(仮)婚約中!!

佐野三葉

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義兄弟とため口で話すことになりました その①~匠side~

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この1週間、字の練習は毎日したが苦行としか言いようがなかった。
書いても書いても上達しない字を見ると、疲れも増していった。

イライラして頭に血が上っても、睦月さんが準備してくれた黒豆茶を飲むとぐっすり眠ることができた。

明日で1週間なのでそれももうなくなる。

「どうしようか・・・。」

ザー

カチャカチャ

夕飯の食器を洗いながら悩む匠。

メールの着信音が部屋に響いた。

楓ちゃんからかな。

水道を止め、手を拭いて急いで携帯のメールを確認する。

「ああ。新さんからか。」

【明日、聡兄さんとそっちに22時くらいに行くからよろしく。
 泊りになる。食料は持っていく。】

明日は仕事は20時には終わるだろう。21時には帰れるな。

【了解です(^^)】

匠は新にメールを返信した。

2人が遊びに来ることはあるが、仕事が忙しい時にはそれはなかった。きっと僕のことを心配してくれているのだ。
決定事項のような文面なのは、僕が遠慮しない為だろう。課題の相談に乗ってくれるはずだ。

ザー

カチャカチャ

皿洗いを再開しながら、考える。

「課題、もう1つあったなあ。」

もう1つの課題は、【義理の兄弟への言葉遣いのよそよそしさを無くすこと】だった。1週間は誰にも課題について話してはいけなかったから、この課題は保留にしておいた。

こっちの方が、やりやすいと言えばやりやすい。
やりにくいと言えばやりにくい。

僕は、両親が離婚して1人で暮らすようになってからは、一定の安全な距離感を保つのが癖になってしまった。
嫌われるリスクが出るくらいなら、最初から「まあまあいい人」止まりの方が安心だった。

年上には、言葉遣いは変わらないだろう。元々、そう砕けた話し方をするタイプではなかったから。

「だけど今更、新さんと聡さんにためぐちなんて・・・ハードル高いなあ。」

台所の周りを拭き、片づけが終わった。


ちょっと練習してみようか。

匠は、明日2人が来た時を想像しながら話す言葉を口に出してみた。

「新、仕事忙しいのに・・・ごめんな。いや軽すぎるか。・・・・ごめんな。違う。・・・・ごめんなあ。」
「ごめんな」のフレーズを色んな調子で繰り返す。

「さ、聡、時間作ってくれて助か・・・るよ。2人とも家の方は大丈夫・・・なのか?家族もいるんです・・・・だし、無理しなくていいんだよ。」
年上の聡さんに話すのに、【ですます調】になりそうなのを堪えるのは、思ったより難しそうだ。
それにしても・・・。
匠は、右手で顔を覆った。

今更、恥ずかしいぞ。これは・・・。

部屋に光が広がる。光っているのは、携帯のストラップ?
手に取って見ると、携帯ストラップの 男の子のパーツが、1/3色が変わっている。なんて絶妙なタイミングだ。

「字の方は、合格の目途が立ちそうにも無いし、こっちの方を頑張るしかないな。」

携帯の時間表示が目に入る。22時まであと15分ある。

ピッ

コト

ボフッ

匠は、リビングの電気を消すと、携帯電話をテーブルの上に置きソファーに横になり、携帯が鳴るまで目を閉じて休憩した。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「ふふふ。坂野さんて面白い人だね。」

「そうだね。坂野がいると場が和むかな。」

いつものように雑談をした後で、匠は楓に明日のことを切り出した。

「楓ちゃん、明日なんだけどね。」

「うん。」

「明日は聡さんと新さんがうちに来るから、夜話せないと思うんだ。ごめんね。」

「そっかあ。残念。ーーー。じゃあ、明後日の夜、匠さんに会いに行ってもいい?」
楓ちゃんは、一瞬元気のない声を出したが、すぐに明るく聞いてきた。

「うん。なるべく仕事を早く終わらせるよ。一緒にご飯でも食べよう。」
ー僕も楓ちゃんに会いたい。

「やった!」
楓ちゃんは、すごく嬉しそうに言った。

「何が食べたい?」

「うーんとねえ。どうしようかなあ。---楽カツは?」

「そんなんでいいの?」
楓ちゃんが選んだお店は、とんかつのチェーン店だ。手ごろな値段で、ファミリー層に人気がある。

「うん。友だちと前にランチに行った時にあそこのお店、店員さん感じがよかったし、席もゆったりしてるから話もしやすいと思うんだあ。」

「じゃあ、18時に待ち合わせをしよう。」

「うん♪匠さんの会社の近くのいつものファスで待ってるね。」
ファスは、ハンバーガーのチェーン店だ。会社から近く駐車場が広いので、楓との平日の待ち合わせによく使っている。

「遅くなる時は早めにメールするね。」

「うん。えーと、じゃあまた明日。お休みなさい。」

「うん。お休み。」

時間を見ると、0時ぴったりだ。楓ちゃんは、早寝早起きの課題を頑張ってるんだな。

「僕も字の練習、5分だけでもするか。」

ピッ

トンートンートン

匠は、ソファーから起き上がると、リビングの電気をつけて携帯のタイマーを5分にセットし、ノートを開き、字の練習を始めた。










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