6 / 37
精霊神ティターニアの神殿
「はい、2時間前までは私が精霊の愛し子でした。」
ユリアは少し俯いた。
「2時間前までは?」
シオンが首をかしげる。
「まるで今は違うかのような言い方だが・・・。」
「私の精霊の愛し子としての評価をご存じありませんか?」
ユリアが尋ねた。
「存じませんよ。ヴィ―ルヘミア王国とラピスラズリ大帝国は敵関係です。軍を送って戦争を始めるのは簡単ですが間者を送るのがどれだけ難しいことか分かりますか?ヴィ―ルヘミア王国は戦力はほとんどないくせして間諜からの守りだけはあついんです。」
レイがユリアを忌々し気に睨みつける。
「レイ!?ユリア嬢、レイが失礼をしました。帝国の者が王国を悪く言ってしまい申し訳ありませんでした。」
エルが慌ててレイをとめ、レイの頭を下げさせた。
「お気になさらないでください。私は国を捨てた身です。母国であろうと私を偽物扱いする国には居たいとは思いませんわ。」
ユリアは苦笑する。
「今、偽物扱いと言ったか?」
シオンの声が震える。
「はい。」
「あんな素晴らしい精霊術が使えて偽物か?一つの時代に複数の精霊の愛し子がいたという話は聞かない。つまり今王国にいる精霊の愛し子は偽物ということか。」
シオンがつぶやく。
「信じてくださるのですか?」
ユリアは美しい緑色の瞳を大きくしながら言った。
「そりゃああんな素晴らしい精霊術を見せられたら認めざるをおえない。」
「ありがとうございます。」
ユリアはほっとしたように微笑んだ。
「よかったら王国でのユリア嬢の評価となぜ追放になったのか教えてくれないか?」
なんとなくわかるけど・・・とシオンが言う。
「殿下、ここで話す必要はありません。精霊術で治癒を使うことができるのですからとりあえずは皇都の神殿に行きましょう。話は馬車の中でも聞けるはずです。」
レイが冷静に言う。
「そうだね。エル、馬車の準備を頼む。」
「そういわれると思いましたのですでに準備を済ませておきました。」
シオンがエルに言うとエルは事も無げに言う。
「・・・そうか。・・・もう。さすがエル。準備が速いね。」
シオンは顔を引き攣らせた。
「あ、びっくりしたかな?」
軍の駐屯地の入り口に停まっている馬車を見てユリアは呆気にとられた。
「い、いえ。」
「皇太子が乗ると言っても軍だからね。豪華すぎても質素すぎてもいけないんだ。このぐらいがちょうどいいんだ。」
「そう、なのですね。」
シオンの説明にユリアはうなずいた。
「ところで、話してくれるかな?」
「・・・はい、もちろんです。」
ユリアは一つ大きくうなずいた。
「・・・ここまでが私が死の森に来ることになった一連の出来事です。評価に関しては・・・精霊の愛し子としての役割を果たせない無能・・・と呼ばれていました。」
ユリアが説明する。
「・・・それは。」
シオン達は絶句する。
「無能・・・か。あの精霊術を見た後では無能とはとても思えないけど。」
「・・・無能のふりをしていたのです。無能のふりをすれば噂を聞きつけた誰かが必ず精霊の愛し子を名乗ると思ったのです。」
「つまりこの追放は望んでいたということか?」
信じられないというようにシオンが尋ねた。
「はい。精霊の愛し子を使いつぶすようなヴィ―ルヘミア王国には愛想が尽きました。」
ユリアが言う。
「ヴィ―ルヘミア王国は一体何をしているんだ。」
シオンは頭を抱える。
「王太子殿下はまともなお方ですわ。第二王子殿下とは違って王妃殿下の実のお子ですもの。頭の違いはやはり血筋によって決まるのですね。」
ユリアは笑顔で毒を吐く。
「王太子もまともではなかったら王国は終わっているだろう。」
シオンがため息をつく。
「殿下、今回のこと・・・総帥閣下に報告しないわけにはいきませんね。」
エルが心配そうに言う。
「そう・・・だな。報告しなくてもいつかわかることだ。神殿に行くついでに本部にもよるか。先ぶれを出しておいてもらえるかな?」
「かしこまりました。ついで・・・ついでですね。」
エルはニコニコと言う。
「ま、待て。ついでとか本当に書くつもりか?」
