【完結】無能と称され婚約破棄された精霊の愛し子は国を見切ります

ルー

文字の大きさ
37 / 37

番外編⑤2人の皇子と1人の皇女

「お兄様!待ってください。」

皇宮の中庭を駆けずり回る2人の皇子シェリオ・ルゥ・ラピスラズリとユリアン・ルゥ・ラピスラズリを追いかける1人の皇女レイラ・ルゥ・ラピスラズリは派手に転んだ。

「ふえーん!」

真ん丸な可愛らしい緑色の瞳から涙が零れ落ちた。

「「レイラ!」」

2人の皇子は慌ててレイラに駆け寄る。

「レイラ様!」

レイラが派手に転ぶのを見て血相を変えたのは少し離れたところで3人が遊んでいるのを見ていたレイラの専属侍女シエナだった。

「お医者様を呼んできますのでお待ちください!」

そう言って皇宮の中に駆け込んでいく。

「ふえーん!」

泣き続けるレイラに2人の皇子はどうしたらいいのかわからずおろおろするばかりだ。

「何があったのかしら?」

ちょうどその場を通りかかった皇后ユリアが3人に近づいた。

「まあ、転んでしまったのね。・・・侍女はどこに行ったのかしら?」

周りを見て、侍女がいないことを不審に思ったのだろう、ユリアは尋ねた。

「お医者様を呼びに行きました。」

ユリアンが答える。

「ふえーん!おかしゃま!」

レイラは母の姿を見ると手をのばす。

「レイラ。泣かないで。大丈夫よ。」

ユリアはレイラを抱き上げると優しく頭をなでた。

「皇后陛下!?」

医者を連れて戻ってきたシエナはその場に皇后ユリアがいることに気づき顔色を変えた。

「あら、貴女がレイラの侍女なのね。お医者様は?」

ユリアは振り返ると微笑んで医者を呼ぶ。

「先日ぶりです皇后陛下。レイラ皇女殿下はどこにいらっしゃいますか?」

シエナの後ろから若い医者がでてくる。

「こっちよ。本当にごめんなさいね。毎日のようにレイラったら怪我をして・・・。」

ユリアは申し訳なさそうに言う。

「いえいえ。私の仕事は人を治すことです。怪我人が誰もいなかったらこの職業はなくなってしまいますよ。」

医者は朗らかに笑う。

「皇后陛下は治癒術をお使いにはなられないのですか?」

確か精霊の愛し子でしたよね、と医者が言う。

「ええ。でもね、同じ血族の者は治せないのよ。」

あの時シオンの怪我を治せたのはユリアの血に皇族の血がほとんどまじっていなかったから。

「そうなのですね。」

医者は勉強になりますと言いながら手当をしていく。

「絆創膏を貼っておきました。一応化膿止めもつけておきました。1日1度貼りかえてください。」

医者はシエナに絆創膏と化膿止めを渡す。

「わかりました。」

医者は一礼すると去って行った。

「皇后陛下、レイラ様を置いてお医者様を探しに行ってしまい申し訳ありませんでした。主が怪我をしているときに離れるなど決してしてはいけないことと知ってはいました。」

医者がいなくなるやいなやシエナはユリアに土下座する。

「どうして謝るのかしら?」

「え?」

ユリアはシエナを立たせる。

「貴女は正しい判断をしたわ。あの時医者をすぐに呼びに行った判断は間違えていないわ。その行動こそ主のことを真に思う者の態度だわ。」

貴女がレイラつきの侍女で本当によかった、とユリアは言った。

「皇后陛下っ!」

シエナは涙を流した。

「シエナ、どうして泣いてるの?」

いつの間にか泣き止んでいたレイラが心配そうにシエナの服をつまみ、顔を見上げる。

「レイラも心配しているわ。」

「レイラ様、皇后陛下!ありがとうございます。」

シエナは涙をふくとレイラに微笑んだ。

「私は皇后陛下のやさしさがうれしくて泣いたのです。」

「おかあしゃまのやさしさ?悲しくて泣いていたのではないのならいいの。」

レイラはシエナに抱き着いた。

「シエナ大好き!」

「私よりも?」

ユリアが尋ねるとレイラは頬を膨らませた。

「おかあしゃまの意地悪!」







―――――――――――――――――――――――
これにて完結です。
最後までお付き合いくださりありがとうございました。
『無能と称され婚約破棄された精霊の愛し子は国を見切ります』と関連のある話として『幽閉された元王妃の平民侍女ですが国王陛下に求婚されています』を明日から連載を始める予定です。
『幽閉された元王妃の平民侍女ですが国王陛下に求婚されています』も読んでくださると嬉しいです。








