9 / 29
仮婚約の儀 その5 ~一休み~
しおりを挟む
仮婚約の儀に必要なクリスタルを持って、無事にみんなの待っている我が家の和室に戻ることができた。
「お帰り、楓、匠君、どうだった?」
和室で休憩しながら、待っていたのだろう。手には、羊羹(ようかん)を持っている。聡兄さんは、和菓子が好きだ。あれが、洋菓子だったら、食べるのをやめて、出迎えてくれたことだろう。
楓は、感想を話そうとしてみた。
「えっと・・・。」
藤棚のことやもらってきたクリスタルことで胸がいっぱいで、うまく言葉が出てこない。それを見て、匠さんが答えてくれた。
「最初に、長いトンネルがありました。土ではなくて、岩でできているようでした。しばらく歩くと、目の前が明るくなってきて、見事な藤棚がありました。花は満開で素晴らしかったです。藤棚と言えば、蜂が多くて困るものですけど、中の藤棚の所にはいませんでした。皆さんが、入った時も同じでしたか?」
「うん、同じだね。昆虫のことまで見ているところは、匠君すごいね。」
「2月でも満開か。やっぱあそこは季節は関係ねえんだな。」
「そうみたいだね。僕らの時が、7月で、新たちは、10月だったけど、毎回満開だったからね。」
「藤棚の話を、今日から楓ちゃんとできると思うと嬉しいわあ。もう話したくてうずうずしていたのよ。
ね。朱音さん?」
「そうねえ。奈央子ちゃんが、楓ちゃんに秘密を話す誘惑と葛藤している姿を見られなくなるのは残念だけど、共通の秘密について話せるのは大きいよね。」
「あ~それ内緒だって言ったじゃないですかあ。」
奈央子さんは、ちょっとすねた口調で抗議した。
「奈央子ちゃんの話したいのを我慢している百面相、こっそり携帯で撮ってたのよね。今度、楓ちゃんに見せてあげるわね。」
朱音さんが、にっこり微笑んで言った。
「そんなあ。いつの間に。勘弁してくださーい(涙目)」
「クスクスクス。冗談よ。本当に、奈央子ちゃんはかわいいわあ。」
朱音さんが楽しそうに言った。
「本当に撮ってないんですね!楓ちゃん、もし撮ってあっても一生のお願いだから見ないで。・・・ね!」
楓は、こくこくと頷いた。朱音さんは、優しくていい義姉だけど、奈央子さんをいじって遊ぶのが好きだ。2人の気の置けないやりとりは、見ていていつも楽しいし、楓が寂しくないように会話に巻き込んでくれるのも嬉しい。
兄さんたちはというと、「いつものが始まったな」という感じで、傍観している。
「ふふふ。楽しそうね。」
母が和室に入ってきた。お盆に載っている湯飲み茶わんから、湯気が立っている。
「お帰りなさい。緊張して疲れたでしょ。さあ、3人とも座って休んで。はい黒豆茶。」
運動をしたわけじゃないけど、確かに疲れを感じた。母の淹れてくれた黒豆茶が、ほんのり甘くてほっとする。
匠さんも、美味しそうに飲んでいる。
2人が黒豆茶を飲み終えるころ、新兄さんが言った。
「父さん、今日は儀式の最後までするの?それとも後日にする?」
「ああ。睦月にさっき相談したんだが、今日中に最後までした方が、いいだろうということだった。」
「え!睦月さんがあそこにいたの?」
楓は思わず大きい声を出してしまった。
「ああ。2人が、藤の花を選ぶのを楽しそうに眺めてたよ。」
父は、右上に目線をやり、思い出しながら答えた。
「気がつかなかった。」「気がつきませんでした。」
がっかりした感じが、2人の言葉には滲み(にじみ)出ている。
「睦月は気配を消すのが得意だ。2人が藤棚に集中している時だったから、気がつかなかったんだろう。」
「まあ。その内会えるから元気出せ。」
新兄さんが、慰めてくれた。
「うん。」
(今回は残念だったけど、いつか会えるのなら、よかった。次回こそは、ぜひ睦月さんに会いたい。)
「それで、どうして後日より今日の方がいいと睦月さんは言ったんですか?」
聡兄さんが、父に説明を求めた。
「・・・。勘だそうだ。」
父は、困った表情をして答えた。
「勘。あの妖精(ひと)らしいですね。ものすごい確率で、勘が当たるから頼りになりますが。」
説明にはなってないが、今までの綺麗で不思議な光景を思い出すと、「縁結び妖精の睦月さんが言うのならそうなんだろう」と感じさせる妙な説得力がある。
「じゃあ、楓、匠、休憩は終わりだ。ラストまで儀式するぞ!そして夕飯で、今日の打ち上げだ!」
新兄さんが、運動部のキャプテンのような感じで、場を盛り上げた。
「うん!!」 「はい!!」
2人して、元気のいい返事をした。
「こういう、もう1回やる気を出したい時は、新君がムードメーカーになってくれるから、助かるわあ。」
