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ウサギの抽選台 ――自覚――
「があぁぁーっ!」
無防備な腹に無数の玉が流し込まれる衝撃に、トオルの口から断末魔を思わせる悲鳴が迸る。
『バトラー』が手にしていたのは、花柄の彫刻が美しい、ガラス製のティーポットだった。透けて見える内部は、ローション塗れの銀の玉で満たされている。
『バトラー』はそのポットを傾け、まるで紅茶でも入れるかのように優雅に、ビンゴ玉をトオルの尻に注ぎ込んだのだ。
金属のくちばしで広げられた窄まりは、抵抗もできずに玉の侵入を受け入れるしかない。
玉はポットの注ぎ口からぬるりと連なって滴り、カンカンカンカンと金属のくちばしの内側で音を立て、するりとトオルの尻の中へ飲み込まれていく。
その様子は会場中に中継され、玉がくちばしに当たる音がマイクを通して響き渡る。
サイズの割に重量のある玉なのか、トオルの腹は加速度的に重くなる。腹から尻へと異物で満たされていくのがありありと感じられる。切迫感をもたらす責め苦が、トオルの理性もプライドも押し潰していく。
「あぐぅっ……やめろぉぉ……」
筋肉を押し広げられ、腹の中を直接圧迫されて、徐々に大声が出せなくなっていく。重量感をもって玉につぶつぶと押し広げられていく感触は、まさに浸食と呼ぶのがふさわしい。
内心では嫌だやめろと喚き散らしているのに、トオルの口からはすぐに、力の無い呻きしか漏れなくなった。
「初物ということだったが、意外と入りますな」
「一粒一粒が小さいですからなぁ」
感心したような客席のざわめきも、トオルの耳には入ってこない。ひたすら苦しくて、自分がされていることが信じられなくて、「うぐ……うぅ……」とくぐもった声を上げ続ける。
「ポットの中身はあと半分といったところですが、抽選台の中はこの通り、かなり上部まで玉で満たされております」
『バトラー』は一旦注入を止め、手持ちのカメラでトオルの内部を克明にスクリーンに映し出した。
肉色のトンネルの中、ローション塗れでつやつやと光る銀色の玉がせり上がっている。
誰の目にも、99個全部は入らないのは明白だった。
こんな、こんなことが……なんで……。と、トオルは声にならない疑問と恐怖に顔をくしゃりと歪める。
実際に玉を流し込まれても、自分の身に起こっていることが受け止め切れない。
顔全体が熱い。こめかみが引き絞られて、鼻の奥がつんと痛い。
涙の気配を察してか、ここぞとばかりにようやく目隠しが外された。
眩しさに目をしょぼつかせながらも、必死に状況を把握しようと焦点を合わせる。
ここまでの流れで、自分は不愉快なジジイ共に取り囲まれていると思っていた。
せめてそいつらを睨みつけてやろうと思った。鼻で笑ってやろうと思った。こんな悪趣味なショーを楽しんでる変態どもめ、と。
それがトオルに残された、最後の気概だった。
だが、そこにはいやらしい表情の男たちなどいなかった。焦点を結んだトオルの目の前、ほんの二十センチ先にあるのは、高価そうなカメラのレンズだけだった。カメラの背後には、ドレープの豊かな漆黒の幕が広がるばかりだ。
四つん這いで客席に尻を向けているトオルに見えるのは、当然ステージの背だった。
尻の向こうから、無数の笑い声や話し声がさざ波のように聞こえてくる。
トオルの顔も、言葉も、人格も、おまけなのだ。この場におけるトオルとは、ビンゴ玉を詰め込まれる尻の穴でしかないのだ。
あぁ、本当に俺、ビンゴゲーム用の抽選台なんだ。俺の尻に玉詰め込むの見て、皆、笑ってるんだ。俺、ただの、おもちゃなんだ……。
ぽきん、と、何かが折れた音が聞こえた気がした。
視力を取り戻したことでかえって現実を突きつけられ、トオルの目からはらはらと涙が落ちる。
その表情をスクリーンで目にした観客たちは、今まで以上の盛り上がりを見せた。
「おお、確かに猫顔の美形だな」
「賞金目当てだったが、あの子も悪くないじゃないか」
「生意気そうな子供が泣くのは、なかなかどうしてクるものがあるな」
「早く抽選しろ!思い切り漏らさせろ!」
容姿への称賛に、欲望を帯びた罵声が混じる。そこに、トオルを同じ人間だと庇う声はない。
トオルは今、圧倒的に孤独な弱者だった。
「た、助けて……助けて……」
心折れ、誰にともなく涙声で縋る。だがそれに応じる声はない。
返ってきたのはただ、無情な『バトラー』の宣告だけだった。
