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第一章 出会いと修行と旅立ち

#7 街とオッサンとお買い物

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昼前くらいに街が見えてきた。
まぁ見えたと言っても外壁だけた。

高さは2階建てビルぐらい、石垣と木の外壁に囲まれている。
大きな馬車でも通れる程の門があり、ゴツい鎧を着けた兵士が2人門の脇にいる。
つーか輸送は馬車なんだな。
この辺りは中世ヨーロッパぐらいなのかな。
それよりこれ砦じゃないのか?
これ中にちゃんと街あるんだよな?
魔物がはびこる世界だから、このぐらいは必要なのか?

街に入る前に念のためコートの前は止めとこう。
何よりちょっと恥ずかしいしな。
それと言葉使いは丁寧にしよう。
揉め事は勘弁だ。
そして万が一何かあったら逃げよう。
あの外壁ならなんとかなりそうだ。

とりあえず鎧さんに受付の場所を聞いてみよう。

「受付はどこですか?」
「受付は門の中だよ」
「ありがとうございます」

門の奥行きが5m程あり壁の内部に受付があった。
受付は女性だ、きれいな人だな。
つーか外壁凄いな、内部に居住スペースがあるのか。

「受付はここですか?」
「そうよ、お嬢さん一人なの?」

まぁ女の子扱いはしょうがない。
見た目は12才だしな。

「はい、入れますか?」
「じゃあ銀貨2枚と、ここに理由と、名前を書いてね、書ける?」
「はい、大丈夫です(チャリン)・・・・・・・・・・書けました」
「・・・・はい、大丈夫ね、これは銀貨の預り証、街から出るときに出してね、これでお金を返すから、あと最後にここに手を置いてね」

そう言うと机の下から妙な模様がついた鉄板を出した。

「これは何ですか?」
「悪い人かわかる道具よ」

なんだそれ?
とりあえず手を置くか。

『ぴとっ!』

「・・・・はい、これで終わり、ではようこそ【アトラン】へ!」

街に入ると人が多く、そして色々な種族がいる。
ドワーフ、獣人、人に、あっ、鬼人さんだ!
角ある!色は白いがおんなじだ!
あの角は取れないのかな?
道は石畳だな、馬車とか揺れそうだ。
家や店は木造が多いがレンガもあるな。

ゲームや小説の世界に来たって感じだ。

そういえば冒険者ギルドってどこだろう?

受付の人に聞いてもいいかな?いいよね?

「すいません、ちょっと聞いてもいいですか?」
「何かな?」
「冒険者ギルドってどこですか?」
「冒険者ギルドはこの大通りをまっすぐ行くと大きい道にぶつかるからその右の角だけど・・冒険者ギルドに行くの?」
「はい、色々聞きたい事もあるし、買い取って貰いたい素材もあるので」
「う~ん、・・・10分くらい待っててもらえるかな、私も着いていってあげるわ」
「いえ、大丈夫です、今の説明でわかりました、そこまで甘えられません、ありがとうございました」

ぶっちゃけ、仕事中にそこまでしてもらうのは気が引ける。
そのまま大通りを歩き始めた。

ーーーーーーーーーーーーーーー

冒険者ギルドはデカかった。
見た目はファミレス1軒分くらいかな、石畳に木製の建物。
内部は手前に食事処?酒場?そんな感じだ。
奥にカウンターが並び、受付がある。
その中で買い取りと書いてある所に並んだ。

つーか飲んでるオッサン多いな。
女性もいるが革鎧や武器を持ってる。
あんな感じを『可愛い』とは思えないから、俺も着れないんだろうな。
カッコイイとは思うんだけど。

そんなこと考えてると順番が来た。

受付は女性だった。
オッパイ大きい、猫耳がある。

「魔物素材の買い取りお願いします」
「一人だけなの?素材はどこ?」

まぁ普通はこんな反応だよな。

「はい、一人です、素材はこのポーチに入れてあります」

コートを脱いで、ポーチを指差す。
二人と別れてから、さらに狩ったのでかなり量が増えていた。

「一応買い取りは出来るけど、ギルド員じゃないと少し安くなっちゃうよ」

「はい、構いません、ここで出せばいいですか?」
「うん、出してもらえるかな?」

ポーチから次々出していく。
解体の練習もしていたので、かなりばらしているが、それでもかなりの量だ。
つーか丸ごと入れたのもあるので机が埋まった。
まだ半分以上あるのに。
そういえば、このポーチ拡張なのかな?
一万倍でもこんなに入んないよな?
ジルさんに任せたからわからないな?
帰ったら聞いてみよう。

「残りは何処に出しますか?」
「まだあるの?ちょっと待ってね・・・・・この素材また入れてもらって、一緒に来てくれるかな?」
「わかりました」

とりあえず入れ直す。
後ろが騒がしくなってきた。
この量は多かったのかな?

・・・・面倒くさいのはごめんだ。

買い取りのあとは裏口とかから逃げよう。

そのままついていく。
しっぽもあって歩くたびに揺れてる。
・・・機会があったら触ってみたいな。

倉庫はカウンターのさらに奥にあった、想像以上にでかいな。

「ここで出してくれるかな?」
「わかりました」

また出していく、とりあえず種類ごとに出す。

狼系、猪系、熊系、蛇系、昆虫系、トカゲ系、あとはばらした肉、皮、内蔵、その他細々したもの、あとは魔石だ。
色々あってオークとゴブリンは魔石を出して焼いた、事情はそのうち機会があれば話そう。

ただあいつらは見付け次第殲滅だ!

「これで全部です、買い取りはどれくらいかかりますか?」
「・・・・・今日の夕方には終わるわ、それより色々聞いてもいいかな?」
「すいません、今日中に色々やりたいので、あんまり時間は無いです」
「そうなの、じゃあこれが引換券ね、1つだけ教えて、これはあなたが狩ったの?」

このポーチには自分の分しか入れて無い。
グレイさんもクレアさんもジルさん特製の鞄をもってたからな。

「そうですよ、ちなみに裏口はありますか?」
「そっちよ、そうね、騒ぎになってたもんね」
「じゃあ夕方以降に来ます、ギルドは何時までやってますか?」
「夜遅くまでやってるから大丈夫よ」
「ありがとうございます、じゃあまた後で」

そう言って俺はギルドを後にした。

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

色々買いたいものがあるので街をぶらついている。
あとはこの世界の常識的なものが俺には無いので、見て回っている。
馬車は幌がついた荷運びのものが多いが、時々金かかってそうな馬車も通る。
そういった馬車は大体護衛の騎士っぽい人が先導してる。
貴族や王族とかもいるのかな?
あとは多分だけど奴隷を連れて歩いてる人もチラホラ見かける。
女に荷物持たせて男は手ぶらなんて、それ以外無いだろうしな。
つーか奴隷?の服ぼろぼろだな、扱いひどかったりすんのかな?
カップルは同種族だったり異種族だったり色々だ。
異種族の子供はどうなるんだろう?
ハーフなのかな?
それともどちらかになるのか?

こうして街を見て回ると知らないことばかりなんだと実感するな。

あとはやたらと視線を感じる。

つーか人によってはガン見してくる。
視線の相手は男も女もいる。
何だろう?
12才の子供にナンパは無いだろうし、服が珍しいのか?

今はコートを着ていないからブラウスとホットパンツ、タイツにブーツなんだが・・・・何がおかしいのかわからん。

服を扱う店も探さないと不味いな。

そうして街ぶらぶらしてると目的の場所を見つけた。
食材店だ!

