件を提示するべきだ」ロデリックくんがシナップくんを誉めた。
シナップくんが提示した条件はイシュタルさんたちにとってとても簡単なことだから、ふたりも安堵した様子がある。
だがそれを見咎めたらしいロデリックくんが、ことさらにシナップくんを褒め称えた。
ガイアスくんもふたりの反応に思うところがあったらしい。
「依頼を受けて指示を待っている間は他の依頼を受けられない。俺たちはたまたま待てるが、他の冒険者も同じように依頼人に合わせて待てるとは限らない。各々生活があるからな。もし他にも同じようなやり方で依頼を受注させたまま待たせるのが常態化してるなら、魔導考古学組合の上のヒトに伝えてくれ」
ガイアスくんの言葉に私はハッとする。
そうか。ロデリックくんはこれを言いたかったんだね。
私は彼を誤解していたのかもしれない。ロデリックくんは強いだけのエレイナさん一択じゃなく同業の冒険者のこともちゃんと考えられるヒトだったんだ。
イシュタルさんとルイジさんが神妙な顔でガイアスくんの言葉を聞いて目をふせた。
心当たりがあるのだろう。
意を決したようにガイアスくんが言った。
「シナップと別に俺からも条件だ。待っている期間、最低限でかまわないからせめて雇用した俺たち全員の生活を保障すること。それで待つ」
「ボクたち全員の甘食をお忘れなくなのだ!」
「無理なら形だけでも、一度取り下げて再度依頼を出しなおしてくれ。商人ギルドはもとより、魔導ギルドや魔導研究ギルドにも世話になっている」
エレイナさんは魔導ギルドにも登録しているし、バッシュくんやノアくんも魔導ギルドの一員で私たちの救援のために魔導ギルドから送り出された人員だ。
「わかった。ホレスの方に…いや、魔導考古学組合のお偉方に伝えるんだったな。正直、気が重いな」
憂鬱な表情でイシュタルさんが呟くと
「可愛い愛弟子の職場環境改善のために目一杯、良い条件を取り付けるのは師匠の務めだ。頑張ってくれ」
ロデリックくんがイシュタルさんの両肩を両手でがっしりと掴んだ。
「ロデリック、貴様」「ロデリックお前」「ロデリックくん……」
「すごいじゃないかエレイナ。お前の存在が『冒険者』の職場環境を変えるかもしれない」
ジャックくんが冗談とも本気ともつかないことを言った。
◇
時刻魔導具が夜を教えてくれる頃。
『ギルド』の食堂に酒を飲み交わすヒトが増えてきた。
内装や置かれている料理の品書きも日中見ていたものとは違う『酒場』の物になっている。
「イシュタルさまも帰ってしまったし、私たち今日はもう部屋に行ってるわ。また明日」「また明日」「また明日ー」「明日なのだ」
『酒場』のお品書きを名残惜しげに見つめるシナップくんたちを連れて、食事を終えたエレイナさんが『ギルド』の上の階に上がって行くのを見送った。
残った私はガイアスくんとジャックくん、ロデリックくん、ルイジさんの5人で食事を続けている。
「君たちしばらくこの地区に滞在するの?」
「いや、明日には本部のある中央へ帰る予定だ。『ヤマルの森』へ行くなら西門に近い場所へいた方が都合もいい」
ルイジさんに聞かれてガイアスくんが答えた。
王都は広いので身体能力に特化した光属性の駿馬『ルーク』や聖属性の駿馬『クイーン』と呼ばれるような速い種の馬などでも使わない限り、東門から西門への移動だけで20日、魔導車や速い馬車を乗り継いでも半日以上費やす覚悟をしなければならない。
冒険者に支払われる報酬は一般的に出来高制で、日数や時間は加味されることはあっても、通常計上されない。
その気になればいくらでも延ばせてしまうからだ。
商会の雇用主が、常時雇い入れている従業員の人たちにあえて支払うことは多いのだけれど。
「依頼の達成に時間をかけすぎると評価が静かに下がる」
ロデリックくんが大きめのグラスに入った果実酒を飲みながら言った。
評価を下げるかどうかは雇用主にもよるだろうけれど、丁寧に早く間違いの無い仕事をこなしてくれるヒトの評価のほうが上がりやすいのは確かだ。
単独でも冒険者として稼げると、そういった柵のようなものを嫌ってギルドを脱退するヒトもいる。
誰かから仕事を請け負って仕事をする限り、冒険者に限らず柵から抜け出すことは出来ないと私は思うんだけどね。
それにしても…
「ロデリック、君が評価のことを言うなんて意外だな!」
ルイジさんが心底驚いた表情をしてそう言った。
◇
時刻魔導具に付いた12個の小さな魔石が青い光を静に放つ。
そろそろ『酒場』の営業が終わる時間のはずだけど、周りのお客さんは減る様子があまりない。
途中何人か、ガイアスくんたちに話しかけてくるヒトがいて、そのうちの1人がロデリックくんと言い争いのようになっている。
「お前ら落ち着けよ」