慌ててシオンがとめる。
「・・・書いてはいけませんか?」
「駄目だ!あとでねちねち言われるに決まっているだろう。」
心底不思議そうに首をかしげるエルにシオンは半ば必死に言う。
「・・・そうですか、わかりました。」
エルはうなずくと万年筆をとった。
2日後・・・。
「ここが精霊神ティターニア様の神殿ですか?とても綺麗ですね。」
皇都の中心にある巨大な神殿にユリアは圧倒された。
「お待ちしていました皇太子殿下。大神官様と聖女様は奥でお待ちです。」
出迎えにあらわれた神官はユリアたちを奥に案内した。
「こちらでございます。」
神官は大神官の部屋に案内した。
「失礼します。」
シオンは声をかけると返事を聞く前に扉を開けた。
「ようこそいらっしゃいました皇太子殿下。お久しぶりにございます。ユリア様、ロバート様お初にお目にかかります。聖女アルスティーナと申します。」
部屋のソファーでくつろいでいた聖女アルスティーナは立ち上がるとカーテシーをする。
「初めましてアルスティーナ様。ユリアと申します。」
「初めましてアルスティーナ聖女様。ロバートと申します。」
ユリアとロバートは挨拶をする。
「皇太子殿下。お久しぶりです。」
部屋の奥から大神官があらわれる。
「ユリア嬢、ロバート殿は、はじめましてですね。精霊神ティターニア様の神殿の大神官アヴィオと申します。」
「お初にお目にかかります。大神官様。ユリアと申します。」
「お初にお目にかかります。ロバートと申します。」
ユリアとロバートは丁寧に頭を下げた。
「お話は聞きました。ユリア嬢が精霊の愛し子かどうかを確かめてほしいということであっていますか?」
アヴィオが尋ねた。
「あっています。」
シオンはうなずいた。
「それでは場所を移しましょう。ここでは精霊の愛し子かどうかを確かめることはできませんから。」
アヴィオはシオン達を引き連れて部屋を出た。
「ここが祈りの間です。精霊神ティターニア様が唯一現れることができる場所です。」
ユリアは少し俯いた。
「2時間前までは?」
シオンが首をかしげる。
「まるで今は違うかのような言い方だが・・・。」
「私の精霊の愛し子としての評価をご存じありませんか?」
ユリアが尋ねた。
「存じませんよ。ヴィ―ルヘミア王国とラピスラズリ大帝国は敵関係です。軍を送って戦争を始めるのは簡単ですが間者を送るのがどれだけ難しいことか分かりますか?ヴィ―ルヘミア王国は戦力はほとんどないくせして間諜からの守りだけはあついんです。」
レイがユリアを忌々し気に睨みつける。
「レイ!?ユリア嬢、レイが失礼をしました。帝国の者が王国を悪く言ってしまい申し訳ありませんでした。」
エルが慌ててレイをとめ、レイの頭を下げさせた。
「お気になさらないでください。私は国を捨てた身です。母国であろうと私を偽物扱いする国には居たいとは思いませんわ。」
ユリアは苦笑する。
「今、偽物扱いと言ったか?」
シオンの声が震える。
「はい。」
「あんな素晴らしい精霊術が使えて偽物か?一つの時代に複数の精霊の愛し子がいたという話は聞かない。つまり今王国にいる精霊の愛し子は偽物ということか。」
シオンがつぶやく。
「信じてくださるのですか?」
ユリアは美しい緑色の瞳を大きくしながら言った。
「そりゃああんな素晴らしい精霊術を見せられたら認めざるをおえない。」
「ありがとうございます。」
ユリアはほっとしたように微笑んだ。
「よかったら王国でのユリア嬢の評価となぜ追放になったのか教えてくれないか?」
なんとなくわかるけど・・・とシオンが言う。
「殿下、ここで話す必要はありません。精霊術で治癒を使うことができるのですからとりあえずは皇都の神殿に行きましょう。話は馬車の中でも聞けるはずです。」
レイが冷静に言う。
「そうだね。エル、馬車の準備を頼む。」
「そういわれると思いましたのですでに準備を済ませておきました。」
シオンがエルに言うとエルは事も無げに言う。
「・・・そうか。・・・もう。さすがエル。準備が速いね。」
シオンは顔を引き攣らせた。