「それでは、限界まで玉を詰めていきましょう」
無防備な腹に無数の玉が流し込まれる衝撃に、トオルの口から断末魔を思わせる悲鳴が迸る。
『バトラー』が手にしていたのは、花柄の彫刻が美しい、ガラス製のティーポットだった。透けて見える内部は、ローション塗れの銀の玉で満たされている。
『バトラー』はそのポットを傾け、まるで紅茶でも入れるかのように優雅に、ビンゴ玉をトオルの尻に注ぎ込んだのだ。
金属のくちばしで広げられた窄まりは、抵抗もできずに玉の侵入を受け入れるしかない。
玉はポットの注ぎ口からぬるりと連なって滴り、カンカンカンカンと金属のくちばしの内側で音を立て、するりとトオルの尻の中へ飲み込まれていく。
その様子は会場中に中継され、玉がくちばしに当たる音がマイクを通して響き渡る。
サイズの割に重量のある玉なのか、トオルの腹は加速度的に重くなる。腹から尻へと異物で満たされていくのがありありと感じられる。切迫感をもたらす責め苦が、トオルの理性もプライドも押し潰していく。
「あぐぅっ……やめろぉぉ……」
筋肉を押し広げられ、腹の中を直接圧迫されて、徐々に大声が出せなくなっていく。重量感をもって玉につぶつぶと押し広げられていく感触は、まさに浸食と呼ぶのがふさわしい。
内心では嫌だやめろと喚き散らしているのに、トオルの口からはすぐに、力の無い呻きしか漏れなくなった。
「初物ということだったが、意外と入りますな」
「一粒一粒が小さいですからなぁ」
感心したような客席のざわめきも、トオルの耳には入ってこない。ひたすら苦しくて、自分がされていることが信じられなくて、「うぐ……うぅ……」とくぐもった声を上げ続ける。
「ポットの中身はあと半分といったところですが、抽選台の中はこの通り、かなり上部まで玉で満たされております」
『バトラー』は一旦注入を止め、手持ちのカメラでトオルの内部を克明にスクリーンに映し出した。
肉色のトンネルの中、ローション塗れでつやつやと光る銀色の玉がせり上がっている。
誰の目にも、99個全部は入らないのは明白だった。
こんな、こんなことが……なんで……。と、トオルは声にならない疑問と恐怖に顔をくしゃりと歪める。
実際に玉を流し込まれても、自分の身に起こっていることが受け止め切れない。
顔全体が熱い。こめかみが引き絞られて、鼻の奥がつんと痛い。
涙の気配を察してか、ここぞとばかりにようやく目隠しが外された。
眩しさに目をしょぼつかせながらも、必死に状況を把握しようと焦点を合わせる。
ここまでの流れで、自分は不愉快なジジイ共に取り囲まれていると思っていた。
せめてそいつらを睨みつけてやろうと思った。鼻で笑ってやろうと思った。こんな悪趣味なショーを楽しんでる変態どもめ、と。
それがトオルに残された、最後の気概だった。
だが、そこにはいやらしい表情の男たちなどいなかった。焦点を結んだトオルの目の前、ほんの二十センチ先にあるのは、高価そうなカメラのレンズだけだった。カメラの背後には、ドレープの豊かな漆黒の幕が広がるばかりだ。
四つん這いで客席に尻を向けているトオルに見えるのは、当然ステージの背だった。
尻の向こうから、無数の笑い声や話し声がさざ波のように聞こえてくる。
トオルの顔も、言葉も、人格も、おまけなのだ。この場におけるトオルとは、ビンゴ玉を詰め込まれる尻の穴でしかないのだ。
あぁ、本当に俺、ビンゴゲーム用の抽選台なんだ。俺の尻に玉詰め込むの見て、皆、笑ってるんだ。俺、ただの、おもちゃなんだ……。
ぽきん、と、何かが折れた音が聞こえた気がした。
視力を取り戻したことでかえって現実を突きつけられ、トオルの目からはらはらと涙が落ちる。
その表情をスクリーンで目にした観客たちは、今まで以上の盛り上がりを見せた。
「おお、確かに猫顔の美形だな」
「賞金目当てだったが、あの子も悪くないじゃないか」
「生意気そうな子供が泣くのは、なかなかどうしてクるものがあるな」
「早く抽選しろ!思い切り漏らさせろ!」
容姿への称賛に、欲望を帯びた罵声が混じる。そこに、トオルを同じ人間だと庇う声はない。
トオルは今、圧倒的に孤独な弱者だった。
「た、助けて……助けて……」
心折れ、誰にともなく涙声で縋る。だがそれに応じる声はない。
返ってきたのはただ、無情な『バトラー』の宣告だけだった。
「それでは、限界まで玉を詰めていきましょう」
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