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母校の運動会
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風薫る五月に、失職した。
職場に関わりたくなくて実家に転がり込んで、上げ膳据え膳されていたら、近所に家を構えた姉に甘えすぎだと叱られ、甥っ子の保護者として運動会を観にいくことになった。
自分も通ってた小学校。
だけど、大きくなった木のせいか、入れ替えたというグラウンドの土の色のせいか、違う学校に見える。
鮮やかな陽射しの下、あちらこちらとグループを作ったママたちと離れて、私はなんとなく馴染みのある赤茶けた鉄棒の横に立った。
今時の運動会は、午前で終わってしまうらしい。手ぶらで身軽な親たちは、自分の子の出場する競技だけ前に出てきてカメラを構えている。
地区ごとに応援とかも、もうないみたいだ。
かくいう私も、甥っ子の他の子は把握していないから、一年生の競技以外はぼんやりと遠目に見ていた。
はずだけど。
ついついじわじわと前に出て、6年生のリレーでは、いつの間にか身を乗り出して応援してた。いやもう白熱。
ゴールの瞬間なんて万歳で拍手して。流石にはっと取り繕う。ついね、つい。走るって気持ちいいし楽しいよねって、思い出しちゃって。
姉の代理なのだ。あまり目立ちたくないから、もう大人しくしておこうと、汗を拭きながら思ったんだけど。
最後の種目、全校選抜リレー。黄色い声援可愛い声援、野太い歓声までを一身に受ける走者がいて、顔を上げた。
アンカーの一つ手前。若い男の先生が走ってた。すごく綺麗なフォームで、対戦チームの先生たちをぶっちぎる。
カッ、コいい。
私は応援するのも忘れて、その爽快な走りに見とれた。彼の走るスピードに合わせて鼓動がどんどん速くなるようだった。
就職してからは走ってない。
また走りたい。
観てる側にまで、強烈に意欲が湧いてくる。そんな走りだった。
その先生は、なんと甥っ子の担任の先生だったようで。運動会終了後、解散前に甥っ子のクラスの前で喋っているのを見て、驚いた。
さらに一人一人児童を引き渡すとかで、甥っ子を引き取りに行って間近で見て、さらに驚いた。
かつての同級生だ!
しかも、走るのが苦手で運動会なんか大嫌いだと、集団演技も何も、練習すら参加しなかったあの男の子、だと思う。
名前が咄嗟に出なくて、言い出せない。思い出したとして、こんな児童保護者の目の前で声なんてかけられないけど。
「確認にお名前を下さい」
「斉木、あ、いえ後藤ゆうです」
「後藤ゆうくんですね。お疲れ様です」
こちらのドギマギをよそに敬語で対応をされて、まったく気がついてないのがわかった。
ほっとしつつも、名残惜しいような。
「お、お疲れ様です」
「ちせ、ちせ、帰ろう! せんせー、さようなら!」
はしゃぐ甥っ子に手を引っ張られて、すごすごと帰る。素敵な走りでした、くらい言えば良かったかもと、うじうじしながら。
職場に関わりたくなくて実家に転がり込んで、上げ膳据え膳されていたら、近所に家を構えた姉に甘えすぎだと叱られ、甥っ子の保護者として運動会を観にいくことになった。
自分も通ってた小学校。
だけど、大きくなった木のせいか、入れ替えたというグラウンドの土の色のせいか、違う学校に見える。
鮮やかな陽射しの下、あちらこちらとグループを作ったママたちと離れて、私はなんとなく馴染みのある赤茶けた鉄棒の横に立った。
今時の運動会は、午前で終わってしまうらしい。手ぶらで身軽な親たちは、自分の子の出場する競技だけ前に出てきてカメラを構えている。
地区ごとに応援とかも、もうないみたいだ。
かくいう私も、甥っ子の他の子は把握していないから、一年生の競技以外はぼんやりと遠目に見ていた。
はずだけど。
ついついじわじわと前に出て、6年生のリレーでは、いつの間にか身を乗り出して応援してた。いやもう白熱。
ゴールの瞬間なんて万歳で拍手して。流石にはっと取り繕う。ついね、つい。走るって気持ちいいし楽しいよねって、思い出しちゃって。
姉の代理なのだ。あまり目立ちたくないから、もう大人しくしておこうと、汗を拭きながら思ったんだけど。
最後の種目、全校選抜リレー。黄色い声援可愛い声援、野太い歓声までを一身に受ける走者がいて、顔を上げた。
アンカーの一つ手前。若い男の先生が走ってた。すごく綺麗なフォームで、対戦チームの先生たちをぶっちぎる。
カッ、コいい。
私は応援するのも忘れて、その爽快な走りに見とれた。彼の走るスピードに合わせて鼓動がどんどん速くなるようだった。
就職してからは走ってない。
また走りたい。
観てる側にまで、強烈に意欲が湧いてくる。そんな走りだった。
その先生は、なんと甥っ子の担任の先生だったようで。運動会終了後、解散前に甥っ子のクラスの前で喋っているのを見て、驚いた。
さらに一人一人児童を引き渡すとかで、甥っ子を引き取りに行って間近で見て、さらに驚いた。
かつての同級生だ!
しかも、走るのが苦手で運動会なんか大嫌いだと、集団演技も何も、練習すら参加しなかったあの男の子、だと思う。
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「確認にお名前を下さい」
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ほっとしつつも、名残惜しいような。
「お、お疲れ様です」
「ちせ、ちせ、帰ろう! せんせー、さようなら!」
はしゃぐ甥っ子に手を引っ張られて、すごすごと帰る。素敵な走りでした、くらい言えば良かったかもと、うじうじしながら。
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