(仮)婚約中!!

佐野三葉

文字の大きさ
23 / 29

義理の兄弟とため口で話すことになりました その② ~匠side~

しおりを挟む
ピンポーン

玄関のチャイムが鳴る。

ガチャ

匠が中から鍵を開けると、新と聡が立っていた。どこかで待ち合わせしてから来たのだろう。

「よ!」
新は、食材の入ったビニール袋とうちに泊まる時に持ってくるスポーツバッグを持っている。

「夜遅くにごめんね。」
聡さんは、いつもより荷物が多い。あの箱は、一体・・・?

「い、いえ。大丈夫です。」

「邪魔しまーす」「お邪魔します」
2人とも僕の家には慣れているので、スリッパに履き替えスタスタ中に入って行く。

ー   昨日の練習したセリフを言うなら今だ。

荷物をリビングの隅に置く2人に匠は声をかけた。

「新、さん、仕事忙しいのにす・・・ごめんね。」

「?。いや、大丈夫だ。」

「さ、聡さん、時間作ってくれて助かる・・・ります。2人とも家の方は大丈夫な・・・んですか?家族もいるんだ・・・ですし、無理しなくていいんだよ。」

「匠君、大丈夫?」

「お前の方が疲れてるように見えるぞ。」

つっかえつっかえ話す匠に、新も聡も心配そうな顔をした。

「はは。そうなのかな。最近、残業が多かったから。」
匠は、顔を若干引きつらせながらそう答えた。

ー練習したのに・・。いや練習通りだな。うまく話せなった。

ハア。
匠は、小さくため息をついた。


「匠、ご飯食ったか?」
ビニール袋から、色んなサイズのパックを出しながら新が聞いた。

「いや、さっき帰ってきたからまだ食べてません。」
仕事が終わって21時に帰ってから、トイレ掃除をしたり、風呂掃除をしたりしていたら食べる暇がなかった。

「よかった。3人分買ってきたから一緒に食おうぜ。」
にかっとした笑顔で新が言った。

「ありがとうございます。」
ー新さんはちょっと坂野と似ている。こちらが負担に思わないでいいように話してくれるし、相手にも上手くそれが伝わるタイプだ。

夕飯に、持ってきてくれたのは、玉屋の牛丼、サラダ、豚汁だ。

「匠君は、つゆだくじゃない方がよかったよね。サラダはどれにする?生野菜サラダとごぼうサラダとポテトサラダがあるよ。」
聡さんが牛丼を匠に渡しながら聞いた。

「じゃあ、ポテトサラダで。」

「ポテトサラダ。・・・。ほい。」
新がサラダを見比べて、ポテトサラダを匠に渡した。

「兄さん、俺ごぼうサラダをもらってもいい?」

「いいよ。」

新が聡のことを【兄さん】ときちんと呼ぶのは珍しい。仕事の疲れがたまっているのだろう。

「「「いただきます。」」」



牛丼の匂いが鼻をくすぐる。

パクリ

モグモグ

1口目は、そのまま食べる。甘めの味付けが口の中いっぱいに広がる。
うん。玉ねぎの煮え具合が煮え過ぎず、固すぎず丁度いい。


フーフー

ゴクリ

豚汁、奮発してくれたんだな。よく考えれば、味噌汁の方が安い。
野菜を摂っている感じが、健康への安心感を与えてくれる。

パクリ

ポテトサラダも食べておこう。
うん。玉屋のポテトサラダの特徴は滑らかな舌触りだ。
下に敷いてあるキャベツの千切りが欲しくなる味だ。

ゴクリ


牛丼、七味唐辛子をかけよう。
ちょっと辛いくらいが僕は好きだな。

パラパラ

パクリ


新と聡も淡々と黙々と食事を平らげていく。

仕事終わりに集まって食べる時は、大抵無言で、食べ終わってから話す。

一緒にいても無理に話さなくていい相手は貴重だ。

新さんと聡さんと遊ぶのは最初はいくらか緊張した。けれど、いつの間にかこの兄弟と一緒にいるのが居心地がよくなったし、楽しいこともたくさんある。上手に僕を輪に入れるのだ。

たぶん、僕はこういう2人だからうちでご飯を食べたり、泊まっていったりするのが嫌じゃないんだろう。

パサッパサッ

「僕たちで片付けるから、先にお風呂入って。」

牛丼パックをごみ袋に入れながら聡が匠に言った。

「いや、悪いですよ。」

「その方が効率がいいんだって。さ、行った行った。」

テーブルを拭きながら、新が手の甲を匠に向けてシッシッという身振りをしたので、匠は「じゃあ、お願いします。」と言って着替えを取りに寝室に入り、その後浴室へ向かった。

「兄さん、テーブル動かすの手伝って。」

「うん。」

ガタッ

食事の片づけを終えた後、新と聡は布団を敷くスペースを作る為に、ソファーの前のテーブルを端に動かした。ソファーも動かす。布団は、匠がリビングに持ってきてくれていたので、それを2組敷いて行く。

ソファーに枕と毛布を置く。匠はここが毎回定位置で、眠る時になったら枕を持って自分の部屋で眠る。
位置的には、お互いの顔を見て話せるように、ソファーの前に布団が敷いてある。