「あ、びっくりしたかな?」
軍の駐屯地の入り口に停まっている馬車を見てユリアは呆気にとられた。
「い、いえ。」
「皇太子が乗ると言っても軍だからね。豪華すぎても質素すぎてもいけないんだ。このぐらいがちょうどいいんだ。」
「そう、なのですね。」
シオンの説明にユリアはうなずいた。
「ところで、話してくれるかな?」
「・・・はい、もちろんです。」
ユリアは一つ大きくうなずいた。
「・・・ここまでが私が死の森に来ることになった一連の出来事です。評価に関しては・・・精霊の愛し子としての役割を果たせない無能・・・と呼ばれていました。」
ユリアが説明する。
「・・・それは。」
シオン達は絶句する。
「無能・・・か。あの精霊術を見た後では無能とはとても思えないけど。」
「・・・無能のふりをしていたのです。無能のふりをすれば噂を聞きつけた誰かが必ず精霊の愛し子を名乗ると思ったのです。」
「つまりこの追放は望んでいたということか?」
信じられないというようにシオンが尋ねた。
「はい。精霊の愛し子を使いつぶすようなヴィ―ルヘミア王国には愛想が尽きました。」
ユリアが言う。
「ヴィ―ルヘミア王国は一体何をしているんだ。」
シオンは頭を抱える。
「王太子殿下はまともなお方ですわ。第二王子殿下とは違って王妃殿下の実のお子ですもの。頭の違いはやはり血筋によって決まるのですね。」
ユリアは笑顔で毒を吐く。
「王太子もまともではなかったら王国は終わっているだろう。」
シオンがため息をつく。
「殿下、今回のこと・・・総帥閣下に報告しないわけにはいきませんね。」
エルが心配そうに言う。
「そう・・・だな。報告しなくてもいつかわかることだ。神殿に行くついでに本部にもよるか。先ぶれを出しておいてもらえるかな?」
「かしこまりました。ついで・・・ついでですね。」
エルはニコニコと言う。
「ま、待て。ついでとか本当に書くつもりか?」
慌ててシオンがとめる。
「・・・書いてはいけませんか?」
「駄目だ!あとでねちねち言われるに決まっているだろう。」
心底不思議そうに首をかしげるエルにシオンは半ば必死に言う。
「・・・そうですか、わかりました。」
エルはうなずくと万年筆をとった。
2日後・・・。
「ここが精霊神ティターニア様の神殿ですか?とても綺麗ですね。」
皇都の中心にある巨大な神殿にユリアは圧倒された。
「お待ちしていました皇太子殿下。大神官様と聖女様は奥でお待ちです。」
出迎えにあらわれた神官はユリアたちを奥に案内した。
「こちらでございます。」
神官は大神官の部屋に案内した。
「失礼します。」
シオンは声をかけると返事を聞く前に扉を開けた。
「ようこそいらっしゃいました皇太子殿下。お久しぶりにございます。ユリア様、ロバート様お初にお目にかかります。聖女アルスティーナと申します。」
部屋のソファーでくつろいでいた聖女アルスティーナは立ち上がるとカーテシーをする。
「初めましてアルスティーナ様。ユリアと申します。」
「初めましてアルスティーナ聖女様。ロバートと申します。」
ユリアとロバートは挨拶をする。
「皇太子殿下。お久しぶりです。」
部屋の奥から大神官があらわれる。
「ユリア嬢、ロバート殿は、はじめましてですね。精霊神ティターニア様の神殿の大神官アヴィオと申します。」
「お初にお目にかかります。大神官様。ユリアと申します。」
「お初にお目にかかります。ロバートと申します。」
ユリアとロバートは丁寧に頭を下げた。
「お話は聞きました。ユリア嬢が精霊の愛し子かどうかを確かめてほしいということであっていますか?」
アヴィオが尋ねた。
「あっています。」
シオンはうなずいた。
「それでは場所を移しましょう。ここでは精霊の愛し子かどうかを確かめることはできませんから。」
アヴィオはシオン達を引き連れて部屋を出た。
「ここが祈りの間です。精霊神ティターニア様が唯一現れることができる場所です。」
あなたにおすすめの小説
殿下は婚約破棄した私を“横領犯”として追放しましたが、私が“王国の財布”だとご存じなかったのですか?