ガイアスくんがとりなそうとするのだけれど、2人とも止めないので、面白がる人たちがお酒を片手に見物し始めたのだ。
怖がって逃げるように酒場を出るヒトよりも、集まるヒトの方がどうも多い。
ジャックくんとルイジさんも私も、経緯を見ていなかったので迂闊に口を挟めない。
それでもルイジさんが前に出た。
「君たち、一度冷静になれ。ロデリック・クライン、それと…」
ルイジさんがもう一人の男性の名を言おうとしたけれど知らないか、記憶に無いらしく、名は出てこなかった。
「…カナン、だ。魔導研究ギルドのギルド長ルイジ・エトワール殿」
「カナン君。すぐに名が出ず失礼した」
「いえ。お目にかかるのも名乗るのも初めてなので」
そう言うとカナンと名乗った青年は「悪かったな」とガイアスくんと目を合わせず言って『酒場』から出ていった。
ギルド長であることが知られたルイジさんが遠巻きに見られてはいたものの、いくらもしない時間で酒場が再びもとのような賑わいを取り戻した。
なんだったのだろう。
ガイアスくんも最初の2人の会話に参加していなくてよくわからないそうだ。ロデリックくんは言い争いに発展する前の、事のあらましを言わない。
「ロデリックもあいつも酒の飲みすぎだな!」
「そうだね。もう休んだ方がよさそうだ。さてとシナップ君にも会えて話せたし、俺もお暇するとしよう。そうだ、これだけは言っておくが、ロデリック君、周囲の人にとって君は強すぎる。それを忘れちゃいけないよ」
◇
翌朝、冒険者ギルドの玄関口でエレイナさんたちと合流する。
「お待たせー」「おはよう」「おはようございます」「おはようなのだよ」
受付で精算と荷物をギルド本部へ配送する手配を済ませたガイアスくんが揃ったら出発だ。
────────
────────
□共有アイテム□
◇主な食料の在庫
内訳(長期保存食料198食分)
◇嗜好品お菓子(魔導系回復あり)、各種調味料、未調理穀物6日分
◇魔力回復ポーション(EX102本、超回復74本、大153本、中647本、小970本)
◇治癒ポーション(治癒薬EX107本、超回復69本、大885本、中2,072本、小4,588本)、薬草(治癒1,060袋)1,060袋、他
□各自アイテムバッグ
ガイアス (魔力回復薬小3本)(治癒薬EX2本、超回復4本、大10本)薬草(治癒5袋、解毒5袋)麻痺解除薬5本
ジャック (魔力回復薬小4本)(治癒薬EX2本、超回復4本、大10本)薬草(治癒5袋、解毒5袋)麻痺解除薬1本)
エレイナ (魔力回復薬EX1本、超回復1本、大6本、中1本、小3本)(治癒薬EX3本、超回復3本、小10本)薬草(治癒5袋、解毒10袋)麻痺解除薬1本)
マクス (魔力回復薬EX3本、超回復5本、大5本、中5本、小10本)(治癒薬超回復5本、大5本、中10本、小20本)薬草(治癒18袋、解毒10袋)麻痺解除薬1本)
バッシュ (魔力回復薬EX1本、超回復1本、大2本)(治癒薬EX1本、超回復1本)薬草(治癒1袋、解毒10袋)麻痺解除薬1本)
ノア (魔力回復薬EX1本、超回復1本、大2本)(治癒薬EX1本、超回復1本)薬草(治癒1袋、解毒10袋)麻痺解除薬1本)
シナップ 『塔にあるもの全部』
ロデリック『私物とお菓子』
□背負袋
ガイアス 『共有アイテム』『バッシュとノアの本』『エレイナ、バッシュ、ノア、シナップの荷物』『食糧』
ジャック (魔力回復薬EX11本、超回復10本、大50本、中210本、小140本)(治癒薬EX1本、超回復85本、大35本、中80本、小120本)薬草(治癒10袋、解毒10袋)麻痺解除薬2本)『もしもの時の燻製肉』
エレイナ (魔力回復薬EX3本、超回復10本、大20本、中50本、小100本)(治癒薬EX5本、超回復25本、大30本、中50本、小50本)薬草(治癒60袋、解毒20袋)麻痺解除薬2本、万能薬3つ)『お菓子』
マクス (魔力回復薬大10本、中100本、小100本)(治癒薬超回復50本、大100本、中200本、小200本)薬草(治癒1,000袋、解毒30袋)麻痺解除薬4本、石化解除薬4つ、万能薬4つ)『草』
バッシュ (魔力回復薬EX5本、超回復5本)(治癒薬EX5本、超回復5本)薬草(治癒25袋、解毒5袋)麻痺解除薬5本、石化解除薬1つ、万能薬5つ)『カリカリフード』
ノア (魔力回復薬EX5本、超回復5本)(治癒薬EX5本、超回復5本)薬草(治癒25袋、解毒5袋)麻痺解除薬4本、石化解除薬2つ、万能薬5つ)『カリカリフード』
シナップ 『塔にあるもの全部』
ロデリック『私物とお菓子』
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