「匠、だいぶ疲れてるみたいだな。」
布団を敷きながら新が言った。

「そうだね。僕たちに愚痴らないけれど、疲れているだろうね。今日は課題の話は、できるだけ短くしよう。」
聡は、敷布団の上に、毛布を広げながら答えた。

「了解。兄さん、何時に眠る目標?」

「0時になったらすぐに話を聞くとして・・・。1時半が目標じゃないかな。新にとっては1時の方がいいかな?お前も疲れてるだろう?」

「いや、1時半でいい。今、仕事が立て込んでて、そう小まめに話を聞けるわけじゃないから。」

「じゃあ。1時半が目標だね。」

カチャリ

「聡さん、新さん、次どうぞ。」
匠が風呂から上がってきた。

「新、お前先に入って。」

「分かった。」

2つ返事で新は風呂に向かった。

「片付けてもらってすみません。」

「いいよ。布団、干してくれた?日光のにおいがするけど。」


「いえ、それは無理だったので、この部屋が日当たりがいいので、敷いていきました。」

「ああ。なるほど。それにしてもありがとう。」

「はい。」
ー楓ちゃんも新さんも聡さんもこういう風に、感謝の言葉を口にさらっとできるのがよく似ている。

布団は、聡さんと新君がうちにたまに泊まりに来ていると聞いた、楓ちゃんのお母さんが提供してくれた。
「お世話になっているから」と僕には、枕をくれた。枕の好みを事前に聞きだされていたので、貰った時は「クリスマスのプレゼントみたいだな」と思い、嬉しかったのを覚えている。

「兄さん、次どうぞー。」

新は10分で出てきた。続いて聡も風呂に向かう。

「炭酸水、もらうぞ。」

「うん。」

カチャ

コト

ガチャ

コポコポコポ

グビッグビッグビッグビッ

「ぷはー。」

新が冷蔵庫から炭酸水を取り出し、勢いよく飲んだ。

聡が風呂から上がるまで、新は奈央子さんと電話で話して出した。

「ああ、今、匠のところ、そっちは今日はどうだった?----そうか、うん。---」

新が話す間に、匠はアイロンをかけたり、鞄の中を整理したりし始めた。








しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。 その事実だけを抱え、離縁を突きつけ、家を出た。 そこで待っていたのは、最悪の出来事―― けれど同時に、人生の扉がひらく瞬間でもあった。 夫は愛人と共に好きに生きればいい。 今さら「本当に愛していたのは君だ」と言われても、裏切ったあなたを許すことはできない。 でも、子供たちの心だけは、必ず取り戻す。 妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。 過去を悔いながらも、愛を手に入れることを決めた彼女が辿り着いた先には――

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

君への気持ちが冷めたと夫から言われたので家出をしたら、知らぬ間に懸賞金が掛けられていました

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【え? これってまさか私のこと?】 ソフィア・ヴァイロンは貧しい子爵家の令嬢だった。町の小さな雑貨店で働き、常連の男性客に密かに恋心を抱いていたある日のこと。父親から借金返済の為に結婚話を持ち掛けられる。断ることが出来ず、諦めて見合いをしようとした矢先、別の相手から結婚を申し込まれた。その相手こそ彼女が密かに思いを寄せていた青年だった。そこでソフィアは喜んで受け入れたのだが、望んでいたような結婚生活では無かった。そんなある日、「君への気持ちが冷めたと」と夫から告げられる。ショックを受けたソフィアは家出をして行方をくらませたのだが、夫から懸賞金を掛けられていたことを知る―― ※他サイトでも投稿中

【完結】公爵家の秘密の愛娘 

ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝グラント公爵家は王家に仕える名門の家柄。 過去の事情により、今だに独身の当主ダリウス。国王から懇願され、ようやく伯爵未亡人との婚姻を決める。 そんな時、グラント公爵ダリウスの元へと現れたのは1人の少女アンジェラ。 「パパ……私はあなたの娘です」 名乗り出るアンジェラ。 ◇ アンジェラが現れたことにより、グラント公爵家は一変。伯爵未亡人との再婚もあやふや。しかも、アンジェラが道中に出逢った人物はまさかの王族。 この時からアンジェラの世界も一変。華やかに色付き出す。 初めはよそよそしいグラント公爵ダリウス(パパ)だが、次第に娘アンジェラを気に掛けるように……。 母娘2代のハッピーライフ&淑女達と貴公子達の恋模様💞  🔶設定などは独自の世界観でご都合主義となります。ハピエン💞 🔶稚拙ながらもHOTランキング(最高20位)に入れて頂き(2025.5.9)、ありがとうございます🙇‍♀️

『紅茶の香りが消えた午後に』

柴田はつみ
恋愛
穏やかで控えめな公爵令嬢リディアの唯一の楽しみは、幼なじみの公爵アーヴィンと過ごす午後の茶会だった。 けれど、近隣に越してきた伯爵令嬢ミレーユが明るく距離を詰めてくるたび、二人の時間は少しずつ失われていく。 誤解と沈黙、そして抑えた想いの裏で、すれ違う恋の行方は——。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

離婚する両親のどちらと暮らすか……娘が選んだのは夫の方だった。

しゃーりん
恋愛
夫の愛人に子供ができた。夫は私と離婚して愛人と再婚したいという。 私たち夫婦には娘が1人。 愛人との再婚に娘は邪魔になるかもしれないと思い、自分と一緒に連れ出すつもりだった。 だけど娘が選んだのは夫の方だった。 失意のまま実家に戻り、再婚した私が数年後に耳にしたのは、娘が冷遇されているのではないかという話。 事実ならば娘を引き取りたいと思い、元夫の家を訪れた。 再び娘が選ぶのは父か母か?というお話です。

処理中です...