なかすあき
恋愛
王太子の婚約者であるレティシアは、愛ではなく“王国の財布”に選ばれた内政官だった。
干ばつ救済基金を管理し、徴税と支出の流れを整え、国が崩れないように回してきたはずなのに。
舞踏会の夜。
聖女セシルの涙と王太子の言葉が、レティシアを一瞬で“横領犯”に仕立て上げる。
反論しても届かない。空気が判決を下す場所で、レティシアは追放された。
落とされた先は、干ばつに喘ぐ辺境。
水のない井戸、荒れた配給所、怒りの列。
レティシアは泣く代わりに、配給と水路と記録を整えた。奇跡ではなく、段取りで。
やがて王都は、レティシアがいなくなった穴から静かに壊れ始める。
支払いは止まり、責任は溶け、聖女の“物語”だけが空回りする。
呼び戻しの使者が来ても、レティシアは従わない。戻る条件はひとつ。
――公開監査。
記録水晶が映し出すのは、涙では隠せない日付と署名、そして“誰が何を決めたか”という事実。
この逃げ場のない復讐劇の先に残るのは、王都の再起ではなく、辺境の明日だった。
これは、道具として捨てられた内政官が、二度と道具に戻らず、“責任を固定する”ことで国を救い、自分の居場所を選び直す物語。
婚約破棄までの168時間 悪役令嬢は断罪を回避したいだけなのに、無関心王子が突然溺愛してきて困惑しています
みゅー
恋愛
アレクサンドラ・デュカス公爵令嬢は舞踏会で、ある男爵令嬢から突然『悪役令嬢』として断罪されてしまう。
そして身に覚えのない罪を着せられ、婚約者である王太子殿下には婚約の破棄を言い渡された。
それでもアレクサンドラは、いつか無実を証明できる日が来ると信じて屈辱に耐えていた。
だが、無情にもそれを証明するまもなく男爵令嬢の手にかかり最悪の最期を迎えることになった。
ところが目覚めると自室のベッドの上におり、断罪されたはずの舞踏会から1週間前に戻っていた。
アレクサンドラにとって断罪される日まではたったの一週間しか残されていない。
こうして、その一週間でアレクサンドラは自身の身の潔白を証明するため奮闘することになるのだが……。
甘めな話になるのは20話以降です。
魔の森に捨てられた伯爵令嬢は、幸福になって復讐を果たす
三谷朱花*Q−73@文フリ東京5/4
恋愛
ルーナ・メソフィスは、あの冷たく悲しい日のことを忘れはしない。
ルーナの信じてきた世界そのものが否定された日。
伯爵令嬢としての身分も、温かい我が家も奪われた。そして信じていた人たちも、それが幻想だったのだと知った。
そして、告げられた両親の死の真相。
家督を継ぐために父の異母弟である叔父が、両親の死に関わっていた。そして、メソフィス家の財産を独占するために、ルーナの存在を不要とした。
絶望しかなかった。
涙すら出なかった。人間は本当の絶望の前では涙がでないのだとルーナは初めて知った。
雪が積もる冷たい森の中で、この命が果ててしまった方がよほど幸福だとすら感じていた。
そもそも魔の森と呼ばれ恐れられている森だ。誰の助けも期待はできないし、ここに放置した人間たちは、見たこともない魔獣にルーナが食い殺されるのを期待していた。
ルーナは死を待つしか他になかった。
途切れそうになる意識の中で、ルーナは温かい温もりに包まれた夢を見ていた。
そして、ルーナがその温もりを感じた日。
ルーナ・メソフィス伯爵令嬢は亡くなったと公式に発表された。
今まで尽してきた私に、妾になれと言うんですか…?
