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皇太子殿下の元専属侍女ですか?嫌いです。今すぐ出て行ってください
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「お嬢様、食堂にて旦那様と奥様、お坊ちゃまがお待ちです。」
しばらくして、いつになって私が行かなかったのでしびれを切らしたらしいお兄様の侍女さんが突撃してきた。
「・・・ごめんなさい。ナターシャとエリナが夢中になってて。」
エレノアさん、という侍女さんは呆れたように二人に近づく。
「ナターシャ、エリナ。何をしているのですか?」
「へ?」
振り返ったナターシャとエリナが青ざめた。
このエレノアさんという方、そんなに怖い人なの?
一周目の時間軸ではあったことがない方だけど・・・。
「ええええ、エレノアさん!!」
ナターシャが半泣きでエリナにしがみつく。
「お二人ともお嬢様を困らせるのはやめなさい。」
エレノアさんは私から見たら顔は見えないからどんな顔をしているか分からないけれど二人の怯えようを見て恐ろしい顔をしているんだろうな、と予想がついた。
「あの、エレノアさん。そんなに叱らないであげてちょうだい。」
私が慌てて間に入ると、一転してエレノアさんはにっこりとほほ笑んだ。
「いえいえ、お嬢様。そんな、エレノアさんではなくエレノアとお呼びください。」
「・・・私、あなたと会ったのは今日が初めてだったと思うのだけど?」
「これは失礼をいたしました。私はエレノア・ルーテンと申します。」
「名前はさっき聞きましたわ・・・。」
「あら、申し訳ありません。私は皇太子殿下の元専属侍女として勤めておりました。」
皇太子殿下の、元専属侍女・・・?
冗談じゃないわ。
いやだわ。
あんな皇太子殿下の元とはいえ専属侍女がわが屋敷にいるだなんて・・・。
お父様たちは知っているのかしら?
「ハル、随分と遅いんだね?何かあったのかい?あれ、エレノア。さっきからどこに行っているのかと思ったけどこんなところにいたんだ。」
あら、お兄様。
「おにいさ・・・。」
「坊ちゃま!!申し訳ありませんでした。お嬢様があまりにも遅いのでお迎えに行っていたのです。」
ねぇ、今この人何をしたかしら?
一介の侍女が私に言葉を被せてくるだなんて何様なの!?
ルーテン家と言えばルーテン子爵家しかないわね。
たかだか子爵家の令嬢が公爵家の令嬢である私になんてことを!?
でも、お兄様のことだから見逃すわね。
どうせお兄様、だもの。
「・・・エレノア。今、何をした?」
ん?
「あの、坊ちゃま。顔が怖いです。私、何かしましたか?」
いえ、エレノアさん。
あなたの厚顔無恥さもさすがに呆れるわ。
今すぐ皇宮に戻って欲しいくらい。
というか一周目の時間軸ではこんな方いなかった気が・・・。
「今、ハルの言葉を遮ったよね?君、何様なの?」
あれ、なんかお兄様がおかしい・・・?
今までのお兄様なら絶対見て見ぬふりをするのに・・・。
まぁ、いつの間にかその侍女はいなくなってるんだけど・・・。
「あ、あの。なんのこと、ですか?」
・・・まさか、あなたわからないの?
無自覚、なのかしら?
でも、それにしてもひどすぎるわ。
「しらばっくれるつもりかな?さっきの話も聞いてたけど。ハルの前で皇太子の名前は禁句だと今日の朝伝えたよね?もう忘れたの?」
あの、お兄様?
もしかして、怒ってます?
あのどんなに罵倒しても怒らないお兄様が怒った!?
それも、私のために・・・?
明日は槍でも降るのかしら?
「そ、それは・・・。お名前は出しておりません!皇太子殿下と言っただけで・・・。」
「同じだよね?それに君、ちょっとハルのこと馬鹿にしすぎだよね?」
「そ、そんなつもりは!!」
な、なんか修羅場みたいになっているのだけど。
ええっと。
これはどういう状況かしら・・・?
もう訳が分からないわ・・・。
「君は、前はいなかったよね?」
うん?
お兄様、どういう意味ですか?
「あの、坊ちゃま。どういう意味ですか?」
あら、この方も分かっていないじゃない。
「ああ、ごめんね。こっちの事情だよ。さて、聞きたいんだけど。君はどうしてここで働こうと思ったの?皇太子の侍女の方がお給金はいいと思うんだけど、ねぇ?」
「そ、それはっ!!ええっと、皇宮にいづらくなったから、です。」
「噓はいいよ?・・・本当のことを言って。さもないと、分かってるよね・・・?」
「ひいっ!!」
少しだけエレノアさんがかわいそうに思えてきましたわ。
お兄様、とてもかっこいいのに怒ると恐ろしいほど顔が怖いのです。
「それだけは無理です。お話しますのでどうかご容赦を!!」
・・・綺麗な土下座ですね。
その土下座私にもしていただける?
「・・・土下座する相手、間違ってる気がするけど。謝るのは私にではないよね?」
お兄様っ!!
今おいくつですか?
記憶が正しければ、七歳だったと思うのですが・・・。
「申し訳ございません!!」
今舌打ちしたわよね!?
いくら何でも酷すぎやしないかしら!!
さすがに今のはお兄様も怒るはず・・・ひいっ!!
顔が、怖い!!