感想 2

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(2件)

すぐり
2024.07.13 すぐり

どうも、楽しく読ませていただきました。ただ、サイラスが不憫すぎる…。操られたのは迂闊だけどサイラスも被害者な気が…

解除
⊂(  ・ω・ )⊃
2022.07.25 ⊂( ・ω・ )⊃

誤字報告です
今日更新された話の中で厳重に保管が幻獣に保管になってましたm(_ _)m

2022.07.26 ルー

ご指摘ありがとうございます!
まったく気づかなかったです。

解除

あなたにおすすめの小説

殿下は婚約破棄した私を“横領犯”として追放しましたが、私が“王国の財布”だとご存じなかったのですか?

なかすあき
恋愛
王太子の婚約者であるレティシアは、愛ではなく“王国の財布”に選ばれた内政官だった。 干ばつ救済基金を管理し、徴税と支出の流れを整え、国が崩れないように回してきたはずなのに。 舞踏会の夜。 聖女セシルの涙と王太子の言葉が、レティシアを一瞬で“横領犯”に仕立て上げる。 反論しても届かない。空気が判決を下す場所で、レティシアは追放された。 落とされた先は、干ばつに喘ぐ辺境。 水のない井戸、荒れた配給所、怒りの列。 レティシアは泣く代わりに、配給と水路と記録を整えた。奇跡ではなく、段取りで。 やがて王都は、レティシアがいなくなった穴から静かに壊れ始める。 支払いは止まり、責任は溶け、聖女の“物語”だけが空回りする。 呼び戻しの使者が来ても、レティシアは従わない。戻る条件はひとつ。 ――公開監査。 記録水晶が映し出すのは、涙では隠せない日付と署名、そして“誰が何を決めたか”という事実。 この逃げ場のない復讐劇の先に残るのは、王都の再起ではなく、辺境の明日だった。 これは、道具として捨てられた内政官が、二度と道具に戻らず、“責任を固定する”ことで国を救い、自分の居場所を選び直す物語。

婚約破棄までの168時間 悪役令嬢は断罪を回避したいだけなのに、無関心王子が突然溺愛してきて困惑しています

みゅー
恋愛
アレクサンドラ・デュカス公爵令嬢は舞踏会で、ある男爵令嬢から突然『悪役令嬢』として断罪されてしまう。 そして身に覚えのない罪を着せられ、婚約者である王太子殿下には婚約の破棄を言い渡された。 それでもアレクサンドラは、いつか無実を証明できる日が来ると信じて屈辱に耐えていた。 だが、無情にもそれを証明するまもなく男爵令嬢の手にかかり最悪の最期を迎えることになった。 ところが目覚めると自室のベッドの上におり、断罪されたはずの舞踏会から1週間前に戻っていた。 アレクサンドラにとって断罪される日まではたったの一週間しか残されていない。   こうして、その一週間でアレクサンドラは自身の身の潔白を証明するため奮闘することになるのだが……。 甘めな話になるのは20話以降です。

