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参加してくれって言ったのに!
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ユランから別れを切り出されたショックから、少し立ち直るのに3日ほどかかった。でもいつまでもメソメソもしていられない。働かないと。
私は別れを了承したわけではないので、ユランとの事は今は保留状態だ。 だだ暫くは冷却期間が必要だろう。その期間がわからない以上多少でも収入を稼いでおかないと。
私はクエストを受注するために冒険者ギルドへ向かう。
ギルドで募集されてるクエストは、「パーティ」と「フリー」の2種類がある。その名の示す通り、パーティはパーティメンバー固定推奨のクエスト、フリーはパーティメンバー募集を兼ねたクエストだ。
その上でパーティとフリーはA~Gの難易度が設定されている。固定メンバー推奨のクエストは連携がある程度求められるので、単純に同じ難易度であれば、通常パーティの方が達成が難しい。
とりあえず今はユランとは冷却期間なので、「フリー」からクエストを探そう。そう思っていると……
見慣れた顔を発見した。戦士のジャガ。いつもフリーでクエストを受注しているCランクの男だ。
いつも私とユランは二人でクエストを受注しているのだが、たまに「俺のパーティに参加してくれ」とずうずうしくお願いしてくる男だ。私の事をミランダの姐さんと呼んで、姿を見るとペコペコとしてくる。その姿があまりにも情けなくて、何度か参加してあげた事がある。
「ジャガ、おはよう」
普段私から声をかけることはあまりないが、今日は特別だ。
ジャガはこちらをチラリと見て
「ミランダ、何か用か?」
とぶっきらぼうに言ってくる。
「あら、今日は呼び捨て? いつもペコペコしてるくせに」
「うるせぇなぁ、用が無いならあっち行ってくれよ」
露骨に今までとは態度を変えて、ジャガが言ってくる。何か虫の居所でも悪いのだろうか。でも私はそんなことにイチイチ怒ったりしない忍耐力がある。その忍耐力で自制しつつ話を続ける。
「あなた、今日はパーティメンバー揃ってるの?もし揃って無いならAクラスの私が特別に参加してあげるわ」
「おあいにくさま、今日は揃ってるよ」
そう、なら用は無い。使った自制心を損したような気持ちで、クエストを確認しようと立ち去ろうとすると……
「ジャガさーん、すみませんまだメンバー見つからないですぅ~」
受付嬢が、ジャガにそう言いながら走ってやって来る。
「ちっ……」
ジャガかバツの悪そうな顔をして、横を向く。私はジャガに問いかける。
「ジャガ、どういうこと?」
私の問いかけに、ジャガは溜め息をつきながら、悪びれることもなく話始める。
「まぁ、ハッキリ言おう、ユランの旦那無しのアンタなんて用は無いんだよ」
「前は、姐さんだけでも是非ってペコペコしてたじゃない」
「そりゃあ、そう言いつつもアンタが参加してくれれば、ユランの旦那も参加してくれるからさ。でもアンタら別れたんだろ? 噂になってるぜ」
「別れてないけど?」
「アンタが勝手に思ってるだけさ。旦那はもう違う女とパーティ組んでるぜ」
それを聞いた瞬間、先程までの自制心が嘘の用に血が沸騰するような感覚を覚える。ぶるぶると震える体を自覚しながら問いただす。
「なんて女よ」
「スーだったかな。まぁアンタも年の割には綺麗にしてると思うが、なんたってハタチの娘さ、俺でも乗り換えるぜ」
なんてことだ、ユランはそんな小娘に唆され、私達の7年を棒に振ろうとしているのか。はやく目を覚ましてあげなければ。
「だいたいさぁ、『俺が突っ込む! 魔法使いはフォローを! 僧侶は回復に備えてくれ! ミランダ、ご飯炊いといてくれ!』そんな指示したくねぇよ俺」
そう言って、ジャガは笑う。話を聞いている周囲の冒険者達もクスクスと笑っている。でも私は彼がおかしな事を言っているのに気が付いて指摘する。
「あなた、私のご飯美味しい美味しいって食べてたじゃない」
私のせりふに、彼は一瞬呆気に取られたような顔をした後で、また笑いながら
「そりゃあ気を使って言ってたんだよ!大体俺は……」