水垣するめ
恋愛
主人公伯爵家のメアリー・キングスレーは公爵家長男のロビン・ウィンターと婚約していた。
メアリーは幼い頃から公爵のロビンと釣り合うように厳しい教育を受けていた。
そして学園に通い始めてからもロビンのために、生徒会の仕事を請け負い、尽していた。
しかしある日突然、ロビンは平民の女性を連れてきて「彼女を正妻にする!」と宣言した。
そしえメアリーには「お前は妾にする」と言ってきて…。
メアリーはロビンに失望し、婚約破棄をする。
婚約破棄は面子に関わるとロビンは引き留めようとしたが、メアリーは婚約破棄を押し通す。
そしてその後、ロビンのメアリーに対する仕打ちを知った王子や、周囲の貴族はロビンを責め始める…。
※小説家になろうでも掲載しています。
【完結】ブスと呼ばれるひっつめ髪の眼鏡令嬢は婚約破棄を望みます。
はゆりか
恋愛
幼き頃から決まった婚約者に言われた事を素直に従い、ひっつめ髪に顔が半分隠れた瓶底丸眼鏡を常に着けたアリーネ。
周りからは「ブス」と言われ、外見を笑われ、美しい婚約者とは並んで歩くのも忌わしいと言われていた。
婚約者のバロックはそれはもう見目の美しい青年。
ただ、美しいのはその見た目だけ。
心の汚い婚約者様にこの世の厳しさを教えてあげましょう。
本来の私の姿で……
前編、中編、後編の短編です。
酔っぱらい令嬢の英雄譚 ~チョコレートを食べていたら、いつの間にか第三王子を救っていたようです!~
ゆずこしょう
恋愛
婚約者と共に参加するはずだった、
夜会当日──
婚約者は「馬車の予約ができなかった」という理由で、
迎えに来ることはなかった。
そして王宮で彼女が目にしたのは、
婚約者と、見知らぬ女性が寄り添う姿。
領地存続のために婿が必要だったエヴァンジェリンは、
感情に流されることもなく、
淡々と婚約破棄の算段を立て始める。
目の前にあった美味しいチョコレートをつまみながら、
頭の中で、今後の算段を考えていると
別の修羅場が始まって──!?
その夜、ほんの少しお酒を口にしたことで、
エヴァンジェリンの評価と人生は、
思いもよらぬ方向へ転がり始める──
2月11日 第一章完結
2月15日 第二章スタート予定
宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました
悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。
クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。
婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。
そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。
そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯
王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。
シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯
妹の方がかわいいからと婚約破棄されましたが、あとで後悔しても知りませんよ?
志鷹 志紀
恋愛
「すまない、キミのことを愛することができなくなった」
第二王子は私を謁見の間に連れてきて、そう告げた。
「つまり、婚約破棄ということですね。一応、理由を聞いてもよろしいですか?」
「キミの妹こそが、僕の運命の相手だったんだよ」
「そうですわ、お姉様」
王子は私の妹を抱き、嫌な笑みを浮かべている。
「ええ、私は構いませんけれど……あとで後悔しても知りませんよ?」
私だけが知っている妹の秘密。
それを知らずに、妹に恋をするなんて……愚かな人ですね。