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仮婚約の儀 その4
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輝いたブレスレットは、1人1人色が違っていた。
父、周作のブレスレットからは、深い森を思わせる深碧(しんぺき)と銀色のグラデーション。
母、文乃のは、淡紅藤(うすべにふじ)と淡い桃色のグラデーション。
聡兄さんのからは、薄い青の秘色(ひそく)と明るい緑の常盤色(ときわいろ)のグラデーション。
朱音さんのからは、オレンジに少し桃色が混ざったような鉛丹色(えんたんいろ)と優しい黄色の金糸雀色(かなりあいろ)のグラデーション。
新兄さんのからは、爽やかな空の色を思わせる白藍(しらあい)と金色のグラデーション。
奈央子さんのからは、桃色に少しオレンジの混じったかわいい朱華(はねず)と若草色のグラデーション。
ブレスレットの光は、持ち主を護るかのように、体の周りを螺旋を描きながら動いていく。
「綺麗。」
楓は、見とれてしまった。
「皆さんの着ている着物と似た色だね。」
匠さんがこそっと楓に囁いた。そう言われればそうだな。それぞれの個性に合っていて、とても綺麗で、かっこいい。これから何が始まるんだろう。
父は立ち上がると押入れを開けた。座布団くらいしかそこには入ってないのだけれど、探し物なのだろうか?
それに続いて母も兄さんたちも押入れに入っていく。ここの押入れこんなに広かったっけ?楓は慌ててつづいた。匠さんは、全体を見渡したいのか少し距離を取って1番後ろにつづいた。部屋の広さは、居間と同じくらい広くなっていた。これも縁結び妖精の作った仕掛けなのかな。そう思うと楓はわくわくした。
押入れの壁に父が、ブレスレットを当てていった。
「我、仮婚約の儀を取り仕切る者として、第1の鍵を開ける。」
大きい青銅の丸い金庫の扉のようなものが浮かび上がり、扉が60度くらい右に回った。
続いて母、聡兄さん朱音さん、新兄さん、奈央子さんの順番で、父と同じ動作でそれぞれの言葉を紡いだ。
「我、思いあう二人が結ばれることを願って、第2の鍵を開ける。」
「我、我らに助けが与えられたようにこの二人にも助けが与えられることを願って、第3の鍵を開ける」
「我、儀式を通して2人の絆が強くなることを願って、第4の鍵を開ける。」
「我、試験の間、2人が健康に恵まれるように、第5の鍵を開ける。」
「我、困難なことも良い思い出となるように、第6の鍵を開ける。」
奈央子さんの言葉で、扉が1周回り、壁が消えて、空間が現れた。みんなの光で少し中が見えた。トンネルのようだ。かなり長いみたい。何があるのだろう?
父が、無言で中に入っていく。
母が、匠さんと楓のことを振り返り「危ないことはないから、心配せずにお父さんについていきなさい。」と優しく促した。
心細くて兄さんたちの方を見ると、
「大丈夫。僕たちはここで待っているから行ってごらん。」
「私たちも入ったことあるの。とても素敵なところよ。後で感想を聞かせてね。」
「アドバイスはなー。直感で選ぶことだ。」
「しんぱいしなくても、すぐ見つかるよ。」
中に入ると、父が待っていてくれた。父のブレスレットの明かりを頼りに、先に進んだ。近くしか見えないが、道は悪くなく、ほっとした。すっと、匠さんから手をつないでくれた。楓は心強いなと思った。匠さんも、色んなことが起きて気持ちが追い付かないに違いないのに、楓のことを気にかけてくれるのが嬉しかった。
10分くらい進むと、辺りが明るくなった。
「すごい・・・。」
匠さんが感嘆の声を上げた。
そこには、満開の藤棚があった。大きさは、学校の運動場くらいはあるだろうか。甘い香りが、鼻をくすぐった。
「この藤棚の花の中から、1房選んで取りなさい。触れれば、すぐに取れるから優しくそっと。落とさないように気をつけなさい。」
匠と楓は、藤棚をぐるりと見て回った。満開の藤棚の下を匠さんと歩くのは、デートのようで嬉しい。
それにしてもいつまでも眺めていたくなる景色だ。
見ているうちに、どれを選べがいいのか分かった気がした。
「楓ちゃん、見つかった?」
「うん、たぶんあそこの花だと思う。」
楓は、中央の藤棚を指さした。
「そっか。僕のは、反対側のあっちの花だと思うんだ。」
匠さんは、右奥の藤棚を指さした。
それぞれに自分の花を取りに行くことにした。
楓が花のそばまで行き、手を添えると、花は楓の手の中にふわりと落ちてきた。
手で持っていると、とても懐かしい気持ちがしてくる。
花が変化を始めた。何か固いものに変わっていくのが分かった。落とさないように神経を集中させる。
息を潜めて見守っているうちに、藤の花は、透明なクリスタルに形を変えた。全体的に球体をしているが、光をきらきらと反射するカットになっていて、心が奪われる。数えてみるとクリスタルは6個連なっていた。
「成功したようだな。」
父が、楓の頭に手を置き、ぽんぽんと優しくなでた。
匠さんの方はどうだろう。振り返ると、匠さんの手の中にも、6個のクリスタルの房があった。よかった、匠さんも成功だ。
「それじゃあ、戻るとしよう。」
父に促され、2人は藤棚を後にした。
-----------------------------------------------------------------------------
色については、「伝統色のいろは」のホームページを参考にさせていただきました。
名前と色の説明が載ってだけでなく、色見本も紹介されていて、見てどんな色か分かる素敵なページです。
6人のブレスレットから放たれた光に興味が湧いた方は、検索されてみてください。
詳しくは
↓↓↓↓
伝統色のいろは 管理人 koka さん
https://irocore.com/
父、周作のブレスレットからは、深い森を思わせる深碧(しんぺき)と銀色のグラデーション。
母、文乃のは、淡紅藤(うすべにふじ)と淡い桃色のグラデーション。
聡兄さんのからは、薄い青の秘色(ひそく)と明るい緑の常盤色(ときわいろ)のグラデーション。
朱音さんのからは、オレンジに少し桃色が混ざったような鉛丹色(えんたんいろ)と優しい黄色の金糸雀色(かなりあいろ)のグラデーション。
新兄さんのからは、爽やかな空の色を思わせる白藍(しらあい)と金色のグラデーション。
奈央子さんのからは、桃色に少しオレンジの混じったかわいい朱華(はねず)と若草色のグラデーション。
ブレスレットの光は、持ち主を護るかのように、体の周りを螺旋を描きながら動いていく。
「綺麗。」
楓は、見とれてしまった。
「皆さんの着ている着物と似た色だね。」
匠さんがこそっと楓に囁いた。そう言われればそうだな。それぞれの個性に合っていて、とても綺麗で、かっこいい。これから何が始まるんだろう。
父は立ち上がると押入れを開けた。座布団くらいしかそこには入ってないのだけれど、探し物なのだろうか?
それに続いて母も兄さんたちも押入れに入っていく。ここの押入れこんなに広かったっけ?楓は慌ててつづいた。匠さんは、全体を見渡したいのか少し距離を取って1番後ろにつづいた。部屋の広さは、居間と同じくらい広くなっていた。これも縁結び妖精の作った仕掛けなのかな。そう思うと楓はわくわくした。
押入れの壁に父が、ブレスレットを当てていった。
「我、仮婚約の儀を取り仕切る者として、第1の鍵を開ける。」
大きい青銅の丸い金庫の扉のようなものが浮かび上がり、扉が60度くらい右に回った。
続いて母、聡兄さん朱音さん、新兄さん、奈央子さんの順番で、父と同じ動作でそれぞれの言葉を紡いだ。
「我、思いあう二人が結ばれることを願って、第2の鍵を開ける。」
「我、我らに助けが与えられたようにこの二人にも助けが与えられることを願って、第3の鍵を開ける」
「我、儀式を通して2人の絆が強くなることを願って、第4の鍵を開ける。」
「我、試験の間、2人が健康に恵まれるように、第5の鍵を開ける。」
「我、困難なことも良い思い出となるように、第6の鍵を開ける。」
奈央子さんの言葉で、扉が1周回り、壁が消えて、空間が現れた。みんなの光で少し中が見えた。トンネルのようだ。かなり長いみたい。何があるのだろう?
父が、無言で中に入っていく。
母が、匠さんと楓のことを振り返り「危ないことはないから、心配せずにお父さんについていきなさい。」と優しく促した。
心細くて兄さんたちの方を見ると、
「大丈夫。僕たちはここで待っているから行ってごらん。」
「私たちも入ったことあるの。とても素敵なところよ。後で感想を聞かせてね。」
「アドバイスはなー。直感で選ぶことだ。」
「しんぱいしなくても、すぐ見つかるよ。」
中に入ると、父が待っていてくれた。父のブレスレットの明かりを頼りに、先に進んだ。近くしか見えないが、道は悪くなく、ほっとした。すっと、匠さんから手をつないでくれた。楓は心強いなと思った。匠さんも、色んなことが起きて気持ちが追い付かないに違いないのに、楓のことを気にかけてくれるのが嬉しかった。
10分くらい進むと、辺りが明るくなった。
「すごい・・・。」
匠さんが感嘆の声を上げた。
そこには、満開の藤棚があった。大きさは、学校の運動場くらいはあるだろうか。甘い香りが、鼻をくすぐった。
「この藤棚の花の中から、1房選んで取りなさい。触れれば、すぐに取れるから優しくそっと。落とさないように気をつけなさい。」
匠と楓は、藤棚をぐるりと見て回った。満開の藤棚の下を匠さんと歩くのは、デートのようで嬉しい。
それにしてもいつまでも眺めていたくなる景色だ。
見ているうちに、どれを選べがいいのか分かった気がした。
「楓ちゃん、見つかった?」
「うん、たぶんあそこの花だと思う。」
楓は、中央の藤棚を指さした。
「そっか。僕のは、反対側のあっちの花だと思うんだ。」
匠さんは、右奥の藤棚を指さした。
それぞれに自分の花を取りに行くことにした。
楓が花のそばまで行き、手を添えると、花は楓の手の中にふわりと落ちてきた。
手で持っていると、とても懐かしい気持ちがしてくる。
花が変化を始めた。何か固いものに変わっていくのが分かった。落とさないように神経を集中させる。
息を潜めて見守っているうちに、藤の花は、透明なクリスタルに形を変えた。全体的に球体をしているが、光をきらきらと反射するカットになっていて、心が奪われる。数えてみるとクリスタルは6個連なっていた。
「成功したようだな。」
父が、楓の頭に手を置き、ぽんぽんと優しくなでた。
匠さんの方はどうだろう。振り返ると、匠さんの手の中にも、6個のクリスタルの房があった。よかった、匠さんも成功だ。
「それじゃあ、戻るとしよう。」
父に促され、2人は藤棚を後にした。
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色については、「伝統色のいろは」のホームページを参考にさせていただきました。
名前と色の説明が載ってだけでなく、色見本も紹介されていて、見てどんな色か分かる素敵なページです。
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伝統色のいろは 管理人 koka さん
https://irocore.com/
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