もうそう

ヤクモ

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白鳥

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 初冬の新聞配達は寒い。昼間は日が照り暖かいのだが、新聞を配達する時間帯となると上着を着なくてはいけない。
 安い時給にため息をつきながら、自分には縁のない一軒家が多く並んだ住宅地を歩く。白鳥の鳴き声が聞こえた。上を見上げると、北へ白鳥の群れが飛んでいく。それを目で追っていると、ふと、マンションの二階の窓が見えた。
 それは閑静な住宅地に似合う、レンガ調の二階建てマンションだった。
 白いカーテンがひかれたその窓を見上げていると、すうっとカーテンが開いた。何が現れるのだろうと緊張していると、黒の長い髪がぬうっと出てきた。心霊の類だろうかと身を構え、尻ポケットにしまっていたスマホに手をかける。
 窓のそばは物を置く程度のスペースがあるようで、黒髪はゆっくりとその上にのぼった。無地の白いTシャツ一枚をまとったその姿は写真集の一ページのような作られた姿に見える。
 見せつけるように、黒髪はTシャツを下からゆっくりと捲った。じらすように白い太腿が見え、遠目ではよく見えないが、人間の急所が露わになる。出っ張りが見えず、黒髪が女であるのだと確信した。
 Tシャツは黒髪が絡まりながらも、するすると上にのぼっていく。へこんだ腹が姿を現し、ついに胸部まで披露された。Tシャツが頭から抜け、さらりと黒髪がゆらめいた。
 その肢体は全体的に肉が無く、日の光を知らないと言わんばかりに白い。
 女は膝立ちをすると、影っている股の間に手を滑りこませた。ゆっくりと前後に手が動いている。半開きの口からは甘い吐息が漏れているように見える。
 ふと、女と目があった気がした。黒く大きな瞳が獲物を捕らえた視線を向けている。
 跳ねるように、その場から逃げた。
 あとから聞いた話だが、あのあたりに一際目立つ美人がいるらしい。毎晩違う男と歩いている姿を目撃されている彼女は、目が合った人間を誘っているそうだ。

「私を見て」
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