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一周目の時間軸では(9)sideルディリーナ公爵夫人

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それから一カ月後、ハルが離宮を抜け出して会いに来た。

「お母様、もう無理。耐えられない。お願い、助けて・・・。」

泣きながら訴えてくるハルに、私は皇太子殿下が言ったことを伝えた。

ハルは一瞬固まった後乾いた笑みを浮かべた。

「お母様ったら、どうしてそんな簡単な嘘に騙されてしまうのですか?エリナは殿下のことなんて好いていないというのに。何も裏をとらずにどうしてそうだと言えるのですか?そもそも私とエリナが仲が良いことをお母様は知っているでしょう?」

「そうだとしても、あんなに真剣な表情だったのよ。嘘だとはどうしても思えないの。この際、ハルも殿下のことを信用してみたらいいんじゃないかしら?」

「お母様はっ!何も知らないからそんな綺麗事が言えるのよ。」

ハルは皇太子妃教育で泣くことができなくなっていた。

もう、泣いていなかった。

ただ、悲しそうな表情で私を見ていた。

「ハル。もう殿下を疑うのはやめなさい。信じてあげなさい。殿下も苦しんでいるのよ。あなたも分かってあげなさい。」

だから親として厳しく諫めた。

ハルの瞳が絶望に染まった。

「ああ、もうお母様には何を言っても駄目なのですね。そんな嘘を信じてしまうほど、お母様は落ちぶれていたのですね。分かりました。私はもう、お母様は頼りません。皇太子殿下の言ったことを信じてしまうような方を母に持った覚えは、ありません。」

ハルは、そう言うと振り返らずに屋敷から出て行った。

「あなたには、失望しました。」

部屋から出る直前に耳に入ったハルの声に私は何も返せなかった。

だからハルが自殺した、と聞いた時には馬鹿なことをしたな、と思った。

けれど親友である皇后陛下ナディアからの文を見て深く後悔した。

やっと気づいた。

ハルはずっと本当のことしか言っていなかったのだ。

後日、ディオンから何故ハルが皇太子殿下を嫌うのか、詳細を聞いて怒りに震えた。

どうして、私はハルの話を聞かなかったんだろう。

無理に話を聞いていれば何か変わったのかもしれない。

違うと決めつけなければ良かった。

どうして裏もとらずに信用してしまったのだろう。

馬鹿だ。

私は馬鹿だ。

最低だ。

どうして、私はあんなことをハルに言ったのだろう。

私が、私がハルを突き放したんだ。

私が、ハルがルディリーナ公爵家を頼れなようにしたんだ。

親として、母として最低だ。

娘の言葉より皇太子殿下の言葉を信じた。

死んでしまいたい。

そう思ってしまった。


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ここで一周目の時間軸での話をいったん終わりにします。また少し開けて皇后ナディアsideの話と皇帝ルーカスsideの話とサザランド帝国皇帝アーサーsideの話をのせていきます。
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