(仮)婚約中!!

佐野三葉

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閑話~睦月との会話 ~

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仮婚約の儀 その4の藤棚の場面での睦月と周作の会話

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「よお。順調か?」

睦月がひょっこりと姿を現した。妖精だからなのか、睦月は、周作が初めて会った時から同じ若さだ。けれど、彼の放つ空気からは、確かに長い時を生きてきた者の持つ余裕が感じられる。


「睦月か。ああ、今までの所、問題はない。」

楓の父ー周作は驚くこともなく、返事をした。藤棚に着いた時に、周作は「そろそろ睦月と話せるだろう」そんな予感がしていたのだ。 

睦月は匠と楓をじっと観察すると頷いて、周作の方に顔を向けた。
「上出来だ。あの2人には、仮婚約の儀を受ける覚悟がある。よく見極めたな。」

「そう言ってもらえるとほっとするよ。」
大事な娘だ。好きな相手と幸せになってもらいたい気持ちと仮婚約の儀の試験は、受けてもらいたい気持ちの間で、周作も葛藤していた。
当主としての荷が重く感じられる今、頼りにできる相手がいてくれる。ありがたいものだ。肩の荷が軽くなるようにさえ感じる。周作は、瞼を閉じて、ひと呼吸ついた。

「それで、睦月にはどう見える。あの2人の絆は。」
匠君がしっかりしているのに比べて、楓はまだまだ子供っぽいところがある。足を引っ張らないといいが・・・。

「相性はいい方だな。若々しい色の縁で結びついているよ。まだ緩いし細いけどな。仮婚約の儀を合格するためには、そうだな、楓のことは、鍛えまくれば大丈夫だ。瀬戸家の家系だけあって、楓も打たれ強い。どう成長するか楽しみだ。匠の方は、心配だな。穏やかで決断力もあって一見、楓より、バランスがいいように見えるが、かなり脆い(もろい)ところがある。最後の課題が合格できるか五分五分といったところだ。」
睦月は、淡々と分析した。


周作は、相性がいいと聞いてほっとしたのも、つかの間、最後の課題を合格できる可能性が、五分五分と聞いて胸の奥が重くなるのを感じた。可能性が、聡や新の時より低い。

「やはり脆いところへの課題が出るわけだな」
周作は、分かってはいながらも、思わず質問してしまった。

「毎回そうだしな。」
睦月は、さらっと答えた。

「分かってはいるんだが・・・。」
藤棚の方に目をやる。匠君と楓は、それぞれに分かれて自分の花を取りに動いたようだ。
2人は、最終課題までに成長が間に合うだろうかー。周作の瞳に憂いが浮かんだ。


「聡や新の時よりも、周作の中で、楓が試験で辛い思いをすることについて、複雑な思いがあるようだな。」
睦月が、周作の心を見抜いた。

「すまない。息子を鍛えるには、抵抗がなかったのだが、娘だと護ってやりたいと思ってしまってな・・・。」
周作は、苦笑いした。

「気にするな。総右衛門の時から、父親はみんな似たりよったりだったぞ。お前も立派な父親になったというわけだ。めでたいことじゃないか。」
睦月は、ポンと周作の肩に手を置いて言った。

「ああ。娘がいなければ、分からなかっただろうな。こういう気持ちは。」
独身の頃は、自分が、娘のことでこんなに心配するなんて想像もできなかった。

「まあ、お前はまだいい方だよ。匠のことを歓迎しているんだから。 総一郎の時は、大変だったぞ。「俺の目の黒い内は、娘との結婚は許さん!」って言ってな。周りが説得しようにも聞く耳を持たなくてな。」

「その時はどうしたんだ?」
家系が続いているから、仮婚約の儀は、無事に済ませたということなんだが・・・。

「仕方ないから、結婚した長男の友一(ともいち)にお前がしている役割をしてもらったよ。ついでに、総一郎のクリスタルを2個元に戻して、1年の間に、結婚を認めることと、娘婿候補のいいところを見つけることを課題として出したよ。あんまり頑固だったから、妖精の傷の治りにも影響が出てきてたした。あの時は、総一郎が青ざめて、面白かったな。妻のサキに、「クリスタルを1年で変化させることができなかったら、私はあなたと別居します」て言われて、必死に娘婿候補のいいところを見つけるのを頑張ってたぞ。1年で、間に合ったし、それからは、娘婿とも仲がよくなって、釣り仲間になって丸く収まったから、逆に先に膿(うみ)が出てよかったな。」
睦月は、懐かしそうに話してくれた。

「そんなことがあったのか。知らなかった。」
先祖の父親としての葛藤を聞いて、「少し気持ちが分かるな」と周作は思った。2人の中を反対をしたいわけじゃないが、娘を嫁に出すというのは寂しいものなのだ。

「ああ。これは、記録に残ってないから。ここだけの話な。」
睦月がニヤリと笑って言った。

「分かった。」
周作は頷いた。睦月が、総一郎に口止めされたであろう話をしてくれたのは、周作が気負い過ぎているのに気がついてくれたからだろう。先祖の親バカぶりを聞いて、思いの外気持ちが楽になった。周作は、睦月の優しさに心の中で感謝した。


「それと、仮婚約の儀の始まりの儀は今日中に終わらせた方がいい。間を空けすぎると、匠の脆い部分が決断を鈍らせて、結婚について躊躇する(ちゅうちょする)可能性が高い。」
睦月がアドバイスをくれた。

「分かった。」

「みんなには、俺の勘だとでも言っておけ。」

「助かる。」
複雑な説明よりも、睦月の勘と言った方が説得力があるだろう。

「お!選んだな。ーーー。そうかあれを選んだのか。」
楓の手の中には、花からクリスタルに変化したものがあるようだ。周りの明るさに反射して、キラキラっと小さな光が見えた。

「クリスタルとの相性はよさそうか?」
相性がよければ、どんな試験にも立ち向かえると総右衛門の日記に書いてあった。

「ああ。2人を十分に成長させてくれるよ。あれは。」
睦月は、いつになくしんみりした口調で言った。


「俺は、そろそろ行くよ。あの2人に合う妖精を、助っ人に選ばなきゃいけないからな。助っ人妖精は頃合いを見て行かせる。」
楓と匠君にはまだ伝えてないが、課題が3つ目か4つ目あたりに、妖精が助っ人として来てくれることになっている。課題が進むに連れて難易度も上がる。妖精の助っ人にしかできないアドバイスを出してくれるので、欠かせない存在だ。

「そうか。裏でいつも見守ってくれているんだな。いろいろありがとう。今回もよろしく頼む。」
周作は、睦月に軽く頭を下げて、お礼を言った。

「気にするな。総右衛門の家系を見守るのは、俺の楽しみの1つだからな。
 困った時は、俺の名前を呼べよ。」
そういうと、睦月はすうっと姿を消した。睦月のいた場所には、桜の花びらがひらひらと舞った。

「さて、私も、もう一頑張りしよう。」
周作は、睦月が影で支えてくれるのを感じられたおかげで、心配が減ったのを実感した。任された役割をきちんと果たそう。そう心に決め、周作は宝物のようにクリスタルを持っている娘のところへ歩いて行った。

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