「エレノア。お前は今、この時をもって解雇する。皇太子には通達しておく。お前が来たときに一応調べておいてよかった。こいつを捕縛しろ。そして地下の迷宮牢にいれておけ。」
「かしこまりました。」
いつの間にか部屋にいた騎士さんがエレノアさんを縛って連れて行ってしまった。
しばらくして、いつになって私が行かなかったのでしびれを切らしたらしいお兄様の侍女さんが突撃してきた。
「・・・ごめんなさい。ナターシャとエリナが夢中になってて。」
エレノアさん、という侍女さんは呆れたように二人に近づく。
「ナターシャ、エリナ。何をしているのですか?」
「へ?」
振り返ったナターシャとエリナが青ざめた。
このエレノアさんという方、そんなに怖い人なの?
一周目の時間軸ではあったことがない方だけど・・・。
「ええええ、エレノアさん!!」
ナターシャが半泣きでエリナにしがみつく。
「お二人ともお嬢様を困らせるのはやめなさい。」
エレノアさんは私から見たら顔は見えないからどんな顔をしているか分からないけれど二人の怯えようを見て恐ろしい顔をしているんだろうな、と予想がついた。
「あの、エレノアさん。そんなに叱らないであげてちょうだい。」
私が慌てて間に入ると、一転してエレノアさんはにっこりとほほ笑んだ。
「いえいえ、お嬢様。そんな、エレノアさんではなくエレノアとお呼びください。」
「・・・私、あなたと会ったのは今日が初めてだったと思うのだけど?」
「これは失礼をいたしました。私はエレノア・ルーテンと申します。」
「名前はさっき聞きましたわ・・・。」
「あら、申し訳ありません。私は皇太子殿下の元専属侍女として勤めておりました。」
皇太子殿下の、元専属侍女・・・?
冗談じゃないわ。
いやだわ。
あんな皇太子殿下の元とはいえ専属侍女がわが屋敷にいるだなんて・・・。
お父様たちは知っているのかしら?
「ハル、随分と遅いんだね?何かあったのかい?あれ、エレノア。さっきからどこに行っているのかと思ったけどこんなところにいたんだ。」
あら、お兄様。
「おにいさ・・・。」
「坊ちゃま!!申し訳ありませんでした。お嬢様があまりにも遅いのでお迎えに行っていたのです。」
ねぇ、今この人何をしたかしら?
一介の侍女が私に言葉を被せてくるだなんて何様なの!?
ルーテン家と言えばルーテン子爵家しかないわね。
たかだか子爵家の令嬢が公爵家の令嬢である私になんてことを!?
でも、お兄様のことだから見逃すわね。
どうせお兄様、だもの。
「・・・エレノア。今、何をした?」
ん?
「あの、坊ちゃま。顔が怖いです。私、何かしましたか?」
いえ、エレノアさん。
あなたの厚顔無恥さもさすがに呆れるわ。
今すぐ皇宮に戻って欲しいくらい。
というか一周目の時間軸ではこんな方いなかった気が・・・。
「今、ハルの言葉を遮ったよね?君、何様なの?」
あれ、なんかお兄様がおかしい・・・?
今までのお兄様なら絶対見て見ぬふりをするのに・・・。
まぁ、いつの間にかその侍女はいなくなってるんだけど・・・。
「あ、あの。なんのこと、ですか?」
・・・まさか、あなたわからないの?
無自覚、なのかしら?
でも、それにしてもひどすぎるわ。
「しらばっくれるつもりかな?さっきの話も聞いてたけど。ハルの前で皇太子の名前は禁句だと今日の朝伝えたよね?もう忘れたの?」
あの、お兄様?
もしかして、怒ってます?
あのどんなに罵倒しても怒らないお兄様が怒った!?
それも、私のために・・・?
明日は槍でも降るのかしら?
「そ、それは・・・。お名前は出しておりません!皇太子殿下と言っただけで・・・。」
「同じだよね?それに君、ちょっとハルのこと馬鹿にしすぎだよね?」
「そ、そんなつもりは!!」
な、なんか修羅場みたいになっているのだけど。
ええっと。
これはどういう状況かしら・・・?
もう訳が分からないわ・・・。
「君は、前はいなかったよね?」
うん?
お兄様、どういう意味ですか?
「あの、坊ちゃま。どういう意味ですか?」
あら、この方も分かっていないじゃない。
「ああ、ごめんね。こっちの事情だよ。さて、聞きたいんだけど。君はどうしてここで働こうと思ったの?皇太子の侍女の方がお給金はいいと思うんだけど、ねぇ?」
「そ、それはっ!!ええっと、皇宮にいづらくなったから、です。」
「噓はいいよ?・・・本当のことを言って。さもないと、分かってるよね・・・?」
「ひいっ!!」
少しだけエレノアさんがかわいそうに思えてきましたわ。
お兄様、とてもかっこいいのに怒ると恐ろしいほど顔が怖いのです。
「それだけは無理です。お話しますのでどうかご容赦を!!」
・・・綺麗な土下座ですね。
その土下座私にもしていただける?
「・・・土下座する相手、間違ってる気がするけど。謝るのは私にではないよね?」
お兄様っ!!
今おいくつですか?
記憶が正しければ、七歳だったと思うのですが・・・。
「申し訳ございません!!」
今舌打ちしたわよね!?
いくら何でも酷すぎやしないかしら!!
さすがに今のはお兄様も怒るはず・・・ひいっ!!
顔が、怖い!!
「エレノア。お前は今、この時をもって解雇する。皇太子には通達しておく。お前が来たときに一応調べておいてよかった。こいつを捕縛しろ。そして地下の迷宮牢にいれておけ。」
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