(仮)婚約中!!

佐野三葉

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仮婚約の儀 その3

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「これが、6代前の総右衛門おじいさんの経験したことなんだ。」

聡兄さんの話は、まるでお伽話のような内容だった。ご先祖さんに、そんなに家族を大事にしてくれた人がいると思うと、楓は誇らしかった。匠さんはどうだろうか。この話を信じているのだろうか。楓は、気になって右側に座っている匠さんの顔を見た。うーん、駄目だ。表情が読めない。疑ってはいないようだけど、気持ちまでは分からない。

「おーい、2人とも大丈夫かー。魂が口から出てるぞー。」
新にいさんの呑気なツッコミが入った。

「邪魔しちゃだめだよ。新君、話のスケールが大きいんだから、そっとしてあげないと。」
奈央子さんのフォローがありがたい。

「そりゃ悪かった。でも、できれば今日、仮婚約の儀をしないと、俺、次、匠と休みが合うの1か月後になるんだよ。」

ああ、そうか。今日は結婚の許可をもらうために、この部屋にいるんだった。あんまりにも予想外の話が多すぎて、忘れかけていた。

「新。」

父が首を振って、新兄さんを止めた。新兄さんは、肩をすくめた。
「父さんが急がないって言うのなら、それに従うよ。」

聡兄さんは、そのやり取りを見て言った。
「2人とも何か質問はあるかい?納得して仮婚約の儀を始めるのが、大事だからね。」

「ナツさんたちの仮婚約の儀について、話が簡単にまとめられたのには何か意味があるんですか?」


「するどいね。匠君。最初から全部知ると効果が薄れるらしいんだ。だから、必要なことは、徐々に明かされることになっているんだ。」

「なるほど。頭で、取り組むだけでは、仮婚約の儀は、合格できないってことなんですね。」

「そうだと思う。他に質問はないかい?」

「大丈夫だと思います。」

「父さん、説明が終わったので、続きをお願いします。」


父は威厳を持って口を開いた。
「匠君、楓、瀬戸家の当主として質問する。仮婚約の儀の試験を受ける覚悟はあるかい?」

楓は、頷いた。匠さんと結婚したい気持ちは本物だし、みんなが通って来た道を経験したい気持ちもある。

「匠君、どうかね?嫌ならまだ引き返すことができるが、君はどうしたい?」

「僕も、受けます。」
きりっとした表情で匠さんは答えた。
良かった。匠さんも私と同じ気持ちでいてくれて。
楓は、匠さんの膝の上の手に、自分の手をそっと重ねた。匠さんは、楓の気持ちに応えるように、恋人つなぎをしてくれた。

「そうか。」
父は、ほっとしたように表情を緩めた。

「では、仮婚約の儀を始めよう。」

それを合図に待っていたかのように、両親と兄さんたちのそれぞれ取り出したブレスレットが、輝いた。







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