悪役令嬢ですが、前世で乙女ゲームは未プレイなもので!

席ゆづる

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▼ロマンスは突然に

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ある日、ある時、ある国で。

私は姫と呼ばれ、着飾り、高笑いを響かせていた。

そう、その書物に出会い、前世と言われる記憶を取り戻すまでは・・・


カツカツカツカツ

貴婦人顔負けの高い音を鳴らして、五歳児は自分の個人図書館をめぐる。なかにぎっしりと詰まっているのは、歴史書と魔法学の専門書に、隠すように置かれているロマンス小説。

流行を知るために手を伸ばしたつもりがどっぷりとはまってしまい、日ごと胸をきゅんきゅんと鳴らして読みふけっている。


(今日はなにを読もうかしら?)


でろでろに甘やかされいることを差っ引いても聡明をうたわれる姫であっても、夢が夢とも知れぬ五歳児だ。いつか王子様が白馬に乗って迎えに来てくれる、そんな作品に胸キュンは抑えられない。自分は姫なのに。

そんな現状を、弟たちはあまりよく思っていないようではあるので、こっそりと蔵書は個人図書館の隅に隠しているのだ。


「あら?」


こんな本、あったかしら。

本自体は分厚く、表紙にまかれた紙には光沢がある。

ペーパーバックというにはしっかりとした紙で、学術書よりつるつるとしている。

薄いベージュを溶かしたそれを手に取ると、表紙には異国の文字が並んでいた。

今まで学んだどの国の言葉でもないのに、自分には読むことができた。


「『必携!あなたの恋を完全サポート♡攻略ブック』??」


その瞬間、頭に流れ込んできた膨大な情報量に精神的なショックをパンチされた「私」は、


「きゅう・・・」


と呟いて目を回し倒れてしまった。

流れてきたのは、前世の記憶と、見つけてしまった本に添えられたタイトルにあったゲームの意地悪キャラとして今世に自分が生れ落ちているという衝撃の情報であった。

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