夢幻廻廊の国

赤麦雅屋

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無碍と流浪

無碍の断篇

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       神さびる道 神木の庭
       藍色の風 和平の話柄
       青色の雲 流れ往く頃
       道理を歩む 巫女は憂うる
 
       休戦の宣 焦燥に似る
       暫しの和睦 偽証に紛う
       明白とする 論説もなく
       明眸に見る 国運は揺る
 
       王権神授は 常しえの任
       理非を弁ずる 場裡は遺址に
       汝の敵影 此処に在らんと
       神霊は告ぐ 民心を繰る
  
       宿り木なるか 災厄の種子
       深閑に啼く 風雲の声
       藍より出でる 青は秀抜
       蒼穹貫く 吠瑠璃の弓
 
       弓杖と進む 放浪の民
       女に語るは 休符の真義
       臆するなかれ 芽を摘み取らん
       弁舌の勇 独行に笑む
 
       延命策は 絞首と知らず
       己が掌中 納受と偽する
       ああ愚かしき まやかしの穏
       天は放縦 嫌忌と解せよ
 
       捕縛の命を すり抜けるまま
       瑠璃色に吠え 放たれし火矢
       執行の時 天帝に射る
       神火は導く 終戦の嬉戯
 
       空嘯くか 生は等しき
       神木は灯る 滅却の火焔
       空理空論 遺される巫女
       灯明が娶る 傲慢の意義
 
       全知は酷に 偽悪は定則
       望蜀の悼 紡ぐは虚飾
       焼亡の理に 女神は嗤う
       勝利を騙る 偽善の啓蒙
 
       勝利の女神と 偽書の伝誦
       豪語は虚ろ 敬うなかれ
 

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