12 / 16
一周目の時間軸では(8)sideルディリーナ公爵夫人
しおりを挟む
結婚式の日。
たくさんの貴族と民が集まりお祝いした。
皇太子殿下もとても嬉しそうであの子の心配は杞憂だったとほっとした。
でも、皇太子殿下の隣で綺麗なウエディングドレスを着たハルは作られた笑顔で手を振っていた。
そこに幸せそうなハルは存在しなかった。
結婚式の次の日。
ハルが離宮に追いやられたと聞いて、どういうことかとハヴェスに尋ねた。
なんと皇太子殿下はハルを離宮に追いやっただけでは飽き足らず愛人である男爵令嬢を皇宮に迎えたのだ。
馬鹿にしているのか、と殴りこみたかった。
でも、ハヴェスに止められた。
今はまだ時期尚早だ、と。
その間、ハルがどのような思いをしているかさえ私は考えず、うなづいてしまった。
それからハルは社交界にも出て来ず、ずっと会えなかった。
最後にあったのは結婚してからもうすぐ三年が経つ、というある日だった。
あの日、最後の頼みの綱として頼ってくれたというのに、私はハルに最低なことを言ってしまった。
皇太子殿下の言葉を信じてしまった。
ハルがやって来る一か月前のことだった。
多分私しかいないことをどこかで確認してきたのだろう。
突然やってきた皇太子殿下は信じられないことを言った。
「今までハルのことを蔑ろにしてしまい申し訳なかった。僕は本当はハルのことを何よりも愛しているんだ。」
信じ、られなかった。
結婚して次の日に離宮に追いやった張本人が一体何を言っているのかと怒鳴りそうになった。
「・・・殿下は、ふざけているのですか?今の今まであんな仕打ちを娘にしておいて何をいまさら・・・。」
声が震えた。
「本当にすまなかった。実はリーシャは偽の愛人なのだ。ハルを愛していることがばれないようにカモフラージュとして、だった。エルニーシャ公爵令嬢・・・知っているだろう?」
エルニーシャ公爵令嬢、ええ。
もちろん、知っておりますとも。
「ええ、存じております。我がルディリーナ公爵家と対立するエルニーシャ公爵家のご令嬢でしょう?その方がどうかいたしましたの?」
「その彼女が、僕の正妃の座を狙い、ハルの命を狙っているのです。エリナ・エルニーシャ公爵令嬢を他所に嫁がせるまでは、ハルに今の生活を強いなければいけないのです。お伝えするのが遅くなって申し訳ない。だけど、どうか信じてくれ。僕がハルを愛しているのは本当なんだ。」
筋は通っていた。
エルニーシャ公爵令嬢が正妃の座を狙っていることぐらいは知っていた。
だけど、まさか命まで狙われているとは思わなかった。
皇太子殿下の真剣な表情も、信用するに値すると思ってしまった。
「わかり、ました。信用します。ですがこのことを旦那様とディオンには伝えてよろしいですか?」
「いえ、私の口からきちんと説明します。」
「・・・分かりました。娘のことどうかお願いします。」
私は頭を下げていた。
だから見えなかった。
皇太子殿下が蔑むように嗤っていたことを。
たくさんの貴族と民が集まりお祝いした。
皇太子殿下もとても嬉しそうであの子の心配は杞憂だったとほっとした。
でも、皇太子殿下の隣で綺麗なウエディングドレスを着たハルは作られた笑顔で手を振っていた。
そこに幸せそうなハルは存在しなかった。
結婚式の次の日。
ハルが離宮に追いやられたと聞いて、どういうことかとハヴェスに尋ねた。
なんと皇太子殿下はハルを離宮に追いやっただけでは飽き足らず愛人である男爵令嬢を皇宮に迎えたのだ。
馬鹿にしているのか、と殴りこみたかった。
でも、ハヴェスに止められた。
今はまだ時期尚早だ、と。
その間、ハルがどのような思いをしているかさえ私は考えず、うなづいてしまった。
それからハルは社交界にも出て来ず、ずっと会えなかった。
最後にあったのは結婚してからもうすぐ三年が経つ、というある日だった。
あの日、最後の頼みの綱として頼ってくれたというのに、私はハルに最低なことを言ってしまった。
皇太子殿下の言葉を信じてしまった。
ハルがやって来る一か月前のことだった。
多分私しかいないことをどこかで確認してきたのだろう。
突然やってきた皇太子殿下は信じられないことを言った。
「今までハルのことを蔑ろにしてしまい申し訳なかった。僕は本当はハルのことを何よりも愛しているんだ。」
信じ、られなかった。
結婚して次の日に離宮に追いやった張本人が一体何を言っているのかと怒鳴りそうになった。
「・・・殿下は、ふざけているのですか?今の今まであんな仕打ちを娘にしておいて何をいまさら・・・。」
声が震えた。
「本当にすまなかった。実はリーシャは偽の愛人なのだ。ハルを愛していることがばれないようにカモフラージュとして、だった。エルニーシャ公爵令嬢・・・知っているだろう?」
エルニーシャ公爵令嬢、ええ。
もちろん、知っておりますとも。
「ええ、存じております。我がルディリーナ公爵家と対立するエルニーシャ公爵家のご令嬢でしょう?その方がどうかいたしましたの?」
「その彼女が、僕の正妃の座を狙い、ハルの命を狙っているのです。エリナ・エルニーシャ公爵令嬢を他所に嫁がせるまでは、ハルに今の生活を強いなければいけないのです。お伝えするのが遅くなって申し訳ない。だけど、どうか信じてくれ。僕がハルを愛しているのは本当なんだ。」
筋は通っていた。
エルニーシャ公爵令嬢が正妃の座を狙っていることぐらいは知っていた。
だけど、まさか命まで狙われているとは思わなかった。
皇太子殿下の真剣な表情も、信用するに値すると思ってしまった。
「わかり、ました。信用します。ですがこのことを旦那様とディオンには伝えてよろしいですか?」
「いえ、私の口からきちんと説明します。」
「・・・分かりました。娘のことどうかお願いします。」
私は頭を下げていた。
だから見えなかった。
皇太子殿下が蔑むように嗤っていたことを。
13
あなたにおすすめの小説
真実の愛の祝福
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
皇太子フェルナンドは自らの恋人を苛める婚約者ティアラリーゼに辟易していた。
だが彼と彼女は、女神より『真実の愛の祝福』を賜っていた。
それでも強硬に婚約解消を願った彼は……。
カクヨム、小説家になろうにも掲載。
筆者は体調不良なことも多く、コメントなどを受け取らない設定にしております。
どうぞよろしくお願いいたします。
〈完結〉だってあなたは彼女が好きでしょう?