中に入り目的の物を探す、砂糖はあったが、米は無い。
店員さんに聞いてみる。

「すいません、米ってありますか?」
「米は置いて無いな、あれはかなり遠方で採れるから中々来ないし、かなり高いぞ」
「収穫量が少ないんですか?」
「いや収穫量はかなりある、高いのは主に輸送費だ、距離があるし護衛も必要だからな」
「?魔物からの襲撃の為ですか?」
「魔物もあるが、盗賊や山賊もいるからな」

盗賊とかいるのか、治安も悪いのか。
ついでだし聞いてみよう。

「輸送には、いっぱい入って時間の止まる鞄とかは使わないんですか?」
「マジックバックの事か?あんな高級品は使えないぞ、中々手に入らないし、そもそも時間が止まる機能が付いていれば、世には出ないな」
「そんなに貴重品なんですか、色々お話聞かせて頂いてありがとうございました」

そう言うと俺は砂糖を購入して店を後にした。

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

ヤバイな、ジルさんの技術力は規格外っぽい。
ギルド職員の前でポーチを使ったのもヤバいかも(汗)
劣化してないのは、昨日から今日にかけて狩った事にした方がいいな。

後は本屋を探す。
この世界の常識を知るためだ。
つーか人に聞くのはまずそうだしな。

そして本屋は見つけたが、欲しい本が多い。
もらったお金で買えるが、欲しいもの全ては無理なので、ギルドでお金をもらってからにしよう。

そろそろ夕方だしね。

ーーーーーーーーーーーーーーーー

フードを被ってギルドに入る。

「お金の受け取りに来ました」

買い取りの受付で引換券を渡す。

「個室に来て頂いてもよろしいですか?」

突然敬語で話されてビックリした。

「余り時間が無いので・・・、すぐに終わるのであれば良いですよ」
「そこまで時間はかかりません、金額が大きいのと、ほんの少しだけお話を聞きたいだけです」

本屋の閉店まで2時間程あるので間に合うかな。

「わかりました、行きます」

連れて行かれた部屋は少し広めの個室だった。
家具等は実務的で、丈夫そうなものばかりだ。
そしてゴツいオッサンが机に座っている、椅子があるのに机に?

「座ってくれ」

オッサンの前のテーブルを挟んだ向かいのソファーに座る。
このオッサン良く見ると身体中に傷痕がある。
眼光も鋭いし強いのかも。
見た目は2m近い、髪も髭も灰色だ。
そしてムキムキだ。

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

つーかオッサン喋らない!
何で呼んどいて喋んないの?
何なの?
しょうがないから俺から話そう。

「ご用件はなんでしょうか?」

「・・・・・・・」

まだ喋らんのかい!
どうしたらいいのよ!
こんなパターンの正解なんてわからんよ!
何でオッサンと見つめ会わないといかんのよ!

もういいや、開き直ろう。

「すいません、早めにお金貰って、本屋さんに行きたいんですが?」
「すまんな、色々考え事していた、ここのギルドマスター、ゴルディアスだ」

考え事ってなんだよ!

「初めまして、タツキです、よろしくお願いします」
「つかぬことを聞くが、タツキは冒険者ギルドに入りたいのか?」
「いえ、今のところまだ考えてません、そもそも僕はまだ12才です」
「あれだけの魔物を狩れれば12才でも問題ないぞ、その気は無いのか?」

あれだけの魔物?
あいつら魔道具や服に使えない魔物なんだけど。
ちなみに使えそうな素材は二人に持っていってもらった。
でも普通の人は狩れないのか?
やっぱり俺の身体、普通よりかなりヤバいのか?
あっ、12才にしては凄いってことかもな。

まぁどっちでもいいか。

「まぁ色々あって狩りましたが、常に狩りをしているわけでは無いので冒険者にはなれないです」
「・・・そうか、では仕方ないな、冒険者には通常は15才からなれる、もしその気があればまた来てくれ」
「はい、その時はお願いします、それまでも時々魔物素材を売りに来ますので、よろしくお願いします」
「わかった、受付には伝えておこう、それと買い取り金だな、この中に入っている、確認してくれ」

そう言うとサッカーボール程の革袋を渡してきた。
中を見ると金色と銀色がいっぱいだ~!
数えきれるかこんな量!!

「どんだけ入ってるんですか?」
「金貨63枚、銀貨98枚だ、ギルド員じゃないから安くなってるがな」

物価がまだ詳しくわからないが、なんとなくヤバい金額なのはわかった。
かさばるからポーチに入れとこう。

「ではこれで失礼します、また来た時はよろしくお願いします」
「あぁ、通用口まで送ろう」

そのあと本屋さんで色々買ってから、街を出て森の近くで休んだ。
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