魔の森に捨てられた伯爵令嬢は、幸福になって復讐を果たす

三谷朱花*Q−73@文フリ東京5/4
恋愛
 ルーナ・メソフィスは、あの冷たく悲しい日のことを忘れはしない。  ルーナの信じてきた世界そのものが否定された日。  伯爵令嬢としての身分も、温かい我が家も奪われた。そして信じていた人たちも、それが幻想だったのだと知った。  そして、告げられた両親の死の真相。  家督を継ぐために父の異母弟である叔父が、両親の死に関わっていた。そして、メソフィス家の財産を独占するために、ルーナの存在を不要とした。    絶望しかなかった。  涙すら出なかった。人間は本当の絶望の前では涙がでないのだとルーナは初めて知った。  雪が積もる冷たい森の中で、この命が果ててしまった方がよほど幸福だとすら感じていた。  そもそも魔の森と呼ばれ恐れられている森だ。誰の助けも期待はできないし、ここに放置した人間たちは、見たこともない魔獣にルーナが食い殺されるのを期待していた。  ルーナは死を待つしか他になかった。  途切れそうになる意識の中で、ルーナは温かい温もりに包まれた夢を見ていた。  そして、ルーナがその温もりを感じた日。  ルーナ・メソフィス伯爵令嬢は亡くなったと公式に発表された。

今まで尽してきた私に、妾になれと言うんですか…?

水垣するめ
恋愛
主人公伯爵家のメアリー・キングスレーは公爵家長男のロビン・ウィンターと婚約していた。 メアリーは幼い頃から公爵のロビンと釣り合うように厳しい教育を受けていた。 そして学園に通い始めてからもロビンのために、生徒会の仕事を請け負い、尽していた。 しかしある日突然、ロビンは平民の女性を連れてきて「彼女を正妻にする!」と宣言した。 そしえメアリーには「お前は妾にする」と言ってきて…。 メアリーはロビンに失望し、婚約破棄をする。 婚約破棄は面子に関わるとロビンは引き留めようとしたが、メアリーは婚約破棄を押し通す。 そしてその後、ロビンのメアリーに対する仕打ちを知った王子や、周囲の貴族はロビンを責め始める…。 ※小説家になろうでも掲載しています。

【完結】ブスと呼ばれるひっつめ髪の眼鏡令嬢は婚約破棄を望みます。

はゆりか
恋愛
幼き頃から決まった婚約者に言われた事を素直に従い、ひっつめ髪に顔が半分隠れた瓶底丸眼鏡を常に着けたアリーネ。 周りからは「ブス」と言われ、外見を笑われ、美しい婚約者とは並んで歩くのも忌わしいと言われていた。 婚約者のバロックはそれはもう見目の美しい青年。 ただ、美しいのはその見た目だけ。 心の汚い婚約者様にこの世の厳しさを教えてあげましょう。 本来の私の姿で…… 前編、中編、後編の短編です。

酔っぱらい令嬢の英雄譚 ~チョコレートを食べていたら、いつの間にか第三王子を救っていたようです!~

ゆずこしょう
恋愛
婚約者と共に参加するはずだった、 夜会当日── 婚約者は「馬車の予約ができなかった」という理由で、 迎えに来ることはなかった。 そして王宮で彼女が目にしたのは、 婚約者と、見知らぬ女性が寄り添う姿。 領地存続のために婿が必要だったエヴァンジェリンは、 感情に流されることもなく、 淡々と婚約破棄の算段を立て始める。 目の前にあった美味しいチョコレートをつまみながら、 頭の中で、今後の算段を考えていると 別の修羅場が始まって──!? その夜、ほんの少しお酒を口にしたことで、 エヴァンジェリンの評価と人生は、 思いもよらぬ方向へ転がり始める── 2月11日 第一章完結 2月15日 第二章スタート予定

宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました

悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。 クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。 婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。 そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。 そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯ 王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。 シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯

妹の方がかわいいからと婚約破棄されましたが、あとで後悔しても知りませんよ?

志鷹 志紀
恋愛
「すまない、キミのことを愛することができなくなった」  第二王子は私を謁見の間に連れてきて、そう告げた。 「つまり、婚約破棄ということですね。一応、理由を聞いてもよろしいですか?」 「キミの妹こそが、僕の運命の相手だったんだよ」 「そうですわ、お姉様」  王子は私の妹を抱き、嫌な笑みを浮かべている。 「ええ、私は構いませんけれど……あとで後悔しても知りませんよ?」  私だけが知っている妹の秘密。  それを知らずに、妹に恋をするなんて……愚かな人ですね。