ごろごろみかん。
恋愛
「だってあなたは彼女が好きでしょう?」
その言葉に、私の婚約者は頷いて答えた。
「うん。僕は彼女を愛している。もちろん、きみのことも」
【完】お望み通り婚約解消してあげたわ
さち姫
恋愛
婚約者から婚約解消を求められた。
愛する女性と出会ったから、だと言う。
そう、それなら喜んで婚約解消してあげるわ。
ゆるゆる設定です。3話完結で書き終わっています。
悪役令嬢の涙
拓海のり
恋愛
公爵令嬢グレイスは婚約者である王太子エドマンドに卒業パーティで婚約破棄される。王子の側には、癒しの魔法を使え聖女ではないかと噂される子爵家に引き取られたメアリ―がいた。13000字の短編です。他サイトにも投稿します。
あなたのことなんて、もうどうでもいいです
もるだ
恋愛
舞踏会でレオニーに突きつけられたのは婚約破棄だった。婚約者の相手にぶつかられて派手に転んだせいで、大騒ぎになったのに……。日々の業務を押しつけられ怒鳴りつけられいいように扱われていたレオニーは限界を迎える。そして、気がつくと魔法が使えるようになっていた。
元婚約者にこき使われていたレオニーは復讐を始める。
【完結】気付けばいつも傍に貴方がいる
kana
恋愛
ベルティアーナ・ウォール公爵令嬢はレフタルド王国のラシード第一王子の婚約者候補だった。
いつも令嬢を隣に侍らす王子から『声も聞きたくない、顔も見たくない』と拒絶されるが、これ幸いと大喜びで婚約者候補を辞退した。
実はこれは二回目の人生だ。
回帰前のベルティアーナは第一王子の婚約者で、大人しく控えめ。常に貼り付けた笑みを浮かべて人の言いなりだった。
彼女は王太子になった第一王子の妃になってからも、弟のウィルダー以外の誰からも気にかけてもらえることなく公務と執務をするだけの都合のいいお飾りの妃だった。
そして白い結婚のまま約一年後に自ら命を絶った。
その理由と原因を知った人物が自分の命と引き換えにやり直しを望んだ結果、ベルティアーナの置かれていた環境が変わりることで彼女の性格までいい意味で変わることに⋯⋯
そんな彼女は家族全員で海を隔てた他国に移住する。
※ 投稿する前に確認していますが誤字脱字の多い作者ですがよろしくお願いいたします。
※ 設定ゆるゆるです。
幼馴染み同士で婚約した私達は、何があっても結婚すると思っていた。
喜楽直人
恋愛
領地が隣の田舎貴族同士で爵位も釣り合うからと親が決めた婚約者レオン。
学園を卒業したら幼馴染みでもある彼と結婚するのだとローラは素直に受け入れていた。
しかし、ふたりで王都の学園に通うようになったある日、『王都に居られるのは学生の間だけだ。その間だけでも、お互い自由に、世界を広げておくべきだと思う』と距離を置かれてしまう。
挙句、学園内のパーティの席で、彼の隣にはローラではない令嬢が立ち、エスコートをする始末。
パーティの度に次々とエスコートする令嬢を替え、浮名を流すようになっていく婚約者に、ローラはひとり胸を痛める。
そうしてついに恐れていた事態が起きた。
レオンは、いつも同じ令嬢を連れて歩くようになったのだ。
私のことを愛していなかった貴方へ
矢野りと
恋愛
婚約者の心には愛する女性がいた。
でも貴族の婚姻とは家と家を繋ぐのが目的だからそれも仕方がないことだと承知して婚姻を結んだ。私だって彼を愛して婚姻を結んだ訳ではないのだから。
でも穏やかな結婚生活が私と彼の間に愛を芽生えさせ、いつしか永遠の愛を誓うようになる。
だがそんな幸せな生活は突然終わりを告げてしまう。
夫のかつての想い人が現れてから私は彼の本心を知ってしまい…。
*設定はゆるいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる