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苦い思い出
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うーん、でも、結果よかったんだ。声なんてかけなくて。
早く歩いたり立ち止まったりな甥っ子の手を離さないようにして、ぼんやり家路を辿る。
だって思い出せば思い出すほど。
私って、嫌な女子だった。
ルールを守ることが正義だと思ってて、従わない男子は敵だった。ほうきを持って追っかけたり。先生に言い付けたり。
だから運動会の準備の時から、しつこくあの子に誘いをかけてたんだった。
「佐山、またサボり?」
なんて上からの物言いで。そう、佐山君だ。
佐山君は断固として参加しなかった。6年で初めて一緒のクラスになったから、他の年もそうだったのかは知らない。
でも先生に言い付けても佐山自身に任せろと言われて、取り合ってもらえなかった。私は納得いかなくて、それからはいつも体当たりだった。
運動会当日だって、佐山君の手を引っ張って連れて行こうとしたのを、なんとなく覚えてる。
結局どうしたんだっけ。きっと拒否されて、そんなら勝手にすればとか酷いこと言ったのかも。
あーあ。思い出すのも辛い、ギラギラと尖った時代だわ。
その後佐山君は、転校してしまった。
心臓に病気があって、これから頑張って手術するんだって聞いた。先生が何を言ったか具体的に覚えていないけど、ぽつんとひとつ空っぽの机が、すごく印象に残ってる。
心臓の病気。だから走ると胸が気持ち悪くて。だからいつも。
知った時にはもうどうにもできなくて。
私は罪悪感に潰される前に、記憶を遠くにおしやったんだ。思い出しちゃった。
記憶を封印したとしても、それから私は、人には人の事情があるんだって、殊更気をつけるようになったつもりだけど。
きっと佐山君の中では、私はあのころの、姉貴ぶった正義かぶれ、人の痛みのわからない嫌な子のままだろう。
案外、思い出してたけど関わり合いになりたくなかったのかも。そうだよ。
私は当時からあまり背も伸びず、顔も変わっていないのだ。当時を知る人ならすぐ分かるはず。
うん、避けられたんだ。確定。
麗らかな青空に似つかわしくない、どんよりした気分になった。
門を出て少しのところで、仕事終わりに急いできたらしい姉と合流した。
姉は甥っ子に、間に合わなかったことをたくさん謝って、甥っ子は姉に自分の活躍を意気揚々と話して、お互い相手の発言を気にしてないからカオスだ。あと、似てる。
そうこうしていたら、甥っ子が忘れ物をしたと言い出した。
「私、取ってくるよ」
ちょうど、走りたい気分のところだ。走って、色々と忘れてしまおう。姉は二人目がお腹にいて、身重ってやつだし。
甥っ子はするりと私の手を放すと、ぎゅっと姉の手を握った。私は姉の目がちょっと潤むのを、見ないふりをした。
姉は産休前の引き継ぎに大忙し、運悪く義兄も海外からの客が来て仕事が外せないと、すごくすごく気にしていたから、よかったよかった。
早く歩いたり立ち止まったりな甥っ子の手を離さないようにして、ぼんやり家路を辿る。
だって思い出せば思い出すほど。
私って、嫌な女子だった。
ルールを守ることが正義だと思ってて、従わない男子は敵だった。ほうきを持って追っかけたり。先生に言い付けたり。
だから運動会の準備の時から、しつこくあの子に誘いをかけてたんだった。
「佐山、またサボり?」
なんて上からの物言いで。そう、佐山君だ。
佐山君は断固として参加しなかった。6年で初めて一緒のクラスになったから、他の年もそうだったのかは知らない。
でも先生に言い付けても佐山自身に任せろと言われて、取り合ってもらえなかった。私は納得いかなくて、それからはいつも体当たりだった。
運動会当日だって、佐山君の手を引っ張って連れて行こうとしたのを、なんとなく覚えてる。
結局どうしたんだっけ。きっと拒否されて、そんなら勝手にすればとか酷いこと言ったのかも。
あーあ。思い出すのも辛い、ギラギラと尖った時代だわ。
その後佐山君は、転校してしまった。
心臓に病気があって、これから頑張って手術するんだって聞いた。先生が何を言ったか具体的に覚えていないけど、ぽつんとひとつ空っぽの机が、すごく印象に残ってる。
心臓の病気。だから走ると胸が気持ち悪くて。だからいつも。
知った時にはもうどうにもできなくて。
私は罪悪感に潰される前に、記憶を遠くにおしやったんだ。思い出しちゃった。
記憶を封印したとしても、それから私は、人には人の事情があるんだって、殊更気をつけるようになったつもりだけど。
きっと佐山君の中では、私はあのころの、姉貴ぶった正義かぶれ、人の痛みのわからない嫌な子のままだろう。
案外、思い出してたけど関わり合いになりたくなかったのかも。そうだよ。
私は当時からあまり背も伸びず、顔も変わっていないのだ。当時を知る人ならすぐ分かるはず。
うん、避けられたんだ。確定。
麗らかな青空に似つかわしくない、どんよりした気分になった。
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「私、取ってくるよ」
ちょうど、走りたい気分のところだ。走って、色々と忘れてしまおう。姉は二人目がお腹にいて、身重ってやつだし。
甥っ子はするりと私の手を放すと、ぎゅっと姉の手を握った。私は姉の目がちょっと潤むのを、見ないふりをした。
姉は産休前の引き継ぎに大忙し、運悪く義兄も海外からの客が来て仕事が外せないと、すごくすごく気にしていたから、よかったよかった。
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