そう言って真顔になり、ジャガが宣言する。
「パン派なんだ、特に朝はな。炊きたてご飯に用は無いんだよ」
私は、自分の敗北を悟った。
私は別れを了承したわけではないので、ユランとの事は今は保留状態だ。 だだ暫くは冷却期間が必要だろう。その期間がわからない以上多少でも収入を稼いでおかないと。
私はクエストを受注するために冒険者ギルドへ向かう。
ギルドで募集されてるクエストは、「パーティ」と「フリー」の2種類がある。その名の示す通り、パーティはパーティメンバー固定推奨のクエスト、フリーはパーティメンバー募集を兼ねたクエストだ。
その上でパーティとフリーはA~Gの難易度が設定されている。固定メンバー推奨のクエストは連携がある程度求められるので、単純に同じ難易度であれば、通常パーティの方が達成が難しい。
とりあえず今はユランとは冷却期間なので、「フリー」からクエストを探そう。そう思っていると……
見慣れた顔を発見した。戦士のジャガ。いつもフリーでクエストを受注しているCランクの男だ。
いつも私とユランは二人でクエストを受注しているのだが、たまに「俺のパーティに参加してくれ」とずうずうしくお願いしてくる男だ。私の事をミランダの姐さんと呼んで、姿を見るとペコペコとしてくる。その姿があまりにも情けなくて、何度か参加してあげた事がある。
「ジャガ、おはよう」
普段私から声をかけることはあまりないが、今日は特別だ。
ジャガはこちらをチラリと見て
「ミランダ、何か用か?」
とぶっきらぼうに言ってくる。
「あら、今日は呼び捨て? いつもペコペコしてるくせに」
「うるせぇなぁ、用が無いならあっち行ってくれよ」
露骨に今までとは態度を変えて、ジャガが言ってくる。何か虫の居所でも悪いのだろうか。でも私はそんなことにイチイチ怒ったりしない忍耐力がある。その忍耐力で自制しつつ話を続ける。
「あなた、今日はパーティメンバー揃ってるの?もし揃って無いならAクラスの私が特別に参加してあげるわ」
「おあいにくさま、今日は揃ってるよ」
そう、なら用は無い。使った自制心を損したような気持ちで、クエストを確認しようと立ち去ろうとすると……
「ジャガさーん、すみませんまだメンバー見つからないですぅ~」
受付嬢が、ジャガにそう言いながら走ってやって来る。
「ちっ……」
ジャガかバツの悪そうな顔をして、横を向く。私はジャガに問いかける。
「ジャガ、どういうこと?」
私の問いかけに、ジャガは溜め息をつきながら、悪びれることもなく話始める。
「まぁ、ハッキリ言おう、ユランの旦那無しのアンタなんて用は無いんだよ」
「前は、姐さんだけでも是非ってペコペコしてたじゃない」
「そりゃあ、そう言いつつもアンタが参加してくれれば、ユランの旦那も参加してくれるからさ。でもアンタら別れたんだろ? 噂になってるぜ」
「別れてないけど?」
「アンタが勝手に思ってるだけさ。旦那はもう違う女とパーティ組んでるぜ」
それを聞いた瞬間、先程までの自制心が嘘の用に血が沸騰するような感覚を覚える。ぶるぶると震える体を自覚しながら問いただす。
「なんて女よ」
「スーだったかな。まぁアンタも年の割には綺麗にしてると思うが、なんたってハタチの娘さ、俺でも乗り換えるぜ」
なんてことだ、ユランはそんな小娘に唆され、私達の7年を棒に振ろうとしているのか。はやく目を覚ましてあげなければ。
「だいたいさぁ、『俺が突っ込む! 魔法使いはフォローを! 僧侶は回復に備えてくれ! ミランダ、ご飯炊いといてくれ!』そんな指示したくねぇよ俺」
そう言って、ジャガは笑う。話を聞いている周囲の冒険者達もクスクスと笑っている。でも私は彼がおかしな事を言っているのに気が付いて指摘する。
「あなた、私のご飯美味しい美味しいって食べてたじゃない」
私のせりふに、彼は一瞬呆気に取られたような顔をした後で、また笑いながら
「そりゃあ気を使って言ってたんだよ!大体俺は……」
そう言って真顔になり、ジャガが宣言する。
「パン派なんだ、特に朝はな。炊きたてご飯に用は無いんだよ」
私は、自分の敗北を悟った。
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