朱音さんが、しみじみと言った。
「ふふふ。そうなんですよー。新君かっこいいですよね。惚れますよね。あ!新君は私のだからあげませんよー。」
奈央子さんが、のろけてる。
「何だか家族みんなで、取り組むのって楽しいなあ。」一休みして、気持ちが落ち着いたせいか、楓は、そんなことを考えた。
「お帰り、楓、匠君、どうだった?」
和室で休憩しながら、待っていたのだろう。手には、羊羹(ようかん)を持っている。聡兄さんは、和菓子が好きだ。あれが、洋菓子だったら、食べるのをやめて、出迎えてくれたことだろう。
楓は、感想を話そうとしてみた。
「えっと・・・。」
藤棚のことやもらってきたクリスタルことで胸がいっぱいで、うまく言葉が出てこない。それを見て、匠さんが答えてくれた。
「最初に、長いトンネルがありました。土ではなくて、岩でできているようでした。しばらく歩くと、目の前が明るくなってきて、見事な藤棚がありました。花は満開で素晴らしかったです。藤棚と言えば、蜂が多くて困るものですけど、中の藤棚の所にはいませんでした。皆さんが、入った時も同じでしたか?」
「うん、同じだね。昆虫のことまで見ているところは、匠君すごいね。」
「2月でも満開か。やっぱあそこは季節は関係ねえんだな。」
「そうみたいだね。僕らの時が、7月で、新たちは、10月だったけど、毎回満開だったからね。」
「藤棚の話を、今日から楓ちゃんとできると思うと嬉しいわあ。もう話したくてうずうずしていたのよ。
ね。朱音さん?」
「そうねえ。奈央子ちゃんが、楓ちゃんに秘密を話す誘惑と葛藤している姿を見られなくなるのは残念だけど、共通の秘密について話せるのは大きいよね。」
「あ~それ内緒だって言ったじゃないですかあ。」
奈央子さんは、ちょっとすねた口調で抗議した。
「奈央子ちゃんの話したいのを我慢している百面相、こっそり携帯で撮ってたのよね。今度、楓ちゃんに見せてあげるわね。」
朱音さんが、にっこり微笑んで言った。
「そんなあ。いつの間に。勘弁してくださーい(涙目)」
「クスクスクス。冗談よ。本当に、奈央子ちゃんはかわいいわあ。」
朱音さんが楽しそうに言った。
「本当に撮ってないんですね!楓ちゃん、もし撮ってあっても一生のお願いだから見ないで。・・・ね!」
楓は、こくこくと頷いた。朱音さんは、優しくていい義姉だけど、奈央子さんをいじって遊ぶのが好きだ。2人の気の置けないやりとりは、見ていていつも楽しいし、楓が寂しくないように会話に巻き込んでくれるのも嬉しい。
兄さんたちはというと、「いつものが始まったな」という感じで、傍観している。
「ふふふ。楽しそうね。」
母が和室に入ってきた。お盆に載っている湯飲み茶わんから、湯気が立っている。
「お帰りなさい。緊張して疲れたでしょ。さあ、3人とも座って休んで。はい黒豆茶。」
運動をしたわけじゃないけど、確かに疲れを感じた。母の淹れてくれた黒豆茶が、ほんのり甘くてほっとする。
匠さんも、美味しそうに飲んでいる。
2人が黒豆茶を飲み終えるころ、新兄さんが言った。
「父さん、今日は儀式の最後までするの?それとも後日にする?」
「ああ。睦月にさっき相談したんだが、今日中に最後までした方が、いいだろうということだった。」
「え!睦月さんがあそこにいたの?」
楓は思わず大きい声を出してしまった。
「ああ。2人が、藤の花を選ぶのを楽しそうに眺めてたよ。」
父は、右上に目線をやり、思い出しながら答えた。
「気がつかなかった。」「気がつきませんでした。」
がっかりした感じが、2人の言葉には滲み(にじみ)出ている。
「睦月は気配を消すのが得意だ。2人が藤棚に集中している時だったから、気がつかなかったんだろう。」
「まあ。その内会えるから元気出せ。」
新兄さんが、慰めてくれた。
「うん。」
(今回は残念だったけど、いつか会えるのなら、よかった。次回こそは、ぜひ睦月さんに会いたい。)
「それで、どうして後日より今日の方がいいと睦月さんは言ったんですか?」
聡兄さんが、父に説明を求めた。
「・・・。勘だそうだ。」
父は、困った表情をして答えた。
「勘。あの妖精(ひと)らしいですね。ものすごい確率で、勘が当たるから頼りになりますが。」
説明にはなってないが、今までの綺麗で不思議な光景を思い出すと、「縁結び妖精の睦月さんが言うのならそうなんだろう」と感じさせる妙な説得力がある。
「じゃあ、楓、匠、休憩は終わりだ。ラストまで儀式するぞ!そして夕飯で、今日の打ち上げだ!」
新兄さんが、運動部のキャプテンのような感じで、場を盛り上げた。
「うん!!」 「はい!!」
2人して、元気のいい返事をした。
「こういう、もう1回やる気を出したい時は、新君がムードメーカーになってくれるから、助かるわあ。」
朱音さんが、しみじみと言った。
「ふふふ。そうなんですよー。新君かっこいいですよね。惚れますよね。あ!新君は私のだからあげませんよー。」
奈央子さんが、のろけてる。
「何だか家族みんなで、取り組むのって楽しいなあ。」一休みして、気持ちが落ち着いたせいか、楓は、そんなことを考えた。
0
あなたにおすすめの小説
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。
その事実だけを抱え、離縁を突きつけ、家を出た。
そこで待っていたのは、最悪の出来事――
けれど同時に、人生の扉がひらく瞬間でもあった。
夫は愛人と共に好きに生きればいい。
今さら「本当に愛していたのは君だ」と言われても、裏切ったあなたを許すことはできない。
でも、子供たちの心だけは、必ず取り戻す。
妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。
過去を悔いながらも、愛を手に入れることを決めた彼女が辿り着いた先には――
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
君への気持ちが冷めたと夫から言われたので家出をしたら、知らぬ間に懸賞金が掛けられていました
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【え? これってまさか私のこと?】
ソフィア・ヴァイロンは貧しい子爵家の令嬢だった。町の小さな雑貨店で働き、常連の男性客に密かに恋心を抱いていたある日のこと。父親から借金返済の為に結婚話を持ち掛けられる。断ることが出来ず、諦めて見合いをしようとした矢先、別の相手から結婚を申し込まれた。その相手こそ彼女が密かに思いを寄せていた青年だった。そこでソフィアは喜んで受け入れたのだが、望んでいたような結婚生活では無かった。そんなある日、「君への気持ちが冷めたと」と夫から告げられる。ショックを受けたソフィアは家出をして行方をくらませたのだが、夫から懸賞金を掛けられていたことを知る――
※他サイトでも投稿中
【完結】公爵家の秘密の愛娘
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝グラント公爵家は王家に仕える名門の家柄。
過去の事情により、今だに独身の当主ダリウス。国王から懇願され、ようやく伯爵未亡人との婚姻を決める。
そんな時、グラント公爵ダリウスの元へと現れたのは1人の少女アンジェラ。
「パパ……私はあなたの娘です」
名乗り出るアンジェラ。
◇
アンジェラが現れたことにより、グラント公爵家は一変。伯爵未亡人との再婚もあやふや。しかも、アンジェラが道中に出逢った人物はまさかの王族。
この時からアンジェラの世界も一変。華やかに色付き出す。
初めはよそよそしいグラント公爵ダリウス(パパ)だが、次第に娘アンジェラを気に掛けるように……。
母娘2代のハッピーライフ&淑女達と貴公子達の恋模様💞
🔶設定などは独自の世界観でご都合主義となります。ハピエン💞
🔶稚拙ながらもHOTランキング(最高20位)に入れて頂き(2025.5.9)、ありがとうございます🙇♀️
『紅茶の香りが消えた午後に』
柴田はつみ
恋愛
穏やかで控えめな公爵令嬢リディアの唯一の楽しみは、幼なじみの公爵アーヴィンと過ごす午後の茶会だった。
けれど、近隣に越してきた伯爵令嬢ミレーユが明るく距離を詰めてくるたび、二人の時間は少しずつ失われていく。
誤解と沈黙、そして抑えた想いの裏で、すれ違う恋の行方は——。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
離婚する両親のどちらと暮らすか……娘が選んだのは夫の方だった。
しゃーりん
恋愛
夫の愛人に子供ができた。夫は私と離婚して愛人と再婚したいという。
私たち夫婦には娘が1人。
愛人との再婚に娘は邪魔になるかもしれないと思い、自分と一緒に連れ出すつもりだった。
だけど娘が選んだのは夫の方だった。
失意のまま実家に戻り、再婚した私が数年後に耳にしたのは、娘が冷遇されているのではないかという話。
事実ならば娘を引き取りたいと思い、元夫の家を訪れた。
再び娘が選ぶのは父か母か?というお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる